一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
36 小さく大きな物語69
祭りは続いている。俺達が参加して二日目は、バール対策をして祭りに挑む。バールは簡単に引っ掛かり、順調に進んでいるはずだったのだが、リーゼさん一人に逆転されてしまった…………
レティシャス(シャインの息子)ストリア(村娘)
リッド (村人) リーゼ (リッドの母ちゃん)
ジャネス (変な女の人) バール (ジャネスの父親)
チェイニー (マリア―ドの宮廷魔導士)
ブラグマガハ(ドラゴンの人)
緊張と不安が入り混じる俺達は、王国の国境を越えて王都への道を進んでいる。
魔物出現の地と言われるこの場所だが、まだ小さな魔物すら見当たらないのは不気味だった。
だが魔物が居ないから平和と言っていいかもしれない。
まあとりあえず、あと村一つを越えれば王都に到着できる。
随分と拍子抜けもいいところだが、その村へと到着したら……。
人の声がまるでせず、この村には誰一人存在しないようだった。
「誰も居ないのか? 魔物に滅ぼされたって感じでもないみたいだけど」
「レティ、家の中にも誰も居ないようだ。何処かへ出かけているんじゃないのか?」
ストリアは近くにある建物を調べている。
「こっちの家も人が居ないみたいだよ。母さん、何かあったのかな?」
リッドは別の家を覗いている。
どちらともに人の気配はないようだ。
「さあねぇ、こんな世界じゃ何があっても不思議じゃないわよ。この国出身の人なら知ってるんじゃないの?」
リーゼさんはバールを見ている。
バールはこの国の出身だ。
「そんな昔のことを言われても、俺が知ってるわけがない。俺が住んでたのは何年前だと思ってるんだ。なぁレティ」
「いや、知らんし。じゃあ残りの二人は……知ってる訳がないな」
「当たり前でしょう。私は戦う以外の事はだいたい頭に入れない主義よ!」
「他国のことなんて知るわけがないわね! 考えれば分かるでしょ、馬鹿なの。馬鹿なのよね?!」
ジャネスの姉ちゃんに、チェイニーも知らないらしいと言っている。
どうやら聞いた俺が馬鹿だったらしい。
他にも色々と調べてはみるものの、とくに魔物に襲われたような形跡はなさそうで、建物が壊されただとか血痕が落ちているとかもないらしい。
幾つかの家の中には、テーブルに飲みかけのお茶や食べかけの食事類が置き去りにされている。
これは何か、事件の臭いがプンプンと感じられそうだ。
俺達にとっては村に関わる必要はないのだが、食べ物と道具の補充はしたいところだ。
まあ手入れされた畑や家の中から持って行っても良いのだけど、ただ出かけているだけなら俺達は泥棒になってしまう。
それは最終手段として、もう少し調べてみようと手分けして手掛かりを探し始めた。
再び村を調べ尽くしてみるものの、目新しい物は見当たらなかった。
俺達は仕方なく村の食べ物と道具を集め、お金を置いて馬車へと積みこんだ。
結局謎は解けず、この村から移動をしようとしたのだが、何かの鳴き声を聞き空を見えてると、巨大な魔物が向かって来ていた。
「なっ、あれはドラゴン?! こっちに敵が来るぞ皆!」
ヴァ―ハムーティアの大きさには及ばないが、普通の人間が敵う大きさではない。
ダークグリーンの鱗と金色の瞳、口からは炎が漏れ出ている。
物語にあるように、凶暴なブレスを吐くのかもしれない。
誰だって知ってるほどに、どんな物語であろうと、破格の待遇を約束される存在である。
グオオと吠える竜の鳴き声に、馬は逃げる事も出来ずに足を震わせていた。
「クッ、どの道あのスピードじゃ逃げられないわ! 敵を引き付けて馬車から離れましょう!」
「わ、分かったよ母さん!」
「レティ、私達は矢を打ち込むぞ!」
「おう、任せろ!」
「ドラゴンか……倒したらドラゴンスレイヤーになれるわね! ぶっ倒してあげるわ!」
