テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第23話 そろそろ帰ります

進side

痛い……。

俺は体をゆっくりと起こした。

一瞬、目覚めた場所が見慣れた自分の部屋では無く、岩に囲まれた薄暗い場所であることに少し戸惑いを覚えたが、昨日何があったのかを俺は思い出した。

「あー、そういえば俺、遭難してたんだっけ……? 」
自分が遭難したことを思い出しても反応はあっさりとしたものだった。

燃え尽きた薪の周りには、妃愛蕾さんと、亜梨須も寝ている。

俺は二人を起こさないようにその場からゆっくりと立ち上がり、洞穴の外へと出た。

***
外は昨日の雨が嘘のように、よく晴れていた。
まだ、地面は少しぬかるんでいる。
ぬかるんだ場所を避けながら、俺は海岸沿いに向かって歩いていった。

うーん、後藤さんが亜梨須が帰ってこないことに気づいて、探しているはずなんだが、それがどれぐらいかかるかが問題なんだよなあ。

まあ、このあたりにそこまで島はないらしいからすぐに見つけてくれるとは思うんだが……。
砂浜まで、たどり着いた俺は、そこ辺りに落ちていた木の枝で、SOSと大きく地面に書いた。
定番だし、やってみたかったというのもあるが、これでここに後藤さんが、やってきた時に分かるようにするためだ。

それから、俺はこの小さい無人島の外側を一周しながら、少し歩いては、SOSとまた書き、また歩いては、書いて行った。

***
島の外側を一周した俺は、洞穴に戻った。
戻ると、亜梨須と妃愛蕾さんはまだ寝ていた。

「いや、寝すぎだろ……」

二人とも幸せそうな表情で寝ている。
よくこんな硬いところで気持ちよく眠れるなあ。
「俺は、男として意識されていないんだろうか……。
無防備すぎませんかねえ……」
何もするつもりは無いが、こうまで、男として意識されていないと、逆に辛い。
それに……、
お忘れかもしれないが、俺達は今、全員、水着を着ているのである。

つまり、寝ている二人はどちらも、とても悩ましい格好をしているという訳だ。

というか、すごく、目に毒である。
なんだか喉が乾いてきた。
健全な男子高校生である俺としては、目の前に肌色成分が多すぎて、どうしようもない。

結果、俺は、目を逸らすぐらいしかできず、二人が起きるまでずっと下を向いていた。


······本当だよ?
まじで何もしてないからね?
いや、それはそれで男としてどうなんだって全国の男に言われそうだけども……。

***
二人が起きて、まもなくのこと、
「皆様ー!
どこにいらっしゃいますかー!
いたら、お返事をお願いしますー!」

どうやら、後藤さんが来たようだ。
思ったよりも早かったな。

俺達は洞穴の中から出て、後藤さんの声が聞こえた方向に向かった。

その後のことだが、
後藤さんの乗ってきたクルーザーに俺達も乗せてもらい、別荘へと戻った。

俺達は別荘で、風呂に入った後、朝ご飯を食べ、後藤さんに話を伺った。

「お嬢様たちのボートにはGPSがついていたのですが、それが、突然途絶えたので驚き、すぐ迎えに行こうとしたのですが、何分、昨日の大雨で……、探すのが遅くなって申し訳ございませんでした」
あー、それで早かったのか。
で、船は途中で沈んだから、そこでGPSが途絶えたんだな。
そのあと後藤さんは、俺が書いたSOSを見つけて、今に至るという訳だ。

あとは大したことは何も無く、
俺達は別荘を出て、船に乗った。
そのあと、行きと同様に後藤さんの車に乗せてもらい、寮まで送ってもらったという訳だ。
妃愛蕾さんは、家まで送ろうかと後藤さんに聞かれたが、
「いえ、寮の前までで大丈夫ですよ〜」
うーむ、妃愛蕾さんの家を見てみたかったが、残念だな。

そして、俺達は、寮まで送ってもらい、
俺以外も、かなり疲れた様子で、
「じゃあな……」
「うん、またねー」
「バイバイー」
と、解散した。


***
俺は自分の部屋のベッドに部屋につくなりダイブした。

めちゃくちゃ疲れた……。
普段、体を動かさないのに、急な運動をしたので、身体中痛い……。


······そういえば、さっきそのあと大したことは特に何もなかったと言ったが、あれは少しだけ、嘘だ。


細かい描写は俺の精神の都合上省かせてもらうが、後藤さんの車の中でのことだ。
亜梨須と妃愛蕾さんは、どちらも、疲れが溜まっていたのだろう。

そのうち、二人は眠ってしまい……。

······このあと何が起きたかは俺の口からはこれ以上語れないが、俺達は後ろの席に、右から、妃愛蕾さん、俺、亜梨須と並んで座っていて、その時点でかなり密着していたことと、後藤さんが、その様子を半分微笑ましそうに、半分面白そうに見ていたことだけを教えておこう。

もちろん、俺の内心はすごく落ち着いていて、そんなことぐらいじゃ、少しも狼狽えることは無かったけどな。

え? それなら、詳しい描写を教えろだって?
············すみません、少しだけ、ほんと少しだけ、嘘を吐きました。

本当は、物凄く、内心焦りまくりで、何も考えることも出来ず、両腕と両肩にかかる感触を楽しむことも出来ず、感じることしか出来ませんでした。

ま、まあ、こんな感じで俺の夏休み、最大のイベントは幕を閉じたってわけだ。
今までの俺の夏休みの中で最も充実していた夏のイベントだったことは間違いないだろう。



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