一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
84 宝石の行方は?
俺は黒色の魔族に腕を掴まれ、床に叩きつけられていた。その男はべノムと名乗るも、俺達と接触していたアリーに説得され、俺の手を放した。このまま敵となるのかどうかと、俺は宝石の行方を聞くと、自分が持っているという。しかも王国が貰う予定だと言い張っていた。俺は大臣の独断だと説得するも、ただ信じてはもらえないらしい。王に聞けばハッキリすると、提案する。だが王は城におらず、ダブロイン大臣を叩き起こした。観念すると思われたダブロインだが、笑みを浮かべて王の暗殺をほのめかす、殆ど間に合わない距離だというが、黒い男べノムが飛び立ち、王を助けに行った…………
マルクス・ライディーン (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド・マグロイド (マリア―ドの偉い人?)
グリアーデ・サンセット (領主の座を狙う女)
アリー・ゲーティス (王国の兵士)
べノムの脇に抱えられた男、この男がこの国の王だろう。
短いクリームのような色合いの髪をグニャグニャと巻かれているようなクセ毛だろう。
その王とみられる男は、かなり若い。
分かりやすく王冠を落ちないように手で押さえ、黒いべノムとは対照的に白いマントをしていた。
パッと床に降ろされ、キョロキョロ落ち着かないように俺達の顔を見渡している。
そして自分が今何処に居るのか気付き、ディレイドを見て話しかけた。
「あ、ダブロインじゃん、ってここってダブロインの部屋か、そっかーダブロインが助けてくれたんだ。うんうん、良い働きだぁ、じゃ、ありがとありがと、褒めてつかわすよ、うんうんやるじゃん、フッフー! で、何で縛られてるのよ、性癖? 大丈夫、俺は寛容だよ。いくらでもやってちょうだいよ、うん」
何を勘違いしたのか、マリア―ドの王は、縛り上げられ転がされているダブロインを恩人だと勘違いしている。
それを好機だと、ダブロインも言い訳を始めた。
「…………ハッ、そ、そうでございます王よ、この私が助けたのでございます! さあこのロープを解いてくださいませんか?」
「うむ、ではそこの兵士、ちょっと解いてやってくれヨウ!」
ビシっと手を前に、指を使って妙なポーズをとっている。
俺の王というイメージが崩れていく。
殆ど下っ端の俺達には、自国でさえ王と面会どころか、声すら聞く事は難しい。
だがなんというか、この王からは、威厳というものがまるで感じられない。
遊び人の兄ちゃんが、王のコスプレをしているという方がシックリ来そうだ。
確かにこんな王では反逆したくなる気持ちも分からなくもない。
しかしいくら馬鹿王といっても、自分を殺そうとしたダブロインを、自分を助けたと勘違いして貰っては困る。
ディレイドがバンと前に踏み込み、そんな馬鹿そうな王に進言した。
「王よ、その首を狙っていたのがダブロインでございますぞ! 我らが縛り上げたというのに、この反逆者に褒美をくれてやってどうするのですか!」
「違いますぞ王よ、この私こそが王を助けようとしたのです! この者達こそが暴漢でございます!」
このまま言い争いをしていても意味がないので、俺は一言いってやった。
「貴方を助けた、その黒い人に聞けばハッキリわかるでしょう。聞いてみたらどうなんですか?」
「あっ、そうか、あったまイイね君、どう、俺の新鋭隊に入らない? 歓迎するよ、フッフー!」
また別のポーズを取り、俺をビシッと指さした。
…………ワザとふざけて居るのだろうか?
