一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
21 魔道研究所へ。
一人を倒し残りは二人。レーレが一人を相手にしている間に、私はゴウエンと戦い始めた。動きは遅くそれ程ではないと思っていたけど、中々にガードは上手い。必殺の一撃を防ぐようにと、頭だけは護っている。だったらと、全世界の男の急所へと蹴りを放ったのだが、この男の急所は無くなってしまっていたのだ。足を掴まれピンチとなるが、私は逆に鼻を蹴り飛ばし逃げ延びた。蹲るゴウエンに止めをさすが、もう一人のレイバースには逃げられてしまう。レーレにシャインを任せ、私は追跡を開始したのだが、人の姿に戻った男は、外で兵士に掴まってしまう。私は逃げられなくなった男に向かい、後頭部に蹴りを放ったのだった…………
モモ (天使に選ばれた猫)
シャーイーン (王国の王子)
レーレ (シャーンを狙う女)
レイバースがそのまま兵士に連れて行かれて、私は城に戻って行く。
部屋に戻ると、そこには本物の友達だと思われる子供とシャーンが楽しく遊んでいた。
クロウとピースという男の子だそうで、シャーンとは同じ学校の同級生だと言っている。
一応青くならない為に時間制限付きで遊ぶことを許されていると、私はレーレに教えて貰った。
「行くぞ二人共、あっちの壁まで競争だ!」
「シャーン、最強を目指すクロウ様に勝てると思っているのか! 絶対に負けないからな!」
「ま、待ってよ。僕あんまり走るのは得意じゃないんだ」
シャーンは見せた事がない笑顔を浮かべて、友達の二人と走り回っている。
私と遊ぶ時よりも楽しそうだから、ちょっとだけジェラシーを感じてしまう。
もしかしたら私にまで影響が出ているのだろうかと、自分の長い髪を触ってみるけど、銀の色は変わっていない。
この気持ちは私がちゃんと感じているものだろう。
だからといって友達からシャーンを奪おうなんて気にはならない。
私は青い奴等とは違うのだ。
「ふぁああああ」
暇なら暇で良いかと私は目を閉じるのだけど……
「……痛い」
「貴女は護衛なのですから、シャーイーン様をちゃんと見ているのです」
隣に居たレーレから頭に軽いチョップが落ちた。
私は閉じそうな目でシャーンを見続け、眠りそうになるとまたチョップで起こされる。
そんな時間を繰り返し、子供達が帰る時間となる。
「またな、シャーン!」
「またねー!」
「うん、また遊ぼう!」
私は子供達を見送ると、お母さんからの呼び出しがかかった。
シャーンの事はレーレに任せ、お母さんの居る部屋へ向かって行く。
お城の上の方にある、とても小さなベッドが一つある部屋。
私はその部屋に入り、寝具に手を置いているお母さんを見つけた。
何だか悲しそうな表情をしている。
シャーンと合えないのは寂しいのだろう。
「良く来てくれましたねモモさん、シャーンは元気ですか?」
「うん、シャーンは元気だ。お母さんは私に用か?」
「ええ、シャーンが今の能力を発揮して早三ヶ月、能力を使いこなしてくれればとも思っていましたが、もう自然回復を待ち続けるのは限界でしょう。これ以上シャーンの為だけに大勢の人間を巻き込む訳にもいきません。私は王として、シャーンを魔導研究所へと預けようかと思っています」
「魔道研究所?」
私は首をかしげて聞き返す。
その言葉の知識は私の頭にはないらしい。
「色々と研究を行っている施設ですよ。ただそこに預けるとなると、シャーンにとっては、今よりも辛い立場となるでしょう。モモさん、貴女も一緒に行く事はできないでしょうか?」
「レーレも来るのか?」
「いえ、彼女にも家庭というものがありますからね。今回はお一人でお願いします」
引っ越しはあまり得意ではない。
他の猫のテリトリーじゃないのかとビクビクしてしまう。
でもシャーン一人だときっと淋しいだろう。
私も近くに居てあげた方がいいかもしれない。
そう決意をして返事をする。
「ん、わかった。私も行く!」
「良かった、じゃあ早速向かわせましょう」
そう言ってお母さんは呼び鈴をチリンと鳴らすと、遠くからこの部屋に向かって来る人の気配を感じる。
