SUGAR

黒霧ゆゆ

プロローグ

肌寒い空気
紅や黄色に色づく葉
落ちてくる葉
俺の部屋にうるさい2人






 「はあー、秋だわ」

 秋じゃなくても2人はいるか…



 二学期が始まって2ヶ月過ぎた。
ちょっと前まで暑かったのにそれが嘘みたいに寒い。

 今年ももうすぐ終わるしクリスマスというイベントが待っていることからかカップルが続々誕生している。

 リア充万歳だな うん。

 ひがみは置いといて自己紹介をしよう。

 俺は浮所裕翔うきしょゆうと
 で、俺の部屋にいる2人は女の方から安達聖あだちひじり男の方が燎秦かがりしん

 俺はこの2人の友達でヒロイン安達聖主人公燎秦の語り手。

 ひとつ問題がある。

 それは俺が聖を好きという事だ。

 そして、聖は秦のことが好きである。

 語り手である俺からしたらとんでもない問題。

 現在永宮なかみや高校の2年生である俺らは中学生の時にたまたま出会い、恋に落ちた。

 俺は聖に 聖は秦に 秦は聖に

 何度か諦めようとしたが出来なかった。

 好きだから…






 今日の8時


 ピンポーンと音が鳴った。


 誰かと約束をしたわけでもなかった俺は無視してベッドにダイブして漫画を読む。


 俺はこれを[至福]と呼ぶ。


 下から母さんが笑っている声が聞こえる。


 [近所の人か?]


 ?「お邪魔します」


 どこかで聞いたことある声だな。


 なんだろ、この透き通った声はたしか……


 ?「おい、裕翔なに漫画読んでんだよ」


 ああ、秦の声か。


 通りで聞いたことあるわけだ。


 秦「話聞いてないだろ」


 眉間にしわを寄せて俺のことを見つめてくる。


 裕翔「そんな見つめないで、えっち♡」


 不敵な笑みをして自分の体を抱きしめる裕翔。


 それを見て、はいはいと流す秦。


 秦「お前今日の約束覚えてねぇーだろ」

 裕翔「そんな約束したっけか、誰かと間違えてんじゃねーの?」

 秦「相談乗ってくれんじゃなかったのかよ!」


 全く覚えてない。


 あごに手を軽く当てて考えている裕翔


 秦「LINEで俺んち行くって言ったの誰だよ、おい」

 裕翔「あー、はい、覚えてません」


 呆れた顔でスマホの画面を裕翔の前に突き出す秦


 裕翔「そういや約束したな、忘れてたわ」


 裕翔はあくびをすると持っていた漫画を本棚に戻した。


 裕翔「さてと、話はなんだい」

 鋭い目付きで秦は裕翔を睨んでいたがすっと穏やかな顔になった。

 秦「嫌さ、聞いて。俺また告白されたの」

 裕翔「……」

 秦「なんでそんな怖い顔で黙るんだよ…」


 ため息をつくと裕翔はそっとベッドに座った。


 裕翔「自慢しに来たのかな?なら、帰ってくれないかな?」


 嫌味な顔で秦を見つめて、怒ってるよアピール(腕組み&脚組)をした。


 秦「そんな怒るなって!問題はその告白された人なんだって」

 裕翔「で、何あったのよ、言っとくけどしょうもない事だったら俺ん家出入り禁止だからな?」


 秦は縦に首を振り、床に座り込んだ。


 秦「それがさ〜彼氏持ちの女の子でさ、今別れるから付き合ってくださいだって」

 裕翔「うわ、まじか」

 秦「しかも近くにその彼氏さん居たみたいで俺呼び出しくらった」

 裕翔「モテ男は辛いな、乙です」

 秦「まじでやばいんだって、彼氏さん聖と同じクラスでそこに呼び出してきたんだよ」


 うわあー!と声を出しそのまま丸くなり床でごろごろ転がり始めた。


 裕翔「ま 行くしかないだろ」

 ?「何処どこに行くの?」

 秦・裕翔「うげ…」


 二人はぱっと瞬時に後ろを向き小さく弱々しい声で発した。


 聖「二人揃ってなに!?」


 二人は一緒に首を聖の方へと傾けた。


 裕翔「ほんとにタイミング悪い時来るよな」


 ちっと舌打ちをすると裕翔の目の前から聖がふっと消え、気づけば裕翔は仰向けになった。

 (額が痛い)


 秦「ご愁傷さまです…」


 裕翔は横にあった枕を取り聖に投げ、より騒がしくなった。

 そうこれが俺たち三人の日常なのだ。






 帰り道


 聖と秦は家が隣のため一緒に帰っていた。


 聖「ねえ、裕翔と何話してたの?」


 顔を下から覗き込むようにして顔を近づけた。


 秦「なんでもないよ、それより前見て、前」


 くるっと周り歩くと電灯に明かりがついた。


 聖「最近暗くなるの早いから嫌だなあー」

 秦「裕翔と居られないから?」

 聖「うんっ!」


 聖は裕翔が好きなのだ。

 裕翔は聖は俺が好きだと勘違いしているみたいだけど…

 そう考えているうちに家の前に着いた。


 聖「ばいばいー!」


 少し大きめの声で聖は言い、秦は聖が家に入るまで手を振り続けた。

 振り終えると、秦は家の中に入り玄関でストンと縮こまった。


 秦「俺の気持ちどうすんだよ…」


 今にも消えそうな小さな声でボソッと呟いた。

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