余所者は誰。

…──夢？
いや、夢ではない。
五感を確かに感じる。

本当に来てしまった、此の異世界に。

「…最高」

不意に言葉が出たと同時に、笑みも零れた。

いつも同じ事の繰り返しで、惰性化していた生活から、抜け出せた。
何が起こるか分からない世界、言葉が通じるかも分からないのに、不思議と不安は無い。

私は、相当窮屈だったのだ。
今までの世界が。

異世界に行って勇者やお姫様になった話をふと思い出した。
私も、勇者やお姫様になりたい。

此所は、ファンタジー感溢れる世界。
私だってそのチャンスはあるだろう。

どうしたら、なれるのだろうか…。と、考えながら、石畳の上を１歩１歩ゆっくりと歩く。

──ヒソヒソ。

─────ヒソヒソ。

ん？凄く視線を感じる、と同時に何かひそひそ話のようなものが聞こえる。

少し耳を傾けてみた。

「…あの服装…」

良かった。言葉が分かる

「可笑しいわね、あの服…あと、髪の色も」

「……何処から来たのかしら…、変な人じゃなかったら良いけど…」

あー。今着ているセーラー服が可笑しいのか。あれ？そう言えば黒髪の人も見ない。
黒髪の私も此の世界にとったら物珍しいのかな？

疑いの目、不安な目、冷たい目色んな視線が感じるが、良いものは感じられない。

異世界に来た主人公は、来た瞬間から人々から受け入れられて、ちやほやされるイメージだったんだけど。

私は、どうやら余所者から始まるようだ。