白の悪魔は闇夜に謡う
目覚め
殺気を全身に感じ、冷や汗をかきながら腰の短刀に手をかける。
摺り足で木の陰へと隠れ呼吸を整える。
鼓動が異常に早くなっている。
震える手を必死に抑え、深呼吸をする。
木の陰からソッと森の奥を見やる。
森の奥から出て来たのはーー
                          ーー赤い肌の鬼だった。
「オーガ…」
オーガCランク指定の魔獣だ。
ゴブリンの上位種と言われ、子供の肉を好み、女を犯す。
 
そんな最低な魔獣と出会ってしまった。
ーー…どうする。このままだと屋敷の方へと言ってしまう。
バネッサ達のことが頭を過って、逃げ出すタイミングをなくす。
覚悟の末に出て来たのは、
「…引き離そう。」
そんな単純な事だけだった。
私がここで無茶をしてバネッサ達に気付かれたら厄介だ。
だからバネッサ達が気付く前に、少しでも遠くにコイツを連れて行く。
ーーじゃないと、無駄に命を張って私なんかを助けちゃうからね…
急いで行動に移そうと、茂みから出ようとしたその時
「「セレノア様ー!?」」
「_っ!?」
「ガゥ?」
バネッサ達の声がその場に響き、オーガの意識がバネッサ達に向く。
「!?っ__まずい!!」
オーガが咆哮を上げながら、バネッサ達に向かって行く。
だけど、子供の全力疾走とオーガの走りではどれだけ強化していても、間が空いてしまう。
「キャアーー!?」
バネッサの悲鳴にもつれそうな足を必死に動かし、
ようやく追いついた先で見たものはーー
ーー折れた剣を握りしめて頭から血を流し、倒れているセバスと、
恐怖で震えながらその場に崩れ落ちているバネッサの姿だった。
その後の私は多分無意識だったのだろう。
「_おい、そこのデカブツ。」
その辺の石をオーガへと投げつけ、罵っていた
「僕の家族に手を出してんじゃねぇよ、
                     _______殺すぞ?」
よくわからない氷のような冷気に身を包まれ体の芯が凍って行くのがわかった。
だが、不思議と動きづらさは感じない。
逆になんでも出来そうな程調子が良い。
私はもう一度石を投げつけ、走り出す。
「このウスノロ。
捕まえたければ捕まえてみろ!」
バネッサの制止の声を聞きながら森の奥へとオーガを引き連れる。
やはり、何故か体が軽い。
先程まで追いかけるので精一杯だった筈が、オーガと着かず離れずの距離を保てている。
ーーこのまま、森の奥まで行ったらどうすれば良い?
ーー私では倒せない。だけどここで倒さないと、被害が増えるだけ…
そんな事を考えながら走っていたせいか、オーガが投げた木の枝に気付くのが遅れて吹き飛ばされる。
「ーーカハッ!」
森の奥の壁に背中を打ち付け、息が押し出される。
痛みに蹲りながらも、オーガから目線は離さない。
酷く不細工な顔を更に醜悪に歪め、こちらにゆっくりと近づいて来るオーガ。
ーーまだ私は未来を変えれてない。
ーーこんな所では、死ねない!
“なら、僕が助けてあげようか?”
突然脳裏に聞こえた声に、思わず辺りを見回してしまう。
“何処探したって見つからないよ。
              __僕は君の半身だからね。”
目の前に現れた漆黒の髪に紫苑の瞳を持つ少年が、私に囁く。
“ようやく会えたね、セレノア。
   僕がコイツを倒すの手伝ってあげるよ”
そう言って少年は、柔らかく微笑んだ。
摺り足で木の陰へと隠れ呼吸を整える。
鼓動が異常に早くなっている。
震える手を必死に抑え、深呼吸をする。
木の陰からソッと森の奥を見やる。
森の奥から出て来たのはーー
                          ーー赤い肌の鬼だった。
「オーガ…」
オーガCランク指定の魔獣だ。
ゴブリンの上位種と言われ、子供の肉を好み、女を犯す。
 
そんな最低な魔獣と出会ってしまった。
ーー…どうする。このままだと屋敷の方へと言ってしまう。
バネッサ達のことが頭を過って、逃げ出すタイミングをなくす。
覚悟の末に出て来たのは、
「…引き離そう。」
そんな単純な事だけだった。
私がここで無茶をしてバネッサ達に気付かれたら厄介だ。
だからバネッサ達が気付く前に、少しでも遠くにコイツを連れて行く。
ーーじゃないと、無駄に命を張って私なんかを助けちゃうからね…
急いで行動に移そうと、茂みから出ようとしたその時
「「セレノア様ー!?」」
「_っ!?」
「ガゥ?」
バネッサ達の声がその場に響き、オーガの意識がバネッサ達に向く。
「!?っ__まずい!!」
オーガが咆哮を上げながら、バネッサ達に向かって行く。
だけど、子供の全力疾走とオーガの走りではどれだけ強化していても、間が空いてしまう。
「キャアーー!?」
バネッサの悲鳴にもつれそうな足を必死に動かし、
ようやく追いついた先で見たものはーー
ーー折れた剣を握りしめて頭から血を流し、倒れているセバスと、
恐怖で震えながらその場に崩れ落ちているバネッサの姿だった。
その後の私は多分無意識だったのだろう。
「_おい、そこのデカブツ。」
その辺の石をオーガへと投げつけ、罵っていた
「僕の家族に手を出してんじゃねぇよ、
                     _______殺すぞ?」
よくわからない氷のような冷気に身を包まれ体の芯が凍って行くのがわかった。
だが、不思議と動きづらさは感じない。
逆になんでも出来そうな程調子が良い。
私はもう一度石を投げつけ、走り出す。
「このウスノロ。
捕まえたければ捕まえてみろ!」
バネッサの制止の声を聞きながら森の奥へとオーガを引き連れる。
やはり、何故か体が軽い。
先程まで追いかけるので精一杯だった筈が、オーガと着かず離れずの距離を保てている。
ーーこのまま、森の奥まで行ったらどうすれば良い?
ーー私では倒せない。だけどここで倒さないと、被害が増えるだけ…
そんな事を考えながら走っていたせいか、オーガが投げた木の枝に気付くのが遅れて吹き飛ばされる。
「ーーカハッ!」
森の奥の壁に背中を打ち付け、息が押し出される。
痛みに蹲りながらも、オーガから目線は離さない。
酷く不細工な顔を更に醜悪に歪め、こちらにゆっくりと近づいて来るオーガ。
ーーまだ私は未来を変えれてない。
ーーこんな所では、死ねない!
“なら、僕が助けてあげようか?”
突然脳裏に聞こえた声に、思わず辺りを見回してしまう。
“何処探したって見つからないよ。
              __僕は君の半身だからね。”
目の前に現れた漆黒の髪に紫苑の瞳を持つ少年が、私に囁く。
“ようやく会えたね、セレノア。
   僕がコイツを倒すの手伝ってあげるよ”
そう言って少年は、柔らかく微笑んだ。
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