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ロリドワーフ・ハイドワーク〜TS転生して地世界生活〜

うほごり

第6話「熔鉱炉の略奪者」

 ボクが転生して3日経過した。
 最初の1日は本当に色々あった。マレラ達と出会い、初代指導者の遺産であるティアラを被ったらその指導者と出会ったり、お風呂でマレラ達と百合百合したり。
 2日目と3日目は村で親交を深めつつ、情報収集に徹した。ボクはドワーフの事を何も知らない。だから彼らの暮らしがどんなレベルなのかを知る必要があったからだ。その為にも宝物庫の本を歴史書を中心に読み漁った。


 そして4日目の今日。
 ボクはマレラとゴドルと机を囲んである提案をしていた。


「熔鉱炉の奪還……ですか」
「うん。ドワーフの問題の中で特に大きな問題が『熔鉱炉』と『採掘場』が使えない事だと思うんだ。この2つが使えるようにならないと魔鋼石で『依代』が作れない。『熔鉱炉』と『採掘場』が使えなくなっておよそ100年が経過して、ドワーフの技術力は昔の見る影もないんだよね」


 魔鋼石から作られる『依代』には使用期限がある。作ってからある程度時間が経過するか、もしくは使い過ぎると壊れて使えなくなる。その場合また熔鉱炉で溶かして作り直す必要が出てくるのだ。使用期限の長さはモノによって違い、宝物庫の扉の様に千年以上のモノもあれば、使い切りのような魔法道具もあるらしい。


 熔鉱炉と採掘場が使えなくなって100年。ほぼ全ての『依代』が期限切れを迎えて使えなくなってしまった。そのためドワーフ達は『依代』に頼らずに生活しなくてはならなくなった。
 昔の資料を読む限り、この国には元々空調機なんてものも存在していたらしい。魔法の力で動くクーラーとか超ファンタジー。


「しかしヒカル殿。熔鉱炉にも採掘場にも邪鬼が巣食っていますぞ。どうするおつもりで」
「まずボクはその邪鬼を見たことがない。だから今日熔鉱炉に行ってみようと思うんだ」


 百聞は一見にしかず。目で実際に見てみることでわかることもあるはずだ。


「なるほど。では私がお伴しますぞ。熔鉱炉は少し遠いので担いで差し上げますぞ」
「お、お手柔らかに」


 酔い止め売ってないかな。きっとたぶん絶対吐くよ。もうげろげろと。


「マレラはどうする?」
「今日は足手纏いにしかならないのでここで待機します」
「そっかー、ざんねん」


 筋肉ゴリラと2人っきりとかなんかむさ苦しいな。やっぱり同性がいた方が何かと楽………………同性!? 今普通に同性って出てきたぞ。心が女に染まっているのか。いや〜。
 心の中で悶えていると、マレラがこっちをジッと見ていることに気づいた。もしかして顔に出てた?


「……救世主様は……その、私と一緒に……」
「ん、マレラ何?」
「いえ、なんでもありません。独り言です」


 なんかそっぽを向くマレラ。何、反抗期? 声も小さくてよく聞こえなかった。もしかして救世主であるボクがだらしなくて信者やめちゃったの?


「ではではヒカル殿。早速行きましょうぞ。……『熔鉱炉』の方でよろしいのですかな?」
「うん、お願い。『熔鉱炉』が使える様になれば既存の魔鋼石を溶かして『依代』に作り直せるからね。『採掘場』より優先度は高いよ」


 いざとなればあの指導者の石像も溶かしてやる。この前確認したらあの石像も魔鋼石で出来ていたのだ。特にギミックとかはなかったけど。


「じゃあ、マレラ。行ってくるね」
「はい、お気をつけて救世主様」


 いつものように笑顔で見送ってくれる。さっきのは一体なんだったのだろう。




   ■■■




「うげぇええあああ……ろろろ」


 絶対に女の子が出しては行けない音を口から出していた。朝ごはん抜いてて良かった。吐くものが無いから胃液しかでない。


「ヒカル殿、大丈夫ですか。まだ道のりは半分以上ありますぞ。休憩終わったらすぐ出発しますぞ」


 まだ半分来てなかったの!?
 これ以上吐くと胃が痙攣するよ!
 ノーモアゲロゲーロ。


「おっ、ヒカル殿。こちらに来て見てください」


 ゴドルが指差す方を見る。通路が途中から消えていて、断崖絶壁がそこにはあった。足を踏み外すと命はないだろう。


「この崖がどうしたの?」
「今から降りますぞ」
「えっなんだって?」
「今から降りますぞ」


 イマカラオリマスゾ。
 知らない言葉かな。まさかこの崖の下に行く、という意味ではないよね。……いや無理がある。


「ど、どうして?」
「熔鉱炉は地下深くの溶岩を利用しておりますぞ。後は言わずとも察していただけると」


 もう一度崖から顔を出して下を覗き見る。崖の下は見えない。暗闇の向こうだ。適当な石ころを投げてみる。…………地面に落ちた音は聞こえない。


「ヒカル殿、別にそのまま落ちるわけではないですぞ」
「……どうやって降りるの?」
「岩肌を掴んで、よじ降りるのですぞ。もちろんヒカル殿は責任を持って私が抱えますので安心してください」


 ロッククライミング!!
 このゴリラなら軽々とやりのけてしまうイメージが想像できる。
 問題はボクが抱えられるという事だ。つまりゴドルは片腕だけ使って降りるのだ。


「絶対に酔うでしょ……これ」
「さぁ、行きますぞ!」


 あぁ……いい笑顔。スマイルマッチョ。酔いの明星だね。ガッシリと抱えられ、ゴドルはロープなし懸垂下降を始める。ホッホッホ、っとリズミカルに軽快に。
 もはや怖いとか言う以前に、あまりの降下速度に顔が仏になる。怖すぎるジェットコースターに乗ってしまい、怖さのあまりに声すら出せない……あんな感じだ。


