テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第12話 デート・ア・アリス

そして、遂に土曜日が訪れた。

進side
俺は亜梨須との約束通りに、柳沢駅前に来た。
現在の時間は8時30分。
普段なら、待ち合わせには、ギリギリの時間に行くタイプの俺だが、今日は30分も前に来た。
これこそ、俺の優しさの現れ。

決して、亜梨須が怖かったからではない。

俺は亜梨須が30分後に来るまで駅前のベンチに座って待っていようとして、行ってみると、
そこに、既に先客がいた。

まあ、そりゃ先客ぐらい普通にいるだろう。
しかし、よくよく見ると、そこに居たのは、
30分後に来るはずの亜梨須であった。


***
亜梨須side
私は、昨日から楽しみすぎて、ほとんど眠れなかった。

4時には目が覚め、
6時50分には家を出た。

そして、駅に着いたのは今から、1時間30分前のことであった。


私はアホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー!!

なんで、こんなに早く来ちゃったのよ!


こんな時間に進が来ているはずもなく、私はベンチに座り、ずっと待っていた。

「(はあ……。
進のことだから、9時ぴったりに来るわよね……。
どうして、私はほんとにこんなに早く来ちゃったのかな……)」
今はまだ8時30分。
進が来るのはあと30分も先という事だ。

「(私だけ、期待しちゃって馬鹿みたい……。
進は別に私とデートなんてしたくないだろうし……。
それに、今日の髪型も気合いだしすぎて、空回りしちゃってるし……。
よし、今からでも遅くないし、元の髪型に戻してこよう)」


私が立ち上がろうとした時に……
「亜梨須、来るの早過ぎないか?」

後ろから声をかけられた。
よく知っている声のように聞こえたけど……、
私が振り向くとそこには進がいた。
「ふぇ?進?どうして?」

進は、
「どうしては、こっちのセリフだぞ。
ったく、待たせて悪かったな。

亜梨須、今日髪型が違うし、一瞬誰か分からなかったぞ。

そのツインテールも似合ってるけどさ」

「あ、ありがと」

「んじゃ、そろそろ行くか」
「うん!」

デートはまだ始まったばかりだ。
それなのに、私の心はすでに幸せでいっぱいだった。


***
進side

ふう、まさかあんなに亜梨須が来るのが早いなんてな……。

念の為、早く来てよかった。
もし、9時に来てたら亜梨須に殺されてたな。
今は顔が俯いてて見えないが、亜梨須は相当怒っていることだろう。
はあ……、面倒臭い。
この空気をどうにかしようと、
「亜梨須」
「なに?」
亜梨須がこっちに目を合わせてくれすら、しないんですけど……。
「き、今日はなにを買いに行くんだ?」
俺にはそう答えるので精一杯だった。

「今日?今日は……、
まず、服を買いに行きたいわ」
「えっと、どちらへ……?」
「最近新しく出来たばかりの、ウイロウモールに行きましょ」
「ウイロウモールかあ……。
はいよ、分かったよ」
ウイロウモールというのは、柳沢市に最近出来たばかりの、遊ぶところもあって、買い物なんかもできる、リア充御用達の施設である。
―――俺はもちろん行ったことは無い。
しかし、場所は知っている。
なぜなら、昨日の夜、色々と調べた中にウイロウモールも入っていたからだ。

俺がその時思ったのは、
このウイロウモールってのはちょっと安直すぎるだろ……。
(柳は英語でwillowウイロウである)
って言うことだったが。

まあ、とりあえず、亜梨須の希望どおり向かうとしますか……。

***
亜梨須side

す、進の顔がまともに見れない……。

進があんなに早く来てくれたのが進の面倒くさがりや具合を知っている私には、その事がとても嬉しすぎる。
しかも、髪型まで褒めてくれるなんて……。

今の私のこの絶対にだらしないであろう、にやけるのがとまらない顔を進に見せる訳には行かない。
そのため、いつもより、素っ気なく返してしまう。
うぅ……、ごめんね、進。
ウイロウモールに着く頃までにはなんとか止めるから……。

***
進side
「着いたな……」
俺達はウイロウモールへと着いた。
それにしても……
「人、多すぎるだろ……ここ」
まるで、戦場のような有様だった。
人混みが嫌いな俺としてはこれは辛い。
「そう? 普通じゃない?」
隣で、亜梨須が何か言っているが、俺には亜梨須のその感覚のほうがおかしく思える。
「それで、亜梨須。
亜梨須が買いたいのは服だったよな?
もう、行く店とか決まってるのか?」
「うん、決まってるわよ。
まずは、ここの二階にあるお店ね」

