甘え上手な彼女3 秋編

Joker0808

第9話

「言っておくがあいつは同性愛者だぞ?」

「え!?」

「まぁ、そうは言っても既に失恋している訳だがな……」

「どう言うこと?」

「御門は宮岡が好きだったんだよ、でも高志が現れて、付き合い始めてな……今はどうかわからんが……」

「そ、そうなんだ……」

 泉は優一の話しを聞きながら、紗弥と話しをする由美華を見る。

「まぁ、そういう感情を抱くのはかってだからな……俺は何も言わねーよ」

「ぼ、僕は別に……」

「隠すなって。まぁ、確かにあいつはそれを覗けば普通に可愛い女子だからな……」

「いや、紗弥の方が可愛い」

「はいはい」

 高志の言葉に優一はため息を漏らしながら答え、泉はそんな高志に苦笑いする。
 そんな高志達の様子が気になったのか、紗弥と由美華は高志達の元にやってくる。

「何話してるの?」

「赤西のあの噂だよ」

「赤西君がラブレター貰ったっていう?」

「そうそう」

 高志が紗弥と由美華に尋ねると、紗弥は頬を赤く染めて口を開く。
 
「わ、私も高志に渡したよね?」

「そ、そう言えばそうだな……机の中に入ってたのを覚えてるよ……」

「あ、あのとき高志はどう思った?」

「え……いや、最初は疑ったけど……でもちゃんと紗弥が来てくれたから……嬉しかったよ」

「高志……」

「紗弥……」

「おい、誰かこのバカップルをどっかに捨ててこい」

 高志と紗弥のイチャツキっぷりにが気にくわなかった優一が、額に血管を浮かべながらそういう。
 
「うーん、私は案外本物かもって線を推すかな?」

 そう言ったのは由美華だった、
 そんな由美華を泉はぼーっと眺め、優一はそんな泉を見てまたため息を吐く。

「たく……なんだか面倒なことになりそうだな……」

 それぞれの思いが交差する中、時間はどんどん進み、ついに放課後になった。
 赤西はホームルームが終わると、直ぐに鞄を持って屋上に急いだ。
 教室の男達はそんな赤西の後を追い、隠れて様子を見守った。

「ネタばらし後にみんなで笑ってやろうぜ」

「そうだな、可愛そうだが同情してやるのは違うよな!」

「あぁ、大笑いしてその後皆でラーメンでも……」

 そんな事を話しているクラスの男子達の目の前に、ついに手紙の差し出し人が姿を現した。 高志達の学校の屋上の入り口は東棟と西棟の二カ所に入り口がある。
 クラスの男子達が覗いているのは、東側で差出人が現れたのは西側だった。
 姿を現したのは、可愛らしい女の子でクラスの男子は全員言葉を失った。

「ごめんね、急に呼び出して」

「う、ううん! 全然暇だから!」

 緊張した様子の赤西。

「嘘つけ、おまえ部活サボったろ」

 そんな赤西の姿を見ながら、物陰から呟く繁村。
 まさかの本物のラブレター説が強くなり、クラスの男子は開いた口が塞がらない様子だった。
 そんな男子達を他所に女の子は言葉を続ける。

「何となく何が言いたいかってわかるよね?」

「えっと……な、何となくだけど……」

「うん、じゃあ私と付き合って」

「ま、マジで………」

「うん、マジ」

 軽い感じにそういう女の子に、赤西は思わず聞き返す。
 そして……。

「よ、よろしくお願いします!!」

「うん、よろしく~」

 赤西は顔を赤くしながら女の子の告白に返事をする。
 その瞬間、クラスの男達は全員真っ白に燃え尽きた。

「ま、まじか……」

「あの赤西に……あんな……あんな……」

「や、ヤバイなぁ……俺幻聴が聞こえる……」

「お、俺もだ……もしかして疲れてるのかな?」

 クラスの男達はまさかの結末にその場に崩れ落ちる。
 一方の赤西はあまりの急展開に、内心ついて行けていなかった。
 目の前にいるのは、他のクラスの同級生の女の子。
 薄らと化粧をしており、髪型はロングヘアーの女の子。
 可愛らしいその容姿に、赤西の目は奪われた。

「あ、そう言えば名乗ってなかったね、私は神谷美癒(かみや みゆ)だよ。クラスは一組だよ」

「そ、そうなんだ……なんで俺の事を?」

「うーん……なんか良いなぁって思って……それだけじゃダメ?」

「いえ、ダメじゃないです!!」

「そっか、じゃあ早速一緒に帰ろ!」

「は、はい!」

 赤西は彼女が出来てすっかり浮かれていた。
 そんな様子を繁村はずっと見ていた。
 そして違和感を抱く。

「あいつ………いや……」

 他のクラスの男子達が真っ白になっている中、繁村だけは何かが引っかかった。
 そして、そんな様子を屋上の一個したの教室で盗み聞きをしている女子生徒が一人いた。

「あれ? 何やってるの朋香?」

「ん……ちょっとね……」

「どうしたの? なんか元気無い?」

「そんな事無いわよ。カラオケでも行かない? なんか歌いたくなって来ちゃった」

「いいね! じゃあ、皆も誘って行こっか! 私割引券持ってるし!」

 下の教室で話し声を聞いていた女子生徒、それは朋香だった。





 翌日の朝。

「うーし、朝のホームルームを……うわ! どうしたうちの男共は……」

「何言ってるんですか先生」

「いつも通り馬鹿ですよ」

「いや、なんかほぼ全員真っ白になってるけど……」

 赤西のラブレターが本物だった事を受け、クラスの大多数の男達は真っ白に燃え尽きていた。
 
「先生ー早く出欠取って下さいよー」

「あ、あぁ……相田(あいだ)」

「………はい」

「ん~……川崎(かわさき)」

「あひゃ……あひゃひゃひゃひゃ!!」

「…………貝塚(かいづか)」

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね………」

「………もう俺怖いんだが……」

 大石はこの日、自分のクラスに始めて恐怖を抱いた。
 出欠を取り終え、一通りの連絡事項を言い終えると、大石は疲れた様子で教室を後にしていった。

「随分昨日の事がみんな堪えてるみたいだな……」

「まぁ、無理もないだろ? あの赤西に彼女だぞ?」

「それは言い過ぎなんじゃ……」

 高志と優一は至っていつも通りだった。
 別に赤西に彼女が出来ようがなかろうが、高志も優一も気にしない。
 しかし、他のクラスの男子達(童貞彼女無し)にはかなり堪えていた。
 仲間と思っていた人間が、突然遠くに行ってしまい、クラスの男達は置いてけぼりをくらった気分だった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品