テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第10話 願い事

進side
職場体験が終わり、そろそろ梅雨も開けそうな頃。

つまりは、今日は7月7日である。

うちの学校では、七夕の日には、毎年短冊に願い事を書いて、笹の葉につけるという伝統的な行事がある。

ちなみに、そこで告白が毎年行われるのも恒例となっている。

俺には関係の無い話だが。


長浜先生から、クラス全員に短冊が渡された。
何を書くべきか……。


右隣の亜梨須に、参考として、聞いてみることにしました。
「なあ、亜梨須。
亜梨須は去年はなんで書いたんだ?」
「去年?去年は確か……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・世界中の全ての人が幸せになりますように、よ」

予想外の答えが返ってきた。
普通の高校生が書く願い事としてどうなんだろうか。
「そ、そうなのか、お前すごいこと願ってるんだな……」 

「あ、亜梨須ちゃん、そんなこと考えてるんだ……」
それを聞いていた左隣の妃愛蕾さんは、尊敬したように、亜梨須のことを見ている。

「うん、私ぐらいになると、それぐらい、毎日祈ってるのよ!
それより!進はなんて書いたの?」
少し顔を赤くした亜梨須が俺に聞いてくる。

「俺は、去年は無難に世の中から面倒臭いことが消えますようにって書いたぞ」
俺は自信を持って言ってやった。

亜梨須は少し引いだ様子で……、
「それを無難と言えるあんたの価値観が凄いわよ……」
と言い、
妃愛蕾さんは、面白そうに、
「ふふっ、進くんらしいね!」
と笑顔でこちらを見て言う。

そんなに、おかしいですかねえ、
俺の願いは……。

世の中から面倒臭いことがなくなった方がいいに決まっている。

妃愛蕾さんは、
「うーん、私は何書こうかなあ……」
俺は、
「やっぱり、今自分が望んでいることを書くべきだと俺は思うぞ。
自分に正直になって書くべきだ」
と、断言する。
「あんたは自分に正直すぎんのよ……」
隣で亜梨須が何か言っていたが、知ったこっちゃない。

「自分に正直にかあ……
分かった!そうしてみるよー」
妃愛蕾さんは、そうして、自分の短冊にお願いごとを書き始めた。

***
そして、短冊を笹の葉に俺達はつけた。
俺は下のほう。
妃愛蕾さんは、俺とはちょうど逆側にあるところにつけた。
亜梨須は友達と。
こちらは、どこに付けたのか教えてくれなかった。
まあ、いいか。

ちなみに、今年の俺の願いは、

トラブルに巻き込まれませんように

である。


俺の小市民的な感性だと、
ラノベ的な展開は望まない。

あれを見ている分には楽しいが、実際に起こっても疲れるだけだからだ。

それに、俺は今のこの状況に満足している。

前は行きたくなかった学校も今ではそこまでじゃない。


やっぱり、これはあの二人のおかげなんだろうなあ。

俺は変化を望まない。
何かが変わって、何かが終わり、悲しむぐらいだったら、俺は停滞を望み続ける。


***

放課後、今日は珍しく亜梨須と2人で寮に帰っている。
そして、寮に着いて俺は自分の部屋へ向かおうとしたその時……、
「ねえ、進」
亜梨須が俺を呼び止めた。
「ん?」


「あんたさ、今度の土曜日に、

                              私とデートしなさいよ」







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