テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第24.5話 過去と今の夏(裏)

亜梨須side

これは、進と妃愛蕾さんと海に行ってから、数日後のこと……。

私は、恵実花えみかに誘われて、恵実花のおすすめの喫茶店に来ていた。
私達は奥の左側の二人用の席に座った。
「わあ、素敵な喫茶店だね」
「ここのモンブランが美味しいんだよー、一緒に食べよ、亜梨須」

私達は、モンブランと、私がミルクティー、恵実花は、カフェオレを頼んだ。

店員さんに、注文をして、しばらくすると、恵実花が、
「実はね、私ね。
亜梨須に今日、話すことがあるんだ」
「どうしたの? 」
恵実花は真剣な表情をして、顔をこちらに少し寄せた。

私はそれが、あまり周りには聞かれたくないことなのだと分かり、左の耳を恵実花の口元の近くに寄せる。

······まあ、この喫茶店には現在、ほかのお客さんは、OLらしき人達、赤ちゃんを連れた若いママさん達と私達の三組しかおらず、知り合いに聞かれる心配はなかったのだけれど。
そこは、雰囲気なのだ。

「実はね、私ね……。付き合い始めたの……」
「え!?  本当に!? 」
「うん……」
「相手は! 相手は誰なの? 」
「亜梨須も知っている人だよ」
まさか、恵実花が付き合うだなんてね……。
何人もの、男の子に告白されてきて、それなのに、今まで誰とも付き合わなかった恵実花がね……。

そんな、恵実花と付き合っている人は私も知っている人だと言うが……、一体誰だろう?
うーん、私と恵実花と両方との知り合いなら校外ってことは、まずないだろうし、同じクラスの人かなあ?
なんか違う気がする。
恵実花がクラスでそういう反応見せたことないし……。
だとすれば……、生徒会メンバー?
生徒会メンバーで男子は一人しかいない。

「もしかして、坂口くん? 」
「うん、亜梨須、当たりだよ」

坂口くんは、生徒会唯一の男子メンバーで、副会長を務めている一年生だ。
私自身の印象としては、とてもいい子といった感じだ。
イケメンかどうかと言われると、イケメンでは無いのだが、彼を今年初めて見た時、どこかで見た顔だなあと思ったら、ギャルゲーの主人公のような見た目なのだ。

前髪が長く目を隠している。
メガネをかけている。
ぱっと見、冴えない印象を受ける。

······まあ、こんな感じの人だ。
そんな彼と恵実花が付き合っているのは少し意外だった。

「それで? 恵実花はいつ告白されたの? 」
「ううん? 告白はされてないよ」
「え? 」
てっきり、告白をされて、勢いで付き合ったものかと思っていた。
いや、さすがに、それは坂口君に少し失礼だったかな。

「告白されたんじゃなくて、私がしたのよ」
「えぇ!? 」
某日曜の国民的アニメのお兄さんの様な声を出してしまったところで私はようやく、ここが喫茶店内だったことを思い出し、声のボリュームを少し落として、恵実花に聞いた。

「えっと、いつから好きだったの? 」
「うーんとね、初めはただの可愛い後輩ぐらいにしか思ってなかったよ? 
でもね、段々と彼の優しさとかそういうのに気づいていって……」

恵実花はそこで頬を少し赤くした。

「ある日ね、私は前髪を少しだけ切って学校に行ったのよ」
「え、そんなことあったっけ……?」
「あったよー。
まあ、友達も誰も気づいてなかったし、親友の亜梨須も気づいてなかったぐらいの変化だったからね、気づかないのも無理はないかな」
親友のという所を強調して、恵実花は意地悪そうに言った。

「ご、ごめんってば! 
それで? それがどう坂口君と関係してくるの? 」
「うん、実はね、その日の放課後、私が生徒会室に行くと坂口君が居たんだけど、私のことを見てから『こんにちは、恵実花先輩』って言った後に『あれ? 先輩今日はいつもと髪型違うんですね! 』って言ったのよ」

え?
坂口君、私も気づけなかった恵実花の髪の変化に気づいたの?

「私はもちろん驚いて彼に『えっ? 』
って聞き返したのよ。
そしたら、坂口君が、『え? 先輩いつもと前髪の長さ違いますよね? 切ったんじゃないんですか? 』って」

えーと……。

「それでね、私彼のことが気になりだして、いつの間にか好きになっていて……、この間、夏休み中に一緒に海に出かけて、その時に告白したの」

恵実花は今までの私の中のイメージが崩れるくらいの表情で、ううん、たぶん、坂口君の前での恵実花の表情で顔を真っ赤にして話してくれた。
恵実花が坂口君のことが好きだっていうのは、よく分かったんだけど……。
けどね? 
坂口君に対して、ギャルゲーの主人公かよ!ってめちゃくちゃツッコミをしたい。
いや、ギャルゲーの主人公は鈍感なんだろうけど……。
こんな風に恵実花の喜ぶことをピンポイントで言って、彼女を落とすのは凄すぎると思う。
普通、そんな所に気づかないでしょ……。

