サクセス・ヒーロー

宇宙 のごみ

4項 地獄の特訓 -序





 今日は特訓初日だ。
 昨日はあの後パーティメンバーを紹介された後スケジュールを教えてもらった。
 重騎士のガルドさんは獣人で豪快な見た目のライオンに似た兄ちゃんだった。
 そして剣士だと思っていたルークさんは魔法剣士という役割で元王宮騎士ということだ。
 改めて見てみるとそんな雰囲気をまとっているのが伺えた。


 ウィンクルムの中で鍛え方はかなり考えていたらしく、午前中はミリィさん、フィンさんに。午後は重騎士のガルドさんと剣士のルークさんが鍛えてくれることになった。


 そしてこれが渡されたスケジュールだ。


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 5:00 ~  5:30 起床/朝食 
 6:00 ~  9:00 魔法訓練
 9:00 ~ 12:00 模擬戦(魔法戦)
12:00 ~ 13:00 昼食
13:00 ~ 17:00 特訓
17:00 ~ 19:00 模擬戦(近接戦)
19:00 ~ 22:00 依頼クエスト
22:30 ~ 23:00 夕食
23:00 ~ 23:30 精神統一修行
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 正直、これを渡されたときは戦慄したね。日本じゃありえない環境だ。
 ただウィンクルムの皆さんが付き合ってくれるわけだし、もっと過酷な状況に陥ることもあるだろう、やらないわけにはいかない。




「今日から1年間、宜しくお願いいたします」
 今日は1日目ということでパーティの皆さんが見に来てくれている。
 まずは能力の把握ということだ。


「……リアム、あなたの魔法がみたい。ので、私とたたかって、ほしい」


「わかりました」
 見た目は女の子だけど仮にもBランクのパーティのメンバーだ。
 遠慮はするなという意志が伝わってくる。




「では、行きます」


 これは魔法戦だ、息を整えて精神を集中する。


「……きて」


「――――"ファイアボール"」
 俺は魔力操作に関してはかなり自信がある。
 俺を育ててくれたネルはエルフだ。エルフは精密な魔力操作にたける種族。もちろん俺も精密な魔力操作に関してはずっと教えてもらっていた。
 自分を中心に30個はくだらない大量の火球が出現する。


ミリィはフードを被っていて表情は見えないが、他のウィンクルムの面々は驚きの表情をしている。


「――――行け」
 そういうと火球が射出され爆音とともに射出。
 ミリィへ向かい、熱と煙をまき散らす。




「……いいね、リアム」
 そう言ってミリィの周りには水が渦巻く。
 更に俺のファイヤーボールがすべて打ち消されている。


「ただのウォーターバリアで……?」
 ウォーターバリアは防御系魔法の中でも初級、あの数のファイヤーボールは防ぎきれないはず……


 ミリィは口元に笑みを浮かべるとお返しとばかりに魔法を放つ
「――――"アイシクルゾーン"」
 今度はミリィを中心に魔法陣が広がる。
 なんだあの魔法は、見たことがない。


「――――"ウォーターボール"」


 ミリィの周りには俺の出した火球の倍どころじゃない数の水球が生成されていく。
 更にそれらは形を変え先の尖った氷柱に変化する。


 なんだ、あれは……やばい……。
 一目見れば分かる、あんなの当たったら死ぬ……。
 最初の魔法は凍結属性を付与するもの、そこでアイスボールを使って凍る前に形状変化させる。
 なんて魔法技術だ!






「……がんばって」


 ミリィが言うと同時に次々と氷柱が飛んでくる。


 俺は全身に魔力強化を発動し疾走する。
 クソっ!マジでか!


 それでも、回避方向に妨害をしてこないだけ、手を抜いてくれているのだろう。
 本来であれば地面から氷柱を出したり追尾させたりも出来る筈だ。


 最初に生成された"ウォーターボール"もとい、"アイスボール"の半数は避けただろうか、しかしこれではキリがないし俺のスタミナが持たない。
 攻撃も身体へ徐々に掠り始めてきた。


「……それじゃ、勝てない。どうする」
 ミリィは試すようにその挑戦的な言葉を投げかける。












――――仕方ない。


 今から使うの上級魔法、爆炎の津波を起こす魔法だ。
 上級攻撃魔法の威力の中でも火属性と言えば最高峰に近い殲滅力を持つ魔法。
 ネル以外の前で使うのは始めてのこと。






 俺は動きを止めて体内の魔力を掻き集める。
 魔力強化を解く、そしてその間、氷柱をギリギリで回避する。


 危険を冒さなけば……勝てない。




「行きます」




 一瞬、時が止まったような錯覚を覚える。
 自分の魔力を一気に使うときはこう、全てが自分より遅れて進んでいるようなそんな世界になる。


「―――顕現せよ、爆炎。   "バーストウェーブ"  」
 刹那、自分を中心に炎の濁流がすべてを飲むこむ。


 煙は出ない。それすら呑み込む炎の津波だ










「ハァ、ハァ」
 荒い息遣いは自分のもの。
 俺はすでに片膝をついて満身創痍の状態、魔力欠乏の症状も出てきている。




「……まさか上級魔法を使うとは。驚いた」
 そういうミリィはいつもと変わらぬ表情で歩いてくる。


「マジですか……」
 無傷で切り抜けられると自身を無くすな。


「……実力はわかった。ギルドならDランクパーティにははいれると、思う」
 Dランク……下から3つ目の位置だ。
 正直、もっと上に行けると考えていた。この結果はかなりショックだ。


 納得いかない表情をしている様子を見たのかミリィはこう続ける。
「……上級魔法。制御がうまくできてない。あれだと、威力半減」


――――完敗だ。
 この少女のような魔法使いに俺は負けたのだ。


「そうですか、はは。ありがとう……ございます」




もう、限界だ……
視界も霞む、あぁ、最近このパターン多いな。
少しそんなことを考えて、倒れた。





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