一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
25 悪魔は油断した頃にやってくる。
シィヴァと一緒に聞き込みをしていた俺は、店の親父が闇医者だと知って追い掛けて行く。その姿を見つけ腕を掴むが、人の皮を脱ぎ捨てて悪魔が現れた。俺は即座に刃で斬るも、どこからか現れた戦魔に攻撃を防がれてしまう。そしてシィヴァは敵により操られてしまったのだ。俺は毒の爪で倒され、悪魔は二ヶ月後の種激を予告した…………
ベノム (王国の兵1)
バール (王国の兵2)
ゲオルム・ファウス(悪魔ゲルトハイム)
相手の言った二ヶ月を待つまでもなく、こちらは準備を始めている。
人を滅ぼそうとする悪魔である奴が、わざわざその日を選ぶ必要すらない。
奴等悪魔は天使と同じく、時間の感覚もかなりズレているはずだ。
油断させ、一月前に先制をかけて来るなんて普通にあるだろう。
言った二ヶ月を過ぎて、もう来ないと感じる三ヶ月後を狙うかもしれない。
それは奴にしか分からない事だが、こちらの精神は待ち続ける内にも疲弊していく。
だからこちらは、それを加味して作戦を練っていくしかなかった。
そして二ヶ月をとうに過ぎ、四ヶ月後の夕方。
二人の兵士達が町中を見回っていた。
「はぁ、こんな見回りをいつまでもしていて意味あるのかね。俺には理解できないわ」
「言ってやるなよ、べノム隊長だって考えがあるんでしょ。俺達が考える事じゃないさ。ほら、隊長って馬鹿だし」
「……そうかぁ? じつは出て来ないのを認めたくなくて、止める機会を見失ってるだけじゃないのか?」
「まあもうすぐ打ち切られるって話だし、夜も長いし、今日ものんびり見回るとしよう」
「だな」
その口元に笑みを浮かべ、兵士達が町を見回って行く。
この二人だけではなく、多くの者に油断が見られる程になっている。
だからこそこの日、充分に力を蓄えた悪魔と、あの兄弟が動き出したのだろう。
舗装された石畳の道がガタガタと揺れ始め、その道の下の地面から、幾つもの場所から戦魔がとび出していた。
この二人の兵士の前にも、二体の戦魔襲い掛かる。
豪腕を振り上げると、二人へ向かい爪の一撃を放つ。
「うああああああああああああああああああ?!」
「ぎゃああああああああああああああああ!」
その油断した二人の兵士は、なす術もなく戦魔に蹂躙されようとしていた。
大きな剛腕が降り上げられ、二人に振り下ろされたのだ。
「……っとでも言うとでも思ったかボケエエエエエエエエ!」
普通の人間の姿をやめると、黒衣の男が現れた。
まあそりゃあこの俺(べノム)だよ。
飛び出して来た戦魔の二体を斬り倒し、空を居る戦魔共を見定める。
どうやら、百体程度じゃ済まないらしい。
だがこちらも、四ヶ月も有って何もしてない訳がない。
あの馬鹿な悪魔が出やすいように、油断した振りをしてただけである。
王国軍の忍耐力舐めんなって話しだぜ。
まあ本当に油断していた奴は、強制訓練送りにしてやった。
「おおやりましたね隊長。やっと引っ掛かりましたよ! やっぱ人を見下してるだけあってこっちの作戦なんかにも興味ないんすかね」
「テメェは普通に油断してただけなんじゃねぇのか? それに俺は、さっきのセリフを忘れてねぇからな。そんなことより、俺がこの数ヶ月、町の奴らの避難に何度町の往復をしてたか聞かせてやりたいぞこの野郎!」
敵が来ると言われた二ヶ月の間、俺は必死こいて民間人の避難をしていた。
一人ないし二人を手に抱え、隣にあるマルファーの町に移動させること数万回。
結局二ヶ月じゃきかなくて三ヶ月目に突入してやっと終わらせたのである。
やめたくなりそうな辛い日々だった。
「二ヶ月の間何度も何度も何度も何度も、もう間に合わねぇと思ったら来ねぇしよ! 本当に無駄働きかと思ったぞ! 兎に角よぉ、出番だぜテメェ等! 大決戦と行こうじゃねぇか!」
俺は腰に下げていた合図のラッパを盛大に吹き、町中に大音を響かせた。
その音はこの王国中の至る所に拡散し、待機していた奴等の目を覚まさせる。
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
一つ二つと声が上がり、最終的には国を覆い尽くすほどの雄叫びとなっている。
王国の町中は戦魔と王国軍の戦場となって行く。
だが、操られてしまったあの馬鹿兄弟が言った通り、民の犠牲を出さないように計画されたのだ。
つまりは……
「俺が全力を出しても、誰も困らねぇって訳よ! いくぞバール!」
「あ、俺伝令役なんで、このことを城に伝えて来ます。じゃ、頑張ってください隊長。心の中で応援しときますから~……」
もう随分と距離を開けて、バールは逃げている途中だった。
「……テメェ、早速逃げんじゃねぇよ! ……はぁ、クソッ、まあいい、アイツを気にする必要もなくなったからな! 建物以外は全部ぶった斬ってやるぜ!」
俺は空の奴等を叩き斬ってやろうと動くのだが、どうもこの戦魔という奴は、一撃で倒せる様なものではなかったらしい。
さっき斬ってやった二体が起き上がり、空に上がった俺に向かって飛んできている。
聞いていたよりも、かなり強化されているのだろう。
一撃で死なないとなると、あの悪魔を倒した方が手っ取り早いか?
