一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
34 お前は一体誰なんだよ!
赤い蛇との戦闘は続く。バール達の参戦で蛇との戦いが有利に運び出すが、それでも倒せるようなダメージは与えられない。ランツの力も相手には効かず、後方で声の応援に力を入れ始めている。ただの役立たずである。だが俺も人の事はいえないぐらいで、どうにかしようとメイに剣を借りるのだった。その剣はなかなか強く、俺でも蛇にダメージを与えられている。それも直ぐに対応されて、遠くに吹っ飛んでしまうのだが。地面に剣が食い込み逃げるしかなくなった俺だが、蛇の力を利用してその剣を引き抜く事に成功する。もう何度も攻撃を躱している俺は、蛇のタイミングを見計らい、全力の一撃を食らわせた。追いついて来た仲間と共に、全員で止めを刺したのだった…………
べノムザッパー(無力となったマスコット)
ベリー・エル (無口な女)
バール (女好きの馬鹿)
黒井明(メイ)(振られ男)
ダルタリオン (戦い好きな元上官)
ランツ (制御不能野郎)
赤い蛇を倒し、その体が光となって消え去る、と二百六十階層への階段が現れる。
たぶんこの階層にはもう何も残ってはいないとは思うのだが、一応調べるもやはり何も無く、結局上階へと上がって行く。
俺達はゆっくり階段を上がり、今後の展開を考える。
もうかなりの時間を探索し、充分貰える額は稼いだと思うのだ。
いや、もう充分以上な額になっているかもしれない。
それだというのに、この俺の体は一体いつになったら戻るのだろうか……
あまりに貰い過ぎてしまえば、マリア―ドとの関係が悪化するということもなくはないし、貰える額を少なくして恩を売るのもありだろうか?
あのおかしな王が、そんな機微を理解しているのかも微妙な所なのだが。
「さて、上の階に到着だな。…………だがこりゃあまた、随分と何にもねぇ所だな」
俺達が辿り着いた二百六十階層は、本当に何もない階層だった。
天井は普通に天井だし、床にも土があったりはしない。
柱や壁、天井や床を見ると、ツルッとした石のような素材で覆われている。
どれも見た事がない物ではあるが、こんな巨大な塔を支えているのだから強靭なものなのだろう。
寧ろこの方が塔として普通の姿ではあるが、俺がこの塔に慣れ過ぎたせいで逆に違和感を感じてしまっているのだろう。
まあ探し易いのは良い事なのだが。
「隊長、こんだけデッカイ塔なんですから、作るの忘れてるんじゃないですか?」
「あ~、なんかあり得そうだな。今思い出したくもない顔を思い出したぜ」
王国には何人かの天使が存在している。
その中で俺が思い出したのは、とある一室に閉じこもっている馬鹿天使の顔である。
もう年単位で彼女と一緒に閉じこもり、カードゲームの対戦に興じていた。
休憩や眠りさえもせずやりつづける、マジもんの変わり者だ。
あれに関わって良い事はない。
実際酷い目にも何度も合っているし、例えそれが間接的であろうとその効果は絶大なのだ。
君子危うきに近寄らず、そう思って行動しても、勝手に奴等の方から来るので避けようがない。
もう天災にも等しいものである。
いや、考えるのだけでも不味い気がするから、もうこれ以上は考えない事にしよう。
で、結局この階層には今の所何も見当たらず、何もないからこそなのか、下の階よりだだっ広く見えている。
見るべきところといえば、この階層の四隅にある巨大な柱ぐらいだろうか?
