一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
30 大魔獣。
エル達の力を借りて、俺は弟の方と戦いを始める。割れた鎧へと斬撃を繰り出すが、自分の腕にも痛みが走る。超速で動く俺に、砂の粒で対策をしていたらしい。自身の速さで腕には砂が腕突き刺さったのだ。速度を押さえて戦うも、逆に俺の力が落ちてダメージを与えられない。覚悟を決めた俺は、腕一本を犠牲にして、奴を何とか撃破した…………
ベノム (王国の兵1)
ロッテ (王国の兵2)
ゲオルム・ファウス(悪魔ゲルトハイム)
シィヴァ・タナトリス(兄)
「うしっ、治った。じゃあ俺は行くから、ロッテは家に帰ってろよ。じゃ……」
「あれ、またロッテちゃんを置いて行く積もりなのかなー?」
俺は何事もなかったように戦場に戻ろうとするのだが、ロッテに腕を掴まれてしまった。
何時も通りの表情だが、その手に込められた力は強い。
簡単には放してくれそうもないだろう。
もう子供もいるし、一戦を退いてもらってもいいのだが、こんな戦場にまで来るんだから言葉で否定した所で無意味だろう。
「……じゃあ行くか。久しぶりの共闘だ、気合入れろよ?」
「おっけー♪」
ロッテの顔が満面の笑顔になっている。
こんな危ないことで喜ぶとは、まあ変わった奴なんだが、護り護られの関係は悪くはない。
手を握って空へと上がると、ロッテの背からは白い翼が現れる。
俺が手を貸さずとも、自由自在に空を飛んでいた。
昔同化した天使の力は、もう自由自在に使えるのだろう。
俺達はそのまま悪魔へと挑むのだが……
「悪魔が、居る……殺さなきゃ」
「おいロッテ、何言ってる?」
「シャイニング・フレイムレイン!」
悪魔の姿を見つけると、ロッテの表情が一変した。
光る熱線を何本も撃ち放ち、悪魔の姿をみるとロッテは暴走しかけていた。
力を自在に操る程に、逆に天使に意識を飲み込まれているのかもしれない。
やっぱり記憶なんて引き継ぐべきじゃなかったらしい。
魔法の威力としては相当なものではあるが、他の仲間が近づけなくなっているから良いのか悪いのかは微妙だろう。
だがそんな激しい攻撃でも、悪魔は冷静に動かなかった。
悪魔は何もしなくとも、空中から揺らぐように戦魔が現れて、悪魔への攻撃をガードし続けている。
「この力、天使のものか?! どうやってその力を得たのかは知らんが、今の私には勝てると思わない事だな」
「悪魔は、しねえええええええええええ!」
戦力としては充分役に立つが、天使の怒りにのみ込まれてどうなるのか分からない。
このままロッテを天使の怒りで支配させては置けない。
俺は襲い掛かる戦魔を薙ぎ払い、ロッテに接近して説得を試みた。
「おいロッテ、お前は天使じゃねぇだろう! 馬鹿な記憶に引きずられてんじゃねぇよ! 自分の意識をしっかりさせろ!」
「ホーリイイッ・エクスブレイズ!」
俺の呼びかけにも答えず、ロッテは悪魔へ強烈な魔法を使った。
その効果により、白炎の爆発が辺りを包む。
まるで太陽の様な光と熱が、この王都を広がっているようだ。
その効果で、戦魔の数十体が倒されはしたが、悪魔へのダメージは皆無だった。
それよりもだ……
「ぐがああああああああ?!」
その爆発は一瞬ではあるが、俺の体が焼けている様な痛みが走った。
近くで余波を食らった者は、激しい痛みで悶えている。
これだけでも大惨事だが、ロッテは周りのことなど何一つ気にしてはいない。
最初から俺のことなどは関係なく、悪魔を殺す為だけにここに来た。
そう思う程に、今のロッテは天使の記憶に支配されているらしい。
「お前はッ、そろそろ目を覚ませ!」
俺はロッテの手を掴み、ガッと体を引き寄せる。
「はなせえええええええええ、悪魔は殺す!」
「お前は誰だよ! 俺の顔をしっかり見やがれ!」
「がああああああああああああああ!」
両腕で抱きしめても暴れ続けるロッテに、俺がやれることなんて一つしかねぇだろう。
手は塞がってるんだ、口ぐらいしか空いちゃいねぇからな。
「…………」
俺が注いだのは愛情だけだ。
それで目覚める保証はなかった。
だが、ロッテの意識は、次第に冷静さを取り戻していく。
俺を見て、体で感じるこの距離に、ロッテは体の力を抜いたのだ。
自分が何をしたのか気付いているのだろう。
俺の胸に顔を埋もれさせたまま、背中へ手を回して動かない。