俺と亜梨須はそのお店に行った。
「じゃ、入りましょうか」 
「いや、亜梨須待てよ」
「ん、どうかしたの? 進」
どうかしたのって……
「ここどう見ても女性専用のお店なんですが」
男の俺が入るのはまずいだろう。
「大丈夫よ、別に進も来ていいわ。
私と一緒なら問題ないでしょ?」
「確かに、それはそうなんだが……
精神的にきついというか……」
「あぁ、もう! ごちゃごちゃうるさいわね!いいから、一緒に来なさい!」
「いや、ちょっ、まじでかぁ・・・」
俺は亜梨須に引きずられて、店の中に強制的に入れられた。

***
亜梨須side
「ねえ、進?この服どっちがいいと思う?」
「あのー、亜梨須さん?」
「やっぱり、こっちのほうが良くない?」
「いや、だから、その、亜梨須さん?」
「うん! 決めた! こっちをちょっと試着してくるね」
「聞けよぉぉぉぉぉぉぉぉー!!」

俺はほかのお客さんの邪魔にならない程度の音量で叫んだ。
「どうしたのよ、進」
亜梨須が不思議そうにこちらを見つめている。
「俺、周りの人たちから相当白い目で見られているんですが……」
「どんまい!」
「どんまいで済むかぁぁぁー!!」
店内には、今、俺しか男がいなかった。
そんな俺のことを見る度に、女性達がひそひそ囁くのはもう心が砕けそうだ……。

「もう……、仕方ないわね。
私が、今からこの服を試着するから、見て、感想をちょうだい。
そしたら、もう、この店の外に出てていいから」
「そんなんでいいなら、いくらでもするから、
早く着替えてこいよ」
「分かったわ。
じゃあ、ちょっと待っててね」
そして、店内に男一人でいる(ように見える)俺。
亜梨須ぅ……、頼むから、早く着替えてくれ……。
そして、数分後。
亜梨須が試着室から出てきた。
「どう? 似合う?」
亜梨須が着ていたのは、青色のフリルの付いた水色のワンピースで所々に白い刺繍があしらわれている。
「あ、うん……。可愛いと思うぞ」
あ、やべ、本音がでてしまった。
こりゃ、亜梨須が調子に乗るなあ……。
そう思っていたのだが……、
何故か、亜梨須は黙ったままだ。
あれ? いつもなら、自分が美少女であることを自慢してくるのにな。
「・・・・・・・・・・・・」
ただただ、赤い顔をしてこちらを睨みつけてくる。
どうしたのだろうか。
「あのー、亜梨須さん?」
「進、店の外に出ていって」
「分かった!」
俺はその言葉に従い、全力で店の外へと駆け出した。

***
亜梨須side
進……。
進が……。
私に、可愛いって……!
可愛いって言った!!
えへへーー。ふふっ!

私は進が可愛いと言ってくれた、この服を買ってから、私は店の外へと出た。

***
進side
亜梨須のこと怒らせちゃったかな……。

怒らせた理由が全くわからないのが問題だ。
はあ……。
なんか、今日は亜梨須のことを怒らせてばっかりだ……。

店から出てきた亜梨須から買い物袋を受け取り、一緒にその後、映画を見ることにした。

亜梨須は俺が見たい映画がなにかある?
と、聞いてきて、俺はないよ。と答えるとなぜか、亜梨須は少し残念そうにしていた。

それで、結局俺達は恋愛映画を見ることにした。

俺は特に恋愛映画がそこまで好きなわけではなかったんだが、この映画はとても面白かった。
まさか、あのタイミングでヒロインが幼なじみの男に告白するとはなあ。

あ、そうそう、亜梨須は映画の最後の方で、時々、ちょっと、うなっている時があった。
あれは、一体なんだったのだろうか……。


亜梨須side

進と恋愛映画を見ることにした私は、映画が終盤に差し掛かった今、映画どころではなかった。

なぜなら、さっき映画の中の男女2人がデートしていて、映画館でもデートしていたのだが、映画中に暗い中、主人公の男の子にヒロインの女の子(私的には結構好きなタイプだった)が、勇気を出して、手を繋ぎに行ったのを見て、私は今、すごく意識してきた。

