一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
38 ベノム隊長のにちじょう。
日常系のお話。
だいたい何時も通り。
ベノム (王国の兵士1)
レアス (王国の兵士2)
シィヴァ(元反逆者)
バール (王国の伝令役)
ロッテ (べノムの嫁)
俺は外の見回りの帰りに、ロッテに土産でもかってやろうかと適当に町をぶらついていた。
小物屋を見つけて、よさそうな星型のネックレスに手を伸ばそうとしたのだが、何故か見たくもない相手二人もそれに手を伸ばそうとしていた。
「あん?」
「何故お前がここにいる。また糞まみれにでもしてほしいのか?」
「鴉、なんで私(わたくし)の前いますの。即座に目の前から消えなさい!」
その日、偶然にも俺とシィヴァ、そしてレアスが顔を突き合わせてしまった。
何方にしても会いたくない相手ではあるが、まさか同時に会うことになろうとは、厄介さが五倍ぐらいになった気分である。
「ふう、テメェ等が何を言おうが、これは俺が先に見つけたんだ。だから俺が買うことに決定している。もう手の中にあるからな」
こいつらであっても速さで俺に勝てない。
掴まれる前に手の中へと収めている。
「ほう、王への土産を奪うというのか? 不経済で処刑してやろうか?」
「それは私(わたくし)がルキ様に送る物です。即座に手渡してもらいましょうか?」
「はぁ? わざわざこんな所で買わなくたって、もっと良い物が城にあるだろうが。それに横にいくらでもあるだろう。別のを選べや馬鹿野郎共」
このままでは戦いになると分かってはいるが、だからといって譲ってやりたいとは思わない。
「何故私(わたくし)が貴方の言うことを聞かなければならないのかしら? それに、人にものを頼むのならば、そこに仰向けになりなさい。私が顔面をグチャグチャに踏みつけてあげますわよ? 当然そのアクセサリーも私が頂きますけどね」
「女ぁ、それは俺の物だと言っているだろう。イブレーテの為に渡す訳にはいかんな」
「あら貴方は……ああ知っておりますわよ。愚かにも王国の王に挑み、ボロ負けして慈悲をかけられた駄目な魚男ではありませんか。よくそんな恥を晒して生きていけるのでしょうか。ホホホ」
「ふん、いい度胸だ。この黒い奴を叩きのめしてからお前に格の違いという物を教えてやろう」
「あら、案外気が合いますのね? ではまずは……二人共死になさい!」
レアスの爪が俺とシィヴァに向かって来ている。
明らかにヤル気だ。
だが、流石に二人同時は無理があったようで、躱すのは容易かった。
「チィィ、面倒な女だ。共闘すれば楽にすんだものを」
「うをお?! やっぱりそうなるかよ! 親父、ここに金は置いて行く、持って行くからな!」
「へい毎度」
店の親父は特に気にしてもいないようだが、ここでは迷惑がかかってしまうと、俺は店から飛び出した。
二人共当然のように俺を追い掛けて来たのだが、簡単には追い着いて来れない。
しかし奴等のしつこさは尋常ではない。
下手したら、家の中にまで入り込んで来るだろう。
ロッテと仲の良いレアスなら確実だろうか。
流石にロッテからは奪いはしないだろうが、渡す前なら実力行使で来るだろう。
家ン中で暴れられたらたまったもんじゃない。
後腐れ無く、今決着をつけるべきだろう。
「じゃあやってやろうじゃねぇか。お前等二人なんて……軽く……」
冷静に考えて、奴等に軽く勝てた記憶がない。
命懸けで戦えば確実に勝てるだろうが、こんな戦いでそんな事はしたくはない。
それに二人相手となると勝ち目があるかどうかも分からない。
だが今更やめるなんてカッコ悪いことはしたくない。
ここは……。
「あああ、しまったああああ、落としちまったあああああああ!」
と、なるべく自然に手から落とし、ハッと気づいたように奴等に声をかけた。
「腰抜けめ、ワザと落としたな。だが丁度良い。この俺が頂いてやる!」
「ふん、魚如きに渡す私(わたくし)ではありませんわよ!」
二人共俺の思惑には気付いているらしい。
「おおおおおお!」
「はあああッ!」
まあそれでも、俺から気が反れたのは丁度良い。
二人が争っている内に、この場から離れるとしよう。
俺は先ほどの小物屋に戻ると、別の物を選んで家に帰ったのだが。
