テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない
第9話 職場体験 後編
進side
どうしてこうなったのか……。
俺はあと10分後には、この店で出すナポリタンを作らなければいけない。
はあ……。
全部亜梨須のせいだ。
亜梨須があんなわがままなこと言うから……。
俺も天長に対して売り言葉に買い言葉をしてしまった。
まあ、一度男が啖呵を切ったんだ。
やらなければいけないだろう。
それに、俺の胸の中にあるのは面倒臭いなという気持ちだけで、不思議と不安は全然なかった。
そろそろ、10分経つな。
よし、じゃあ、ナポリタン作ってやりますか……。
***
妃愛蕾side
進くん、大丈夫かな……。
亜梨須ちゃんから聞いた話通りなら、心配は要らないんだろうけど……。
それでも、心配なのだ。
今、私に出来ることは何もない。
その事実が、私を責める。
そして、隣にいる亜梨須ちゃんは進くんを信じているのに、私は彼のことを心配してしまう。
それは、
私が彼のことを信頼しきれていないからだろう……。
そう考えるとなぜだが、胸が苦しくなる。
何故だろう・・・・・・。
***
亜梨須side
これは今から少し、前の話。
そう、今から1年ほど前のこと。
とある休日のことだった。
私は特にすることもなく、ただ、なんとなく、ぼんやりしながらテレビを見ていた。
その時、インターホンが鳴った。
私は誰かなと思ってモニターを見てみると、
玄関にいたのは進だった。
私はすぐに自分の格好を鏡で確認し、
身だしなみを整え、玄関を開けた。
そして、玄関先で進がゾンビのような顔つきで立っていた。
「亜梨須、実はお願いがあるんだけど、聞いてもらえないか?」
と彼は言う。
「なに? お願いって?」
私は少し緊張しながらもそう返した。
「うん、俺に料理を教えて欲しいんだ」
え?
話を聞くと、なんでも、彼は今まで料理は調理実習ぐらいしかした事がなく、まともに料理を作ることが出来ず、困っていたそうだ。
彼はその日以来、毎日私の部屋に来ては料理の仕方を覚えて行った。
彼から、私に対する注文はただ一つ、
―――できるだけ、簡単で楽な料理の仕方を、教えてくれ
というものだった。
そして、彼は日に日に上手くなっていき、
遂には私より上手くなってしまったのだ。
そして、もう私から教えることは特になくなった最後の日、彼は、
「俺に教えてくれてありがとうな、亜梨須
これでやっとまともなメシが食べれれるよ……」
それ以来、彼とは料理の話はしなくなった。
それに、彼が作るのは、あんなに良い腕を持っているのに、簡単で楽なものばかりだ。
彼が極度なめんどくさがり屋なのは昔から知っていたが、あの腕を活かさないのは勿体なさすぎると、私はずっと思っていた。
そんな、できることなら料理などしたくない進がナポリタンを作るというのである。
それも、喫茶店という、責任があり、なおかつ、たくさんの人に料理を振る舞う場所においてだ。
そんな、いつもの彼なら、絶対しないようなことをしてくれたのは、何故だろうか。
やっぱり……彼は……、
妃愛蕾さんのことが好きなんだろうか……。
そうでもなければ彼がこんな私のわがままに付き合うとは考えづらい。
進は妃愛蕾さんにいい所を見せたくて、それで、こんなことをやってくれるのだろう。
不安がっていた妃愛蕾さんには、
「大丈夫だと思うわよ。だってあいつ、私より料理が上手だからね」
と言って安心してもらった。
私は彼を信じている。
絶対に彼を裏切らないと決めているほどに。
なのに、それなのに……、
私はなぜか、あの日進に料理を教えていたころが、終わった時のように、心が痛かった。
***
よし、出来たか……。
時間は……ぎりぎり、だな。
早く店長のところに持っていこう。
「店長、できました」
俺は店長に白い皿の上に乗ったナポリタンを渡す。
「おお! これは凄いじゃないか!
