テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない
第29話 誤解と不意打ちバースデー
進side
一昨日、亜梨須に見つかってしまった。
亜梨須へのサプライズプレゼントを買っている所をだ。
まあ、それは良いとしよう。
いや、よくはないんだが。
その後が問題なのだ。
あれから妙に亜梨須がよそよそしいというか、俺を避けている気がする。
まあ、夏休み明けから避けられていたんだけども。
さらに避けられている気がする。
何か知らないかと妃愛蕾さんに相談したら……、
「あぁー……。
亜梨須、誤解しちゃったんだねえ……」
誤解とは一体何を誤解したんだろうか……。
そこは妃愛蕾さんに聞いても教えてくれなかった。
妃愛蕾さん曰く、
「まあ、こっちの方がサプライズは成功すると思うし……、このままでもいいと思うよー」
との事だ。
亜梨須の誕生日までは、このままでもいいと言うが、やはり俺は気になってしまう。
んー、まさかとは思うが俺と妃愛蕾さんがデートをしていると思った?
いや、ないない。
普段から一緒にいる亜梨須のことだ。
俺と妃愛蕾さんが2人で買い物をしているのだけを目撃しただけならそんな誤解はしないだろう。
まあ、これは仮にだが、デート(ただの買い物)を最初から見ていたならもしかしたら誤解するかもしれないが、そんなことはまずないだろう。
うーむ、本当に分からないな。
そんなことを考えたり、妃愛蕾さんと一緒に軽い打ち合わせをしたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎ……。
こうして、俺は悩みながら、亜梨須の誕生日である9月13日を迎えることとなったのだ。
***
亜梨須side
今日、朝のホームルームが終わると、隣の席の進が私の机に小さく折りたたんだ紙を投げてきた。
どうやら、何か書いてあるようだけど。
開いて中をみると、
今日の放課後、俺の部屋に来てくれ。
あ、一人でな。
と、書いてあるだけの短い文章だった。
私は一瞬固まった。
その内容が完全に密室に私を連れ込もうとしているのが分かるものだったからだ。
えぇ!?
なんで!? どういうこと!?
進は妃愛蕾と付き合っているんだよねぇ、それなのに、なんで私のことを部屋に呼ぶの!?
はっ!
まさか進はハーレムでも作ろうとしているっていうの!?
·····まあ、進に限ってそれはないだろうが。
なんか、今ので落ち着いた。
冷静に考えてみよう。
うーん、あっ……。
一つの可能性に私は思い当たった。
進と妃愛蕾さんが付き合い始めたという報告をするつもりかもしれない。
わざわざ、私一人を呼ぶ意味が分からないけども、幼なじみに自分が付き合い始めたということは言っておいた方がいいと思ったのかも。
進、そういう所は変に気を回しそうだなあ……。
つまり、この紙の内容は、私の初恋の終わりが今日の放課後に近づいているということを表している。
冷静にそのことを認識するとなんだか、切ないような胸を締め付けられるような気がする。
あぁ、長かった私の初恋が今日、終わる。
進からの手紙に一粒の水滴が落ちた。
雨? 室内なのに?
いや、違った。
これは。
私の涙だ。
ははっ……、なんか私、最近はいつも泣いてばっかりだな……。
そう思ったけど、涙を止めることは出来なかった。
進side
やべえ。
亜梨須が俺の手紙を読んだ瞬間泣き始めた。
最初は、呆然としていて、その後、あわあわし始めた。
そして、急に真顔になると辛そうにして、そして、泣いてしまった。
訳が分からない。
あの手紙のどこに泣く部分があったのか……。
亜梨須が泣いているのもすごく気になるんだが、それよりも周りの視線が痛い。
皆は俺が亜梨須に手紙渡したのなんて知らないはずなのに、なぜか、俺の方を見てひそひそと話している。
えぇ、これ俺が悪いのか……?
と、とりあえず、声をかけるか。
「あ、亜梨須? ·····大丈夫か? 」
亜梨須はびくっと身をふるわせて、
自分の顔を俺から隠すようにして、
「―――大丈夫よ」
とだけ言い、教室の外に少し駆け足で出ていってしまった。
本当に大丈夫かよ、あいつ……。
後にその場に残ったのは呆然する俺と隣でなぜかあちゃーっていうような顔をして、額に手を当てている妃愛蕾さん、そして……、
先ほどよりも多くなったクラスメート達のこちらに向けられた驚愕と好奇の視線だけだった。
「あの亜梨須ちゃんが泣いてるんですけど……」
「亜梨須ちゃん、かわいそー」
「女の敵ね……」
「二股野郎がついに嫌われたんじゃないか? 」
クラスメート達のひそひそ声が聞こえてくる。
本当に何も俺はしてないんです、信じてください……。
って、最後のほうちょっと待て。
二股野郎だと!?