「べノムお帰りー、ご飯できてるよ」
「ああ、隊長何処行ってたんですか全くもう。見つからないから食事を頂いてましたよ。でもロッテさんって意外と料理上手いんですね。明日も来ますからどうぞよろし……」
「帰れ!」
「ああ隊長、ちょっと用事があるんですよ隊長! 聞こえていますよね隊長。隊長ったら」
「うるせぇ、ちょっとと黙ってろ! こっちも大事な話があるんだよ!」
俺は何故か居るバールを蹴り飛ばし、この家から追い出した。
何か用があるらしく、扉をドンドン叩いているが、その前にロッテに言わなければならない。
「良いかロッテ、奴だけは家に入れるな。何時襲い掛かって来るか分からんからな」
「ええ、そっかなー? 普通だと思うんだけど」
「そんなフリをしてるだけだ。奴はただの性器で、隙あらば襲い掛かって来るぞ。いいか、兎に角入れるなよロッテ、誰かと一緒だったとしても奴だけは入れるなよ」
「べノムは心配症だなー、このぐらい平気だよねーマッド」
ロッテは余り気にしていないらしく、小さななマッドと戯れている。
だがそれはバールに付け入らせる隙となるだろう。
今後来させないように、俺一人だけでもバールの動向を見張らなければ。
「俺は奴と話しをしてくるから、ロッテはそこから動くなよ」
「はいはーい」
俺はバールを黙らせる為に対面し、二度と家に入らないようにと話しを始めた。
「用事があるのなら早く言え。そして家に入るんじゃねぇ! 二度目はねぇぞ、分かったかコラ?!」
「……隊長、恋愛は自由だとは思いませんか? ロッテさんが望むならそれも有なんじゃないでしょうか?」
「良し、死ね」
「いや、冗談ですって! 本気にならないでくださいよ」
「テメェの冗談は冗談に聞こえねぇんだよ! いいから要件を言いやがれ!」
「あはい、どうも最近フレデリッサの奴が手を回しているのか、女性との逢引きが中々上手くいかなくってですね。どうしたらいいと思いますかね?」
「じゃあ俺が一ついい考えがあるぜ。テメェは俺にぶん殴られて、フレデリッサの元に連れて行ってやらあ!」
「ギャアアアアアアアアアアア!」
こうして何時もの日常が過ぎて行く。
また明日も何かしらの騒ぎが起きるのだろう。
出来れば俺を巻き込むな。
だいたい何時も通り。
ベノム (王国の兵士1)
レアス (王国の兵士2)
シィヴァ(元反逆者)
バール (王国の伝令役)
ロッテ (べノムの嫁)
俺は外の見回りの帰りに、ロッテに土産でもかってやろうかと適当に町をぶらついていた。
小物屋を見つけて、よさそうな星型のネックレスに手を伸ばそうとしたのだが、何故か見たくもない相手二人もそれに手を伸ばそうとしていた。
「あん?」
「何故お前がここにいる。また糞まみれにでもしてほしいのか?」
「鴉、なんで私(わたくし)の前いますの。即座に目の前から消えなさい!」
その日、偶然にも俺とシィヴァ、そしてレアスが顔を突き合わせてしまった。
何方にしても会いたくない相手ではあるが、まさか同時に会うことになろうとは、厄介さが五倍ぐらいになった気分である。
「ふう、テメェ等が何を言おうが、これは俺が先に見つけたんだ。だから俺が買うことに決定している。もう手の中にあるからな」
こいつらであっても速さで俺に勝てない。
掴まれる前に手の中へと収めている。
「ほう、王への土産を奪うというのか? 不経済で処刑してやろうか?」
「それは私(わたくし)がルキ様に送る物です。即座に手渡してもらいましょうか?」
「はぁ? わざわざこんな所で買わなくたって、もっと良い物が城にあるだろうが。それに横にいくらでもあるだろう。別のを選べや馬鹿野郎共」
このままでは戦いになると分かってはいるが、だからといって譲ってやりたいとは思わない。
「何故私(わたくし)が貴方の言うことを聞かなければならないのかしら? それに、人にものを頼むのならば、そこに仰向けになりなさい。私が顔面をグチャグチャに踏みつけてあげますわよ? 当然そのアクセサリーも私が頂きますけどね」
「女ぁ、それは俺の物だと言っているだろう。イブレーテの為に渡す訳にはいかんな」
「あら貴方は……ああ知っておりますわよ。愚かにも王国の王に挑み、ボロ負けして慈悲をかけられた駄目な魚男ではありませんか。よくそんな恥を晒して生きていけるのでしょうか。ホホホ」