「飛んでいるなら落としてあげれば良いのよね! 私に任せなさいよ!」
あんなのに怯まないのは流石としか言いようがない。
俺としてもヴァ―ハムーティアで慣れてしまったのか、そこまでの恐怖は感じなかった。
でもそんな危険な状況に、何かを悩んでいる男が一人。
「あ~、う~ん、え~っと…………ああ、思い出した! あれはブラちゃんだ!」
「はっ? お前ドラゴンに知り合いが居るのかよ?」
「ああ、確か女を嫁にしようとしたけど、軽く捨てられて、結局王国のお助けドラゴンになった人だった気がするぞ。要するに振られドラゴンだ。お~い、久しぶりだな~、お~い!」
「貴様ああああ、誰が振られドラゴンだとおおおおおおおお!」
強烈な声を響かせながら、ブラちゃんというドラゴンが下りて来る。
一応言葉が喋れるようで、仲間達も攻撃を躊躇っている。
「何か怒ってる気がするけど! うおおおおおお?!」
俺は素早くバールから飛び退くと、ドラゴンの人は勢いよくバールを蹴り飛ばした。
あんな物体に蹴られたら普通は死ねるのだろうけど、あの男に関しては心配はいらない。
「折角の再開なのに痛いじゃないか。昔フレーレさんフレーレさんと泣きじゃくるお前の愚痴を聞いてやった恩を忘れたのかブラちゃん」
「言うなあああああ! 私の心の傷はまだ癒えていないんだぞおおおおおおお!」
「もう十数年も経ってるのにどんだけメンタル弱いんだ? もうそろそろ忘れたらどうだ」
「忘れられるなら忘れているんだよおおおおお!」
どうやら随分楽しい人物のようだ。
しかしフレーレという名前にはどこかで聞き覚えが……。
あ、ストリアの母ちゃんがそんな名前だった気が?
当の本人は関わりたくないと、そっぽを向いている。
だがその名前に反応したのは、もう一人居たらしい。
それは最強を超えると息巻いていたジャネスの姉ちゃんである。
「フレーレは私が倒おおおす! どこだあああああああ!」
「フレーレさんの敵は我の敵だああああ! 殲滅してくれようぞ!」
「おおい、俺の娘に手を出すなよ! お前が相手でも許さんからな!」
なんか収拾がつかなくなっていく。
結局この村のことはどうなっているんだろう?
三人が無駄に熱いバトルを展開するが、あまりにも長く戦っているから、俺は説得の為にストリアのことを告白したのだった。
レティシャス(シャインの息子)ストリア(村娘)
リッド (村人) リーゼ (リッドの母ちゃん)
ジャネス (変な女の人) バール (ジャネスの父親)
チェイニー (マリア―ドの宮廷魔導士)
ブラグマガハ(ドラゴンの人)
緊張と不安が入り混じる俺達は、王国の国境を越えて王都への道を進んでいる。
魔物出現の地と言われるこの場所だが、まだ小さな魔物すら見当たらないのは不気味だった。
だが魔物が居ないから平和と言っていいかもしれない。
まあとりあえず、あと村一つを越えれば王都に到着できる。
随分と拍子抜けもいいところだが、その村へと到着したら……。
人の声がまるでせず、この村には誰一人存在しないようだった。
「誰も居ないのか? 魔物に滅ぼされたって感じでもないみたいだけど」
「レティ、家の中にも誰も居ないようだ。何処かへ出かけているんじゃないのか?」
ストリアは近くにある建物を調べている。
「こっちの家も人が居ないみたいだよ。母さん、何かあったのかな?」
リッドは別の家を覗いている。
どちらともに人の気配はないようだ。
「さあねぇ、こんな世界じゃ何があっても不思議じゃないわよ。この国出身の人なら知ってるんじゃないの?」
リーゼさんはバールを見ている。
バールはこの国の出身だ。
「そんな昔のことを言われても、俺が知ってるわけがない。俺が住んでたのは何年前だと思ってるんだ。なぁレティ」
「いや、知らんし。じゃあ残りの二人は……知ってる訳がないな」
「当たり前でしょう。私は戦う以外の事はだいたい頭に入れない主義よ!」
