一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

82 戦いの決着…………?

地下から脱出した俺達は、まず武器を補充しようとディレイドの自宅に招かれた。そこで俺は武器を補充し、城へと向かったのだ。だが大臣は俺達を待ち受け、大勢の部下を引き連れ待ち構えていた。もう話し合える雰囲気ではなく、戦いが始まろうとしていた。ディレイドが飛び出そうとするのを押さえ、ラクシャーサに指示を出す。魔法を使い、その進行を止めると、ゴーレムを出現させ、弓の矢で敵兵の攻撃しだす。殆ど矢を撃ち尽くすと、白兵戦の時間が来きた…………


マルクス・ライディーン    (ラグナード神英部隊、隊長)
ラクシャーサ・グリーズ    (ラグナード神英部隊、後方支援)
ガルス・フリュード      (ラグナード神英部隊、前方防御)
ドボルホーテ・アルティマイオス(ラグナード神英部隊、遊撃兵)
セリィ・ブルーマリン     (魔物と人の娘。エルフ種)
ディレイド・マグロイド    (マリア―ドの偉い人?)
グリアーデ・サンセット    (領主の座を狙う女)
アリー・ゲーティス      (王国の兵士)






 前衛組である俺達が突っ込み、ラクシャーサとセリィには泥のゴーレムが護衛についた。
 矢の少なくなった二人には、これ以上を期待するのは少々酷だろう。
 跳び出すとはいえ、ただバラバラに戦うのはキツイと、俺はガルスに後方を任せる。

「ガルス、後ろを頼んだぞ。お前が退いたら俺が死ぬからな、絶対退くなよ!」

「わわわわわわわ分かってるよ!」

「ならばわしはディレイド殿の後ろにつこう。後方は儂が護ってやりますぞ!」

「それは頼もしい、さあ蹴散らすとしましょうぞ!」

 たった四人で十八人はそうとう大変だ。
 まずは数を減らさなければ勝ち目は薄い。
 そう思った俺は全力を尽くす為、剣に力を籠めて魔力を解き放った。

「神風よ、我が剣に具現せよ! 出でよ、風神の剣!」

 ブロードソードに、風の力が宿る。
 刃に風が纏いつき、剣の刃の鋭さが増した。
 そうしている間にも、俺達の周りには多量の兵士が溢れかえる。

「来るぞ、ガルス! 気合を入れろよ」

「見れば分かるって! うわあああああ、やっぱり多いいいいいいいいい!」

「安心しろ、直ぐに減らしてやる!」

 風の力をもつ剣の刃が、前方に居る三人を武装ごと斬り伏せる。

「ぐああああああああッ」

「いやああああああああ」

「くあっ…………」

 だが四人目を相手にする前に、魔法の力に剣が負けて、バラバラに崩れ去ってしまう。
 まだ残り十五人、可哀想なブロードソードの為に祈ってやりたいが、それは後回しにしなければならない。
 直ぐに次のブロードソードを引き抜き、また魔の力を解放する。

「大地の神よ、我がつるぎに具現せよ! 出でよ、轟烈ごうれつつるぎ!」

 剣の先が揺らめき、収縮しているような力の結晶が現れる。
 斬り結んだ四人目の相手を弾き飛ばし、その後ろに居る相手までも吹き飛ばされた。
 後に居る四人を巻き込んだが、動けなくなっているのはたった一人で、人数を減らすのにはあまり有効ではないらしい。
 ただ相手の体勢を崩すには、とても有効だ。
 隙を窺うディレイドを助けるように、敵の一人を弾き飛ばし、ディレイドを襲う二人を弾き飛ばす。
 開いた隙間を埋めるように、直ぐに敵兵がそれを塞ぐが、たった数秒の空白がディレイドを攻撃に転じさせる。
 左に居る兵士を斬り伏せ、今度は詰めて来た二人を相手に、二人では相手にならんとぶった斬る。
 俺は二本目の剣を失うと、三本目のブロードソードを抜き放つ。