とりあえず周りを見て確認している俺に、ダルタリオンが提案を持ちかけた。
「ふむ、何もないのならばまた班を分けて探すのがいいだろうか? ではまた頼むぞ二人共、また仲良くやろうではないか!」
「ふぁいやふぁいや!」
「えっ?! いや、俺オッサンと仲良くなる気なんてないんで、班替えを希望します! 出来ればエルと一緒に!」
「バールさん、それは認められません! エルさんはさっき僕の恋人になったんです! ですからそういう不純なことは考えないでください!」
「…………ん!」
「はっ? 二人共何時の間にそんな関係に。俺が居ない間に一体何が?! いや、それより俺との子作りはどうなるん、どわっちいいいいいいいいいいいいいい!」
エルの無言の炎弾は、バールの体を無慈悲に焼いている。
普通の人間なら確実に死んでいるレベルではあるが、この馬鹿はその程度では死なないのだ。
心配する必要すら無意味だろう。
「この馬鹿の事に賛同する訳じゃねぇが、班分けはしないでおこう。こういう場所こそ危険がある気がしないでもないからな」
「ふむ、確かに怪しいといえば怪しいな。では全員で行くとしよう」
「ふぁいやあああああ、ふぁいや!」
「じゃあその前に燃えないゴミを捨ててきましょうか。あ、大丈夫です、それは僕がやっときますから。皆さんは先に行っててください」
そういってメイはバールという名の、燃えなかったゴミに向き直った。
ハッキリと敵意を向けてだ。
「あれメイ君、何か俺の扱いが酷くなってませんか。さっきのは冗談なんですよ?!」
「ああ冗談だったんですか。本気だったらどうしようかと思ってた所ですよ。あはは。出来ればもう二度と言わないでくださいね?」
「ごめんなさい、もうやりませんから許してください」
手が汚れてしまうからと、そう言いたげな笑顔である。
女で変わる男だとは思っていたが、ここまでなのか。
殺気を感じたのか、バールがエルから距離をとり、二人から離れていく。
エルにしたら凶暴な番犬を手に入れたぐらいの事だろう。
このぐらい使えるのなら、それなりに手放さないはずだ。
少なくともこの塔に居る間は。
だがメイに関しては、本当にやりそうな気配を感じるので、一応俺も気を付けるとしよう。
「じゃあもう進むからな。だが見通しが良いからと油断はするな?」
「はい、じゃあ行きましょうエルさん!」
「…………うん!」
「うむ」
「ふぁふぁい!」
「へ~い」
俺は仲間に注意を促し、隊を分断することなく進み始める。
全員の目がこの階層全てに注意を払っているはずなのだが、必要とする罠は何一つとして発見できず、本当に忘れているんではないかと言える程だった。
下にあったレリーフもなくなり、壁を触っても何も反応はない。
あとはあの巨大な柱だけだろう。
「後はあの柱ぐらいしか調べられそうな物はみあたらないな」
そしてその問題の柱だ。
一本目の柱は何もなく、切断も破壊も出来そうもなかった。
二本目すらも意味のない物で、どうにもならず三本目の柱を探し始める。
「あ、見てくださいべノムさん、ここに扉がありますよ。もしかして上にあがれる階段なんじゃないでしょうか?」
「お、マジか?」
メイに指摘された場所には、隠された様に柱と同じ色に造られた扉が存在していた。
あと柱が一つ残されているが、ここに扉があるなら向うには何もない気がする。
俺は、この柱の扉を開けてみる事にした。
「またあの一つ目の巨人でも入ってたりしてな。じゃ戦闘体勢を維持したまま開けてみるとしようか」
注意してそのノブを掴み、何があっても良い様にと、ゆっくりと扉を開く。