何度も言ってるが(言ってはいない)、
俺は!
誰かと付き合ったことすら無いからなっ!
はあ……。
亜梨須、大丈夫かなあ……。
***
亜梨須side
遂に放課後になってしまった。
あの後、進とはお互いに気まずくて、喋っていない。
本当にどうしよう……。
行きたくないなあ……。
とは思いつつも、私の重い足はしっかりと進の部屋の前へと着いていた。
「うぅ……」
しばらく、私はこうして進の部屋の前で唸っていたが、このままではいけないと思い……、
ここまで、来たんだ。
勇気を出さないでどうするのよ……!
私は自分を奮い立たせた!
「えぇい、もうやけよ! 」
そう叫びながら、進の部屋の扉を私は思いっきり開けた。
そして……、
パァン!!
「え? 」
聞こえたのは、何かが破裂するような音、いや、クラッカーを鳴らしたような音だ。
違った、クラッカーそのものだった。
それが分かったのは私の目の前にキラキラと光るテープが飛んできたからだ。
「え? 」
そのクラッカーを鳴らしたのは、この部屋の住居人である進、そして、なぜか妃愛蕾さんもいた。
2人は私の顔を見て、笑顔で、
「「亜梨須、誕生日おめでとう(ー!)」」
そう言ってくれたのだった。
進side
よし、成功だ!
なんか、こうして自分が準備していたことが成功するのはとても嬉しい。
「えっと、二人とも……? 
これは、一体どういう……? 」
亜梨須はまだ分かってなかった。
混乱しているようだ。
「どういうって言われてもな、誕生日だよ、お前の」
「え、あ、今日、私の誕生日……。
もしかして、私のために……? 」
「気づくの遅えよ……」
本当に自分の誕生日だということを忘れていたらしい。
「亜梨須、とりあえず座りなよー」
「え、あ、うん……」
妃愛蕾さんが亜梨須に座るように促す。
「それじゃ、改めまして……、
亜梨須、誕生日おめでとうー! 」
「おめでとう」
そういうと、亜梨須は泣き出してしまった。
しまった、また何か俺やらかしたか?
亜梨須が俺の表情から焦ったのを察したのか、
「うぅん、進、違うの……、そうじゃなくて、嬉しくて……。
私、友達からサプライズでこんなことされたことなくて……だから、本当に嬉しいの」
泣きながら、亜梨須が訴えてくる。
「まあ、それならよかったよ」
「はいはい、亜梨須、嬉しいのは分かるけど、泣き止んでー」
「う、うん」
妃愛蕾さんは、亜梨須を泣き止ませると、自分の脇から白い箱を取り出し、テーブルの上に置いた。
妃愛蕾さんが、それを開けると、中から出てきたのは、
真っ白なクリームで覆われたホールケーキだった。
「うわあ、凄い……。
これ、妃愛蕾が作ったの? 」
「うん、そうだよー。
それじゃあ、ロウソクを刺すねー」
ん?
妃愛蕾さんの手作り……!?
っ! なにか、思い出せそうなのに、それが思い出せない……!
「はい、火をつけたから、亜梨須消してー」
「う、うん。
すぅー……、ふうーーーー! 」
ロウソクの火は全て消えた。
「亜梨須ちゃん、お誕生日おめでとうー!」
「うん、ありがと……」
亜梨須も今度はしっかりと自分がお祝いされていることを理解してくれたみたいだ。
「それじゃ、ケーキを切り分けるよー」
俺の目の前に置かれたショートケーキはとても美味しそうだった。
美味しそうだったんだが、なんだろう、何か忘れてるような。
はっ! そうだ! 思い出したぞ!
俺は妃愛蕾さんのクッキーを食べて気絶(?)したじゃないか!
いや、でも、やばい見た目のお粥は大丈夫だったし……。
へ、変なもの入れてないよな?