「神炎よ、我がつるぎに具現せよ! 出でよ、鳳凰のつるぎ!」

 剣の銀から炎が燃える。
 だがその剣を持つ俺に、近寄る愚か者は居なくなっていた。
 俺の前方を囲うだけで、一向に襲って来ない。
 残り十一人、まだまだ敵の人数は此方よりも多く、武器の数は減る一方だ。 
 このまま魔法の時間切れを待つのは、この剣に申し訳ない。
 誰も襲って来ないならと、俺は大臣に向かって炎の剣を投げつけた。
 その剣は大臣に向かうも、部下の一人に弾き落とされてしまう。

「ぎゃあああああああああああ!」

 ただ、それでも炎は弾いた剣を伝い、その兵士へと移っていく。
 残りの剣は四本、あまり使いたくないドゥサック(剣)を抜き、相手が寄って来るまで魔法を温存させた。
 防御役のガルスには期待が出来ないが、ディレイドとドル爺な少しずつ敵を減らしてくれている。
 あと八人、その内一人が大臣だから、約七人、ゴーレムやラクシャーサ達も入れれば戦力は逆転している。
 俺はここが好機と、全員に指示を出した。

「戦力は逆転した、一気に大将首を取る! 全員突っ込むぞ!」

「良く言ったぞ若いの! さあ反撃の始まりぞ! ダブロインよ、この私の腕を見て恐れおののくがいい!」

「おおおおお、腕が鳴るわい! 我が槍の鋭さ、とくと御覧じよ!」

「い、行くよ!」

「こっちも行くよセリィ! でも無理はしないようにね」

「わかった~!」

 そして俺は、これが最後だと、魔法を使った。

「神風よ、我が剣に具現せよ! 出でよ、風神の剣!」

 風の力が剣に宿り、それを見た敵兵士は怯み、後に一歩下がった。
 今までその威力を見ていたからだろう、大臣までの道は開けている。
 俺を先頭に、ディレイド、ドル爺、更にガルスと、その後ろにラクシャーサとセリィがつづく。
 ゴーレムは左右に展開し、防御は鉄壁と言って良いだろう。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「な、何をしている、この聖右大臣であるこの私を護らぬかああああああああああ!」

 敵の中央を駆け抜け、ダブロインへ、その刃を振り下ろした。

「あぎゃああああああああああああああ!」

 剣はその額でピタリと止まり、ダブロイン大臣は白目をむいて後に倒れた。
 まっ、俺達は止めを刺せる様な立場にはないし、まだ宝石の事も聞いてはいない。
 それに俺達の任務は、あくまでも宝石を持ち帰ることなのだ。
 
「大賞首は捕まえたぞ、武器を捨てるなら今がその時だ。それとも、終わるまで続けるのか?」

「………………」

 敵兵の手からカランと剣が床へと落ち、これで終わるかに見えた。
 戦いの終わった戦場に、カチャリカチャリと鎧の足音が二つ響く。
 それは俺達が落とされたあの部屋の中からだ。
 俺は剣を向けそちらに振り向くと、知った顔である、アリーと、知らない顔がもう一人。
 全身が真っ黒の姿の男は、肩からマントを羽織り、人とは少し違う、 
 鳥のような頭は、カラスと言われれば、そう見えなくもない。
 その男がこちらを見つめて、その歩みを止めたのだ。

「何だかうるせぇと思ったら、これは一体どうするべきだろうなぁ? なぁ、どうするよアリー?」

「この国の事はこの国の事なんで、放っておけばいいんじゃないですか? だって関わったら絶対面倒ですよ隊長」

「いよし、見なかったことにするか。じゃあまあご勝手に」

 引き止め戦うべきか、一瞬そんな考えも過ったが、それが無謀な事だと思い至り、剣を下げた。
 だがその瞬間、俺の背後に黒色の影が現れる。
 ガッと腕を掴まれた俺は、その腕を動かせない。

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