「うん、そっか! 恵実花、おめでとう! 
恵実花がとっても幸せそうで私も親友として嬉しいよ」
「ありがとう、亜梨須。
それじゃあ、私も聞いていい? 」
彼女は先程までの顔を戻して、私の方を向いた。
「ん? 何を? 」

「あなたはいつ告白するつもりなの? 」

「ふぇっ!? 
な、何言ってるの? 恵実花は? 
私が誰に告白するって言うのよ」
「もちろん、進君に決まってるでしょ……」
今更何言ってるんだかと言いたげな顔で恵実花はやれやれと首を横に振った。

「す、す、す、進!?
なんで、ここで進の名前が出るのかしら!?
べ、べ、別に、わ、私は進のことなんか、ただの、大好きな幼なじみぐらいにしか思ってないし!? 」
「おーい、亜梨須? 
本音が少しだけ、漏れちゃってるぞー? 」
「い、今のはなんでもないの! 忘れて! 」
「あのねー、亜梨須。
この際だから、言っちゃうけど、あんたが進君のこと好きなの丸わかりだからね? 」
「え、えぇー……」
そ、そんなに、私って顔に出やすいのかしら?

「亜梨須のこと見てたら、そりゃ、よく分かるよ……。
進君に褒めて貰ったりした後はすごい上機嫌でさ、逆に、自分の思う通りのことをしてもらった時の態度といったらすごく不機嫌で……」
顔が自分でも物凄く赤くなっているのがよく分かる。

「も、もしかして、私が進のことを好きなのってもう進にバレたりとかしてるの……? 」
「うーん、バレてないと思うよ? 
亜梨須も大概だと思うけど、進君もすごい鈍感だし……、ここまで、亜梨須が分かりやすいのにずっと気づかないぐらいにはね」
「そ、そっかあ……」
よかった。
もし、バレてたら進と次会う時、どんな顔して会えばいいか、分からなかったし。

「それで? 話は戻るけど、進君のこと好きなんでしょ? 告白しないの? 」
「た、確かに私は進のこと好きだけど……」
「お、ついに認めたね」
うぅ、恥ずかしい。
妃愛蕾の時は今ほど恥ずかしくはなかったのに……。

「で、でも、今は告白するつもりはないというか、出来ないというか……」
「はあ……。
まあ、そんなすぐには出来ないとは思ってたけどねー。
まあ、でも、急かせるつもりはないんだけど、急いだ方がいいとは思うよ? 
もしかしたら、進君がほかの人に取られちゃうことだってあるかもしれないんだから」
「え……」
「その顔は、何か心当たりがあるみたいだね。
まあ、私から親友に言えることはこれぐらいかな? 
後は亜梨須が頑張るしかないんだから」
「う、うん」

「お客様、お待たせしました。
モンブラン二つと、ミルクティーのカフェオレをお持ち致しました」
そこで、ようやく、モンブランとドリンクが来たようだ。
私と恵実花はその後も話しながら、モンブランを食べたが、私にはあまりモンブランの味を感じることは出来なかった。

***
恵実花と別れた後、私は商店街を通って自宅までの道を歩いていた。
はあ……。
どうしようかなあ。
本当にどうしたら、いいのか分からなかった。
ただ、進に告白すれば済む話なのか。
それとも……。

私は、何気なく、和菓子屋さんの看板を見ると、そこには、今度行われるお祭りのお知らせが貼ってあった。

それを見た瞬間にこれだ!
と私は思った。
これで、進といい雰囲気になれれば……。

「うふふふふふふふふふふふふふ……」
私は通行人の目も気にせず、その場で笑い続けた。
······後から、思うと、あれは相当不気味で、頭のおかしな娘だと思われていたと思う。

***
私は寮の自分の部屋に帰るとすぐに、進に電話をした。
隣の部屋にいるんだから、隣の部屋に行って言えよという意見は今の私には厳しいので却下で。

何回目かのコールで繋がった。
「もしもし? 」
「なんの用だ······?」
進の少し不機嫌そうな声が聞こえる。
「うん、進に聞きたいことがあって」
「聞きたいこと? 」
「うん、来週の日曜日空いてる? 」
「日曜か?空いてるぞ?」
「よかった。まあ、あんたのことだから、日曜と言わず、毎日空いていることは分かってたけど一応聞いてみたわ」
軽くいつも通りに憎まれ口を叩いておく。
······こういう所が私は可愛くないんだろうなあ。

「で? その日に何かあるのか? 」
「うん、実はね、その日にこの近くでお祭りがあるのよ」
「祭りねえ……」
「で、その祭りがどうかしたのか? 」
「そのお祭りで私とデートして欲しいの」
あの時みたいに。
進と一緒に……。
「で、デートか……。
いや、それって名ばかりのやつだろ……」
「ええ、そうよ? 
だから、私と行きましょ? 」
「行くけどさ……」
「よかった! じゃあ、日曜日の4時に寮の前で待ち合わせね! またね、進」
私は最後の方は早口になってしまい、電話を切った。

進とお祭りデートかあ……。
私はその日のことを思って、天井を見上げるのであった。

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