白の悪魔は闇夜に謡う

霜樺

悪魔の誕生

処刑を迎えた今日、王都の端にある処刑場に連れてこられた

ボロボロの麻のワンピースを着せられ、腰まであった白髪を乱雑に肩までに切られ、後ろ手に縛られたまま歩かされる。

処刑場の中は深い堀の中心に断頭台があり目の前の中程の、豪華な個室に王族がその周りを地位の高い順に、貴族が囲み2列ほど開けて、平民達が周りを囲む。



皆侮蔑の視線を向けるも、とても静かだ。



「これよりセレノア・カトル・エレクジン廃妃の処刑を執り行う。」

私の側に控えていた、彼が声高らかに宣言した。

彼アレクサン・エース・プロキレスは、皇帝の懐刀で有名な男、今も冷たい瞳で私を注意深く見つめながら、懐から取り出した紙に書いてある罪状を吹聴する。

「皇后陛下の暗殺ならびに、国家転覆を図り世に混乱をもたらそうとした。罪深い罪人であり、国法第10条の国家反逆罪の罪により、斬首とする。

ーーまた、今回の件を踏まえ無色ムシキは国に害をなす恐れがある為、見つけ次第抹殺する事が国法会議で決まった。」


「!?」

私は、その言葉に勢いよく顔を上げる。

「なっ、裁かれるのは罪を犯したものだけだと聖典に厳守されていた筈では!?」

「貴様ら無色ムシキは存在自体が罪とされたのだ。」

その言葉と共に、孤児院の子供達が連れてこられた。


「セレノアさん!」

後ろ手に手を縛られたまま、連れてこられた無色ムシキの子供達。

皆目に涙を溜めながら、私の名を呼ぶ。

「あの子達に罪はない!
処刑するなら、私だけにして下さい!!」


「今更、いい人気取りか。そうやって罪を逃れようとしているのか!?」

「違う!!」

「ーー構うな。やれ。」


その言葉と共に、舞台の端に連れて行かれた、子供達は背後から胸を刺され堀の中に倒れて行った。


「い、イヤー!!」

私は思わず駆け出そうとするもの、アレクサンに肩を掴まれ地面に押さえ付けられる。


倒れ落ちていく刹那の憎悪に満ちた瞳が頭から離れない。


ーーなぜ、どうして。


ーー私だけを不当に裁けばいいのに、なんであの子達まで。


ーーどうして、私から全てを奪うの。


腕を引かれ、断頭台へと連れて行かれる。





“セレノア。奴らが憎いか?”

ーーえぇ、私から全てを奪った。




“あの聖女が憎いか?”

ーーえぇ、彼女から全てが始まった。




“なら、全てを元に戻したいか?”

ーー戻せるなら、何だってやってやるわ!




“理を破ってもか?”

ーーどんな代償を払っても、私は全てを元に戻したい!



“なら、儂の名を呼べ。”




私は断頭台へと頭を乗せて、彼等を睨みつける。


「ブランシュ。全てをもとに」


最後に流した、雫は何だったのか。
自分でもわからない。


“運命を変える業を背負った者よ。


ーー汝は白の悪魔として生まれ直す。”

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