「ふん、いい度胸だ。この黒い奴を叩きのめしてからお前に格の違いという物を教えてやろう」
「あら、案外気が合いますのね? ではまずは……二人共死になさい!」
レアスの爪が俺とシィヴァに向かって来ている。
明らかにヤル気だ。
だが、流石に二人同時は無理があったようで、躱すのは容易かった。
「チィィ、面倒な女だ。共闘すれば楽にすんだものを」
「うをお?! やっぱりそうなるかよ! 親父、ここに金は置いて行く、持って行くからな!」
「へい毎度」
店の親父は特に気にしてもいないようだが、ここでは迷惑がかかってしまうと、俺は店から飛び出した。
二人共当然のように俺を追い掛けて来たのだが、簡単には追い着いて来れない。
しかし奴等のしつこさは尋常ではない。
下手したら、家の中にまで入り込んで来るだろう。
ロッテと仲の良いレアスなら確実だろうか。
流石にロッテからは奪いはしないだろうが、渡す前なら実力行使で来るだろう。
家ン中で暴れられたらたまったもんじゃない。
後腐れ無く、今決着をつけるべきだろう。
「じゃあやってやろうじゃねぇか。お前等二人なんて……軽く……」
冷静に考えて、奴等に軽く勝てた記憶がない。
命懸けで戦えば確実に勝てるだろうが、こんな戦いでそんな事はしたくはない。
それに二人相手となると勝ち目があるかどうかも分からない。
だが今更やめるなんてカッコ悪いことはしたくない。
ここは……。
「あああ、しまったああああ、落としちまったあああああああ!」
と、なるべく自然に手から落とし、ハッと気づいたように奴等に声をかけた。
「腰抜けめ、ワザと落としたな。だが丁度良い。この俺が頂いてやる!」
「ふん、魚如きに渡す私(わたくし)ではありませんわよ!」
二人共俺の思惑には気付いているらしい。
「おおおおおお!」
「はあああッ!」
まあそれでも、俺から気が反れたのは丁度良い。
二人が争っている内に、この場から離れるとしよう。
俺は先ほどの小物屋に戻ると、別の物を選んで家に帰ったのだが。
「べノムお帰りー、ご飯できてるよ」
「ああ、隊長何処行ってたんですか全くもう。見つからないから食事を頂いてましたよ。でもロッテさんって意外と料理上手いんですね。明日も来ますからどうぞよろし……」
「帰れ!」
「ああ隊長、ちょっと用事があるんですよ隊長! 聞こえていますよね隊長。隊長ったら」
「うるせぇ、ちょっとと黙ってろ! こっちも大事な話があるんだよ!」
俺は何故か居るバールを蹴り飛ばし、この家から追い出した。
何か用があるらしく、扉をドンドン叩いているが、その前にロッテに言わなければならない。
「良いかロッテ、奴だけは家に入れるな。何時襲い掛かって来るか分からんからな」
「ええ、そっかなー? 普通だと思うんだけど」
「そんなフリをしてるだけだ。奴はただの性器で、隙あらば襲い掛かって来るぞ。いいか、兎に角入れるなよロッテ、誰かと一緒だったとしても奴だけは入れるなよ」
「べノムは心配症だなー、このぐらい平気だよねーマッド」
ロッテは余り気にしていないらしく、小さななマッドと戯れている。
だがそれはバールに付け入らせる隙となるだろう。
今後来させないように、俺一人だけでもバールの動向を見張らなければ。
「俺は奴と話しをしてくるから、ロッテはそこから動くなよ」
「はいはーい」
俺はバールを黙らせる為に対面し、二度と家に入らないようにと話しを始めた。
「用事があるのなら早く言え。そして家に入るんじゃねぇ! 二度目はねぇぞ、分かったかコラ?!」
「……隊長、恋愛は自由だとは思いませんか? ロッテさんが望むならそれも有なんじゃないでしょうか?」
「良し、死ね」
「いや、冗談ですって! 本気にならないでくださいよ」
「テメェの冗談は冗談に聞こえねぇんだよ! いいから要件を言いやがれ!」
「あはい、どうも最近フレデリッサの奴が手を回しているのか、女性との逢引きが中々上手くいかなくってですね。どうしたらいいと思いますかね?」
「じゃあ俺が一ついい考えがあるぜ。テメェは俺にぶん殴られて、フレデリッサの元に連れて行ってやらあ!」
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