テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

特別編 ちょっとした昔の話〜ハロウィン〜

進side
これは高校1年生の秋の話である。



「トリック・オア・トリートー!
お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞー」
「は?   」
今日は日曜日。
昼下がり、部屋でのんびりしていた俺。
そして、そんな俺の元に変な格好をして変な事を言っている亜梨須がやって来た。

な?   最後の部分だけ、日常からかけ離れてるだろ?

「もー、進、は?   じゃないわよ!   
ちゃんと、答えてくれないと私が滑ったみたいじゃないっ!   」

いや、みたいじゃなくて、本当にそうなんだけどな。

「で、亜梨須。急に俺の所に来てどうした?   暇なら他所で恵実花さんとかと遊んでこいよ」
「なんで私を早く追い払おうとうしているのよ!   
用件なら最初に言ったじゃない。
トリック・オア・トリートって」

······うん、聞こえてたけど、あえて無視したんだけど。
ちなみに今日は10月31日。
ハロウィンの日である。

亜梨須が言っているのはトリック・オア・トリート。
つまり、お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞと言っているのだ。

あれってさ、子供がやるやつだろ?
しかも、日本じゃ大抵やらない。
(日本で行われているのは毎年恒例の仮装をしてのお祭り騒ぎであり、それは本来のハロウィンとかけ離れている。てか、これ違法ですから、やっちゃダメ。絶対。)

んで、ここまででもだいぶおかしかった気がするが、さらにおかしいことが1つ。

「うん、百歩譲って、高校生のお前がそんなことをやっているのはいいとしよう。
でもな······、その格好はどうした!?   」
俺はたまらず、亜梨須にツッコんだ。

「え?   何って······。仮装だけど?   」
それがどうかしたかしら?といった様子の亜梨須。
確かに本当のハロウィンでも何かしら仮装はしているが。
「だからって、その格好はないだろ!   」
亜梨須の今の格好は、黒の猫耳カチューシャを付け、服は所々肌が露出したゴスロリ風のドレス。そのドレスの下の丈は亜梨須の膝よりも上だ。
つまりは、仮装は仮装でも日本のエセハロウィンで着るような、それも露出がかなり高いタイプの仮装だったのだ。
今は、もう11月にさしかかろうとしており、夏の暑さはどこへやら、冬の到来らまだにしろ、秋の中でも寒さを感じさせる時期だ。
そんな時期にこんな格好は馬鹿としか思えないし、それに、露出度が高すぎて、例え残念幼なじみ亜梨須といえど、俺は視線を逸らすしかなかった。
「えー、この格好変かなー。
結構、可愛いと思ったんだけどなあ······」
「いいから!   見た目とかの前にまずは、機能性について考えろよ!   
あぁ、もう!   その格好じゃ寒いだろうから、早く部屋の中に入れよ」
「そう?   じゃ、お邪魔しま〜す」
「って、おい!   何故、俺の家の中に入る!   違うだろ!   お前の部屋すぐ隣なんだから、自分の所に帰れよ」
「んー、だって、まだお菓子貰ってないし、イタズラもしてないし······」
「あー、もう、ほんと面倒臭い幼なじみだなあ!   こいつは!   」


***

しばらくの問答のすえ、何故か、亜梨須を部屋に招き、亜梨須にお菓子を振る舞うことになった俺。

どうしてこうなった。

いや、原因は分かりきっていた。

亜梨須が、
「お菓子をくれなきゃ、明日どうなっても知らないわよ?   」
とか、言いやがったからだ。

本当、何するつもりだったのか。

とりあえずは、余計な面倒事は回避する俺なので、お菓子を振る舞うことにしたのだ。

しかし、
「ありゃ·····、お菓子切れちまってるわ。
そういえば、最近買い出しに行ってなかったもんなぁ·····」
「進ー?   お菓子まだー?   」
「ちょっと待ってろ!   子供か、お前は!   」
そんなちょっと疲れるやりとりがあった結果、俺は余っていた材料で、ホットケーキを作ることにした。

作りながら、前にテレビで見たことを思い出した。
ホットケーキとパンケーキがあるが、この2つはどちらも材料や作り方が同じなのだ。
では、なぜ呼び方が違うのか。
それは、ホットケーキは厚く焼いた物でデザートやおやつ、パンケーキはホットケーキと比べると薄く焼かれた物で食事向きの物として食べられているという違いからだ。
この事は厳密ではないが、日本での認識はこうなっている(とある有名な会社による認識の影響)。
海外では、パンケーキとホットケーキの区別はなく、というか、パンケーキが一般的な名前で、ホットケーキは通じないことが多いのだとか。

前に見たホットケーキに関する雑学を思い出しているうちにいつの間にかホットケーキがいい具合に焼けたので、フライ返しでひっくり返して、フライパンの上にもう一度生地を着地させる。

そして、そのまましばらく焼いて·····、いい焼き具合になったら皿に盛り付ける。
これを何枚か焼いて·····。
最後に、冷蔵庫の中にたまたま余っていたメイプルシロップとホイップクリームを少々かけてと。
「よし、完成だ」
我ながら、なかなかいい出来になったのではないかと思う。


「亜梨須出来たぞー」
「!   ホットケーキ!?   」
俺がホットケーキを持っていくと亜梨須がそれを見るや満面の笑みとなって起き上がった。
「ほらよ」
「わーい!   いただきまーす!   」
子供か。そういう意味では、ハロウィンの仮装にはうってつけの存在と言えるかもしれないが。
「進、美味しい!   」
「ハイハイ、そりゃあ、良かったな。
慌てず、ゆっくり食べろよ」

まあ、たまにはこんな日曜日もいいか。
なんてことを思いながら亜梨須の食べる姿を見守るのだった。

「って、亜梨須」
「むにゅ?   」
口にホットケーキをいっぱいに詰めながら、こちらを見る亜梨須の姿は、さながらリスのようだった。

「ついてるぞ·····」
俺は亜梨須の方に身を乗り出して·····、亜梨須の口の横に付いていたホイップクリームを指で取った。
「ったく·····、子供じゃないんだから。
って、うん?   亜梨須どうした?   」
亜梨須は急に立ち上がり、
「きょ、今日はもう帰る!   ホットケーキご馳走様!   」
「え、急だな。じゃあなー」
まあ、急に帰るとなってもホットケーキはしっかりと全て食べていく亜梨須は流石だと思うよ。


***
亜梨須side
あぁーーーーーーーーーーー!!!!
もう、ほんとなんであんなこと真顔で出来るのよ、あいつはー!
今日はイタズラをしていつも鈍感なあいつに少しぐらいドキッとしてもらうつもりだったのに!
なんで、逆に私がドキッとさせられてるのよぉー!!!!

うぅ·····。
いつかは、あいつを少しぐらいドキッとさせてやる·····。


亜梨須の奮闘はまだまだ続く·····。

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