一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

43 小さく大きな物語74

昔の記憶を取り戻した俺は、城の中を進んで行く。辿り着いたのはラヴィ―ナ様の部屋ではなく、ルーキフェートというこの国の姫の部屋だった。俺達はルキから頼みを聞いたのだった…………


レティシャス(シャインの息子)ストリア(村娘)
リッド   (村人)     リーゼ (リッドの母ちゃん)
ジャネス  (変な女の人)  バール (ジャネスの父親)
チェイニー (マリア―ドの宮廷魔導士)
ブラグマガハ(ドラゴンの人)
ルーキフェート(王国の姫)
ラヴィ―ナ  (王国の王)


「俺達にラヴィ―ナ様の特徴を教えてくれないか?」

「そうですね、いいでしょう」

 俺はルキからラヴィ―ナ様の特徴を聞き出していた。
 今度こそ間違えないように、というのも有るが、戦うならば情報が欲しかったのである。
 ルキから聞いたラヴィ―ナ様の特徴は、少しカールのかかった長い金髪を腰までたらし、エメラルドのような瞳をしているという。
 他にも色々と聞いて行くが、言葉からでも相当美人なのがうかがえる。
 まあ王都には他に誰も居ないらしいから間違えようもないらしい。

「なるほど、俺としても大体わかった。他にはないのかな? 胸にホクロがあるとかあああああ?!」

「レティ、今何か言ったか? 私に聞こえるようにもう一度言ってみてくれないか? まさか王にそんな事を言うとは思えないんだが、答えによってはどうなるかわからないぞ」

 俺はストリアの腕で首を絞められていた。
 顎の下に入って完全に決まっている。

「……今のは冗談で何でもないです」

「私は安心したぞ」

「俺は安心できないな……」

 ストリアは首から腕を外すが、俺の手をギュッと掴んでいる。

「レティって年上好きだよねぇ」

「違うぞリッド、俺は別に年上が好きという訳では……いや、何でもないです」

 何時ものノリになりそうだったが、ルキの事を思い出して話を続けることにした。
 まあ体の特徴としてはいいとして、重要なのは戦闘方法だ。
 聞くとラヴィ―ナ様は、格闘戦を得意とされているらしい。

 その昔王国最強のフレーレさんと言う人が、ラヴィ―ナ様を一番弟子として育て上げたという。
 そのフレーレというのは、簡単に言えばストリアの母ちゃんである。
 ストリアにとっては因縁の相手と言ってもいいだろう。

 扱う魔法は土と炎で、それを合わせた溶岩の力は、衝撃と焼くを同時に行う恐るべきものだと言う。
 俺はルキから聞ける情報を聞き尽くし、隣の城へ向かって行った。

 前世の記憶を取り戻した俺にとって、この町は庭のようなものだ。
 そうでなくとも大きな道で通じている。
 適当に会話しながら進むと、城門を潜ってエントランスホールへ到着した。 

 ラヴィ―ナ様はそのホールにいらっしゃった。
 中央に仁王立ちして腕を組んで待っていたらしい。
 聞いた通りの美しさで、この方も十代とみてもおかしくはない。
 だがその恰好は、タイツでも着ている様だ。

 お腹と胸の辺りは少し開いていて、手の甲や肘、膝と足の甲、喉の一部に金属の防具の様な物がついている。
 パッと見るだけでも動きやすさ重視だと感じられる服である。
 その背には、裏地が赤の黒マントを装着し、片目の眼帯は傷でも負っているのだろうか?

 ……なんだか向うの世界で流行っていた病気を思い出す。

「フハハハハ、よく来てくれたな未来の英雄達! 私を倒し、世界の英雄へと至るがいい! この闇世界の心理もそう望んでいる。だが、この国を統べる魔王ラヴィ―ナ様はそう簡単にやられたりはしないぞ! お前達の全力をもって掛かって来るがいい! フハーッハハハハハ!」

「…………」

 ラヴィ―ナ様はバッサリとマントを翻し、そんな事を言っている。
 思ったより……思った以上におかしな風に成長しているらしい。
 相手は本物の王様で、美しい女性であるが、中二病……。
 いやいや、力も実力もあるようだし、それとは少し違うのだろうか?
 本物の痛い人か?

 ……何故こうなった。
 昔はもっと普通な感じだった気がしたのだけど……。
 ああいや、そんな事より兎に角説得をしなければ。

「どうするのレティ、何だか凄く、もの凄く変な人だよ?」

「自分で魔王とか名乗っているな、何かおかしな物でも食ったのだろうか?」

「俺ちょっと放してみるから、二人共手を出さないでくれ。それであのラヴィ―ナ様……?」

「何だ、そこの、あのえ~っと、う~んと、君ィ!」

「俺レティと言います。あっちがリッドでこっちがストリア」

「そうかレティとやら、では掛かって来るがいい!」

 またラヴィ―ナ様はバッサリとマントを翻した。
 そのまま沈黙し、俺達が来るのを待っている。

「俺達戦いに来た訳じゃなくて、ちょっと話し合いに来たんですけど」

「話合いがしたいだってぇ? ……フッ、そうか、このラヴィ―ナ様の力に恐れをなしてしまったのだな。まあ安心しろ、お前達は英雄としなるのだ。このラヴィ―ナ様が勝っても殺さないでいてやろう」

「あのですね、俺達ルーキフェートさんから話を聞いたんですよ。それで貴女が死ななくても助かる方法を見つけたんです。べノムって人が居るんで、その人が変身魔法を使って……」

「そんな事はさせるものですか! いい?! 私は英雄達との激戦により私はギリギリ力尽き、そしてこの国の為に死ぬのよ……ああ、なんて美しい死に方なのだろう。そう、その死で私は魔王として、この世界に名を刻まれるのよ! お父様と一緒に!」

 どうしよう、これは説得できそうもない。
 美しく死にたいとか妙な考えを持っている人に、説得をするのは難しい。
 いや、こんなに極まった人を説得するのは不可能だ。

「どうした来ないのか。来ないというならこっちから行くぞ! 魔王の力、とくと見よ! とおおりゃああああああああ!」

 自称魔王様が、張り切って襲い掛かって来た。
 もう戦うしかないのだろう。

「ストリア、リッド、こんなの説得するのは無理だ。叩きのめして縛り上げるぞ!」

「わかったよ!」

「ああ、叩き伏せてやろう!」

 ラヴィ―ナ様……ラヴィとの戦いが始まる。
 俺達はそれぞれに武器を抜いて、ラヴィの攻撃に備えた。

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