いや、ディレイドや他の奴等からも馬鹿王だと呼ばれているから、これが素なのかもしれない。
しかし親衛隊か、この国に移住すれば大出世が出来そうだが、この王の親衛隊となれば相当苦労するのだろう。
今現在命を狙われたりしているし、断るのが無難だな。
「いや、俺はラグナードから来たから、この国の兵士にはなれないです。それより早く聞いてみたらどうでしょうか?」
「じゃあそこの黒ッチ、俺の命を救ってくれてサンキューさー! で、どうなんだい? どっちが嘘を言ってるのかよう」
「…………誰が黒ッチ……ですか。そいつですよ、その大臣が裏切ったんですよ。まあそれはこの国の話で俺達とは関係ない話ですがね」
「う、嘘だ、そのものは嘘を言っている! 王よ、この私のことを信用してください、私はこの国の大臣なのですよ? 他国の雑兵と発言の重さが違うと思わないのですか?!」
「えええ? まあ思うよ、命の恩人の意見の方が重くね? ということで、大臣ちゃん、君死刑ね。お~い、誰か、この裏切り者を牢に連れて行って」
「や、やめろ、はなせ、はなせえええええええええええええええええ!」
王に呼ばれた兵士が、大臣を連れて行く。
その兵士も、たぶん大臣の部下だろうが、負けが決まった大臣につくのかは微妙な所だ。
このまま城から出されるのか、それとも牢に運ばれるのか、成る様にしかならないだろう。
大臣が連れて行かれ、話が終わるかといえば、そうではない。
魔族の男べノムが、自分の優位になるように話を進めている。
「まっ、大臣の事はこれでいいとして。それよりも、俺達にとって大事なことは、この赤い宝石を俺達の手に渡してくれるかって話です。で王様、命まで助けてやったんだ、この赤い宝石は王国側が貰うで良いんですよな?」
黒い男べノムは、微妙に話し方がおかしなことになっている。
目の前の男が王だとは分かっているが、どう考えても尊敬できないと、敬語がおかしなことになっていた。
の王のことだ、うんそうだねと、渡されてもらっては困る。
俺達の事もちゃんと伝えなければ。
「マリア―ド王、その宝石はラグナードと取引して渡される物でしょう。今更それを覆らせてもらっては困ります。例えどんな理由があろうと、それは我等ラグナ―ドの物です! 命を助けて貰った褒美ならば、金でも渡してあげればいいでしょう。宝石は此方に譲渡すると言ってください」
「ああん? 今更金程度で納得できるかよ。これは今俺の手にあるんだぜ? あんた達こそ、もう金を貰って帰ったらどうなんだい?」
この男、実力としては俺より数段上だと思うが、だとしても引ける話ではない。
俺とは男は睨み合いを続け、最終的に王の判断を待った。
「「で、王の判断はどっちだ(よ)?」」
その俺達の問いかけに、マリアードの王は悩んでいる。
頭をグルグルと回転させ、天井を見たり、床を見たりと色々している。
やがて手をポンと叩き、その答えを出した。
「なんかよく知らないけど、宝石はラグナードに渡らないとレイミアンに怒られるし、でも助けてくれたから渡してあげたしー。う~ん、よし、じゃあもう戦って勝った方でいいんじゃない?」
「よし乗った!」
べノムは即座にそれに乗るが、俺達にとっては勝ち目のない戦いだ。
簡単に受け入れる訳にはいかない。
「いや駄目だ、それは不味い! こんな魔族に人が一人で勝つのは無理だ! 勝負をするのは構わないが、平等な勝負を望むぞ!」
「あああ? だったらその黒い人と、此処に居る全員で戦えばいいんじゃないのかい? もうそれにしよう、面倒だから。もうそれで決まりよフッフー!」
「俺は構わないぜ? そっちはどうするよ」
「分かった、ならそれで戦おう。じゃあ決定ということで、アンタ意外というんだ、そこに居るアリーも、こちら側の戦力として数えさせてもらう」
「えっ、俺ですか?!」
「あん? こいつもか? まあ、俺はそれでも構わねぇぜ。そのぐらいハンデがあっても勝てる自信はあるからな」
この人数差でも怯まないとは、このべノムという魔族、魔族の中でも格が違うのだろうか?
