振り返ればあの時ヤれたかも

アルミ缶の上にあるミカン

第1話 Happy Birthday……僕

やぁ、みんな!
ご機嫌はいかがかな?
突然だけど、みんなは「童貞」についてどう考える?
恥ずかしい? 可哀想? 同情?
まぁ、色々な意見があるだろうよ。


ちなみに、僕が感じるのは仲間や共感だね。
なにせ、僕も齢29にして童貞であり、あと数分で魔法使いの仲間入りを果たすところだからね! エリート童貞さ!


そんな事を考えている内に時間が過ぎたのか、部屋の時計が午前0時のアラームを鳴らす。


ついに、30歳だ。
達成感や喜びなんてものは胸になく、ただ寂寥感せきりょうかんが胸に溢れ出る。
そう、30歳なんだよ。29歳でも、笑い話にできないかもしれないが、僕の基準では30歳童貞とは笑って話せるようなものでは無い。
もし、飲み会などで語ってみれば、同僚達の酔いが一気に覚めて、ただただ同情と憐れみの視線が投げかけられてしまうだろう。うん、全くもって笑えやしない。
しかし、どれだけ嘆いても30歳という事実は変わらないし、同じく童貞という事実も変わらない。


取り敢えず、今できることは明日の仕事の為に寝る事だろう。


そう思い、僕は押入れから布団を取り出し、敷いて目を閉じた。
あぁ、もちろん一人でだよ。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品