一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
31 食べる、寝る、食べる。
靴を使って倒れている間に縛られた人達は助けられていた。ちょっと休憩して起き上がった時、シャーンの姿は消えている。何処へ行ったかと探すのだけど、この部屋の中には見当たらなかった。シャーンを連れ去るなら出口に向かうだろうと、私はそこで待ち伏せる。思ったとは別の方向から気配を感じ、私はそれを待ち続けた。シャーンを攫った人物だと確認し、軽くシャーンを奪い返すと、敵は最後の手段に出る。マタタビのスプレーを私にかけるが、もうそれは克服していた。攫った敵を退治し、私はシャーンを連れて部屋に戻った…………
モモ (天使に選ばれた猫)
シャーイーン (王国の王子)
ダスク (魔道研究所の職員)
部屋に戻った私は扉を開けっ放しにして、シャーンを寝具に寝かせている。
扉を開けているのは、また何かしらのことがあるかもと考えているからだ。
もし閉めてご飯が来なかったら、私達はどうしたらいいのか。
前はアビゲイルさんが閉め忘れていたからいいけど、今度こそ干からびてしまう。
それにまだアビゲイルさんは見つかっていない。
シャーンを一人残すのはちょっと気が引けるのだけど、ご飯をくれて唯一鍵をもつあの人を見つけ出さなければ私達の未来(ごはん)はない。
部屋を出ようとするのだけど、置いて行くのはやっぱり心配だ。
「……また誰かくるかもしれないし、シャーンも連れて行こう」
シャーンが起きるのを待っていると、人の気配があちらこちらで感じられるようになっていた。
たぶん青い奴等じゃなくて、助けられた人達が仕事に戻ったのだろう。
この部屋の近くに向かって来る人も居るし、話しを聞いてみるのも手だろうか?
でも私は、知らない敵には攻撃できるのだけど、知らない人に話すのは不得意だ。
勇気を出して足を踏み出すのだけど、中々に足が進んで行かない。
私が迷っている間にも、その人物の姿が見え始めた。
髪の色は黒。
それだけで青くはないと分かるけれど、警戒を解くには無理だ。
顎にはブツブツと髭が生えている男。
細い体で私より弱そうだけど、まだ警戒を解く訳にはいかない。
腰や背中に武器はなく、爪や牙も生えてはいない。
私の顔を見ても警戒する事もなく、敵意はないだろう。
でもまだ駄目だ。
私が進むにはまだまだ遠い。
男の手には紙袋が握られていて、それが何だかとても怪しいのだ。
その袋から注意を逸らすなと、私の勘が警戒を促す。
絶対になにかある。
いけない、なぜか涎が垂れてきた。
私は後に退く事もできず、進むこともまたできず、結局動かぬままにその男を待ち続けている。
なぜ涎が出て来たかといえば、近づく度に匂い立ってきている袋だろう。
つまりあの男は、私を餌付けするつもりなのだ。
男は私の前にまで来ると、その袋を私に付き出した。
「さっきはありがとよ。ほれ、土産……」
「ごはあああああああああああん!」
パシッと袋を奪い取って、私はピョンと距離をとる。
やはり袋からは良い匂いがしている。
この中には食べ物が入っているはずだ。
「なんだか警戒されているみたいだが、俺は敵じゃねぇよ。それは食ってくれても構わねぇ。足りねぇんならまた持って来てやるぞ」
袋を開けてみると、鳥の肉が挟まれているサンドウィッチだった。
でもちょっと少ない気がする。
くれるならもっと欲しい。
「私はもっと食べるし、シャーンの分も足りない! もっとくれ!」
「分かった分かった、後で持って来てやるから、とりあえずそれ食っとけよ」
「食べるぞ!」
一応フンフンと匂いを嗅ぐも、おかしな臭いはしてこない。
バクっと食いちぎり咀嚼して呑み込む。
パリッと焼かれた鳥の皮と、柔らかく弾力のある肉からは、ジワジワと旨味のある油が流れる。
少量のキャベツがシャキッとさせて、パンは肉の油を吸って美味さを増していた。
私は飽きずに食べ進め、全て平らげ、袋を突き出して言ってやる。
「もっとくれ!」
「ほら、持って来てやったぜ。それで最後だからシャーイーン王子の分も残しとけよ」
私が食べている間に、何時の間にか袋が増えていた。
食べ物に夢中になっていたから分からなかったのだろうか?
