ジュエリークラフター 【魔物を宝石に変えて魔王も倒せるけど勇者じゃないおっさん】

なんじゃもんじゃ

002A_アフロディーテ

 


 異世界転生してすぐに奴隷を購入してしまった俺はなんとか宿屋にたどり着いた。
 宿屋は騎士が教えてくれたように1泊銅貨4枚で個室に泊まれたけど、奴隷がいると銅貨1枚が追加で部屋のアップグレードはない。
 だから2人部屋を頼んだら普通に2人分の料金を取られた。まぁ、それはいい。
 宿屋の宿泊は素泊まり価格なので、食事は別だ。
「風呂はないのか?」
「はぁ? どこの貴族様だい? こんな庶民向けの宿に風呂なんてないよ。体を拭きたいなら、裏の井戸なら無料だし、お湯がほしければ青紙幣3枚だよ」
 そういえば、手ぬぐいもなかったから聞いてみたら、手ぬぐいの貸し出しはないけど、銅貨1枚で販売していると言われたので、2枚買った。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


『うふふふ、私を馬鹿にした奴なんかにスキルなんてやらないんだから!』
 地上を俯瞰しているダメ神。
 しかしエイジがあまり悲観していないことに不満を持った。


 神々しい金色の髪の毛は腰まであり、とても艶やかで瑞々しい。
 清楚な感じなのに決して貧相ではない顔はとても美しい。
 絶世の美女とでも言うべきか、神だけあって筆舌できないほど美しいたたずまいのダメ神である。


『ちっ、器用さを極限まで下げてやればよかったわ!』
 とても悔しそうに俯瞰しているダメ神の姿は本当に人の不幸を望む悪魔のようである。


『ちっ、スキルなしだけじゃなくて、呪いでもかけておけばよかったかしら』
 エイジがあまり悲観していなかったので、不満を持っているのだ。


『よし、今からでも呪いをかけてやろ!』
『呪いがどうしたのかしら?』
『っ!?』
 ダメ神の後ろにはダメ神と同じようにとても美しい女神が立っていた。


『アフロディーテ様!?』
『ラーディア、呪いって何かしら? 貴方、もしかして転生勇者に変なことしていないわよね?』
『も、もちろん、です!』
 もちろんと言うわりには目が盛大に泳いでいるダメ神こと、ラーディアである。
 どうやらアフロディーテはこのラーディアというダメ神の上司らしい。


『そう? もし転生勇者を呪ったり、スキルの付与忘れなどがあったら分かっているわよね?』
『……ははは、いやですねぇ~、私がそんなヘマをするわけないじゃないですか!』
 挙動不審なラーディアを半眼で見つめるアフロディーテ。


『分かったわ。でも、審査があるってことは忘れない方がいいわよ』
 とても冷たい声に聞こえた。
 それどころか、ラーディアの背筋が完全に凍りついた気がした。


 アフロディーテがいなくなってからラーディアは考えた。審査は抜き打ちで行われるので、いつあるか分からない。
 もしかしたら今すぐにでも審査があるかもしれない。
 そうなったらエイジにスキルを与えずに転生させたことがバレてしまう。今更ながらに焦るラーディア。
「なんとか今回のことを隠蔽しなければ!」


 

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