転職先は魔王でした

駄菓子オレンジ

俺のステータス

 俺が石を見てみると、そこには見たことのない文字のようなものが並んでいた。

「……なんだこれ?」
「ふむ、文字は読めんのか。シーノ、代わりに読んであげなさい」
「はい、少し借りますね」

 そういうとシーノは読み上げ始めた。



名前:水原 隆司みずはら たかし
性別:男
年齢:25歳
種族:魔族
魔力量:16720MP
魔法適性まほうてきせい:熱・水
スキル:届かぬいただき
加護:無し



「いろいろ聞きたいところだが、まず、結局これは何なんだ?」
「これは『ステータスボード』と言いまして、身分証明書の様なものです。実際に、その代わりとしても使われています。本当は紙に映すんですが、さすがにドラゴンほど大きくなると、そんなに細かくは映せませんからね」
「それはどういう事だ?」
「いくら魔力の操作がうまくいっても、自分からして小さすぎる範囲は制御がほとんど効かないということです」

 ……よくわからないが、分かったということにしておこう。話が進まなくなるからな。

「じゃあ次だ。種族が魔族というのはどういう事だ?今は魔族だとしても、一応、元は人間だぞ?」
「この世界では、元の世界でどうであろうと、人間が召喚すれば人間、魔族が召喚すれば魔族という扱いになるみたいです。なので、そのせいですね。ステータスボードのバグの様なものです」
「なるほど。だったら俺は、バグとはいえど、魔族として生きていくことになるんだな?」
「そうですね。ステータスボードを作った時点でそう認識されます」

 種族という欄があるんだから、他の種族もいるのだろう。そうなると、自分の種族が魔族というのは、他の種族と交流を図る時に面倒になりそうだな。
 まぁ、それはその時に考えよう。

「じゃあ次、えーと……」
「魔法適性の説明ですね」
「あぁ、頼む」
「名前の通り、知性を持つ生き物は全て、魔法に適性を持っています。魔法はいくつもの属性に分けられていて、大きく分けると、炎・水・地・雷・風・光・無の七つになります。そのそれぞれから派生して、膨大な数の属性になります」

 シーノはそこで説明を止めたが、リチムが付け足した。

「お主の場合、炎属性から派生した『熱』と、恐らく、水属性から派生した側の『水』じゃろうな」
「水属性から派生した水属性があるのか?」
「うむ。派生していない水属性は、水属性全体に適性があるが、派生した水属性は、『水』に対してのみ適性を持つ。他に派生した『氷』や『雨』などには持たないということじゃ。……あぁ、ちなみに、見分け方じゃが、文字の大きさじゃ。派生していない場合は、若干他の文字より大きくなるんじゃ」

 その文字の場所を教えて貰い見てみたが、確かに他の文字と大きさは同じだった。
 ……とは言っても、本当に同じなのかは俺にはわからないが。

「次は、さっきも言っていたスキルの説明ですね」
「あ、うん」

 完全にペースがあっち側になったな。

「まず、スキルというのは、個人が持つ特徴の様なものです。スキルには普通の『スキル』と『ユニークスキル』があります。スキルの場合は複数人が同じスキルを持つことがありますが、ユニークスキルの場合は一人しか持ちません。ですが、スキルの場合でも、つまり複数人が持っていても、前例がなければユニークスキルという扱いをされることもあります」
「なるほどな。ちなみに、シーノのスキルはどんなものなんだ?」
「私の場合はユニークスキルで『魔女の目ウィッチズアイ』というスキルです。相手に直接関与する魔法ならば、その相手と目を合わせた状態なら、100%成功するというスキルです」

 なるほど。元の世界で俺と会った時に目を合わせるように言ってきたのはこのためだったんだろう。

「なら、俺のスキルは何なんだ?」

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