転職先は魔王でした

駄菓子オレンジ

俺のステータス 2

「『届かぬ頂』ですか……私は初めて聞きましたね。お父さんとリチムさんはどうですか」
「俺も初めて聞いたな」
「我もじゃの。恐らくじゃが、そのスキルはユニークスキルじゃな。効果は知らん」

 ……答え方が無責任だな。だがまぁ、知らないのは本当だろう。

「どんなスキルなのか知る方法は無いのか?」
「そうじゃのう……のう、ジーク、あいつはもう居ないんじゃよな」
「そうだな。大体200年前に勇者にやられた」

 リチムとジークは悲しそうな顔で話していた。

「先代の魔王、ジークの父親なら、知ることができるスキルを持っておったのじゃ。じゃが、もう居ない。知ろうとするなら、王都のギルドに行くしかないじゃろうな」
「その王都のギルドとやらになら、同じスキルを持ったやつがいるのか?」
「うむ、そう聞いたことがある。珍しくはあるが、あのスキルも普通のスキルじゃからな」

 リチムはまだ表情が少し曇ったままだった。
 ……いやなことを思い出させてしまったか。さっさと話題を変えよう。

「えっと、最後は加護だったか?あれは何なんだ?」
「それは、神様から授かった力のことですね。協会に行くと、一部の人が授かれるそうです。私たちは魔族なので、行ったことはないですが。行ったところで追い返されますけどね」
「あぁ、やっぱり魔族は協会からすると邪悪な者なんだな」

 とは言っても、俺も魔族と聞いたら悪いイメージが浮かぶが。
 だが、その悪いイメージがある側になると少し考え方が変わるな。

「そういえば、どうしてわざわざリチムにステータスボードを作るのを頼んだんだ?魔法ならシーノでもできるんじゃないのか?」
「ステータスボードを作ること自体はできますが、魔力量の問題なんです。ステータスボードに表示される魔力量の上限は、作成者の魔力量なんです。なので、私が作ると、貴方の魔力量も3622MPと表示されてしまうんです」
「なるほど、それは問題だな」

 となると、聞いていた通り、リチムの魔力量は俺以上のはずだ。

 そう思い、俺がリチムの方を見ると、すやすやと寝息を立てて眠っていた。さっきまでの悲しそうな表情からは想像できないくらい、幸せそうな表情をして眠っている。
 その状況を見て俺が困惑していると、ジークが何故こうなったかの説明をしてくれた。

「あぁ、さすがに寝たか。さっきのステータスボードを作る魔法は、発動者の魔力を半分消費するんだ。魔力の消費は体力の消費につながる。だから、大抵のやつはすぐに寝る」

 その後ジークは「それに、リチムは寝ることが好きだしな」と苦笑いしながら言い足した。

「もう日が完全に沈んだな。さすがにそろそろ帰るか」
「そうですね。周り照らしますね」

 そういって、シーノは手からいくつかの光の玉を飛ばした。
 その光の玉をたどって俺たちは洞窟へと戻った。

 ……明日から俺にとって大変な半年間が始まるとは知らずに。

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