一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

42 やっとかよ!

柱の部屋の中に天使を追って行った俺は、彼女と話し合おうとしていた。だが天使は話を聞こうとせず、俺にまた襲い掛かって来る。力が落ちていてそこまで痛くはないのだが、それに気づいた彼女は天動兵器と呼ばれる物を呼ぼうとして来る。だがそれは塔の屋上にぶつかり失敗して、今度は凶器を持とうとペンに向かって行った。俺はそれを防ぎ言い合っていると、背の事にコンプレックスを持ってる事に気付いた。俺はその事で交渉して、彼女はそれに乗って来たのだった…………


べノムザッパー(無力となったマスコット)
ベリー・エル (無口な女)
バール    (女好きの馬鹿)
黒井明(メイ)(振られ男)
ダルタリオン (戦い好きな元上官)
ランツ    (制御不能野郎)
マスティア  (塔の天使)


 天使マスティアと和解し、彼女の背の高さを変える為にと、罠へと向かおうとしていた。。
 あの天使を少し小さいサイズにする為には、罠を四回ぐらい踏まないとならない。
 だが設置してある罠の数はたった二つで、罠解除の一つ前の状態に戻れるのが二つだけである。
 そして使ってないスイッチはたった一つ。
 合計五個、これでは何方にしろ足りないのだった。

「このままじゃ罠の数が足りないんだが、あの罠発動のスイッチは他にないのか?」

「? もうないのですか? では天界から取り寄せないとならないですね」

「そうか、じゃあ取り寄せたらまた呼んでくれ。俺達は王国って国にいるから、訪ねてくれりゃあ対応してやるぜ」

「それは大丈夫なのですよ。まだ使っていない罠なら解除できるので、それを使えば私の体は目的の大きさになる事が出来るのですよ。では早速やるとしましょうか」

「おい待て、罠を解除できると言ったが、その場合俺の体はどうなる?」

「たぶん私の元のサイズぐらいにはなれるんじゃないですか? まあでも約束したんですからやってください」

 確かに約束はした、戻れるという確証があるのなら多少は我慢してやってもいいだろう。
 だが、それで二つ返事で引き受ける程、俺は天使を信用してはいない。
 天使は人間ではないし、その感覚はハッキリと違うものなのだ。
 ちゃんと聞かなければならないだろう。

「まあそれは約束したからな、飲み込んでやってもいいんだが、その前に聞いておきたい事がある。その天界から取り寄せるってのはどのぐらい掛かるんだ?」

 その質問に天使が考え込んでいる。
 今までなん日で来たのか思い出しているのだろう。
 天使の事だから、平気で一年ぐらい掛かる気がしてくる。
 そして思考が終わり、マスティアがその日数を押しててくれた。

「……たぶん、五十年ぐらい?」

「誰が待てるかそんなもん! 人間の寿命甘くみんな! その時には俺の人生終わってるかも知れねえじゃねぇか! というか何で五十年もかかるんだよ。商売する気あるのかそいつ? ぜってぇサボってるだろ!」

「え? 五十年ぐらいも待てないんですか? 何てせっかちな人ですか。牛乳を飲むと良いと聞いたことがありますですよ?」

「五十年も待たせて、せっかちとか言う神経がわかんねぇんだよ! この世界じゃ七十もすれば大体の奴が死んじまうんだ! どうせ在庫はあるんだろ。自分の手で貰ってこいや!」

「……やはり頼む人を間違えたですかね。抹殺して別の人に頼むとします。死になさい!」

 また天使から殺気が放たれ、俺に向かって来ていた。
 これではまた同じ事の繰り返しだろう。
 少し言い過ぎたかもしれないと反省した俺は、マスティアに謝る事にした。

「待て待て、俺が悪かったよ。言い過ぎた、謝るから手を止めてくれ」

「……いいでしょう、私も早く体長の調整をしたいので、今回だけは許してあげるのですよ。では準備をしますから待っているのですよ!」

「ああ分かった。俺は一度仲間達の元に行ってるから、準備が出来たら呼んでくれ」

「逃げないでくださいね?」

「分かってるよ!」

 俺はこの部屋を出て仲間達の元へ向かって行く。
 兎に角、あの天使が罠を取り出す前に、何かしらの方法を考えなければならない。
 罠の数は五つで、使わなきゃいけない数が四つだから、どうやっても無理なのである。
 残りの一つで一つ前の状態に戻れたとして、それが大巨人の姿では意味がない。
 それで帰ったところで、食うのにも困るレベルだろう。
 他の方法は…………
 スイッチは四つだ。
 誰かに半分受け持ってもらえれば、そこまで巨大化することもないだろう。
 ただ、それを受け入れてくれる奴がいるのだろうか?

