テンプレ幼なじみに俺は憧れを抱かない

九夜空猫

第8話 職場体験 前編

職場体験当日

進side

この喫茶店は朝は人がいない。
昼頃に1番混むらしい。
そのため、朝早くから集まった俺達は特にすることも無く。
店長から、
「じゃあ、窓拭きと店内の清掃任せたよ」
と言われて、
俺達はそれをやることになったわけだ、
が……




「進、モップ取って」
「はいよ」
「ん、ありがと」





今、俺と亜梨須は店内の掃除を行っている。
妃愛蕾さんは、勝者2人が店内の清掃と言う過酷なジャンケンに負け、
今は店の外で窓を拭いている。

・・・・・・うん、ここは男の俺が外に行って窓を拭くべきでしたよね。

でもさ、言い訳させてもらうと、
俺が、外行こうか?と提案して、
それを頑なに拒否したのは2人なんだよ?

つまり、俺は悪くない。


はあ……。
そう割り切れたら楽なんだけどな……。
俺には無理でした。

俺は亜梨須に
「やっぱ、俺窓拭きの方がやりたかったわ」
「はあ!?」 
と言い、少し駆け足で外に行き、俺は窓拭きを妃愛蕾さんに変わってもらい、妃愛蕾さんには、店内の清掃を亜梨須とやって貰うことにしました。

うん、これでいいんだ。





***

ちょうど、清掃が全て終わった頃、
今日初めてのお客さんが、来店した。
どこにでもいる初老のおじいちゃんという感じのその人を俺達は、
「「「いらっしゃいませー」」」
と言ってから、マニュアル通りに、亜梨須が案内をした。

そして、そこからが大変だった。
人が多すぎて、もう、何が何だか、わからないレベルであった。
朝の平和な光景から一変、
そこは戦場と呼んで差し支えなかった。

1番混むピークの昼の時間が過ぎ、
一旦店を閉めて、俺達が佐々木ささきさん(この喫茶店に、1人しかいない、料理担当の40歳前後の男性である)の作ってくれたまかないのサンドイッチを食べている時、

そして、そこで、事件は起こった!


バタンっ!

そう音が厨房の方から聞こえた。
俺達は直ぐに駆けつけた。

そこには、倒れた佐々木さんが!

俺はすぐに、今レジにいる店長を呼んだ。

「店長! 佐々木さんが……、厨房のほうで倒れてます!」
店長は、驚いて、でもすぐに気を取り直し、
「わかった!今、救急車を呼ぼう」
店長は大急ぎで救急車を呼んだ。

それからまもなく、救急車は来て、
佐々木さんは救急車に病院に運ばれて行った。


***


佐々木さんはどうやら、過労気味だったらしい。
大事がなくてよかった。
でも、しばらくは安静にしておかないといけないそうだ。

それはこの喫茶店においても大きな問題であった。
この店には、店長と買い出し係の、田中たなかさん(メガネをつけている女性。年齢不詳。)と佐々木さんしかいない。
この喫茶店には佐々木さん以外に料理できる人がいないという事だ。
つまり、佐々木さんがいない間この店は営業できないという事だ。

そして、佐々木さんが戻ってくるまで、少なくとも1週間はかかるだろうとの事だ。

俺達がこの店で体験をするのは
今日を入れて、あと2日。
どうやっても、間に合わない。

「すまないけど、佐々木さんがいないことにはこの店は……、
残念だけど、今日で職場体験は終わりになる」
店長は、悲しそうな顔で俺達にそう、告げた。

ということで、
俺達の職場体験は残念ながら、終わりとなるはずだった…………

「わ、私が料理をします!」
亜梨須がそんなことを言い始めた。
「君が……?」
店長は訝しげに亜梨須を見て、
「あ、亜梨須ちゃん?」
妃愛蕾さんが、戸惑ったように言い、

