甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第14話




「だから何度も言ってるだろ!!」

「しつこいな! なんなんだよ!!」

 高志達は放課後残って、赤西の説得をしていた。
 流石に赤西も三人のしつこい説得にイライラを募らせていた。

「繁村! しつこい男は嫌われるんだぞ!!」

「だから! お前にだけは言われくないんだよ!」

「んだとぉ!」

「なんだよ!」

 なんだか半分、赤西と繁村の喧嘩になってしまっていた。
 互いに互いの悪口を言い、お互いに傷つけあっていた。

「はぁ……まったくこいつらは……」

「なんか、何を言っても無駄な気がしてきたよ……」

 呆れた様子で泉と高志がそんな事を呟いていると、高志は足下に何かあるのを見つけた。

「ん? なんだこれ?」

 高志が見つけたのはお守りだった。
 そこには交通安全と書かれており、結構古そうな物だった。

「おーい、これって誰のかわかるか?」

 高志はクラスに残っている生徒に尋ねる、しかし持ち主は現れなかった。

「おい、これ誰のか知ってるか?」

「え? なんだこの古いお守りは?」

「あ………」

 高志は赤西と繁村に尋ねると、二人は喧嘩をやめてお守りを見る。
 赤西は見覚えがあるらしく、高志が持っているお守りを凝視する。

「これ……西城のだ」

「なんでわかるんだよ?」

「いや……昔、ちょっとな……」

「なら、西城の机にでも入れておけば良いか」

「いや、ダメだ!」

「ど、どうした? 急に大声で……」

「あ……いや、なんでもない……これは俺が届けるよ」

「え? あ、おい! 赤西!!」

 赤西はそう言うと、高志の手からお守りを奪い取って、そのまま教室から出て行ってしまった。
 
「たく……急にどうしたんだ?」

「さぁな、それよりも今日は俺たちも帰るか……そろそろ紗弥も委員会終わる頃だし」

「それもそうだな……しかし、あの慌てよう……なんか怪しいなぁ……」

「繁村君は疑い過ぎだよ。それじゃあ僕はそろそろ先に帰るね」

「おう、じゃあな泉」

「また明日」

 高志達も赤西が居なくなり、学校に残っている意味が無くなり、それぞれが鞄を持って帰ろうとする。





 赤西はお守りをを持って、商店街を歩いていた。
 
「……あいつも……いまだに持ってたのか……」

 高志はお守りを見ながらそう呟く。
 赤西はこのお守りの事を知っていた。
 それは赤西と朋香が小学三年生の時の事だった。

「あの頃はまだ……仲良かったよなぁ……」

 赤西はふと、昔の事を思い出す。
 それは今から八年前の事……。






「まってよぉ~けんくーん!」

「なんだよ、ともかはおそいなぁ~」

「だって……ぐす……けんくんが早いんだもん……」

「あぁ! わかったから泣くなよ!」

 夕方の公園で二人の児童が遊んでいる。
 それは小学三年生の頃の赤西と朋香。
 二人はこの頃までは仲が良く、よく二人で遊んでいた。

「ね、ねぇ……け、けんすけくんはずっと私と……な、なかよしでいてくれる?」

「うーん……ヤダ!」

「え……うっ……な、なんで?」

 思いも掛けない赤西の台詞に朋香は涙を堪えながら尋ねる。
 
「泣き虫とはいやだ! だから泣き虫なおせ! そしたらずっと仲良しでいる!」

「ほ、本当に!? や、やくそくだよ!」

「おう! まかせとけ!」

 二人はこの頃は凄く仲が良く、学校でも休みの日でもずっと一緒だった。
 しかし、そんなある日の事……。

「はい! けんすけくんこれ」

「なんだ? これ?」

「お守りだよ。これがあれば怪我もしないし、不幸にもならないって!」

「ふーん、ありがと!」

 朋香が渡しのは、お揃いのお守りだった。
 交通安全と書かれたそのお守りを赤西も朋香も大切に持っていた。
 そのせいもあってか、赤西も朋香も怪我や病気にかからず、元気に育っていった。
 しかし、お守りでも防げない事が二人の身に起きてしまった。
 それはとある日の放課後の事だった。
 朋香はいつものように赤西と家に帰ろうと、赤西を探していた。
 
「なぁ、けんすけってさー西城の事好きなの?」

「は、はぁ?」

「いっつも一緒だよなぁ~、ひゅーひゅー!」

「ば、馬鹿! 好きなんかじゃねーよ! 泣き虫だし、足遅いし」

 廊下の曲がり角で朋香はそんな赤西達の話しを聞いてしまった。
 朋香は赤西本人からのその言葉に相当なショックを受けた。
 それからだった、二人はあまり一緒に遊ばなくなってしまった。
 まだ子供だった朋香は、赤西のそんな言葉を聞いて、振られてしまったと思い、赤西と仲良くする事が出来なくなってしまった。

「う……う……グス……」

 一人、工場の跡地で泣いていた朋香。
 しかし、朋香は決して弱く無かった。
 自分を振った事をいつか赤西に後悔させてやろうと、容姿に気を遣い、性格も大人しい性格から活発な性格になった。

「絶対……絶対に後悔させてやる!!」

 そんな事を考えながら、朋香は高校でも赤西を後悔させるためだけに、同じ高校を選んだ。 しかし、実際は後悔させたいからという理由はただの建前だった。
 本当の朋香はまだ諦め切れないでいた。





「はぁ……あの馬鹿……まだこれ持ってたのかよ……俺はてっきり捨てちまったのかと思ったが……」

 赤西はお守りを見ながら昔を思い出していた。

「昔か……戻れるなら……戻りてーな……」

 赤西は昔のとある出来事を思い出していた。
 それは、昔聞いた女子の話。
 小学生の頃、赤西と朋香の仲が段々悪くなり始めていた頃だった。
 赤西は朋香を含めた女子数名のコソコソ話しを聞いてしまった。

『ねぇねぇ、ともかちゃんってけんすけ君が好きなの?』

『え………ち、違うよ……むしろ……大っ嫌いだもん………』

 好きだった女の子からのこの言葉は赤西にとっては大ダメージだった。
 
「なんで……こうなっちまったんだろ……」

 赤西はなんでこうなってしまったのか、ずっとわからずにいた。
 大人しくかった朋香は、活発で活動的になり、ギャルっぽい格好までするようになってしまった。

「はぁ……人生何があるかわからないって言うけど……本当だな」

 赤西はそう言うとポケットにお守りをしまい、道を歩き始める。
 そんな赤西の耳に通行人の会話が耳に入ってきた。

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