だがアリーを仲間に引き入れられたのは、良い感じだ。
これで一つ勝ち筋が見えてきた。
刻限は明日の昼、城の庭にて決戦が行われる。
当日。
カラフルな城の隣の庭には、手入れされた花々が咲き、踏みつけるのも少々躊躇うのだが、此処で戦えというのだから言うことを聞くしかないだろう。
王もこの場に現れ、俺達の決着を見守るらしい。
あのべノムという黒い男、国の任務の為だ、きっと全力で来る。
それはこちらも同じ事だ。
勝つ為に全力でと、俺達は愛用の武器を引き抜いた。
マルクス・ライディーン (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド・マグロイド (マリア―ドの偉い人?)
グリアーデ・サンセット (領主の座を狙う女)
アリー・ゲーティス (王国の兵士)
べノムの脇に抱えられた男、この男がこの国の王だろう。
短いクリームのような色合いの髪をグニャグニャと巻かれているようなクセ毛だろう。
その王とみられる男は、かなり若い。
分かりやすく王冠を落ちないように手で押さえ、黒いべノムとは対照的に白いマントをしていた。
パッと床に降ろされ、キョロキョロ落ち着かないように俺達の顔を見渡している。
そして自分が今何処に居るのか気付き、ディレイドを見て話しかけた。
「あ、ダブロインじゃん、ってここってダブロインの部屋か、そっかーダブロインが助けてくれたんだ。うんうん、良い働きだぁ、じゃ、ありがとありがと、褒めてつかわすよ、うんうんやるじゃん、フッフー! で、何で縛られてるのよ、性癖? 大丈夫、俺は寛容だよ。いくらでもやってちょうだいよ、うん」
何を勘違いしたのか、マリア―ドの王は、縛り上げられ転がされているダブロインを恩人だと勘違いしている。
それを好機だと、ダブロインも言い訳を始めた。
「…………ハッ、そ、そうでございます王よ、この私が助けたのでございます! さあこのロープを解いてくださいませんか?」
「うむ、ではそこの兵士、ちょっと解いてやってくれヨウ!」
ビシっと手を前に、指を使って妙なポーズをとっている。
俺の王というイメージが崩れていく。
殆ど下っ端の俺達には、自国でさえ王と面会どころか、声すら聞く事は難しい。
だがなんというか、この王からは、威厳というものがまるで感じられない。
遊び人の兄ちゃんが、王のコスプレをしているという方がシックリ来そうだ。
確かにこんな王では反逆したくなる気持ちも分からなくもない。
しかしいくら馬鹿王といっても、自分を殺そうとしたダブロインを、自分を助けたと勘違いして貰っては困る。
ディレイドがバンと前に踏み込み、そんな馬鹿そうな王に進言した。
「王よ、その首を狙っていたのがダブロインでございますぞ! 我らが縛り上げたというのに、この反逆者に褒美をくれてやってどうするのですか!」
「違いますぞ王よ、この私こそが王を助けようとしたのです! この者達こそが暴漢でございます!」
このまま言い争いをしていても意味がないので、俺は一言いってやった。
「貴方を助けた、その黒い人に聞けばハッキリわかるでしょう。聞いてみたらどうなんですか?」
「あっ、そうか、あったまイイね君、どう、俺の新鋭隊に入らない? 歓迎するよ、フッフー!」
また別のポーズを取り、俺をビシッと指さした。
…………ワザとふざけて居るのだろうか?