扉は音もなくスッと開き、その中から何者かが動く気配が感じられた。
「?! 動かねぇ!」
だが完全に開き切る前に、扉は動かなくなってしまう。
どうも中から引っ張られているらしい。
力を入れて踏ん張るも、開いた分もドンドン閉まり始めて行く。
俺もキメラ化をして、普通の人間に負けるつもりはないのだが、扉を引っ張っているのはどう考えても人の力じゃない。
このままでは扉が完全に閉じてしまうだろう。
「グッ、俺一人じゃ無理だ。おい、手伝えテメェ等! この中に何か居やがるぞ!」
「おお、このワシに任せるがいい!」
「俺も手伝いますよべノムさん!」
「ふぁいやあああああああああ!」
「…………!」
「よいしょお!」
開いた扉に手を掛け、六人がかりでギリギリという感じだったが、扉は少しずつ開き始めた。
扉の内からは人の腕が見え始める。
だがそれが人であるはずもなく、開いた扉から天使が飛び出すのだった。
べノムザッパー(無力となったマスコット)
ベリー・エル (無口な女)
バール (女好きの馬鹿)
黒井明(メイ)(振られ男)
ダルタリオン (戦い好きな元上官)
ランツ (制御不能野郎)
赤い蛇を倒し、その体が光となって消え去る、と二百六十階層への階段が現れる。
たぶんこの階層にはもう何も残ってはいないとは思うのだが、一応調べるもやはり何も無く、結局上階へと上がって行く。
俺達はゆっくり階段を上がり、今後の展開を考える。
もうかなりの時間を探索し、充分貰える額は稼いだと思うのだ。
いや、もう充分以上な額になっているかもしれない。
それだというのに、この俺の体は一体いつになったら戻るのだろうか……
あまりに貰い過ぎてしまえば、マリア―ドとの関係が悪化するということもなくはないし、貰える額を少なくして恩を売るのもありだろうか?
あのおかしな王が、そんな機微を理解しているのかも微妙な所なのだが。
「さて、上の階に到着だな。…………だがこりゃあまた、随分と何にもねぇ所だな」
俺達が辿り着いた二百六十階層は、本当に何もない階層だった。
天井は普通に天井だし、床にも土があったりはしない。
柱や壁、天井や床を見ると、ツルッとした石のような素材で覆われている。
どれも見た事がない物ではあるが、こんな巨大な塔を支えているのだから強靭なものなのだろう。
寧ろこの方が塔として普通の姿ではあるが、俺がこの塔に慣れ過ぎたせいで逆に違和感を感じてしまっているのだろう。
まあ探し易いのは良い事なのだが。
「隊長、こんだけデッカイ塔なんですから、作るの忘れてるんじゃないですか?」
「あ~、なんかあり得そうだな。今思い出したくもない顔を思い出したぜ」
王国には何人かの天使が存在している。
その中で俺が思い出したのは、とある一室に閉じこもっている馬鹿天使の顔である。
もう年単位で彼女と一緒に閉じこもり、カードゲームの対戦に興じていた。
休憩や眠りさえもせずやりつづける、マジもんの変わり者だ。
あれに関わって良い事はない。
実際酷い目にも何度も合っているし、例えそれが間接的であろうとその効果は絶大なのだ。
君子危うきに近寄らず、そう思って行動しても、勝手に奴等の方から来るので避けようがない。
もう天災にも等しいものである。
いや、考えるのだけでも不味い気がするから、もうこれ以上は考えない事にしよう。
で、結局この階層には今の所何も見当たらず、何もないからこそなのか、下の階よりだだっ広く見えている。
見るべきところといえば、この階層の四隅にある巨大な柱ぐらいだろうか?