私は警戒して後に飛び退くのだけど、そのまま空中で浮かばされてしまったのだ。
「皆さん、彼女を連れて行ってあげてください」
「「「「ハッ!」」」」
「ぎゃああああああああああ!」
私は仰向けになったまま暴れようとするのだけど、ガシッと手足を掴まれて、その魔道研究所へと連行されてしまう。
ウネウネの緑色の物体とか、なんだか訳の分からない物ばかり置いてある変な場所の奥。
その中の檻の様な部屋に入れられてしまったのだ。
白く塗られた硬い壁、片隅に置かれた二つのベッド、一つ扉があるけどトイレと書いてある。
退屈しないようにと、大量の本と玩具が置いてあった。
きっとシャーンの為の物だろう。
「…………」
一応自分で行くとは言ったのだけど、恐怖ばかりが先行してくる。
その部屋の角でジッと待ち続けていると、シャーンの気配が感じられた。
カツカツと軽い足音を立てて扉の前に来ると、この部屋の硬そうな扉が開く。
「お待たせ、僕来たよ!」
「シャーン、私ちょっと怖かった!」
私がシャーンに駆け寄ると、後ろにあった扉がガチャンと閉まった。
閉められた扉の外には、もう見張りも付けられていない。
これから私とシャーンは、ここで暮らさないといけないらしい。
少々息苦しい気がするけど、美味しい料理だけは期待しよう。
ご飯の時間になりやって来たのは、私の待ちわびたものだった。
「これは、美味い肉だあああああああああ!」
「お姉ちゃん、お野菜も食べないとダメだからね! ほら食べて、あ~ん!」
フォークに刺してあるのはあの玉葱ではない。
緑のレタスという草だ。
「う~ん、その草なら食べる。あ~ん」
そのレタスという草をシャクシャク食い、狭いながらもそれなりに楽しく過ごした。
たまに検査したりと血を抜かれなければ最高なのだけど、何故私までやられるのだろう?
あの針が痛いのだけは凄く嫌なのに。
それから三日。
この場所での暮らしは不便もなく、シャーンは王子だからと扱いもかなり良い。
欲しい物は持って来てくれるし、味の良い食事が毎回出る。
バリエーションも様々で、魚とかも美味いのだ。
でも三日もここに居ると、やる事にも飽きてきてしまう。
部屋がせまっ苦しく感じ、一度外に出たい気分にもなって来た。
何も言わないけど、シャーンもきっとそう思っているだろう。
今度食事を持ってくる奴にでも聞いてみるとしよう。
モモ (天使に選ばれた猫)
シャーイーン (王国の王子)
レーレ (シャーンを狙う女)
レイバースがそのまま兵士に連れて行かれて、私は城に戻って行く。
部屋に戻ると、そこには本物の友達だと思われる子供とシャーンが楽しく遊んでいた。
クロウとピースという男の子だそうで、シャーンとは同じ学校の同級生だと言っている。
一応青くならない為に時間制限付きで遊ぶことを許されていると、私はレーレに教えて貰った。
「行くぞ二人共、あっちの壁まで競争だ!」
「シャーン、最強を目指すクロウ様に勝てると思っているのか! 絶対に負けないからな!」
「ま、待ってよ。僕あんまり走るのは得意じゃないんだ」
シャーンは見せた事がない笑顔を浮かべて、友達の二人と走り回っている。
私と遊ぶ時よりも楽しそうだから、ちょっとだけジェラシーを感じてしまう。
もしかしたら私にまで影響が出ているのだろうかと、自分の長い髪を触ってみるけど、銀の色は変わっていない。
この気持ちは私がちゃんと感じているものだろう。
だからといって友達からシャーンを奪おうなんて気にはならない。
私は青い奴等とは違うのだ。
「ふぁああああ」
暇なら暇で良いかと私は目を閉じるのだけど……
「……痛い」
「貴女は護衛なのですから、シャーイーン様をちゃんと見ているのです」
隣に居たレーレから頭に軽いチョップが落ちた。
私は閉じそうな目でシャーンを見続け、眠りそうになるとまたチョップで起こされる。
そんな時間を繰り返し、子供達が帰る時間となる。
「またな、シャーン!」
「またねー!」
「うん、また遊ぼう!」
私は子供達を見送ると、お母さんからの呼び出しがかかった。
