ダンジョンコアになった俺は最強のダンジョンを目指す!
ダンジョン、開放
◇Side 白凪裕也
あれから10日が経過した。
今日はダンジョンの開放日、あと数十分で入口が出来るようだ。
そういえば俺はあの後、3日間俺は寝込んでいたらしい。
俺はダンジョンコアだから睡眠という行為は不要だと思っていたんだが、あまりにダメージがでか過ぎたのか意識が無くなっていたようだ。
しかし完全に元の世界だったら死んでいたな。
その間、俺やルナを介抱してくれてたのはコボルだ。
本当に良い仲間に恵まれたよ。
それはそうと、目覚めた時に魔人族を見ることになるとは思わなかった。
「Sランクモンスターか……」
思わず呟く。
この数値は人間基準でのモンスターの強さを表す指標が上から3つ目の水準にあることを意味する。
しかしSSS,SSランクに位置するようなモンスターは実質的に天災に分類されるような古代龍や邪神、強大な力を持つダンジョンを作り上げたダンジョンマスター等、規格外のやつらだ。
コボルは最高ランクと言って良い。
人間の能力の基本値なんてわからんがおそらくとても強い種族になったことがわかる。
正直、ここまでになるとは思わなかった。
ダンジョンに一定の戦力が確保できた。なんてめでたいことがあったにも拘らず、最近まではダンジョン内の空気が多少暗かった。
まあ、仲間が一人死んだんだ。皆が落ち着くまでは結構掛かった。
俺達は欠かさず、墓に花を添えている。
遺体はそこにはないが、形だけでも残しとかないと。
「開放か……大丈夫かなぁ」
「そこらの冒険者くらいなら俺に任せろよ」
白銀の髪に耳と尻尾、真っ赤な灼眼。
そしてスッキリとした顔立ち、鋭い眼光は狼を思わせるこいつはコボルだ。
……なんでこいつこんなイケメンになってんだ。
「はいはい、頼りにしてるよ」
「私もかなり特訓したからね!」
ルナもあれから毎日、苛烈な特訓をしている。
Cランクのモンスターに、壊滅的な打撃を与えられた俺たちは力不足を実感した。
Sランクになったコボルを筆頭にした特訓だ。
みんな、頼もしいな。
DPが0だったのであれからは人数的な戦力強化が出来ていない。
ただそれを補って、通常以上の力をつけたダンジョンだとい考えている。
作戦で勝っていくつもりだったが、力技になりそうだ。
ダンジョン内の成長スライム達が"ボイドスライム"というFランクのモンスターに進化したくらいだろう。
食料に関しては森の中に生えてる木の実とかで凌いだが、もうそんな余裕もなくなってきた頃合いだった。 所詮はダンジョン内だからな。
さて、そろそろ開放だ。
 ――――定刻、目の前に文字が現れる。
==========================================
――――
準備期間が終了しました、ダンジョンを開放します。
――――
ダンジョン レベルアップ LV1⇒LV2
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……遂にダンジョンが開放される。
長いようで短かった、でもここからが本番だ。
このダンジョンを、最強にする!
――――ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ダンジョンの震えとともに何かが動く音がする。
「ルナ、森林ステージを見に行こう!」
「うん!」
「コボルはここで待っててくれ」
「わかってんよ」
そう言って森林へ向かう。
コボルを置いていく理由、それはおそらくここにダンジョンが出来ていることが人間にばれているだろうという予想からだ。
 ダンジョンは森の中でも開けた場所に作ってしまったハズだからな。
 とりあえず魔王であるルナは魔族なのでダンジョンマスターだと予測が付くだろう。
初期段階のダンジョンだ、戦力を誤解させる。
「何も変わってないね。私、ちょっとカッコイイ門でも出来るのかと思っちゃってた」
「ここは階層の奥の方だからなあ。そんな大きい入口で大群に攻め入られても困るし」
そういって森の端まで向かう。
歩くと結構でかいのでそれなりに時間がかかる。
それでも暫く歩いて、ゴブリンの森とウルフのいる森を抜けるとそこには見たこのない石造りのゲートが鎮座していた。
そのゲートはまるで時空の歪みのような膜で包まれている。
「入り口が出来たからといって何かあるわけでもないのか」
「私……ちょっと外覗いてみたいかも」
なんか言い出した。
最近のルナは茶目っ気があるなあ。
開放されたらしばらく様子見で外に出ないって決めてたはずだけど……。
「行こう!」
うん、正直俺も外出たかった。
そういって2人で扉へ足を踏み入れる。
景色が歪む。
「氷晶龍が居なくなってるといいねー」
外へ移動する直前にルナが言う。
……やっべえ、そのあたり考えてなかった。
まだあいつが鎮座してたらどうしよう。
「ま、まあとりあえずチラッと見るだけなら平気でしょ!」
そうして、歪んだ景色が正しさを取り戻す。
そこはあの時、転生初日に見た森だった。
なぜか帰ってきたぞ!なんて言いたくなる。
そしてドラゴンは居なくなっていた。
「キュイキュイ!!」
「ん?」
なんか変なのが足元に引っ付いてる。なんだこれ、純白の羽と白銀のゼリーがプルプルくっついてくる。羽生えてるのにめっちゃ低空飛行してるじゃねーか!スライムか?
「ルナ、なんか変なの居るんだけど」
「あー、ユーヤ!その子、綺麗な銀色!エンジェルスライムだよ!いいなー。」
すっかりスライムに染まりきってるルナは興奮したように目を輝かせている。
「こいつ野生のモンスターだよな。倒していいの?」
「な、なにいってるの!?どう考えてもユーヤに懐いてるのに!絶対だめ!」
えぇぇ……そうなの?
すごい信じられないやつを見るような目で見られたんだが。
「わ、わかったよ」
「キュイ!キュイ!」
プルプルの体を足に擦り付けてキュイキュイ鳴いている。
確かに敵って感じはしないけど……
とりあえずこいつ抱えてダンジョン内へ戻るか?
「とりあえず戻ろう、ルナ。」
「えー、私もエンジェルほしい!」
「わがまま言わない」
流石に長くここに留まるのは危険だろう。
ルナもわかってはいるのか渋々従ってくれる。
「仕方ないなぁ」
そういってエンジェルスライムを抱きかかえてルナに渡すと満足そうに頭の上に乗せる。
何の躊躇いもモンスターを頭に……
ま、まあルナも満足してるし。エンジェルスライム……長いな。エンジェルも満更でもないみたいだし別に良いか。
こうして偵察を終えた俺達はダンジョン内へと戻っていく。
◇
「お頭、あのダンジョンのマスターと部下らしきやつを"鑑定"しましたぜ、2人とも低レベルだったんで元 Bランク冒険者のお頭なら余裕ですよ!」
「良くやった。ここは俺達で攻略して宝を手に入れるとでもしようじゃねえか」
「へい、お頭!」
2人が消えた後の森ではそんな不穏な会話が続けられていた。
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