甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第54話


 高志はとりあえず、紗弥にメッセージを入れる。
 先ほどの事は誤解だったと言う説明のメッセージを送信する。

「はぁ……また紗弥を……」

 またしても紗弥を悲しませてしまった。
 高志はそうそんな事を考えながら、紗弥の返信を待つ。
 返信は中々無く、高志は不安になりながら、スマホの画面と睨めっこをしていた。
 そしてようやく……。

「来た!!」

 紗弥からのメッセージが返ってきた。
 高志は直ぐさま紗弥からのメッセージを確認する。

【旅館の外に来て】

 それだけでメッセージは終わっていた。

「よし! 直ぐにいこう!!」

「どうした急に……」

 高志はそう叫びながら、勢いよく布団を吹き飛ばして部屋の外に向かう。
 見回りの先生に見つからないように、そーっと隠れながら外に向かう。
 高志は無事に外に出ると、紗弥を探した。
 少し探したところで高志は紗弥を発見した。
 紗弥は旅館から少し歩いたところにある街頭の下のベンチにいた。

「さ、紗弥……」

 高志は紗弥に近づき声を掛ける、しかし紗弥はゆっくりと高志の方を向いただけで何も言わない。

「あ、あのな! さっきのアレは本当に誤解なんだ! 信じてくれ!」

「うん、大丈夫……流石に高志がホモじゃないって言うのはわかってるつもりだから」

 冷たい声でそういう紗弥。
 本当にわかっているのだろうかと、高志は内心不安になりながら紗弥の顔を見る。

「歩こう」

「え、あ……うん」

 紗弥は立ち上がり、旅館から離れていく。
 高志もそんな紗弥に続いて歩いていく。

「さ、紗弥……あ、あのな! アレは俺も突然のことで……」

「良いから……ほら、早く手つなご」

「あ、あぁ……」

 高志は紗弥の手を握り、いつも通り手を握る。
 
「な、なぁ……どこに行くんだ?」

「さぁ……どこだろうね」

「さ、さっきの事を怒ってるなら謝るから! き、機嫌直してくれよ……」

「謝らなくて良いよ……だって、高志だって無理矢理だったんでしょ?」

「あ、あぁ……」

「さっきは思わず逃げちゃったけど……それなら仕方ないよ」

「わ、わかってるくれればそれで良いんだけど……なら俺たちはどこに向かってるの?」

「とりあえず、この先の公園に行こ」

「わ、わかった」

 高志と紗弥は少し歩いて、旅館近くの公園に到着した。
 高志と紗弥は公園のベンチに座る。

「修学旅行も終わりだね」

「そ、そうだな……」

 紗弥は高志の隣にぴったりとくっつき、肩に頭を乗せ、手を握っていた。
 いつも通り甘えん坊の紗弥。
 そんな紗弥を横目でチラチラ見ながら、高志は不安な様子で座っていた。
 そんな高志に紗弥は話し掛ける。

「ねぇ……高志」

「な、なんだ?」

「ちゅーしよ」

「え!? あ、あぁ……良いけど……」

 紗弥に言われ、高志は紗弥の方を向く。
 高志から了承を貰うと、紗弥は高志と向き合いキスをする。
 先ほどのおぞましい出来事を忘れるくらい、紗弥とのキスは高志にとっては嬉しい出来事であった。
 しかし……。

「さ、紗弥……」

「なに?」

「な、長くない?」

「長くないよ? ん……」

「いや、ながい…ん……」

 話しをしている途中でも、紗弥は高志の口を自分の唇で塞いでくる。
 何度も何度も繰り返しキスをする紗弥。
 いつもなら、こんなに長く情熱的なキスをしない紗弥なのだが、今日はなんだか違う。

「さ、紗弥! ストップ! 一回ストップ!」

「なんで?」

「さ、流石に疲れちゃうよ……そ、それに……一応外だし……」

「見られたら困る?」

「そ、そりゃあ……」

「じゃあ、見られないところだったら、何回しても良い?」

「そ、そういう問題じゃ……そ、それに……戻らないと見回りの先生とかに見つかったら……」

「高志は私と居たくないの?」

 紗弥は高志に潤んだ瞳でそう尋ねてくる。
 そんな聞き方をされては「うん」などとは口が裂けても言えない。

「い、いや……もちろん一緒に居たいけど……」

「じゃあ良いじゃん……」

「ちょ……ちょっと……」

 紗弥は高志の隣から、膝の上にまたがり、再び高志の唇に自分の唇を重ねる。

「そ、そろそろ満足してくれた?」

「ん……まだ……」

「も、もしかして……さっきのこと気にしてる?」

「……うん」

「うっ……ごめん」

「修学旅行の最後の夜に、彼氏が男とキスしてたらショックだよね?」

「で、ですよね……」

「だから、高志が変な事に目覚めないようにしないと……」

 そう言うと紗弥は、高志の手を掴んで自分の胸にもってくる。
 
「さ、紗弥!?」

「どう? 柔らかい?」

「や、柔らかいけど……その……」

「顔真っ赤だよ……」

 高志は顔を真っ赤にさせ、そのままフリーズする。 紗弥はそんな高志を見て小悪魔のような笑顔を向ける。

「もっと触って良いよ……」

「こ、ここは外だし……」

「外じゃなかったら、触ってくれる?」

 紗弥のその言葉に、高志は更に顔を赤く染める。
 高志は、修学旅行の前もそして今日の昼も、紗弥から体の関係を求められている事は知っていた。
 付き合い始めてもうすぐで半年、高志は悩んでいた。 そういう事は、もっとお互いを理解してからだと高志は考えており、まだ自分達には早い行為だと思っていたからだ。

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