ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】
003A_旅立ちの前
俺はぶるっと身震いをした。そして暗がりの中で自分の手を見てグーパーと握ったり開いたりした。意味はない。
「今日は遅いから、明日確認するか……」
アフロディーテと言う神様が教えてくれたジュエリークラフターのアーツはどれも強力なものに思えた。だからと言って進んで魔王討伐をするほど俺は勇者ではない。
今日はもう暗いので寝て、明日の朝にアーツやスキルの確認と検証をしよう。
翌朝、俺は窓から差し込む光で目を覚ました。ユキはまだ可愛らしい寝息を立てているが、いつの間にか俺のベッドの中に入ってきていた。どうりで狭く感じたわけだ。
今まで寂しかったのだろう。まだこんなに小さな子供なんだから親が恋しいだろうに。ユキを護ってやらないと思ってしまう。
俺はユキを起こさないようにベッドからそろりと抜け出して、椅子に座った。
「ステータスオープン……」
■ ステータス ■
氏名:エイジ・クルルギ
職業:ジュエリークラフター1
HP:100/100
MP:100/100
SP:100/100
■スキル■
言語理解II(+1)
アイテムボックス(極)(NEW)
超成長(NEW)
絶対防御I(NEW)
神力眼I(NEW)
まず、突っ込みたいのが、スキルが4つもあることだ。スキルは2つだと言っていたよね? そして、どれも凄そうなスキルなのだ。
しかし、今の俺にはこの4つのスキルの詳細を確認することができない。なんとなくだけど、アイテムボックス(極)は分かる気が……えっ?
アイテムボックス(極) ⇒ 10m以内の無生物を触れずに収納(取り出し)できる。収納した物の時間経過を任意で設定できる。収納したものを解体できる。
俺の頭の中にアイテムボックス(極)の詳細についての表示が……もしかして、他のも?
超成長 ⇒ 全てのレベルアップに必要な経験値が少なくなる。また、レベルアップ時にはステータスの成長値が+100がされる。
絶対防御I ⇒ 1日10回だけどんなダメージも無効化できる。午前0時にリセット。初期設定は致死ダメージ無効。
神力眼I ⇒ 対象の詳細を知ることができる。20mの範囲で透視ができる。
あー、これは神力眼の効果だね。しかし、これは凄いな。一番ありがたいのは絶対防御だ。
1日に10回も致死ダメージを無効にしてくれるなんて、凄すぎる。しかも絶対防御と神力眼は『I』と表記があるので、レベルアップするスキルだと考えられる。レベルアップすれば、もっと凄い効果が現れる可能性があるのだ。
ダメ神に頼むのは嫌だったのでスキルなんていらないと言ったけど、前言撤回! とっても楽しみになってきた。
思わぬことで自分のスキルについて理解できてしまったので、早速神力眼の透視というものを試してみようと思った。
宿屋の壁越しに外が見えないか、チャレンジしてみた。えーっと、ピント調整は……なかなか難しいな。透視はピント調整が難しいことが分かった。
「ふー」
ピント調整していたら気分が悪くなってしまったので、休憩することにした。慣れるまで時間がかかりそうだ。
ちょっと目を閉じて考え込んでいたら、ベッドの方で音がした。目を開けてベッドの方を見るとユキが上半身を起こして目を擦っているのが見えた。
「はっ!? 申し訳ありませんなのです!」
ユキはベッドから飛び起きて床に土下座した。この世界にも土下座の文化があったのだと、ちょっとびっくりした。
「何をしているんだ。服が汚れるから頭を上げて立つんだ」
「でも、ユキはご主人様のベッドでなのです……」
ユキが涙目で俺を見る。虐めているようで気が引ける。
「一緒に寝たいのなら、これからも一緒に寝てやるから立ちなさい」
俺は決してロリコンではないぞ! ユキを見ていると庇護欲が掻き立てられるんだ。
「本当なのですか!?」
「ああ、本当だ。だから立ちなさい」
なんか言葉使いが父親のようになってきたな。
「はい! ユキは立つのです!」
土下座の状態からぴょんとジャンプしてすとんと床に立ったユキを見ると、やっぱりウサギ獣人なんだなと思ってしまった。
「よし、今日はやることが沢山あるぞ。ユキにも手伝ってもらうからな」
「はいなのです! ユキはご主人様のためにがんばるのです!」
「先ずは朝飯だ。露店はもう開いているかな?」
「露店は朝早くから開いているのです。大丈夫なのです!」
ユキはこの世界で生まれ育ったから俺にないこの世界の常識を知っているようだ。
「ユキ、俺は異世界からやってきたから、この世界のことがあまり分からない。だから色々教えてほしい」
「異世界? ……よく分からないのですが、ユキに分かることでしたらなんでもお教えするのです!」
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