とりあえず周りを見て確認している俺に、ダルタリオンが提案を持ちかけた。
「ふむ、何もないのならばまた班を分けて探すのがいいだろうか? ではまた頼むぞ二人共、また仲良くやろうではないか!」
「ふぁいやふぁいや!」
「えっ?! いや、俺オッサンと仲良くなる気なんてないんで、班替えを希望します! 出来ればエルと一緒に!」
「バールさん、それは認められません! エルさんはさっき僕の恋人になったんです! ですからそういう不純なことは考えないでください!」
「…………ん!」
「はっ? 二人共何時の間にそんな関係に。俺が居ない間に一体何が?! いや、それより俺との子作りはどうなるん、どわっちいいいいいいいいいいいいいい!」
エルの無言の炎弾は、バールの体を無慈悲に焼いている。
普通の人間なら確実に死んでいるレベルではあるが、この馬鹿はその程度では死なないのだ。
心配する必要すら無意味だろう。
「この馬鹿の事に賛同する訳じゃねぇが、班分けはしないでおこう。こういう場所こそ危険がある気がしないでもないからな」
「ふむ、確かに怪しいといえば怪しいな。では全員で行くとしよう」
「ふぁいやあああああ、ふぁいや!」
「じゃあその前に燃えないゴミを捨ててきましょうか。あ、大丈夫です、それは僕がやっときますから。皆さんは先に行っててください」
そういってメイはバールという名の、燃えなかったゴミに向き直った。
ハッキリと敵意を向けてだ。
「あれメイ君、何か俺の扱いが酷くなってませんか。さっきのは冗談なんですよ?!」
「ああ冗談だったんですか。本気だったらどうしようかと思ってた所ですよ。あはは。出来ればもう二度と言わないでくださいね?」
「ごめんなさい、もうやりませんから許してください」
手が汚れてしまうからと、そう言いたげな笑顔である。
女で変わる男だとは思っていたが、ここまでなのか。
殺気を感じたのか、バールがエルから距離をとり、二人から離れていく。
エルにしたら凶暴な番犬を手に入れたぐらいの事だろう。
このぐらい使えるのなら、それなりに手放さないはずだ。
少なくともこの塔に居る間は。
だがメイに関しては、本当にやりそうな気配を感じるので、一応俺も気を付けるとしよう。
「じゃあもう進むからな。だが見通しが良いからと油断はするな?」
「はい、じゃあ行きましょうエルさん!」
「…………うん!」
「うむ」
「ふぁふぁい!」
「へ~い」
俺は仲間に注意を促し、隊を分断することなく進み始める。
全員の目がこの階層全てに注意を払っているはずなのだが、必要とする罠は何一つとして発見できず、本当に忘れているんではないかと言える程だった。
下にあったレリーフもなくなり、壁を触っても何も反応はない。
あとはあの巨大な柱だけだろう。
「後はあの柱ぐらいしか調べられそうな物はみあたらないな」
そしてその問題の柱だ。
一本目の柱は何もなく、切断も破壊も出来そうもなかった。
二本目すらも意味のない物で、どうにもならず三本目の柱を探し始める。
「あ、見てくださいべノムさん、ここに扉がありますよ。もしかして上にあがれる階段なんじゃないでしょうか?」
「お、マジか?」
メイに指摘された場所には、隠された様に柱と同じ色に造られた扉が存在していた。
あと柱が一つ残されているが、ここに扉があるなら向うには何もない気がする。
俺は、この柱の扉を開けてみる事にした。
「またあの一つ目の巨人でも入ってたりしてな。じゃ戦闘体勢を維持したまま開けてみるとしようか」
注意してそのノブを掴み、何があっても良い様にと、ゆっくりと扉を開く。
扉は音もなくスッと開き、その中から何者かが動く気配が感じられた。
「?! 動かねぇ!」
だが完全に開き切る前に、扉は動かなくなってしまう。
どうも中から引っ張られているらしい。
力を入れて踏ん張るも、開いた分もドンドン閉まり始めて行く。
俺もキメラ化をして、普通の人間に負けるつもりはないのだが、扉を引っ張っているのはどう考えても人の力じゃない。
このままでは扉が完全に閉じてしまうだろう。
「グッ、俺一人じゃ無理だ。おい、手伝えテメェ等! この中に何か居やがるぞ!」
「おお、このワシに任せるがいい!」
「俺も手伝いますよべノムさん!」
「ふぁいやあああああああああ!」
「…………!」
「よいしょお!」
開いた扉に手を掛け、六人がかりでギリギリという感じだったが、扉は少しずつ開き始めた。
扉の内からは人の腕が見え始める。
だがそれが人であるはずもなく、開いた扉から天使が飛び出すのだった。
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