「何言ってんだよ……亜梨須、確かにお前、料理は上手いけどさ、だからといって、あの大量のお客さんの分の料理全部作れるわけないだろ。
絶対にどこかで潰れるぞ?」
俺はそう、亜梨須を宥めた。
ここで、俺は亜梨須がもう、そんな馬鹿なことは言い出さないと思っていた、
だが……、
「それでも、やるの!
こんなふうに私たちの職場体験が終わっていいわけがないの!」
そう、亜梨須は言う。

「亜梨須、それはもしかしたら、逆に店側に迷惑かけるかもしれないんだぞ?
それでもやるって言うのか?」
俺はもうなんと答えられるのか、半分分かってながらも、なおも亜梨須に問いかける。

「それでも、それでも、やる。
絶対にお店も成功させて、この職場体験も成功させるの!」

はあ……、面倒くさいなあ。

亜梨須がこうなると絶対に止まらないことを俺は知っている。
ここまで、亜梨須が引かなかったのっていつ以来だろう……。

はあ、本当に面倒くさい。
でも、今の状態の亜梨須を止める方がもっと、面倒くさい。

なら、今俺が取るべき行動は……

「亜梨須わかったよ……。
でも、それには1つ条件がある」
「進くん!?」

「条件って?」
首を傾げて亜梨須が俺にそう問う。

「条件っていうのは、俺も厨房で亜梨須と交代で料理を作るっていうのだ」
「え?進もやるっていうの……?」
亜梨須は少し何かを期待するような目でこちらを見る。
「あぁ、本当ならやりたくないがな」
「・・・・・・分かったわ、それで、明日は行きましょう」
亜梨須は納得したみたいだな。
「うん……、2人ができるって言うなら私もそれを信じてみるよ」
妃愛蕾さんもまだどこか心配そうだが、
俺達2人のことを信じてくれると決めてくれたみたいだ。
残るは、店長の説得か……。

「――あのね、君たち、気持ちは嬉しいんだけど、さすがに、無理をして貰ってまでうちの店にそこまで協力してもらうのは悪いよ。
だから、そんなことは私は認めることは出来ないよ」
店長はしっかりと、フォローを入れつつ、遠回しに俺達には荷が重いからやめておけと、
しっかりとした、大人の意見を述べてくる。

いつもの俺ならこの意見に従い、
さっさと、今日は帰って、
明日はダラダラしていただろう。
でも、今日の俺は違う。
亜梨須が止まらないんだ。
なら、俺だって止まってやるか、
と半ばやけになって店長にこう告げた。

「・・・・・・店長」
「なんだい?」
店長は少し、困ったような様子で俺からの呼びかけに聞き返す。

「でしたら、今から俺の作るものを食べていただけませんか?
それに、時間も測ってもらって、
それで、無理だと、店長が判断したので、あれば俺達は素直に引くことにします」
俺の強い意志を込めた目を見て、
店長はしぶしぶ……、
「わかった……、それで、無理だと私が判断したら君たちには明日は自宅で待機をしてもらうからね
あぁ、そうだ、使う材料は今日使わなかった分があるから、それを使うといい」

ふう……。
どうやら、店長もひとまずは、認めてくれたようだ。
なら、次は店長をうんと言わせなければいけない。

「作るものはこちらで指定させてもらうよ。
それでいいね?」

「はい、もちろん、構いません。
無理を言ってすみません」
「ハッハッハ、別に構わないさ。
私の若い頃を思い出したよ。
まあ、それなりのものを作ってもらわないと認めないけどねぇ。
それじゃあ、この店で1番人気のナポリタンを作ってもらえるかい?
レシピは厨房にあるからさ」

「制限時間はがいくらですか?」
「うーむ、まあ、20分としようか。
それ以上はお客さんに悪いからね」
「分かりました、じゃあ、もう初めてもいいですかね?」
「ああ、もちろん」
「じゃあ、今から10分後には始めるのでそこから制限時間のカウントをよろしくお願いします」
「わかったよ」

そして、俺は厨房へと向かった。


***
亜梨須&妃愛蕾side
「・・・・・・進くん、大丈夫かな?」
妃愛蕾さんが、私にそう問いかける。
「大丈夫だと思うわよ。
だって、あいつ……」




後編に続く


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