「わあ、美味しそうー。食べてもいい? 」
「もちろんだよー」
「それじゃあ……いただきます! 」
俺も亜梨須と同時に頂くことにした。
その味は……、
とても、美味しかった……。
「っ! これすごいな、お店のって言われてもな納得出来る美味しさだ……」
「うん! 私もそう思う! 」
「うふふ……、褒めてくれてありがとう」
妃愛蕾さんはとても嬉しそうだ。
俺と亜梨須はすぐにケーキを食べ終わってしまった。
「それじゃ、最後に……、進くん」
「え? あぁ、そういうことか。分かった」妃愛蕾さんから、目配せを貰って、俺はあるものを取り出した。
それは……、
「亜梨須、俺と妃愛蕾さんからの誕生日プレゼントだ。受け取ってくれ」
「え!? プレゼントまであるの!? 
うん、ありがとう! 中身は何かなー♪」
亜梨須はとてもはしゃいでいる。
「おいおい、あまり期待すんなよ? 」
亜梨須は紙袋を開けて、中のものを取り出した。
それは……、
「これって……」
「あぁ、お前とこの間、会った所で買った髪飾りだよ」
「え、でも、これって? あれ? 」
なぜか、亜梨須はとても驚いている。
「どうかしたのか? 」
「一つ、確認したいんだけど……、
進と妃愛蕾って……、付き合ってる? 」
「ぶっっ!! 」
いきなりなんてこというんだよ!
こいつは!
妃愛蕾さんは、まるで全てを分かっているようにくすくすと笑っている。
「んなわけないだろうが! 
なんで、急にそんなこと思ったんだ? 」
「急にって訳でもないんだけど……、
ううん、そっか……。
ぜーんぶ、私の勘違いだったのかあ……。
えへへー、進、妃愛蕾、今日は私のために本当にありがとうね! 
この髪飾り、絶対に大切にするから!」
そう、元気よく言った亜梨須はここ最近悩んでいたことが全て解決して、付き物の取れたような満面の笑みだった。
その笑顔を見て、俺は今回のサプライズをした価値があったなと思えた。
***
亜梨須side
「ふふふー」
私の誕生日である、9月13日が終わり、現在は9月14日の零時をまわった。
サプライズって、本当に嬉しいなあ。
友達と幼なじみが祝ってくれたから、さらに嬉しい。
それにしても……、
「本当によかったあ……」
そっか、全部私の勘違いだったのかあ。
進はまだフリー!
なら、私にもまだチャンスがある!
うふふ……。
私はそのまま枕に顔を埋めて、足をバタバタさせていたら、気づいたら、いつの間にか眠っていた。
よく、覚えていないけど、何か幸せな夢を見れた気がする。
一昨日、亜梨須に見つかってしまった。
亜梨須へのサプライズプレゼントを買っている所をだ。
まあ、それは良いとしよう。
いや、よくはないんだが。
その後が問題なのだ。
あれから妙に亜梨須がよそよそしいというか、俺を避けている気がする。
まあ、夏休み明けから避けられていたんだけども。
さらに避けられている気がする。
何か知らないかと妃愛蕾さんに相談したら……、
「あぁー……。
亜梨須、誤解しちゃったんだねえ……」
誤解とは一体何を誤解したんだろうか……。
そこは妃愛蕾さんに聞いても教えてくれなかった。
妃愛蕾さん曰く、
「まあ、こっちの方がサプライズは成功すると思うし……、このままでもいいと思うよー」
との事だ。
亜梨須の誕生日までは、このままでもいいと言うが、やはり俺は気になってしまう。
んー、まさかとは思うが俺と妃愛蕾さんがデートをしていると思った?
いや、ないない。
普段から一緒にいる亜梨須のことだ。
俺と妃愛蕾さんが2人で買い物をしているのだけを目撃しただけならそんな誤解はしないだろう。
まあ、これは仮にだが、デート(ただの買い物)を最初から見ていたならもしかしたら誤解するかもしれないが、そんなことはまずないだろう。
うーむ、本当に分からないな。
そんなことを考えたり、妃愛蕾さんと一緒に軽い打ち合わせをしたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎ……。
こうして、俺は悩みながら、亜梨須の誕生日である9月13日を迎えることとなったのだ。
***
亜梨須side
今日、朝のホームルームが終わると、隣の席の進が私の机に小さく折りたたんだ紙を投げてきた。
どうやら、何か書いてあるようだけど。
開いて中をみると、
今日の放課後、俺の部屋に来てくれ。
あ、一人でな。
と、書いてあるだけの短い文章だった。
私は一瞬固まった。
その内容が完全に密室に私を連れ込もうとしているのが分かるものだったからだ。
えぇ!?
なんで!? どういうこと!?
進は妃愛蕾と付き合っているんだよねぇ、それなのに、なんで私のことを部屋に呼ぶの!?
はっ!
まさか進はハーレムでも作ろうとしているっていうの!?