俺はロッテに悪魔を見せないように、ロッテの背を悪魔に向けさせた。
ロッテの攻撃が止み、戦魔達がこの場へ向かって来て居る。
狙っているのは俺ではなく、天使の力を持つロッテだろう。
その攻撃を躱しながら、俺はロッテと話しを続けた。
「ロッテ、多少やり過ぎた分は俺と一緒に謝ればいいぜ。ここは俺に全部任せて、怪我人の治療してやれよ。当然できるだろ?」
「……うん」
「腕は治った。全力の俺が負ける訳はねぇよな。だから心配はねぇ、あとは振り向かずに進んで行けよ」
「……うん……家で待ってるから……」
「じゃあ、後でな……」
ガッチリ掴んだ手を放すと、ロッテはこちらを振り向かずに戦場から離れて行く。
戦魔はロッテを追い掛けようとしているが、俺がそれを許す訳がない。
「テメェ等の相手は、この俺だあああああああああああ!」
空を飛び追い掛ける二十五体と、地上から飛び立とうとした八体。
何一つ残してはやらない。
ロッテを追い掛ける戦魔を、悉く刃で斬り伏せる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
黒が空を踊る度に、夕闇の濃さが増す。
闇は俺の姿を晦まし、動きすらも見せてやらない。
俺が見える戦魔を斬り倒すと、この王都から戦場の音が消え始める。
剣の音、魔法の音、王都から殆どが消えて、残るのは炎と水による爆音と、目の前の悪魔だけだろう。
「残りは、たった二人なんじゃねぇの? 大人しく倒されちまいな」
「ふぅ、まさかここまで劣勢になるとは思いませんでしたねぇ。これは仕方ない。仕方ないでしょう。それではあああああ、最高傑作のお目見えだあああああああああ! 出て来なさい、ノークスとバルン!」
悪魔の発した名前、どこにでもありそうなその名だが、その二つの名には聞き覚えがあった。
捕まえたグレッグの取り巻きの二人の名である。
この事件で、誰一人として気にもされなかった二人は、悪魔によって名を呼ばれたのだ。
その名を呼んだ時、地に見える王都の町並みが、突如強烈に揺れ襲われた。
地震なんて滅多に起きないこの地にっである。
地に居る兵士は立つ事も出来ず、膝をついて耐えるしか出来ないようだ。
頑丈に作られた城だけは持ちこたえているが、戦いでダメージを受けている建物は、なす術もなく崩れていく。
まだそれだけでは終わらない。
多くの建物を崩し、地の底から大型を越える魔物が出現した。
『グイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!』
ベノム (王国の兵1)
ロッテ (王国の兵2)
ゲオルム・ファウス(悪魔ゲルトハイム)
シィヴァ・タナトリス(兄)
「うしっ、治った。じゃあ俺は行くから、ロッテは家に帰ってろよ。じゃ……」
「あれ、またロッテちゃんを置いて行く積もりなのかなー?」
俺は何事もなかったように戦場に戻ろうとするのだが、ロッテに腕を掴まれてしまった。
何時も通りの表情だが、その手に込められた力は強い。
簡単には放してくれそうもないだろう。
もう子供もいるし、一戦を退いてもらってもいいのだが、こんな戦場にまで来るんだから言葉で否定した所で無意味だろう。
「……じゃあ行くか。久しぶりの共闘だ、気合入れろよ?」
「おっけー♪」
ロッテの顔が満面の笑顔になっている。
こんな危ないことで喜ぶとは、まあ変わった奴なんだが、護り護られの関係は悪くはない。
手を握って空へと上がると、ロッテの背からは白い翼が現れる。
俺が手を貸さずとも、自由自在に空を飛んでいた。
昔同化した天使の力は、もう自由自在に使えるのだろう。
俺達はそのまま悪魔へと挑むのだが……
「悪魔が、居る……殺さなきゃ」
「おいロッテ、何言ってる?」
「シャイニング・フレイムレイン!」
悪魔の姿を見つけると、ロッテの表情が一変した。
光る熱線を何本も撃ち放ち、悪魔の姿をみるとロッテは暴走しかけていた。
力を自在に操る程に、逆に天使に意識を飲み込まれているのかもしれない。
やっぱり記憶なんて引き継ぐべきじゃなかったらしい。
魔法の威力としては相当なものではあるが、他の仲間が近づけなくなっているから良いのか悪いのかは微妙だろう。
だがそんな激しい攻撃でも、悪魔は冷静に動かなかった。
悪魔は何もしなくとも、空中から揺らぐように戦魔が現れて、悪魔への攻撃をガードし続けている。
「この力、天使のものか?! どうやってその力を得たのかは知らんが、今の私には勝てると思わない事だな」