「テメェ等なんぞの動きで、俺が捉えられるかよ!」
向かって来た二体を斬り、地上に落とすも、まだ奴等は動きを続けている。
またも向かって来そうなのだが、丁度よく援軍が来て相手にしてくれている様だ。
だが、俺に向かって来ている奴は、今落ちた二体だけではないらしい。
一、二、三と、時間を置くごとにドンドン増えている。
こんなのをいちいち相手にしてられない。
飛行能力だけ奪って、地上の奴等に任せるとしよう。
「邪魔すんじゃねぇよ!」
俺は敵の攻撃を躱しながら戦魔の翼膜を斬り付ける。
弾力と硬さが共存しているようだが、俺ならばなんとか斬り破るのも出来なくはない。
一体二体と戦魔を斬り落とし、敵の首謀者を見つけ出した。
悪魔の奴はあの兄弟を引き連れて、旧城近くに陣取っている。
あそこは色々と曰くがあり、まだ何も解決されていない場所だ。
王国の王であったメギド様が、未だに隠れられておられる地。
近づけば誰であろうと雷撃を受け、その身を墨に変えられてしまう。
奴等も一応事情も知っているらしく、攻撃されない場所にいるらしい。
だが俺ならあそこまで一秒も掛からない。
まだ砂や水の魔法も展開されていない今なら、全速力の攻撃を当てられるチャンスだ。
「まずは……悪魔からだこの野郎! うおらあああああああああああああ!」
黒の刃は、あの兄弟が動く前に、悪魔の首に刃が届くはずだった。
だが目の前には悪魔の姿ではなく、今まで倒していた戦魔の姿が現れたのだ。
「何ィ!」
「無敵無敵いいいいいいいいいいいい! 私に攻撃を当てたいのならば、全ての戦魔を倒すことだ! まあ貴様程度に出来るはずはないのだがな。ファッハッハッハッハッハッハ! さあ、この馬鹿者をやってしまえ、我が下僕どもよ!」
何かしらの力により、この悪魔は戦魔に護られているのだろう。
奴をやる為には、戦魔を殲滅するしかないらしい。
ベノム (王国の兵1)
バール (王国の兵2)
ゲオルム・ファウス(悪魔ゲルトハイム)
相手の言った二ヶ月を待つまでもなく、こちらは準備を始めている。
人を滅ぼそうとする悪魔である奴が、わざわざその日を選ぶ必要すらない。
奴等悪魔は天使と同じく、時間の感覚もかなりズレているはずだ。
油断させ、一月前に先制をかけて来るなんて普通にあるだろう。
言った二ヶ月を過ぎて、もう来ないと感じる三ヶ月後を狙うかもしれない。
それは奴にしか分からない事だが、こちらの精神は待ち続ける内にも疲弊していく。
だからこちらは、それを加味して作戦を練っていくしかなかった。
そして二ヶ月をとうに過ぎ、四ヶ月後の夕方。
二人の兵士達が町中を見回っていた。
「はぁ、こんな見回りをいつまでもしていて意味あるのかね。俺には理解できないわ」
「言ってやるなよ、べノム隊長だって考えがあるんでしょ。俺達が考える事じゃないさ。ほら、隊長って馬鹿だし」
「……そうかぁ? じつは出て来ないのを認めたくなくて、止める機会を見失ってるだけじゃないのか?」
「まあもうすぐ打ち切られるって話だし、夜も長いし、今日ものんびり見回るとしよう」
「だな」
その口元に笑みを浮かべ、兵士達が町を見回って行く。
この二人だけではなく、多くの者に油断が見られる程になっている。
だからこそこの日、充分に力を蓄えた悪魔と、あの兄弟が動き出したのだろう。
舗装された石畳の道がガタガタと揺れ始め、その道の下の地面から、幾つもの場所から戦魔がとび出していた。
この二人の兵士の前にも、二体の戦魔襲い掛かる。
豪腕を振り上げると、二人へ向かい爪の一撃を放つ。
「うああああああああああああああああああ?!」
「ぎゃああああああああああああああああ!」
その油断した二人の兵士は、なす術もなく戦魔に蹂躙されようとしていた。
大きな剛腕が降り上げられ、二人に振り下ろされたのだ。
「……っとでも言うとでも思ったかボケエエエエエエエエ!」
普通の人間の姿をやめると、黒衣の男が現れた。
まあそりゃあこの俺(べノム)だよ。
飛び出して来た戦魔の二体を斬り倒し、空を居る戦魔共を見定める。
どうやら、百体程度じゃ済まないらしい。
だがこちらも、四ヶ月も有って何もしてない訳がない。
あの馬鹿な悪魔が出やすいように、油断した振りをしてただけである。
王国軍の忍耐力舐めんなって話しだぜ。