シャーンの事はレーレに任せ、お母さんの居る部屋へ向かって行く。
お城の上の方にある、とても小さなベッドが一つある部屋。
私はその部屋に入り、寝具に手を置いているお母さんを見つけた。
何だか悲しそうな表情をしている。
シャーンと合えないのは寂しいのだろう。
「良く来てくれましたねモモさん、シャーンは元気ですか?」
「うん、シャーンは元気だ。お母さんは私に用か?」
「ええ、シャーンが今の能力を発揮して早三ヶ月、能力を使いこなしてくれればとも思っていましたが、もう自然回復を待ち続けるのは限界でしょう。これ以上シャーンの為だけに大勢の人間を巻き込む訳にもいきません。私は王として、シャーンを魔導研究所へと預けようかと思っています」
「魔道研究所?」
私は首をかしげて聞き返す。
その言葉の知識は私の頭にはないらしい。
「色々と研究を行っている施設ですよ。ただそこに預けるとなると、シャーンにとっては、今よりも辛い立場となるでしょう。モモさん、貴女も一緒に行く事はできないでしょうか?」
「レーレも来るのか?」
「いえ、彼女にも家庭というものがありますからね。今回はお一人でお願いします」
引っ越しはあまり得意ではない。
他の猫のテリトリーじゃないのかとビクビクしてしまう。
でもシャーン一人だときっと淋しいだろう。
私も近くに居てあげた方がいいかもしれない。
そう決意をして返事をする。
「ん、わかった。私も行く!」
「良かった、じゃあ早速向かわせましょう」
そう言ってお母さんは呼び鈴をチリンと鳴らすと、遠くからこの部屋に向かって来る人の気配を感じる。
私は警戒して後に飛び退くのだけど、そのまま空中で浮かばされてしまったのだ。
「皆さん、彼女を連れて行ってあげてください」
「「「「ハッ!」」」」
「ぎゃああああああああああ!」
私は仰向けになったまま暴れようとするのだけど、ガシッと手足を掴まれて、その魔道研究所へと連行されてしまう。
ウネウネの緑色の物体とか、なんだか訳の分からない物ばかり置いてある変な場所の奥。
その中の檻の様な部屋に入れられてしまったのだ。
白く塗られた硬い壁、片隅に置かれた二つのベッド、一つ扉があるけどトイレと書いてある。
退屈しないようにと、大量の本と玩具が置いてあった。
きっとシャーンの為の物だろう。
「…………」
一応自分で行くとは言ったのだけど、恐怖ばかりが先行してくる。
その部屋の角でジッと待ち続けていると、シャーンの気配が感じられた。
カツカツと軽い足音を立てて扉の前に来ると、この部屋の硬そうな扉が開く。
「お待たせ、僕来たよ!」
「シャーン、私ちょっと怖かった!」
私がシャーンに駆け寄ると、後ろにあった扉がガチャンと閉まった。
閉められた扉の外には、もう見張りも付けられていない。
これから私とシャーンは、ここで暮らさないといけないらしい。
少々息苦しい気がするけど、美味しい料理だけは期待しよう。
ご飯の時間になりやって来たのは、私の待ちわびたものだった。
「これは、美味い肉だあああああああああ!」
「お姉ちゃん、お野菜も食べないとダメだからね! ほら食べて、あ~ん!」
フォークに刺してあるのはあの玉葱ではない。
緑のレタスという草だ。
「う~ん、その草なら食べる。あ~ん」
そのレタスという草をシャクシャク食い、狭いながらもそれなりに楽しく過ごした。
たまに検査したりと血を抜かれなければ最高なのだけど、何故私までやられるのだろう?
あの針が痛いのだけは凄く嫌なのに。
それから三日。
この場所での暮らしは不便もなく、シャーンは王子だからと扱いもかなり良い。
欲しい物は持って来てくれるし、味の良い食事が毎回出る。
バリエーションも様々で、魚とかも美味いのだ。
でも三日もここに居ると、やる事にも飽きてきてしまう。
部屋がせまっ苦しく感じ、一度外に出たい気分にもなって来た。
何も言わないけど、シャーンもきっとそう思っているだろう。
今度食事を持ってくる奴にでも聞いてみるとしよう。
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