「あ、俺やります!」

  俺が仲間達に相談すると、そうあっさり言って来たのは、さっきあの天使に殺されそうになっていたバールだった。
 もう少し背が伸びても良いと思っているのかもしれない。

「そうか、じゃあお前に頼むぜ。よし、これでやっと帰れるぜ!」

「あのべノムさん、もし不都合があるのなら俺がやってもいいんですよ?」

「何だメイ、お前も背を伸ばしたいのか?」

「いえ、僕はそういう訳ではないんですけど。まあ皆さんが納得しているのならいいです」

「? そうか、じゃあ行くぞバール!」

「へ~い」

 俺は普通に喜んで天使マスティアの元へと向かって行くのだった。
 柱の扉を開けた時、あの天使は丁度よく罠の取り出し作業を終えたらしい。
 再び地図から罠を作り出し、罠を作り出そうとしていたのだ。

「ふぅ、出来たのですよ。おや、貴方は……まあいいでしょう。では早速やりにいきましょうか」

「おう!」

「はいはい」

 近くの罠の場所へ向かう俺達三人。
 最初に罠を踏みたいと言ったのは、俺ではなくバールの奴だった。

「最初にやりたいとか言って、お前なんか狙ってるのかよ?」

「隊長、俺は色々な経験を得て知ってるんですよ。こういう物は後になればなるほど大変になってしまうってね。だから真っ先に終わらせるのが吉なんです!」

「お前がそう思ってるなら別に構やしねぇよ。やりたいなら早くやっちまえよ」

「ええ、ではお先に。じゃあマスティアちゃん俺と一緒に罠を踏みましょう!」

「そうですね、お前と一緒なのは気に入りませんけど、私の体の為です。受け入れますですよ」

「では早速……」

 二人は巨大化の罠を踏み、二人の体がドンドン大きくなるかに思われた。
 バールの体は寝ているにもかかわらず、殆ど天井にまで届いている。
 だが実際大きくなっているのはバールだけで、天使の体はそのまま変わらなかったのだ。
 
「? なんですかこれは。まさか私を騙したのですか?!」

「いや落ち着け。お前の体は実際縮んでいるし、罠が効く方法があるはずだ。例えば、あの罠は俺がスイッチをセットして書き込みをしたんだ。それが原因かもしれないぜ」

「隊長、もう罠を発動させてもいいんでしょうか?!」

「お前はまだ使うんじゃねぇよ。トラブルだ、そのままちょっと待ってろよ!」

「早くしてください、結構息苦しいんですから!」

「わかってるよ! 兎に角、もう一度罠を取り出して、今度は俺が罠を作ってやるからそれでやってみようぜ」

「……いいでしょう」

 当初の予定道理とはならず、このままでは最終的に巨大化したまま取り残されてしまいそうだ。
 だが今はやるしかない。
 また罠を解除し、今度は俺が罠を作る事になった。
 だが今の状態のバールに、もう一度巨大化の罠を踏ませるのは不可能だろう。
 これ以上の巨大化は、最悪塔全体が崩れかねない。
 俺はバールが居る場所とは離れた位置に罠を作り、それを踏んでみる事になった。
 天使マスティアと一緒に踏むと、ちゃんとその体も大きくなっている様である。
 因みに俺もかなり巨大化し、彼女の姿はもう見えない。

「おお、やりました、やりましたですよ! ではもう一つを使うのですよ!」

「おい、ちゃんと俺の体に触れてるんだろうな? ちゃんと掴んどけよ、失敗したらもう罠がないからな!」

「分かっているのですよ、良いから押し込むのです!」

「おし!」

 その罠を踏み込むと、俺の体は少しだけ大きくなって戻っていた。
 ちゃんと発動して良かったといいたいが、問題は次なのである。
 彼女は今縮んでいて、今度押さないとならないのが巨大化のスイッチなのだ。
 今のバールに押させるのは無理があるし、俺が踏んでしまえばどちらかが取り残されてしまう。
 ハッキリ言えばどうにもならないのだが、俺は子供程度になった天使に相談を持ち掛けた。

「一つ相談があるんだけどよ。やっぱりスイッチを取り寄せてくれねぇかな? たかだか五十年なんだろ? 取りに行けばもっと早くやれるんじゃねぇのか? 流石に、アイツをあのままの状態にはしておけねぇんだよ。この条件をのんでくれねぇかな?」

「駄目ですね、私は今やりたいんですよ! これだけ期待させておいて、ここで止めるとかあり得ないです!」

「マジか! もう少し考えてくれても良いんじゃねぇのか?」

「くどいです!」

 やはり戦うしかねぇのか?
 この女を倒したら、また大量の天使が襲撃して来ないよな?
 ピリピリとした空気が流れだした頃、俺の元に助け船がやって来たらしい。

「だったら僕がやりますよ。僕なら罠の効果を受けませんからね」

 俺の助けに入ったのは、言い争いを見てやって来たメイの奴だった。

「おおお、そう言えばそうだったな。あんまり色々な事があり過ぎて忘れてたぜ。これでなんとかやれそうなきがしてきたぞ。じゃあ頼むぜメイ!」

 一度目はメイが、二度目はバールを元に戻し、天使の体が目的のサイズになったのだった。
 そもそもメイが最初からやれば何の問題もなかった気がするが、まあその事は良いとしよう。
 もう言ったところで意味もないし。


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