見た目は完璧だ。うちの店のナポリタンと見分けがつかない。
しかし、大事なのは味だ。
それでは、食べさせてもらうよ……」
店長がフォークにパスタを巻き、口へと運ぶ。
たった、それだけの動作なのに、俺と亜梨須と妃愛蕾さんは、緊張していた。
パスタを口に入れた店長は……
「こりゃ、すごい!完璧じゃないか! 」
絶賛してくれました。
ふうぅぅ……。
と俺達は緊張が解放され、一気に緩い気持ちになる。
俺は、店長に、
「では、店で出しても問題ないですよね?」
「あぁ、もちろんだ! このレベルなら普通に店で出しても問題は無いだろう」
よかったあ……。
「ところで、もう1人の君。
亜梨須さんと言ったかな?
君もこれだけ、料理が上手なのかい?」
その質問に対して、亜梨須が答えようとするが、それより先に俺が……
「はい、もちろんです。
だって、俺に料理を教えてくれたのは亜梨須なんですから」
そう答えた。
亜梨須は何か言いたそうな顔をしてこちらを見ていたが、俺は無視することにした。
***
結果から、言うと、
2日目の、職場体験は大成功であった。
俺と亜梨須が交代で、料理を作り、妃愛蕾さんも、1日目で慣れたのか、とてもいい動きをして、店を回すことが出来た。
もちろん、店長も大活躍であった。
たぶん、俺はこのことをいい思い出として、ずっと青春の1ページとして記憶の中に残すのだろう。
それはくすぐったくも感じるが、とても、いいことなんだと思う。
だが、これだけは言わせて欲しい。
俺は、もう、料理なんてしたくない!
あんな面倒臭いのはもうこりごりだわ……。
ほんと……。
まじで、無理。
店長には、バイトとして、来ないか?
と言われたが、
やはり、俺に喫茶店での仕事など、無理である。
どうしてこうなったのか……。
俺はあと10分後には、この店で出すナポリタンを作らなければいけない。
はあ……。
全部亜梨須のせいだ。
亜梨須があんなわがままなこと言うから……。
俺も天長に対して売り言葉に買い言葉をしてしまった。
まあ、一度男が啖呵を切ったんだ。
やらなければいけないだろう。
それに、俺の胸の中にあるのは面倒臭いなという気持ちだけで、不思議と不安は全然なかった。
そろそろ、10分経つな。
よし、じゃあ、ナポリタン作ってやりますか……。
***
妃愛蕾side
進くん、大丈夫かな……。
亜梨須ちゃんから聞いた話通りなら、心配は要らないんだろうけど……。
それでも、心配なのだ。
今、私に出来ることは何もない。
その事実が、私を責める。
そして、隣にいる亜梨須ちゃんは進くんを信じているのに、私は彼のことを心配してしまう。
それは、
私が彼のことを信頼しきれていないからだろう……。
そう考えるとなぜだが、胸が苦しくなる。
何故だろう・・・・・・。
***
亜梨須side
これは今から少し、前の話。
そう、今から1年ほど前のこと。
とある休日のことだった。
私は特にすることもなく、ただ、なんとなく、ぼんやりしながらテレビを見ていた。
その時、インターホンが鳴った。
私は誰かなと思ってモニターを見てみると、
玄関にいたのは進だった。
私はすぐに自分の格好を鏡で確認し、
身だしなみを整え、玄関を開けた。
そして、玄関先で進がゾンビのような顔つきで立っていた。
「亜梨須、実はお願いがあるんだけど、聞いてもらえないか?」
と彼は言う。
「なに? お願いって?」
私は少し緊張しながらもそう返した。
「うん、俺に料理を教えて欲しいんだ」
え?