·····まあ、進に限ってそれはないだろうが。
なんか、今ので落ち着いた。
冷静に考えてみよう。
うーん、あっ……。
一つの可能性に私は思い当たった。
進と妃愛蕾さんが付き合い始めたという報告をするつもりかもしれない。
わざわざ、私一人を呼ぶ意味が分からないけども、幼なじみに自分が付き合い始めたということは言っておいた方がいいと思ったのかも。
進、そういう所は変に気を回しそうだなあ……。
つまり、この紙の内容は、私の初恋の終わりが今日の放課後に近づいているということを表している。
冷静にそのことを認識するとなんだか、切ないような胸を締め付けられるような気がする。
あぁ、長かった私の初恋が今日、終わる。
進からの手紙に一粒の水滴が落ちた。
雨? 室内なのに?
いや、違った。
これは。
私の涙だ。
ははっ……、なんか私、最近はいつも泣いてばっかりだな……。
そう思ったけど、涙を止めることは出来なかった。
進side
やべえ。
亜梨須が俺の手紙を読んだ瞬間泣き始めた。
最初は、呆然としていて、その後、あわあわし始めた。
そして、急に真顔になると辛そうにして、そして、泣いてしまった。
訳が分からない。
あの手紙のどこに泣く部分があったのか……。
亜梨須が泣いているのもすごく気になるんだが、それよりも周りの視線が痛い。
皆は俺が亜梨須に手紙渡したのなんて知らないはずなのに、なぜか、俺の方を見てひそひそと話している。
えぇ、これ俺が悪いのか……?
と、とりあえず、声をかけるか。
「あ、亜梨須? ·····大丈夫か? 」
亜梨須はびくっと身をふるわせて、
自分の顔を俺から隠すようにして、
「―――大丈夫よ」
とだけ言い、教室の外に少し駆け足で出ていってしまった。
本当に大丈夫かよ、あいつ……。
後にその場に残ったのは呆然する俺と隣でなぜかあちゃーっていうような顔をして、額に手を当てている妃愛蕾さん、そして……、
先ほどよりも多くなったクラスメート達のこちらに向けられた驚愕と好奇の視線だけだった。
「あの亜梨須ちゃんが泣いてるんですけど……」
「亜梨須ちゃん、かわいそー」
「女の敵ね……」
「二股野郎がついに嫌われたんじゃないか? 」
クラスメート達のひそひそ声が聞こえてくる。
本当に何も俺はしてないんです、信じてください……。
って、最後のほうちょっと待て。
二股野郎だと!?
何度も言ってるが(言ってはいない)、
俺は!
誰かと付き合ったことすら無いからなっ!
はあ……。
亜梨須、大丈夫かなあ……。
***
亜梨須side
遂に放課後になってしまった。
あの後、進とはお互いに気まずくて、喋っていない。
本当にどうしよう……。
行きたくないなあ……。
とは思いつつも、私の重い足はしっかりと進の部屋の前へと着いていた。
「うぅ……」
しばらく、私はこうして進の部屋の前で唸っていたが、このままではいけないと思い……、
ここまで、来たんだ。
勇気を出さないでどうするのよ……!
私は自分を奮い立たせた!
「えぇい、もうやけよ! 」
そう叫びながら、進の部屋の扉を私は思いっきり開けた。
そして……、
パァン!!
「え? 」
聞こえたのは、何かが破裂するような音、いや、クラッカーを鳴らしたような音だ。
違った、クラッカーそのものだった。
それが分かったのは私の目の前にキラキラと光るテープが飛んできたからだ。
「え? 」
そのクラッカーを鳴らしたのは、この部屋の住居人である進、そして、なぜか妃愛蕾さんもいた。
2人は私の顔を見て、笑顔で、
「「亜梨須、誕生日おめでとう(ー!)」」
そう言ってくれたのだった。
進side
よし、成功だ!
なんか、こうして自分が準備していたことが成功するのはとても嬉しい。
「えっと、二人とも……? 
これは、一体どういう……? 」
亜梨須はまだ分かってなかった。
混乱しているようだ。
「どういうって言われてもな、誕生日だよ、お前の」
「え、あ、今日、私の誕生日……。
もしかして、私のために……? 」
「気づくの遅えよ……」
本当に自分の誕生日だということを忘れていたらしい。
「亜梨須、とりあえず座りなよー」
「え、あ、うん……」
妃愛蕾さんが亜梨須に座るように促す。
「それじゃ、改めまして……、
亜梨須、誕生日おめでとうー! 」
「おめでとう」
そういうと、亜梨須は泣き出してしまった。
しまった、また何か俺やらかしたか?