少し妙な感覚がしたけど、今は肉を食べるとしよう。
「ん、わかった!」
投げ渡された袋を受け取り、入っていたサンドウィッチを二切れほど食べ終える。
かなり美味く、もうちょっと食べたいのだけど、それをグッと我慢してシャーンに残した。
「腹は満たせたか? 今度からは俺が飯を運んでやるから顔を覚えておいてくれや。俺の名前は……そうだな、ダスクってことで宜しく」
警戒しなくてもよさそうだと、私はこのダスクという男に話しを聞いた。
私がアビゲイルさんのことを聞くと、彼女は隙を見て施設からは逃げ延びたらしい。
鍵のことも自分が持っていると言っている。
元々このタイミングで交代する予定だったようで、アビゲイルさんとも暫く会えないらしい。
お世話になったから挨拶しておきたかったけど、青化してしまえばそれも出来なくなってしまう。
仕方ないと諦め、私はそれで納得した。
「じゃあ俺は行くぜ。また今度な」
「ん」
返事に頷くと、ダスクがこの場を去って行く。
青化した奴は残り三人、何時来るかは分からないけど、この中なら安心できると部屋の扉を閉めた。 私はシャーンの様子を見ながら自分の布団に入ると、なんだか眠く成って来る。
そのまま目を閉じ眠りについた。
「お姉ちゃん、夜ご飯の時間だよ」
「ご飯?!」
私はシャーンの言葉に跳び起きた。
夜ご飯ということは、それだけ時間が経ったのだろう。
それにシャーンも元気になっていて、心配はいらないらしい。
私は何の心配もなく、ご飯を食べれるということだ。
お腹の具合を確かめるように手を置くと、お腹はグゥと鳴っていた。
消費が早いのは体が大きくなっているからだろうか?
食べるのは好きだから何の問題もない。
眠って気付かなかったけれど、この部屋の中には美味しそうな匂いが漂っている。
私がご飯の匂いに気付かないとは、あの靴でよっぽど疲れていたのだろうか?
それともあの鳥肉の匂いが邪魔をしたのか?
しかし今そんな事はどうでもいいのだ。
そんなことよりご飯だと、私は椅子に座ってテーブルにあるご飯を頂いた。
「お姉ちゃん美味しいね!」
「うん、美味いなシャーン。ちょっとこの玉葱を、お肉と交換してくれ!」
「え~、やだ~。僕もお肉好きだもん!」
じゃれ合いながらの食事は楽しく、笑いながらこの日を過ごした。
そしてその夜、私の目はギンギンに開いて、全く眠れなくなっている。
ずっと寝てたから眠れなくなったのかもしれない。
モモ (天使に選ばれた猫)
シャーイーン (王国の王子)
ダスク (魔道研究所の職員)
部屋に戻った私は扉を開けっ放しにして、シャーンを寝具に寝かせている。
扉を開けているのは、また何かしらのことがあるかもと考えているからだ。
もし閉めてご飯が来なかったら、私達はどうしたらいいのか。
前はアビゲイルさんが閉め忘れていたからいいけど、今度こそ干からびてしまう。
それにまだアビゲイルさんは見つかっていない。
シャーンを一人残すのはちょっと気が引けるのだけど、ご飯をくれて唯一鍵をもつあの人を見つけ出さなければ私達の未来(ごはん)はない。
部屋を出ようとするのだけど、置いて行くのはやっぱり心配だ。
「……また誰かくるかもしれないし、シャーンも連れて行こう」
シャーンが起きるのを待っていると、人の気配があちらこちらで感じられるようになっていた。
たぶん青い奴等じゃなくて、助けられた人達が仕事に戻ったのだろう。
この部屋の近くに向かって来る人も居るし、話しを聞いてみるのも手だろうか?