話を聞くと、なんでも、彼は今まで料理は調理実習ぐらいしかした事がなく、まともに料理を作ることが出来ず、困っていたそうだ。
彼はその日以来、毎日私の部屋に来ては料理の仕方を覚えて行った。
彼から、私に対する注文はただ一つ、
―――できるだけ、簡単で楽な料理の仕方を、教えてくれ
というものだった。
そして、彼は日に日に上手くなっていき、
遂には私より上手くなってしまったのだ。
そして、もう私から教えることは特になくなった最後の日、彼は、
「俺に教えてくれてありがとうな、亜梨須
これでやっとまともなメシが食べれれるよ……」
それ以来、彼とは料理の話はしなくなった。
それに、彼が作るのは、あんなに良い腕を持っているのに、簡単で楽なものばかりだ。
彼が極度なめんどくさがり屋なのは昔から知っていたが、あの腕を活かさないのは勿体なさすぎると、私はずっと思っていた。
そんな、できることなら料理などしたくない進がナポリタンを作るというのである。
それも、喫茶店という、責任があり、なおかつ、たくさんの人に料理を振る舞う場所においてだ。
そんな、いつもの彼なら、絶対しないようなことをしてくれたのは、何故だろうか。
やっぱり……彼は……、
妃愛蕾さんのことが好きなんだろうか……。
そうでもなければ彼がこんな私のわがままに付き合うとは考えづらい。
進は妃愛蕾さんにいい所を見せたくて、それで、こんなことをやってくれるのだろう。
不安がっていた妃愛蕾さんには、
「大丈夫だと思うわよ。だってあいつ、私より料理が上手だからね」
と言って安心してもらった。
私は彼を信じている。
絶対に彼を裏切らないと決めているほどに。
なのに、それなのに……、
私はなぜか、あの日進に料理を教えていたころが、終わった時のように、心が痛かった。
***
よし、出来たか……。
時間は……ぎりぎり、だな。
早く店長のところに持っていこう。
「店長、できました」
俺は店長に白い皿の上に乗ったナポリタンを渡す。
「おお! これは凄いじゃないか!
見た目は完璧だ。うちの店のナポリタンと見分けがつかない。
しかし、大事なのは味だ。
それでは、食べさせてもらうよ……」
店長がフォークにパスタを巻き、口へと運ぶ。
たった、それだけの動作なのに、俺と亜梨須と妃愛蕾さんは、緊張していた。
パスタを口に入れた店長は……
「こりゃ、すごい!完璧じゃないか! 」
絶賛してくれました。
ふうぅぅ……。
と俺達は緊張が解放され、一気に緩い気持ちになる。
俺は、店長に、
「では、店で出しても問題ないですよね?」
「あぁ、もちろんだ! このレベルなら普通に店で出しても問題は無いだろう」
よかったあ……。
「ところで、もう1人の君。
亜梨須さんと言ったかな?
君もこれだけ、料理が上手なのかい?」
その質問に対して、亜梨須が答えようとするが、それより先に俺が……
「はい、もちろんです。
だって、俺に料理を教えてくれたのは亜梨須なんですから」
そう答えた。
亜梨須は何か言いたそうな顔をしてこちらを見ていたが、俺は無視することにした。
***
結果から、言うと、
2日目の、職場体験は大成功であった。
俺と亜梨須が交代で、料理を作り、妃愛蕾さんも、1日目で慣れたのか、とてもいい動きをして、店を回すことが出来た。
もちろん、店長も大活躍であった。
たぶん、俺はこのことをいい思い出として、ずっと青春の1ページとして記憶の中に残すのだろう。
それはくすぐったくも感じるが、とても、いいことなんだと思う。
だが、これだけは言わせて欲しい。
俺は、もう、料理なんてしたくない!
あんな面倒臭いのはもうこりごりだわ……。
ほんと……。
まじで、無理。
店長には、バイトとして、来ないか?
と言われたが、
やはり、俺に喫茶店での仕事など、無理である。
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