そう、今、すぐ横にある、進の手を。

手を伸ばせばすぐ触れられる距離。

とても、もどかしく感じてしまう。

手を出そうとしては、また、戻して……。
それの繰り返しをしてしまう。

むぅぅ……。
私には映画を見る余裕はなかった。

結局、進と手を繋ぐことは出来ませんでした。


進side
映画を見た後、俺達は昼食をとることにした。
モールの中にあった、フードコートで注文した俺達。
俺がカレーうどん、亜梨須がミートソースのパスタだった。

こういう時って、ほんと個人の好みが出るよなと俺は思う。

あ、俺は和風のものとかが好きで、亜梨須は洋風が好きだ。

まあ、俺の今日のカレーうどんは和風ではな気もするが。
おいしいよね、カレーうどん。

途中フードコートがかなり混んでいて、亜梨須とはぐれそうになり、俺は咄嗟に亜梨須の手を掴んだ。
「ひゃい!?」
この声は亜梨須のものである。
俺達は手を繋いで人混みから抜け出した。

・・・・・・その時の亜梨須は、朝と同じでなぜか、顔を絶対にこっちに向けてくれなかった。
まあ、俺にとっても好都合だったけどね。

その時の俺の顔絶対に真っ赤だったし……。

昼食をとった俺達は、
その後、腹ごなしに運動をしたかったので、
モールの中にあるバッティングセンターに行くことにした。

***
俺はバットを構える……、
これが最後の一球だ。

油断せずにタイミングを読んで、
俺はバットを振った!


バットはボールの中心……、ではなく、端っこにあたり、俺の前で弱いごろとなった。

亜梨須はというと……、
20回あるうちの今は20回目なんだが、

綺麗にホームランを決めていた。

亜梨須は、なんと20回中19回もホームランを決めた。

1回のミスは、1番初めの球が惜しいところに当たったせいである。

亜梨須は1回打ち、感覚を掴んだらしく、その後、全ての球を綺麗に打ったということだ。

あ、俺?俺は、

20回中、ホームラン7回だ。

まあまあいいと俺は思うんだが……、

この差は酷すぎる……。


亜梨須side
「気持ちよかったー!」
「うん、そうだな」
「バッティングセンターって始めてきたけど、あんなに、楽しいものだったのね!
私、また挑戦してみたいわね」
「そっか……」
なぜか、先程から進が死んだ目をしている。

どうしたんだろう。

進が、
「じゃあ、次はどこ行く?」
と聞いてきた。
「うん、次行きたいのは……」
そこが今日のデートの終わりで、私の大本命の場所だ。

「公園よ」
「公園ね、了解……。
へ?公園?んなもん、このモールにないだろ?」

「ううん、ないよ。
私が行きたいのはこのモールを出て、5分ぐらいのところにある公園」

「え、そこって……柳沢公園だよな?」
「うん、そうだよ」
「そんな所に行きたいのか?」
「うん、どうしても行きたいの」
「わかった……。
じゃ、モール出て、向かうか……
ほんとになぜ、あんなところ行きたいんだか……」

今は5時、もう少しで私と進のデートも終わる。
その前に絶対にあそこには行きたい。


***
進side

なぜ、亜梨須は公園なんかに……
と思ったが、柳沢公園に来た俺達の目の前にあったのは、その理由すらどうでも思えるほどの景色だった。

「ね? ここ綺麗でしょ?」
と、亜梨須は横で囁くようにして言う。

「あぁ、綺麗だなあ」
夕焼けの空を雲が流れていく。
ここは公園なのに、高台になっていて、ここの近くにある海がよく見える。
その海にももう1つ波の中でゆらめている夕日がある。
そして、俺達はそのままどれだけの時を過ごしたのか……、
実際には数分そこらしか経っていないのに俺には、もう何時間も過ぎたように感じた。
次第に夕日が落ち、空が暗くなってきた頃、
亜梨須が口を開いた。
「進、昔の私たちがいつも一緒に遊んでいたあの公園のこと覚えてる?」
「あぁ、もちろん。
こんな風に日が暮れるまで、ずっと、遊んでたっけかなあ」
あの頃は、何も考えずに、遊んで、食べて、寝て、本当に生きていたという感じがした。

「そうだね……。
あの頃の進は今と違ってやる気とか元気とかすごくあったもんね」
「確かにな……。
今じゃ、あんなことやれないし、やるだけ馬鹿なことだと思っているからな」

