白の悪魔は闇夜に謡う

霜樺

侯爵子息セレノア

 すぐに屋敷の玄関へと向かい両親を出迎える。



「リュクス侯爵並びに侯爵夫人、わざわざご足労いただきありがとうございます。


ーー本日はどのようなご用件で?」


「貴様は誰だ。」


不機嫌な顔を隠そうともせずに聞いてくる。

ーー自分の所有している家にどんな人物が住んでいるかくらい把握していろよ。

そう思うもそもそも把握していないから、こんな女を男と偽る力技が出来るとだと思いとどまる。


「ーーセレノアでございます。侯爵様がたのご慈悲で侯爵家の末席を頂いております。」


「何故まだ生きている。セバス説明しろ。」


鋭い視線を向けられたセバス。

しかしさすが熟練の執事悪びれる様子もなく澄まし顔で応える



「僭越ながら、いかにどんな息子であろうとも、まだ5歳の子供が死亡するのはいささか縁起が悪うございます。せめて神の加護が外れる7歳まで待った方がよろしいかと。」


そして私の肩に手を置き顔をしっかりと侯爵に向けさせられる。



「さらにこの者は、まだ5歳になりたてでありながらも、高い能力を有しております。教育すれば他の貴族に対する優位な駒となり得るでしょう。」



顎に手を当て深く考える侯爵。



「侯爵家に無色ムシキの者を入れさせるつもり?」



しかし、甲高い声がその場を遮る。



「その事ですが。
この者は確かに無色ではありますが、瞳をよく見てください。


王家の血筋を引く者によく現れる紫苑の瞳を持っております。そのような者をうかうかと、外へは出せません。」



セバスは声の主である侯爵夫人に淡々と、しかし口を挟む暇のないように畳み掛ける



「ましてや神の加護も取れて幼子が死ぬなど、王家に何か禍が起こる予兆と取られてしまいます。」


「…一理あるな。

仕方ない、7歳まではこの屋敷に置いてやる。
それまで、今後の身の振り方でも考えているがいい。我々が納得できれば生かしてやる。」


「ふん、精々あと2年の命迷惑を掛けないようになさい。」



そう言いながら自室へと去って行く2人。


私はその背を見送りながら、女とバレていない事に安堵していた。










「それじゃあ、セバス山菜を取ってくる。」


私は動きやすい服装に着替え、ナップザックを背負いセバスに告げる。

あの後両親はすぐさま馬車に乗り昼過ぎにすぐ出て行った。

どうも私の死亡を確認しに来ていただけらしい。



「それならついでに何か狩って来てください。それも夕飯に並べますので。」


何も狩れなければ、オカズはなしです。と笑顔でのたまうセバスに少しだけ殺意がわいた。



私は今日5歳になったばかりなんだが…

 
そんな事を思いながら、セバスからの誕生日プレゼントの短剣を腰に刺し森へと向かう。


セバスには4歳の頃に、5歳から男になると言う事を伝えていた為ちゃんと男物のプレゼントが来た。



バネッサからは、白のマフラーを貰った。
白であれば男が持っていても違和感はないだろうと思い使わせて貰っている。



忌々しい白だが、大切な人からもらった者だと思うと嬉しくなる。



そうして山菜を採取しながら、山道を歩きながらふと違和感に気付く。


森が静か過ぎる…



いくら定期的に間引いているとはいえ、動物達の気配が全くしない。



ーー何がこの森で起こっている?



そう思い至った時、殺気が全身を刺激した。

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