復讐には花を添えて〜〜ガゼリア帝国第8番隊記〜〜

きりんのつばさ

初対面

隊長就任から数日後、バルクは隊長として割り振られた部屋にいた。何故なら今日はどの様な隊員が来るかを知るために1人1人面談をする事になったからだ。

「そう言えば先に副官が来るんだっけな……」

バルクは自分の右腕になる人物の事を思い出した。


「よりによってガードヴェン家の子供で、しかも女性だろ……はぁ、なんかもうこの時点で頭が痛てぇ……」

他の隊長クラスからと上からのやっかみを含めての人事だろうがバルクは腹が立っていた。

「……決めた、俺が出世したら今回の人事考えた奴ら、全員僻地に送ってやろう。まずはーー」

コンコン

とバルク独り言を言っていると不意にドアが叩かれた。

「は、はい!?」

「失礼します」

と中に入ってきたのは、金髪の女性だった。

「おいおい……」

バルクは驚きを隠せなかった。
何故ならその女性がとても綺麗であったからだ。

ーー絹の様に綺麗な髪

ーー目や鼻などの顔のパーツがそれぞれが邪魔しない様に配置されている顔

ーー高身長でモデル体型のため支給された軍服を来ていても、その滲み出る美しさは隠しきれない。

何故この様な美人が正直軍隊にいるのだろうかと思ってしまうぐらいの美人だったからだ。
とその女性は入り口からこちらに向かって歩き、机を挟んでバルクと向き合うと敬礼をしてながら

「この度、ガゼリア帝国第8番隊副官に任命致しましたリーズベル・ガードヴェンです。これからよろしくお願い致します」

「俺はこの隊の隊長を務める事になったバルクだ。
ガードヴェン、これからーー」

“よろしく”と言おうとしたのだが

「リーズベルとお呼びください。
今の私はガードヴェン家の人間ではなく、只の軍人です。ですので変な気遣いはご不要です」

「あ、あぁ分かった」

(リーズベルさん、君が良いかもしれない。でもな、上の連中がそれを良いとしないから困るんだよ……)

とバルクは目の前の真面目な女性を見ながら心の中でそう思った。目の前にいる人物は話し方や動作を見ているととても真面目な人物だろうと思う。

「ところでリーズベル」

「はい」

「何で軍隊を志望した? ガードヴェン家なら言い方悪いがこんな血生臭い軍隊を選んだのかが気になってな」

ガードヴェン家は帝国でも有数の貴族であり、出世なら軍である必要はなく、政治の世界でも良いだろうとバルクは思った。しかもこんなに見た目がこんなに良いのなら女性としての幸せは確実だと申し訳ないが思ってもしまった。

「私はガードヴェン家の人間は基本的に命令する立場にいます。ですが命令するのなら命令される立場も体験しなけれなばいけないと思い、今回志願させていただきました」

「ほぉ……これまた凄い理由だな……」

「何を言っているんですか? 当たり前の事を言ったまでです」

「そうか。
……上の立場の人間に聞かせてやりたいな」

特に今回の人事を考えた奴らとかになんて思ってしまうバルクであった。ノブレス・オブリージュとは違うかもしれないけど本来貴族が持っていた方がいい考えだろう。

「今、なんかおっしゃいましたか?」

「いや、独り言だ。気にしないでくれ」

「はっ」

「ちなみにだが、俺の評判とかは聞いた事あるだろう?」

「はい、バルク隊長のお噂は耳にします」

「だろうな……多分ロクな噂ではないだろうが」

バルクは目覚ましい戦績や出生の身分とかである意味軍の中では有名人であった。なので本人もちょくちょく自分の噂を耳にしていた。
ーー大半がやっかみや妬みだったが。

「何を仰いますか。前職の7番隊副官の頃の“イシュリアの戦い”では一時絶対絶命であったのにも関わらず、そこから盛り返していったと聞いております」

「あぁあれな……あれは本当にたまたまだ」

「そうなのですか?」

「あの時、村人から裏の小道を聞き出してな、そこから一気に強襲かけれたから勝てたまでだ」

「ですが私からすればその様な戦略を立てれるのがとても素晴らしい事だと思います。その隊長のご活躍を間近で観察させていただき、勉強させていただきます」

「勝手にしてくれ。で、今日なんだが他の隊員達との面談を行う。リーズベルは俺の隣に座っていて書記みたいな事をしてくれ」

「はっ、かしこまりました」

「書いて欲しいのは俺がした質問とその返答は絶対書いてくれ。それ以外はリーズベルに任せる」

「かしこまりました」

「じゃあ準備が整ったら始めるぞ」

「はっ」

と2人は面接の準備にとりかかるのであった。

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