「悪魔は、しねえええええええええええ!」
戦力としては充分役に立つが、天使の怒りにのみ込まれてどうなるのか分からない。
このままロッテを天使の怒りで支配させては置けない。
俺は襲い掛かる戦魔を薙ぎ払い、ロッテに接近して説得を試みた。
「おいロッテ、お前は天使じゃねぇだろう! 馬鹿な記憶に引きずられてんじゃねぇよ! 自分の意識をしっかりさせろ!」
「ホーリイイッ・エクスブレイズ!」
俺の呼びかけにも答えず、ロッテは悪魔へ強烈な魔法を使った。
その効果により、白炎の爆発が辺りを包む。
まるで太陽の様な光と熱が、この王都を広がっているようだ。
その効果で、戦魔の数十体が倒されはしたが、悪魔へのダメージは皆無だった。
それよりもだ……
「ぐがああああああああ?!」
その爆発は一瞬ではあるが、俺の体が焼けている様な痛みが走った。
近くで余波を食らった者は、激しい痛みで悶えている。
これだけでも大惨事だが、ロッテは周りのことなど何一つ気にしてはいない。
最初から俺のことなどは関係なく、悪魔を殺す為だけにここに来た。
そう思う程に、今のロッテは天使の記憶に支配されているらしい。
「お前はッ、そろそろ目を覚ませ!」
俺はロッテの手を掴み、ガッと体を引き寄せる。
「はなせえええええええええ、悪魔は殺す!」
「お前は誰だよ! 俺の顔をしっかり見やがれ!」
「がああああああああああああああ!」
両腕で抱きしめても暴れ続けるロッテに、俺がやれることなんて一つしかねぇだろう。
手は塞がってるんだ、口ぐらいしか空いちゃいねぇからな。
「…………」
俺が注いだのは愛情だけだ。
それで目覚める保証はなかった。
だが、ロッテの意識は、次第に冷静さを取り戻していく。
俺を見て、体で感じるこの距離に、ロッテは体の力を抜いたのだ。
自分が何をしたのか気付いているのだろう。
俺の胸に顔を埋もれさせたまま、背中へ手を回して動かない。
俺はロッテに悪魔を見せないように、ロッテの背を悪魔に向けさせた。
ロッテの攻撃が止み、戦魔達がこの場へ向かって来て居る。
狙っているのは俺ではなく、天使の力を持つロッテだろう。
その攻撃を躱しながら、俺はロッテと話しを続けた。
「ロッテ、多少やり過ぎた分は俺と一緒に謝ればいいぜ。ここは俺に全部任せて、怪我人の治療してやれよ。当然できるだろ?」
「……うん」
「腕は治った。全力の俺が負ける訳はねぇよな。だから心配はねぇ、あとは振り向かずに進んで行けよ」
「……うん……家で待ってるから……」
「じゃあ、後でな……」
ガッチリ掴んだ手を放すと、ロッテはこちらを振り向かずに戦場から離れて行く。
戦魔はロッテを追い掛けようとしているが、俺がそれを許す訳がない。
「テメェ等の相手は、この俺だあああああああああああ!」
空を飛び追い掛ける二十五体と、地上から飛び立とうとした八体。
何一つ残してはやらない。
ロッテを追い掛ける戦魔を、悉く刃で斬り伏せる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
黒が空を踊る度に、夕闇の濃さが増す。
闇は俺の姿を晦まし、動きすらも見せてやらない。
俺が見える戦魔を斬り倒すと、この王都から戦場の音が消え始める。
剣の音、魔法の音、王都から殆どが消えて、残るのは炎と水による爆音と、目の前の悪魔だけだろう。
「残りは、たった二人なんじゃねぇの? 大人しく倒されちまいな」
「ふぅ、まさかここまで劣勢になるとは思いませんでしたねぇ。これは仕方ない。仕方ないでしょう。それではあああああ、最高傑作のお目見えだあああああああああ! 出て来なさい、ノークスとバルン!」
悪魔の発した名前、どこにでもありそうなその名だが、その二つの名には聞き覚えがあった。
捕まえたグレッグの取り巻きの二人の名である。
この事件で、誰一人として気にもされなかった二人は、悪魔によって名を呼ばれたのだ。
その名を呼んだ時、地に見える王都の町並みが、突如強烈に揺れ襲われた。
地震なんて滅多に起きないこの地にっである。
地に居る兵士は立つ事も出来ず、膝をついて耐えるしか出来ないようだ。
頑丈に作られた城だけは持ちこたえているが、戦いでダメージを受けている建物は、なす術もなく崩れていく。
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