ダンジョンコアになった俺は最強のダンジョンを目指す!
新階層、そして強者
地鳴りと、振動。
少しの浮遊感ののち、数分でそれらが収まり、このダンジョンに新階層が出来たことを知らせる。
新たな階層の完成に合わせて"ダンジョンモニター"(500DP)を増設すると、映し出された画面には新階層 "古代遺跡" が俯瞰で映し出されている。
余りにも広いその階層に思わず驚嘆する。
「でかいな」
この状況を初めて見たコボルも思わず言葉を零してしまう。
「これは、大きいね……」
「ねぇ! 見に行こうよ!」
この全体の大きさを見たルナは早く新しい階層へ行きたいようだ。
俺も皆も気持ちは同じようで一様に頷くと、階段まで駆け出す。
そういえば、今までは階段を昇っていくと1階層のボス階層へ繋がっていた訳だが、今後はどうなるのだろうか。
外に出るために古代遺跡を通って階段を探すなんてやってられないぞ。
そんなことを考えながら足早に階段を昇っていく。
そこには今までは両開きで木製だったはずの扉が無くなっていて、代わりに不思議な紋様が彫られた黄土色の石扉があった。
扉というか、石板だろうか。
ルナはその扉の紋様へ手を触れる。
すると、魔力が中心に流し込まれたかのように広がり、紋様へ色を付け、何かを描いていく。
やがて、模様の全てに魔力が満たされると、歯車の回転するような振動と石擦れの音が響き、破片をパラパラと落としながら扉が上へとせり上がる。
「すごい……」
扉が開いた瞬間、むせ返りそうな砂と埃の匂いとともに目に入るのは石の壁と瓦礫だ。
それでもまだ、ギミックは動いているようで、所々小さい穴の開いている壁の裏では石製の歯車が回っているのがわかる。
この技術と使われている素材の不一致による、違和感。 これが、新階層 "古代遺跡"
各々が、辺りを見回す。
「……ねぇ、ゴーレム。召喚しよ?」
わかる、わかるけど!!
「うーん……」
ミラの気持ちは痛いほどわかる。
こんなところにゴーレムいたらかっけえよ!!
「……だめ?」
俺の反応を見ていけると思ったのか、
上目遣いになって少女としての可愛さを最大限まで引き上げた「お願い」に心を揺さぶられる。
うっ、カワイイ。
「また今度ね?」
その様子を見ていたルナがハァとため息を少しつくと、ミラのお願いをやんわりと却下する。
「……わかった」
ミラもルナの言うことには結構従順で、悪くない関係のように見える。
そんな感じで色々と会話を続けながら2階層を探索していく。
どうやら1層へは2層を突っ切るか、各階層のボス部屋に移動できるマジックアイテム"ダンジョンリング"(500DP)を作成するしかないらしい。
「取りあえず、移動の為だし3つ作るね」
ルナは移動手段として作ろうという判断のようだ。
罠とかには引っかかることは無いが、1層の階段までの距離が遠いので確かに作成は必須か。
ふいに、感じる。
―――― 死
始めて死んだ時と同じか、それ以上。
……神か? 理不尽の塊のような存在。そして、それは無秩序で純粋だ。
あのドラゴンよりも格上であることは確実だ。
最近、死を意識することが増えたので危険を察知する能力の精度が上がったようだが、わかったところで逃げることなど出来ない。
「ルナ、コボル、ヤバいのが来るぞ」
俺の能力は脅威の察知なので、予測に距離は関係ない。
ルナとコボルはまだ気付いていないようだが、俺の様子を見て察する。
「ミラ、大広間へ戻ってくれ。エンジェルはミラの護衛だ」
エンジェルもこれを理解しているのか、無言で浮かび上がって呆けていたミラを連れ大広間へ戻っていく。
この脅威は明らかにこのダンジョンに向けられている。
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[緊急]
・一定値以上の力を持つ侵入者が現れました。
==========================================
「なっ!?」
「っ!?」
突然だ。
今度は力の差を明確に感じることの出来る!! ダンジョン内へ侵入してきたんだ。
ルナとコボルも既に気付いているのか、渋い顔をしている。
自分の意志とは無関係に目の前に描かれていく文字だけで、これだけで今までにない事態ということがわかる。
これは、ピンチだ。
とりあえず、このピンチを覆さなくてはならない、相手の持つ力は異常だ。
おそらく、ただ攻略しにきたわけではないだろう。
何か用があると考えるのが普通だ。
俺か……
「……指輪、貸して」
「俺も行くぜ」
「私も行くよ」
……心強い仲間が出来たもんだ。
「あぁ、頼む」
◇???
「なんで俺達が初心者のダンジョンに派遣されんだ?」
私の隣にいるこの男。
先ほどから口を開けばこんな愚痴をずっと零している。
「ベル様がそう仰ったのだから仕方がないだろう」
これは自分にも言い聞かせるように言っている。
正直私も納得しきれていない部分がある。しかし、ベル様は私なんぞより遥か先を考えておられる方だ。それ以上に真意を読み取ることの出来ない自分が情けない。
「でもよ。今から行くダンジョン、出来たばかりだぞ?」
そのダンジョンは出来て2か月足らずとのことだった。
何故こんな出来たばかりのダンジョンに私達を派遣したのだろうか。
考えれば考えるほど落ち込んでくるので、浮かび上がってくる疑問をしまい込む。
そうだ、私は私に与えられた仕事を完遂することを考え無くてはならない。
それに私が止めなければこの男は同調しては何時までたっても愚痴をつづけるだろう。
「そうだな、だが…「六柱にまでなったのによぉ」
「…………。」
「もっと楽しい事したかったなぁ」
「……うるさいぞ。さっさとやれ」
「はぁ、分かったよ。ルキフグス様」
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