「………………っ!」
「おっと、少し滑りましたぞ。驚かせてすいません」


 あぁ……心臓が何個あっても足りない。意識失った方が楽なんじゃないかと思って来た。
 まぁ、そんな簡単に気絶できるわけもなく何時間にも思える苦痛の時間が過ぎて行ったのだった。


 地獄の垂直下降を終え、ボクたちは目的の場所まであと少しの場所まで来ていた。ゴドルが先ほど言っていたように、ここ辺りは地殻の溶岩帯が近いのか、額から自然と汗が流れ落ちるほどに熱い。
 筋肉ダルマのゴドルは絶対ボクより熱く感じているはずなのにケロッとしている。


「ヒカル殿。ここから先は本当に危険ですぞ。彼奴は熔鉱炉付近を根城にしていますが、移動している場合も多く急に現れる場合もあるので注意して進みますぞ」
「おっけー」


 ピチャリと汗が滴る音がする。
 そんな小さな音にも敏感になっている。
 ゴドルが先行し、その後をボクが続く。足音を出さず、息を潜め、可能な限り神経を張り詰める。
 シューシューと岩の隙間から高温のガスが漏れ出る音がする。そんな音に一々反応してしまいストレスが溜まる。それでも慎重に進まなければならない。いつもおちゃらけて見えるゴドルの顔が今は真剣そのもの。
 目に入る汗を拭おうとしたその瞬間。


「――――――――」


 地面に響くような唸り声が洞窟内を木霊し、背筋が粟立つ。前世のゲームでこんな鳴き声を聞いたことがある。狩人になってモンスターを狩るあの有名なゲーム。
 ゴクリ、と唾を飲み込む。息が自然と荒れ、ドクンドクンと心臓がうるさく鼓動する。


「ゴドル、今の鳴き声……」
「彼奴ですな。近いですぞ……」


 ゴドルに引かれて、岩陰に潜む。ズーン、ズーン、と小さかった足音が少しずつ大きくなっていく。
 シュルル……っと、生理的に嫌悪感を覚える音が聞こえる。岩陰から覗き見る。黒い影があった。まだ300メートルは離れていそうだ。距離感が曖昧なので適当だが。


「なんだっけな。テレビで見たことあるぞ」


 姿形はトカゲだろうか。大きさはもちろん規格外。象なんてアレからしたらゴミ粒だ。昔博物館で見た恐竜の化石よりずっと大きそうだ。


 体表は黒光りしている鱗に覆われている。資料によるとあれは魔鋼石。頭の先から尻尾の先まではおよそ30メートルと言ったところか。陸上生物としては規格外そのものだ。


「思い出した。コモドオオトカゲだ」


 東南アジアの何処かの島に生息するオオトカゲ。口内に腐敗菌を繁殖させていて、噛まれると敗血症を患うとかテレビで聞いた気がする。
 あれは大きくても3メートルほどだった気がするけど、こっちは30メートルだ。単純計算で千倍の体格だ。


「ヒカル殿、アレが我らの熔鉱炉をおよそ100年住処にしている邪鬼『アルマロス』ですぞ」
「アルマロス……」


 その名前は宝物庫の資料で見たから知っていた。全身を魔鋼石で覆われていて、ドワーフの魔法は全て無効化されてしまう。そのため物理攻撃しか効かないらしい。
 100年前、この地下世界に侵入してきたアルマロスを駆除しようと多くのドワーフが武器を持って挑んだがついぞ倒すことはできなかった。


「確か魔鋼石ってすごく硬いんだよね」
「そうですな。基本的に魔鋼石は魔鋼石以外では傷つけることは出来ませんぞ」


 つまりアルマロスはゲーム的に言えば『魔法攻撃無効』『同硬質未満の武器による攻撃無効』というまさに無敵の怪物だ。100年前の先人が攻略できなかったのも納得だ。


「……っ!? 気づかれました、逃げましょうヒカル殿」


 ゴドルがボクを抱えて走り始めた。
 そしてその数秒後、先ほどまでボク達のいた岩陰に衝撃が走った。アルマロスがその長い尻尾を振り下ろしたのだ。
 超硬度の鱗は攻撃する場合も大きな武器になる。ボク達がさっきまで隠れていた岩は粉々になって跡形もない。


 アルマロスはシュルルルとボク達を見据えると、ドタドタと追いかけてきた。速いっ!
 普通大きな生物ってノロマでしょ!? 動けるデブとかやめてよ。


「ちょっ、ゴドル。追いつかれる!」
「心配ご無用ですぞ」


 そう言ってゴドルは懐から袋を取り出して、アルマロスの前に放り投げる。
 アルマロスは急にボク達から注意を背けて、その袋に夢中になった。
 その間にゴドルはボクを抱えて、安全圏まで脱出した。




「……ゴドル、さっき投げたアレって何?」
「彼奴の好物である魔鋼石の粉塵が入っている袋ですぞ。邪鬼は種類に問わず魔鋼石が好物でありますからな」
「なるほど。だから邪鬼に武器ごと喰われてしまう事があるんだな」


 現在あの村に魔鋼石で作られた武器がほとんどないのも、アルマロスや採掘場の邪鬼と戦闘した時にその殆どを喰われてしまったからなのだろう。


「それで、ヒカル殿。アレを倒せるいい案は何か浮かびましたかな?」
「う〜ん……」


 正直これは難しいかもしれない。
 まずアルマロスにダメージを与えるには魔鋼石で作られた武器が必須なのにウチの村にはそれがほぼない。


 ……もしかして詰んでる?

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