俺も、昔はずっと外を走り回ってたりしたなあ。
あの頃の事を思い出そうとすると不思議と亜梨須と遊んでいた記憶ばかりが甦ってくる。

「進、今日はありがとうね
私とのデートに付き合ってくれて」
亜梨須は独り言のようにそう呟く。

デートだとか、付き合ってだとか、そんな言葉にドキッとしてしまう。

しっかりしろよ、俺……。
今はこんな雰囲気だから、ドキッとしただけだ。
思い出せ、相手はあの亜梨須だぞ。
傲慢で高飛車で、オタクでそれに自分で美少女だとか言っているようなやつだ!
よし、これで大丈夫だ……。

「進……」
亜梨須がそう言って、俺の顔に自分の顔を近づけて来た……。
え、ちょ、亜梨須さん?
亜梨須の顔はもうほとんど、夕日がないこの暗闇でも分かるくらいに真っ赤だ。

俺の心臓はさっきの自己暗示なんか、ものともしないぐらいに、ずっと早い鼓動を続けていた。

そして、亜梨須は……、














俺の頭に手を伸ばし、何かを取った。









「進、木の葉、頭に付いてたよ?」
「あ、ありがとう」
あ、焦ったあ。
俺はてっきり……、いや、そんなことあるはずがないのだ。

心の中でも考えちゃいけない。

そこで、亜梨須は急に不安そうな顔になり、
「ねえ、進?
今日の私とのデート……、楽しかった?」
と言ってきた。
俺はその問に対して、
「まあ、なんか疲れたけど、気持ちいい疲れだな。
最近、人と出かけることなんてなかったから、新鮮だったな」
でも、その答えは亜梨須には不満だったらしく、赤い頬を膨らませ、
「そんなこと聞いてない。
楽しかったかって聞いてるの」
と言ってきた。
「あぁ、うん……。
デートかどうかは別として、楽しかったよ。
今日1日楽しかった。
それより、亜梨須のほうに楽しかったかって聞きたいんだが、亜梨須のことを俺怒らせてばかりだったし……、
亜梨須こそ、楽しかったのか?」
そんな俺の心配がこもった問胃に対して、亜梨須は、
「ふぇ?私、今日1度も怒ってないけど?
もちろん、楽しかったに決まってるんじゃん!」
と、満面の笑みで返してくれた。
「え、怒ってないのか?」
「いや、どこに怒る要素があったのよ……
あんたの中の私どれだけ怒りっぽいのかしら。
むしろ、その事について怒りたいんだけど」
嘘は言っていないみたいだなあ……。
そっか、俺の勘違いかあ……。
よかった……。

「ん、結構怒りっぽいかな」
と、俺は冗談交じりに返す。 
「なんですってぇ! もう、いいわよ!
進となんか、もうデートしてあげないんだからね!」
それを分かっているのか、亜梨須もどこか冗談混じりにこちらに返してくる。

「はいはい、別にもう行かないくてもいいよ」
「進ぅーー!」

***

そして、俺達はそのまま一緒に寮まで歩いて帰った。

亜梨須にじゃなあと告げて、部屋へと、入る。
「はぁぁぁぁー」
つ、疲れた……。
もう今日はすぐ寝たい……。
幸い、明日は俺の大好きな日曜日なので遅くまで寝ても誰も文句はないだろう。

というわけで、
俺はベッドの中に飛び込み、
そのまま今日の楽しかった一日を思い出しながら、眠りについた。

亜梨須side
進と別れたあと私は自分の部屋へと戻った。

部屋の中に入った途端に私は……、
先程の彼の頭についた木の葉を取った時のことを思い出し、悶え苦しんでいた。

「うぅぅー!!」
私、どうしてあんなことを……、
あの時の私は本当は進の頭についた木の葉を取ろうとしたのではなく、
彼にキス・・・をしようとしていたのだ。

今、思い出すだけでも、恥ずかしい!

あの時、進の頭についた木の葉を見つけてなかったら今頃は……、

ほっとする気持ちと共に残念だなと思う気持ちの自分もいる。

でも、今日はこれでいいのだ。

少しずつ進に私のことを好きになってもらうのだ。

私はそう決めたんだ。

絶対に今年中には進に告白してみせる!




私はもう今日は特になにをする気力もなく、そのままベッドの中に入り、

今日の進との思い出に浸りながら、
眠りについた。


私は今日のことを絶対に覚え続けているだろう、という確信を持って……。










100pv突破しました!

読んでくださった皆様本当にありがとうございます!

これからも、読んでくださると嬉しいです!

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