まあ本当に油断していた奴は、強制訓練送りにしてやった。
「おおやりましたね隊長。やっと引っ掛かりましたよ! やっぱ人を見下してるだけあってこっちの作戦なんかにも興味ないんすかね」
「テメェは普通に油断してただけなんじゃねぇのか? それに俺は、さっきのセリフを忘れてねぇからな。そんなことより、俺がこの数ヶ月、町の奴らの避難に何度町の往復をしてたか聞かせてやりたいぞこの野郎!」
敵が来ると言われた二ヶ月の間、俺は必死こいて民間人の避難をしていた。
一人ないし二人を手に抱え、隣にあるマルファーの町に移動させること数万回。
結局二ヶ月じゃきかなくて三ヶ月目に突入してやっと終わらせたのである。
やめたくなりそうな辛い日々だった。
「二ヶ月の間何度も何度も何度も何度も、もう間に合わねぇと思ったら来ねぇしよ! 本当に無駄働きかと思ったぞ! 兎に角よぉ、出番だぜテメェ等! 大決戦と行こうじゃねぇか!」
俺は腰に下げていた合図のラッパを盛大に吹き、町中に大音を響かせた。
その音はこの王国中の至る所に拡散し、待機していた奴等の目を覚まさせる。
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
一つ二つと声が上がり、最終的には国を覆い尽くすほどの雄叫びとなっている。
王国の町中は戦魔と王国軍の戦場となって行く。
だが、操られてしまったあの馬鹿兄弟が言った通り、民の犠牲を出さないように計画されたのだ。
つまりは……
「俺が全力を出しても、誰も困らねぇって訳よ! いくぞバール!」
「あ、俺伝令役なんで、このことを城に伝えて来ます。じゃ、頑張ってください隊長。心の中で応援しときますから~……」
もう随分と距離を開けて、バールは逃げている途中だった。
「……テメェ、早速逃げんじゃねぇよ! ……はぁ、クソッ、まあいい、アイツを気にする必要もなくなったからな! 建物以外は全部ぶった斬ってやるぜ!」
俺は空の奴等を叩き斬ってやろうと動くのだが、どうもこの戦魔という奴は、一撃で倒せる様なものではなかったらしい。
さっき斬ってやった二体が起き上がり、空に上がった俺に向かって飛んできている。
聞いていたよりも、かなり強化されているのだろう。
一撃で死なないとなると、あの悪魔を倒した方が手っ取り早いか?
「テメェ等なんぞの動きで、俺が捉えられるかよ!」
向かって来た二体を斬り、地上に落とすも、まだ奴等は動きを続けている。
またも向かって来そうなのだが、丁度よく援軍が来て相手にしてくれている様だ。
だが、俺に向かって来ている奴は、今落ちた二体だけではないらしい。
一、二、三と、時間を置くごとにドンドン増えている。
こんなのをいちいち相手にしてられない。
飛行能力だけ奪って、地上の奴等に任せるとしよう。
「邪魔すんじゃねぇよ!」
俺は敵の攻撃を躱しながら戦魔の翼膜を斬り付ける。
弾力と硬さが共存しているようだが、俺ならばなんとか斬り破るのも出来なくはない。
一体二体と戦魔を斬り落とし、敵の首謀者を見つけ出した。
悪魔の奴はあの兄弟を引き連れて、旧城近くに陣取っている。
あそこは色々と曰くがあり、まだ何も解決されていない場所だ。
王国の王であったメギド様が、未だに隠れられておられる地。
近づけば誰であろうと雷撃を受け、その身を墨に変えられてしまう。
奴等も一応事情も知っているらしく、攻撃されない場所にいるらしい。
だが俺ならあそこまで一秒も掛からない。
まだ砂や水の魔法も展開されていない今なら、全速力の攻撃を当てられるチャンスだ。
「まずは……悪魔からだこの野郎! うおらあああああああああああああ!」
黒の刃は、あの兄弟が動く前に、悪魔の首に刃が届くはずだった。
だが目の前には悪魔の姿ではなく、今まで倒していた戦魔の姿が現れたのだ。
「何ィ!」
「無敵無敵いいいいいいいいいいいい! 私に攻撃を当てたいのならば、全ての戦魔を倒すことだ! まあ貴様程度に出来るはずはないのだがな。ファッハッハッハッハッハッハ! さあ、この馬鹿者をやってしまえ、我が下僕どもよ!」
何かしらの力により、この悪魔は戦魔に護られているのだろう。
奴をやる為には、戦魔を殲滅するしかないらしい。
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