亜梨須が俺の表情から焦ったのを察したのか、
「うぅん、進、違うの……、そうじゃなくて、嬉しくて……。
私、友達からサプライズでこんなことされたことなくて……だから、本当に嬉しいの」
泣きながら、亜梨須が訴えてくる。
「まあ、それならよかったよ」
「はいはい、亜梨須、嬉しいのは分かるけど、泣き止んでー」
「う、うん」
妃愛蕾さんは、亜梨須を泣き止ませると、自分の脇から白い箱を取り出し、テーブルの上に置いた。
妃愛蕾さんが、それを開けると、中から出てきたのは、
真っ白なクリームで覆われたホールケーキだった。
「うわあ、凄い……。
これ、妃愛蕾が作ったの? 」
「うん、そうだよー。
それじゃあ、ロウソクを刺すねー」
ん?
妃愛蕾さんの手作り……!?
っ! なにか、思い出せそうなのに、それが思い出せない……!
「はい、火をつけたから、亜梨須消してー」
「う、うん。
すぅー……、ふうーーーー! 」
ロウソクの火は全て消えた。
「亜梨須ちゃん、お誕生日おめでとうー!」
「うん、ありがと……」
亜梨須も今度はしっかりと自分がお祝いされていることを理解してくれたみたいだ。
「それじゃ、ケーキを切り分けるよー」
俺の目の前に置かれたショートケーキはとても美味しそうだった。
美味しそうだったんだが、なんだろう、何か忘れてるような。
はっ! そうだ! 思い出したぞ!
俺は妃愛蕾さんのクッキーを食べて気絶(?)したじゃないか!
いや、でも、やばい見た目のお粥は大丈夫だったし……。
へ、変なもの入れてないよな?
「わあ、美味しそうー。食べてもいい? 」
「もちろんだよー」
「それじゃあ……いただきます! 」
俺も亜梨須と同時に頂くことにした。
その味は……、
とても、美味しかった……。
「っ! これすごいな、お店のって言われてもな納得出来る美味しさだ……」
「うん! 私もそう思う! 」
「うふふ……、褒めてくれてありがとう」
妃愛蕾さんはとても嬉しそうだ。
俺と亜梨須はすぐにケーキを食べ終わってしまった。
「それじゃ、最後に……、進くん」
「え? あぁ、そういうことか。分かった」妃愛蕾さんから、目配せを貰って、俺はあるものを取り出した。
それは……、
「亜梨須、俺と妃愛蕾さんからの誕生日プレゼントだ。受け取ってくれ」
「え!? プレゼントまであるの!? 
うん、ありがとう! 中身は何かなー♪」
亜梨須はとてもはしゃいでいる。
「おいおい、あまり期待すんなよ? 」
亜梨須は紙袋を開けて、中のものを取り出した。
それは……、
「これって……」
「あぁ、お前とこの間、会った所で買った髪飾りだよ」
「え、でも、これって? あれ? 」
なぜか、亜梨須はとても驚いている。
「どうかしたのか? 」
「一つ、確認したいんだけど……、
進と妃愛蕾って……、付き合ってる? 」
「ぶっっ!! 」
いきなりなんてこというんだよ!
こいつは!
妃愛蕾さんは、まるで全てを分かっているようにくすくすと笑っている。
「んなわけないだろうが! 
なんで、急にそんなこと思ったんだ? 」
「急にって訳でもないんだけど……、
ううん、そっか……。
ぜーんぶ、私の勘違いだったのかあ……。
えへへー、進、妃愛蕾、今日は私のために本当にありがとうね! 
この髪飾り、絶対に大切にするから!」
そう、元気よく言った亜梨須はここ最近悩んでいたことが全て解決して、付き物の取れたような満面の笑みだった。
その笑顔を見て、俺は今回のサプライズをした価値があったなと思えた。
***
亜梨須side
「ふふふー」
私の誕生日である、9月13日が終わり、現在は9月14日の零時をまわった。
サプライズって、本当に嬉しいなあ。
友達と幼なじみが祝ってくれたから、さらに嬉しい。
それにしても……、
「本当によかったあ……」
そっか、全部私の勘違いだったのかあ。
進はまだフリー!
なら、私にもまだチャンスがある!
うふふ……。
私はそのまま枕に顔を埋めて、足をバタバタさせていたら、気づいたら、いつの間にか眠っていた。
よく、覚えていないけど、何か幸せな夢を見れた気がする。
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