いや、ディレイドや他の奴等からも馬鹿王だと呼ばれているから、これが素なのかもしれない。
しかし親衛隊か、この国に移住すれば大出世が出来そうだが、この王の親衛隊となれば相当苦労するのだろう。
今現在命を狙われたりしているし、断るのが無難だな。
「いや、俺はラグナードから来たから、この国の兵士にはなれないです。それより早く聞いてみたらどうでしょうか?」
「じゃあそこの黒ッチ、俺の命を救ってくれてサンキューさー! で、どうなんだい? どっちが嘘を言ってるのかよう」
「…………誰が黒ッチ……ですか。そいつですよ、その大臣が裏切ったんですよ。まあそれはこの国の話で俺達とは関係ない話ですがね」
「う、嘘だ、そのものは嘘を言っている! 王よ、この私のことを信用してください、私はこの国の大臣なのですよ? 他国の雑兵と発言の重さが違うと思わないのですか?!」
「えええ? まあ思うよ、命の恩人の意見の方が重くね? ということで、大臣ちゃん、君死刑ね。お~い、誰か、この裏切り者を牢に連れて行って」
「や、やめろ、はなせ、はなせえええええええええええええええええ!」
王に呼ばれた兵士が、大臣を連れて行く。
その兵士も、たぶん大臣の部下だろうが、負けが決まった大臣につくのかは微妙な所だ。
このまま城から出されるのか、それとも牢に運ばれるのか、成る様にしかならないだろう。
大臣が連れて行かれ、話が終わるかといえば、そうではない。
魔族の男べノムが、自分の優位になるように話を進めている。
「まっ、大臣の事はこれでいいとして。それよりも、俺達にとって大事なことは、この赤い宝石を俺達の手に渡してくれるかって話です。で王様、命まで助けてやったんだ、この赤い宝石は王国側が貰うで良いんですよな?」
黒い男べノムは、微妙に話し方がおかしなことになっている。
目の前の男が王だとは分かっているが、どう考えても尊敬できないと、敬語がおかしなことになっていた。
の王のことだ、うんそうだねと、渡されてもらっては困る。
俺達の事もちゃんと伝えなければ。
「マリア―ド王、その宝石はラグナードと取引して渡される物でしょう。今更それを覆らせてもらっては困ります。例えどんな理由があろうと、それは我等ラグナ―ドの物です! 命を助けて貰った褒美ならば、金でも渡してあげればいいでしょう。宝石は此方に譲渡すると言ってください」
「ああん? 今更金程度で納得できるかよ。これは今俺の手にあるんだぜ? あんた達こそ、もう金を貰って帰ったらどうなんだい?」
この男、実力としては俺より数段上だと思うが、だとしても引ける話ではない。
俺とは男は睨み合いを続け、最終的に王の判断を待った。
「「で、王の判断はどっちだ(よ)?」」
その俺達の問いかけに、マリアードの王は悩んでいる。
頭をグルグルと回転させ、天井を見たり、床を見たりと色々している。
やがて手をポンと叩き、その答えを出した。
「なんかよく知らないけど、宝石はラグナードに渡らないとレイミアンに怒られるし、でも助けてくれたから渡してあげたしー。う~ん、よし、じゃあもう戦って勝った方でいいんじゃない?」
「よし乗った!」
べノムは即座にそれに乗るが、俺達にとっては勝ち目のない戦いだ。
簡単に受け入れる訳にはいかない。
「いや駄目だ、それは不味い! こんな魔族に人が一人で勝つのは無理だ! 勝負をするのは構わないが、平等な勝負を望むぞ!」
「あああ? だったらその黒い人と、此処に居る全員で戦えばいいんじゃないのかい? もうそれにしよう、面倒だから。もうそれで決まりよフッフー!」
「俺は構わないぜ? そっちはどうするよ」
「分かった、ならそれで戦おう。じゃあ決定ということで、アンタ意外というんだ、そこに居るアリーも、こちら側の戦力として数えさせてもらう」
「えっ、俺ですか?!」
「あん? こいつもか? まあ、俺はそれでも構わねぇぜ。そのぐらいハンデがあっても勝てる自信はあるからな」
この人数差でも怯まないとは、このべノムという魔族、魔族の中でも格が違うのだろうか?
だがアリーを仲間に引き入れられたのは、良い感じだ。
これで一つ勝ち筋が見えてきた。
刻限は明日の昼、城の庭にて決戦が行われる。
当日。
カラフルな城の隣の庭には、手入れされた花々が咲き、踏みつけるのも少々躊躇うのだが、此処で戦えというのだから言うことを聞くしかないだろう。
王もこの場に現れ、俺達の決着を見守るらしい。
あのべノムという黒い男、国の任務の為だ、きっと全力で来る。
それはこちらも同じ事だ。
勝つ為に全力でと、俺達は愛用の武器を引き抜いた。
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