「他国のことなんて知るわけがないわね! 考えれば分かるでしょ、馬鹿なの。馬鹿なのよね?!」
ジャネスの姉ちゃんに、チェイニーも知らないらしいと言っている。
どうやら聞いた俺が馬鹿だったらしい。
他にも色々と調べてはみるものの、とくに魔物に襲われたような形跡はなさそうで、建物が壊されただとか血痕が落ちているとかもないらしい。
幾つかの家の中には、テーブルに飲みかけのお茶や食べかけの食事類が置き去りにされている。
これは何か、事件の臭いがプンプンと感じられそうだ。
俺達にとっては村に関わる必要はないのだが、食べ物と道具の補充はしたいところだ。
まあ手入れされた畑や家の中から持って行っても良いのだけど、ただ出かけているだけなら俺達は泥棒になってしまう。
それは最終手段として、もう少し調べてみようと手分けして手掛かりを探し始めた。
再び村を調べ尽くしてみるものの、目新しい物は見当たらなかった。
俺達は仕方なく村の食べ物と道具を集め、お金を置いて馬車へと積みこんだ。
結局謎は解けず、この村から移動をしようとしたのだが、何かの鳴き声を聞き空を見えてると、巨大な魔物が向かって来ていた。
「なっ、あれはドラゴン?! こっちに敵が来るぞ皆!」
ヴァ―ハムーティアの大きさには及ばないが、普通の人間が敵う大きさではない。
ダークグリーンの鱗と金色の瞳、口からは炎が漏れ出ている。
物語にあるように、凶暴なブレスを吐くのかもしれない。
誰だって知ってるほどに、どんな物語であろうと、破格の待遇を約束される存在である。
グオオと吠える竜の鳴き声に、馬は逃げる事も出来ずに足を震わせていた。
「クッ、どの道あのスピードじゃ逃げられないわ! 敵を引き付けて馬車から離れましょう!」
「わ、分かったよ母さん!」
「レティ、私達は矢を打ち込むぞ!」
「おう、任せろ!」
「ドラゴンか……倒したらドラゴンスレイヤーになれるわね! ぶっ倒してあげるわ!」
「飛んでいるなら落としてあげれば良いのよね! 私に任せなさいよ!」
あんなのに怯まないのは流石としか言いようがない。
俺としてもヴァ―ハムーティアで慣れてしまったのか、そこまでの恐怖は感じなかった。
でもそんな危険な状況に、何かを悩んでいる男が一人。
「あ~、う~ん、え~っと…………ああ、思い出した! あれはブラちゃんだ!」
「はっ? お前ドラゴンに知り合いが居るのかよ?」
「ああ、確か女を嫁にしようとしたけど、軽く捨てられて、結局王国のお助けドラゴンになった人だった気がするぞ。要するに振られドラゴンだ。お~い、久しぶりだな~、お~い!」
「貴様ああああ、誰が振られドラゴンだとおおおおおおおお!」
強烈な声を響かせながら、ブラちゃんというドラゴンが下りて来る。
一応言葉が喋れるようで、仲間達も攻撃を躊躇っている。
「何か怒ってる気がするけど! うおおおおおお?!」
俺は素早くバールから飛び退くと、ドラゴンの人は勢いよくバールを蹴り飛ばした。
あんな物体に蹴られたら普通は死ねるのだろうけど、あの男に関しては心配はいらない。
「折角の再開なのに痛いじゃないか。昔フレーレさんフレーレさんと泣きじゃくるお前の愚痴を聞いてやった恩を忘れたのかブラちゃん」
「言うなあああああ! 私の心の傷はまだ癒えていないんだぞおおおおおおお!」
「もう十数年も経ってるのにどんだけメンタル弱いんだ? もうそろそろ忘れたらどうだ」
「忘れられるなら忘れているんだよおおおおお!」
どうやら随分楽しい人物のようだ。
しかしフレーレという名前にはどこかで聞き覚えが……。
あ、ストリアの母ちゃんがそんな名前だった気が?
当の本人は関わりたくないと、そっぽを向いている。
だがその名前に反応したのは、もう一人居たらしい。
それは最強を超えると息巻いていたジャネスの姉ちゃんである。
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