テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第24話 過去と今の夏

進side
亜梨須と妃愛蕾さんと、海に行ってからしばらく経った。
俺はあれから、一度切れそうになった食料品を買いに行く以外は全く部屋を出ていない。

7月も終わり、8月になったがまだまだ外は暑い。
夏休みも残り約一ヶ月とまだまだある。

······ここで、ふと思い出した、俺の小学校の頃の夏休みの話をさせてもらおう。

俺は夏休みは、今と同じように、家の中で一日のほとんどを寝て過ごしていた。

宿題?

そんなのは、始まってすぐ終わらせた。
ただ、ここで俺が困ったのが、絵日記である。
夏休みの毎日の記録を絵と字で書き記していく、どこの小学校でもやっていそうなこの宿題だ。

偏見に近いんだろうが、こういうので苦労する人って、夏休み最後の日にまとめて、宿題をやろうとして、三十日間分を書こうとするんだよな。
まあ、この宿題の絵日記が好きという人は、少ないことは間違いないだろう。

かくいう、俺もこの絵日記だけは、嫌いである。
さて、俺は別に宿題を貯めるタイプの人間では無いので、そういう意味で困ったことは無いのだが……。

俺が困ったこと、それは、夏休み中に起こる出来事の少なさである。

ここで、俺と同じような経験のある人は分かると思う。

しかし、俺はそんな中でも筋金入りで、家から全く出なかった夏休みもあったほどだ。

毎日、今と同じように寝て過ごしていただけの夏休み。
まあ、時々、亜梨須が俺の家に遊びに来たり、俺が遊びに行ったりはしていたが……。
それも、高学年になるにつれて、数は少なくなり、俺は家から出なくなった。

とにかくだ、そんな夏休みを、絵と文章に起こすんだぞ?
ベッドの上に寝ているか、本を読んでいる俺のイラスト。
その下には、

本を読んで、寝た。

という一文のみ。

······それが、三十枚以上続くんだぞ?
まあ、それで、提出しちゃえばいいんじゃんって、考える人も中にはいると思うんだが、

俺の小学校の頃の担任の教師は、なんと、夏休みが終わって初めの授業で絵日記をまわさせて、全員に読ませるのだ!

俺の苦労が分かってもらえただろうか……?

本当にこの謎の授業は意味が分からなかった……。
まじで、なんの意図があってこんなことをするんだと小学校時代の俺は何度も嘆いたものだ。
こんなのただの俺を集中的に狙ったいじめなんじゃないかと疑ったさ。

クラスのカースト上位共は、楽しそうに自分達が書いた絵日記を周りの人に自分から見せて、夏休み中に自分達がやった楽しいことを自慢していたがな。

おっと、話が脱線してしまったな。

まあ、つまりだ。
ここまで長々と語ってきたが、
俺が言いたいのは、絵日記という存在はぼっちにとっての天敵というわけだ。

***
まあ、そんなくだらないことを長々と考えることが出来る程に今の俺は暇だった。
昔と違って、今の俺には、本すらない。
本は寮に持ってくるには多かったので、ほとんどを売り払い、余ったものを実家に置いてきたぐらいだ。

こっちに来てから、本を買いに行くことは無かったので、俺の部屋は実家の部屋よりもさっぱりとしてしまっている。
「はあ……、こんな時になんか、暇を潰せるものがあるといいんだけどなあ」

同じクラスの奴らはスマホをして時間を潰しているやつもいるみたいだったが、俺はそれはやらない。
昔からゲームとかもしなかったし、スマホでできる課金ゲームも、俺は全て無意味に思えてしまってやりたくはない。
Twitterなどの人と交流するアプリも、人との交流に趣をおいていない俺にとっては、必要のないものだ。
動画は……、特に興味のあるものがない。
そのほかのアプリなんかも、一通り見たが、特に俺が惹かれるものは無かった。

スマホは、連絡さえ出来れば十分だと俺は思う。
······まあ、その連絡さえも、俺は使う機会が少ないが。

というわけで、俺はずっと、ベッドの上でごろごろしている。
「あー、ごろごろし続けるのもなかなか楽しいな……」

案外、精神統一をするために、行われている瞑想なんかも、みんな楽しくやっているのかもしれないな。

そんなどうでもいいことを考えていると、スマホが震えて、電話がかかってきた時の音楽が流れる。

電話をかけてきた相手は亜梨須のようだ。
「もしもし? 」
「なんの用だ……?」
「うん、進に聞きたいことがあって」
「聞きたいこと? 」
「うん、来週の日曜日空いてる? 」
「日曜か?空いてるぞ?」
日曜と言わず、毎日空いていることは秘密だ。
ちなみに、今日は俺が最も嫌いな月曜日だ。
まあ、学校ないから、関係ないけどもな。

「よかった。まあ、あんたのことだから、日曜と言わず、毎日空いていることは分かってたけど一応聞いてみたわ」

じゃあ、聞くなよ
とは、口に出さなかった。

「で? その日に何かあるのか? 」
「うん、実はね、その日にこの近くでお祭りがあるのよ」
「祭りねえ……」
そういえば、俺はお祭りとかそういうのには、一度も行ったことがなかったな。
知識としては、知っているが。
人混み嫌いだし、行かなくてもいいんだけどね。
「で、その祭りがどうかしたのか? 」
「そのお祭りで私とデートして欲しいの」
デート……、デートねえ……。
うん? デート?
なんか、この会話めちゃくちゃデジャブなんですけど。
「で、デートか……。
いや、それって名ばかりのやつだろ……」
「ええ、そうよ? 
だから、私と行きましょ? 」
こいつ、悪びれもなく、言い切りやがったぞ。
だからってなんだよ、だからって、全然会話繋がってねえだろ。
まあ……、
「行くけどさ……」
「よかった! じゃあ、日曜日の4時に寮の前で待ち合わせね! またね、進」
そう言って、亜梨須は電話を切った。

また、面倒くさいことになりそうだなあ。
······まあ、部屋の中でだらだらしているよりかは、楽しそうだな。

俺は後になってようやく、この時初めて、亜梨須と電話したことに気づき、何故か、少しだけ、照れくさくなった。



1000pv突破!
まさかの、四桁いきました!
この作品を始めた時はこんなに読んで貰えるとは全然思ってなかったので、本当に嬉しいです。
これからも、投稿続けていきますので、最後までぜひ、お付き合い下さい!

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