テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第10.5話 願い事(裏)

亜梨須side
私たちがいる柳沢高校では、七夕の時期に短冊に願い事をを書く。

この願い事が本当に叶うとは私は思っていない。
でも、叶えばいいなと思う私もいる。

そんなふうに考えながら、
短冊に願い事を書こうとした時、
隣の進から声をかけられた。

「なあ、亜梨須。
亜梨須は去年はなんで書いたんだ?」
「去年?去年は確か……。
(去年?去年は……あ……)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・世界中の全ての人が幸せになりますように、よ」
もちろん嘘である。
こんなことを短冊に書く高校生がいるわけが無いのに、私は焦ってこんなことを言ってしまった。

「そ、そうなのか、お前すごいこと願ってるんだな……」 

「あ、亜梨須ちゃん、そんなこと考えてるんだ……」
進も妃愛蕾さんは私のことを見て、1人は畏怖し、もう1人は尊敬の眼差しであった。

ほんとにごめんなさい……。
なぜか、謝りたくなる私であった。

「うん、私ぐらいになると、それぐらい、毎日祈ってるのよ!
それより!進はなんて書いたの?」

場の空気を変えようと、私は頑張る。
そのため、進に話を振ることにした。



「俺は、去年は無難に世の中から面倒臭いことが消えますようにって書いたぞ」

あぁ、進らしい答えだけど、さすがに、進のこと大好きな私でもそれは引くわよ……。

「それを無難と言えるあんたの価値観が凄いわよ……」

妃愛蕾さんは、
「ふふっ、進くんらしいね!」
と笑った。
妃愛蕾さん、包容力ありすぎでしょう……。

「うーん、私は何書こうかなあ……」
そんな、妃愛蕾さんに、進が、
「やっぱり、今自分が望んでいることを書くべきだと俺は思うぞ。
自分に正直になって書くべきだ」

「あんたは自分に正直すぎんのよ……」
まあ、進のこういうところが好きなんだけど。

「自分に正直にかあ……
分かった!そうしてみるよー」
妃愛蕾さんは、そうして、自分の短冊にお願い事を書き始めた。


***
私は進たちには恵実花と短冊を飾ってくると言った。
それは、嘘じゃない。
でも、私は1つだけ小さな嘘をついた。
それは……、
「ねえ、亜梨須?亜梨須の短冊どこに飾ったの?
私が短冊を飾っている間にどっかに飾っちゃたでしょ?」
恵実花はそんなことを言ってくる。
そう、私は誰にも場所を教えてないのだ。

「べ、別に大した事書いてないし。
言うほどのものじゃないわよ」
「んんー?
あー、もしかして……、
亜梨須、去年も教えてくれなかったよね?
それって、やっぱり……
ふふっ、わかったよ。
聞かないでおいてあげる」
「うん、そうして」
私の短冊は誰にも見つかる訳には行かないのだ。
そう、誰にも。

私が去年書いたお願いは、

進とこれからもずっと一緒いられますように

というものだ。

あの時の私は進とずっと一緒にいたいとただそれだけを願っていた。

でも、それじゃダメなんだ。
幼なじみだからって、ずっと一緒にいられる訳じゃない。
いつかは離れ離れになってしまう。
私はそれがたまらなく怖い。
だからこそ、願うばかりじゃなく、
自分から動かなきゃダメなんだ。

今まで通りじゃ、いけない。
少なくとも進に私のことを意識してもらいたい。

だからこそ、今年の私のお願いは、

進とデートをする!

なのだ。

私は自分のこの恋は自分で切り開いていくとそう決めたのだ。


***

今日は進と二人で寮に帰っている。
他愛もない話をしていたら、いつの間にか、寮に着いていた。
むぅ……、こんな時は寮と学校の近さが嫌になってしまう。


進は自分の部屋へと、向かおうとする。
私もいつもなら、普通に部屋に戻るつもりだった。
でも、その時、私の頭の中はあの短冊に書いたお願い事のことでいっぱいだった。
そして……、
私は自分でも気づかないうちにいつの間にか、
「ねえ、進」
彼のことを呼び止めていた。

「ん?」
と、彼は止まって、こちらに振り向いた。

私は、彼に、

「あんたさ、今度の土曜日に

                             私とデートしなさいよ」

自分でも言うつもりもなかった、意外なタイミングで爆弾発言を言ってしまったのだった。





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