甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第31話

 朋華に尋ねられ、赤西はため息交じりに答える。

「いやなんかよぉー、最近の俺とお前はなんだか良い感じらしいぞ?」

「は? 良い感じってどういう意味よ?」

「なんか、周りからは付き合ってるみたいな感じに見えるっぽいぞ?」

「は、はぁ!?」

 朋華は赤西の言葉に顔を赤らめ、持っていたスナック菓子の袋を床に落とす。

「おいおい、売り物落とすなよ」

 赤西はそんな朋華の落としたスナック菓子の袋を拾い、朋華に手渡す。
 
「な、ななな! なんで私とアンタが!」

「さぁな、お前が俺の腕を気にして、世話を焼くからそう見えるんじゃねーの……さて、じゃあ買ってくるか」

 赤西はそう言うと、カゴを持ってレジに向かう。
 朋華はそんな赤西の背中を見て、頬を赤く染めながら、少し頬を膨らませる。
 会計を済ませた二人はコンビニの外に出て、二人揃って旅館に戻り始める。

「はぁ……こんなとこ見られたらまた……」

「な、なによ……」

「いや、やっぱりお前、俺の腕なんか気にするなって……また誤解されるぞ」

「誤解って……何よ……」

 朋華は赤西の言葉に、立ち止まって尋ねる。
 赤西はそんな朋華と向き合う形で朋華に言う。

「俺とお前が付き合ってるかもっていう誤解だよ、そんな誤解されたら、俺もお前も恋人なんて出来なくなっちまうよ」

 あっけらかんと答える赤西に、朋華は少しイライラしていた。
 自分を鼻から恋愛対象として見ていない。
 そんな赤西に対して、自分だけがドキドキしていたと思うと、朋華はなんだか赤西に馬鹿にされている気分だった。

「何よ!! 私だってアンタなんかとカップルなんて大きなお世話よ!」

「ハハ、そうだよな。俺とお前は、こんな感じが一番だもんなぁ~」

 朋華の言葉に赤西は笑いながらそう答える。
 そんな赤西の顔を見て、朋華は更に怒りを覚える。
 
「お前はモテるから良いよなぁ~」

 その後も赤西は朋華に言葉を続ける。

「俺なんか、こんなんだからモテないし……はぁ~、修学旅行中に告白とかされねーかなぁ~」

 そんな話しを続ける赤西に、朋華は半ばやけくそ気味に言い返す。

「アンタなんてモテるわけ無いでしょ………馬鹿だし、スケベだし……」

「うるせぇよ! ま、でも言うとおりなんだがな……俺だって今の自分がモテるなんて思ってねーよ」

「そうよ……アンタを好きになる女なんて……」

「そうだよな……ろくな女じゃ……って、え……」

 赤西がそう言いかけた瞬間、朋華は赤西の襟を掴み、無理矢理自分の方を向かせると、そのまま赤西の唇に、自分の唇を重ねる。
 赤西は急な出来事に困惑する。
 朋華はそんな赤西の顔から唇を離し、涙目で赤西を見上げる。

「ろくな女じゃないわよ………どうせ私は」

 そう言うと、朋華は走ってその場を離れて行った。
 赤西はそんな朋華の背中をただ黙って見つめていた。
 そして、今さっき起こった出来事を自分の中で整理する。

「え……俺……キスされた?」

 赤西は自分の唇に手を当てて、どんどん顔をが赤くなるのを感じる。
 そして、朋華が言った言葉の意味を理解し、赤西は自分の顔がどんどん熱くなるのを感じる。
 そして、赤西は朋華の好きな相手に気がつく。

「俺かぁぁぁぁぁぁ!!」

 あまりの気恥ずかしさに、叫ばずには居られなかった赤西だった。





 赤西が叫んでいる頃、朋華は顔を真っ赤にして旅館まで走っていた。
 なんで自分があんなことをしてしまったのかと朋華は激しく後悔していた。
 ダッシュで旅館に到着し、朋華は旅館のトイレに掛け込む。
 
「はぁ……はぁ……」

 朋華は息を整えながら、鏡に写る自分の姿を見る。
 顔は真っ赤で、髪は走ったせいでぼさぼさ。
 おまけに赤西の発言にイライラして、ついあんな事をしてしまった。

「もぉ~………!!!」

 朋華は自分のやってしまった事を思い出し、恥ずかしさで死にたくなってしまった。

「これも全部、あいつが馬鹿なせいよ!!」

 誰も聞いていないというのに、朋華は思わず赤西のせいにしてしまう。
 しかし、やってやったという達成感も少しあった。
 これで少なくとも、赤西の考え方は変わる。
 自分の事を一人の女の子として見てくれると朋華考えていた。
 しかし、同時に明日からどんな顔で修学旅行を過ごせば良いかわからない。

「はぁ……本当に……馬鹿だよ……私……」

 一人トイレで自問自答を繰り返す朋華であった。





 赤西が買い出しに行った後、高志達は部屋でトランプをしていた。
 
「しかし、アレだな……うちのクラスは、基本的に男がアホだから、女子と仲が悪いのかねぇ~」

「優一、そういうお前も男だぞ?」

「あぁすまん、俺以外の男な」

「おいコラ、喧嘩売ってんのか?」

 そんな話しをしながら、繁村は優一の手札から一枚カードを抜き取る。
 繁村は「げっ」とた感じの表情でカードを見ると、自分の手札を混ぜて土井に手札を向ける。

「まぁ、それにしてもうちのクラスは結構酷いよな? 男女間での亀裂がさ」

「でも、男子は男子と、女子は女子とで仲が良いから、余計に男女間で亀裂が入ってるんだろうよ」

 土井はそう良いながら、繁村のカードを引き抜く。
 繁村は悔しそうな表情で土井を睨み、土井は高志に自分の手札を差し出す。

「でも、うちのクラスの女子はレベル高いよな? 西城しかり、宮岡しかり」

「紗弥が一番可愛いけどな」

「あぁ、はいはい」

 トランプをしながら、高志達はクラスの女子の話しで盛り上がっていた。
 そんな中、突然高志のスマホが音を出して震え始めた。

「ん? 誰だろう?」

 高志はスマホを取り出し、着信の相手を確認する。
 電話してきたのは紗弥だった。
 高志は直ぐさま電話に出て、部屋の外に移動する。

「もしもし? どうした?」

『あ……いや……その……なんか、声……聞きたくなって……』

「あ……そうだったのか……な、何してたんだ?」

『えっと……お菓子食べて、みんなでお喋りかな? 高志は?』

「お、俺も同じような感じだよ。俺たちはトランプしてたけど」

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