でも私は、知らない敵には攻撃できるのだけど、知らない人に話すのは不得意だ。
勇気を出して足を踏み出すのだけど、中々に足が進んで行かない。
私が迷っている間にも、その人物の姿が見え始めた。
髪の色は黒。
それだけで青くはないと分かるけれど、警戒を解くには無理だ。
顎にはブツブツと髭が生えている男。
細い体で私より弱そうだけど、まだ警戒を解く訳にはいかない。
腰や背中に武器はなく、爪や牙も生えてはいない。
私の顔を見ても警戒する事もなく、敵意はないだろう。
でもまだ駄目だ。
私が進むにはまだまだ遠い。
男の手には紙袋が握られていて、それが何だかとても怪しいのだ。
その袋から注意を逸らすなと、私の勘が警戒を促す。
絶対になにかある。
いけない、なぜか涎が垂れてきた。
私は後に退く事もできず、進むこともまたできず、結局動かぬままにその男を待ち続けている。
なぜ涎が出て来たかといえば、近づく度に匂い立ってきている袋だろう。
つまりあの男は、私を餌付けするつもりなのだ。
男は私の前にまで来ると、その袋を私に付き出した。
「さっきはありがとよ。ほれ、土産……」
「ごはあああああああああああん!」
パシッと袋を奪い取って、私はピョンと距離をとる。
やはり袋からは良い匂いがしている。
この中には食べ物が入っているはずだ。
「なんだか警戒されているみたいだが、俺は敵じゃねぇよ。それは食ってくれても構わねぇ。足りねぇんならまた持って来てやるぞ」
袋を開けてみると、鳥の肉が挟まれているサンドウィッチだった。
でもちょっと少ない気がする。
くれるならもっと欲しい。
「私はもっと食べるし、シャーンの分も足りない! もっとくれ!」
「分かった分かった、後で持って来てやるから、とりあえずそれ食っとけよ」
「食べるぞ!」
一応フンフンと匂いを嗅ぐも、おかしな臭いはしてこない。
バクっと食いちぎり咀嚼して呑み込む。
パリッと焼かれた鳥の皮と、柔らかく弾力のある肉からは、ジワジワと旨味のある油が流れる。
少量のキャベツがシャキッとさせて、パンは肉の油を吸って美味さを増していた。
私は飽きずに食べ進め、全て平らげ、袋を突き出して言ってやる。
「もっとくれ!」
「ほら、持って来てやったぜ。それで最後だからシャーイーン王子の分も残しとけよ」
私が食べている間に、何時の間にか袋が増えていた。
食べ物に夢中になっていたから分からなかったのだろうか?
少し妙な感覚がしたけど、今は肉を食べるとしよう。
「ん、わかった!」
投げ渡された袋を受け取り、入っていたサンドウィッチを二切れほど食べ終える。
かなり美味く、もうちょっと食べたいのだけど、それをグッと我慢してシャーンに残した。
「腹は満たせたか? 今度からは俺が飯を運んでやるから顔を覚えておいてくれや。俺の名前は……そうだな、ダスクってことで宜しく」
警戒しなくてもよさそうだと、私はこのダスクという男に話しを聞いた。
私がアビゲイルさんのことを聞くと、彼女は隙を見て施設からは逃げ延びたらしい。
鍵のことも自分が持っていると言っている。
元々このタイミングで交代する予定だったようで、アビゲイルさんとも暫く会えないらしい。
お世話になったから挨拶しておきたかったけど、青化してしまえばそれも出来なくなってしまう。
仕方ないと諦め、私はそれで納得した。
「じゃあ俺は行くぜ。また今度な」
「ん」
返事に頷くと、ダスクがこの場を去って行く。
青化した奴は残り三人、何時来るかは分からないけど、この中なら安心できると部屋の扉を閉めた。 私はシャーンの様子を見ながら自分の布団に入ると、なんだか眠く成って来る。
そのまま目を閉じ眠りについた。
「お姉ちゃん、夜ご飯の時間だよ」
「ご飯?!」
私はシャーンの言葉に跳び起きた。
夜ご飯ということは、それだけ時間が経ったのだろう。
それにシャーンも元気になっていて、心配はいらないらしい。
私は何の心配もなく、ご飯を食べれるということだ。
お腹の具合を確かめるように手を置くと、お腹はグゥと鳴っていた。
消費が早いのは体が大きくなっているからだろうか?
食べるのは好きだから何の問題もない。
眠って気付かなかったけれど、この部屋の中には美味しそうな匂いが漂っている。
私がご飯の匂いに気付かないとは、あの靴でよっぽど疲れていたのだろうか?
それともあの鳥肉の匂いが邪魔をしたのか?
しかし今そんな事はどうでもいいのだ。
そんなことよりご飯だと、私は椅子に座ってテーブルにあるご飯を頂いた。
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