一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
60 小さく大きな物語29
ラグナードの国境を抜けた俺達は、マリア―ドへと侵入した。スコルピオ・ワルザーの町という悪趣味な名前の町に来た俺達、俺とストリアは自由時間を満喫し、町中をぶらついている。何かストリアが怒って何処かに行ってしまうと、俺は町中にある矢印を追って行く。しかしかなりの大回りをさせられ、これでは何時まで経っても着かないと、俺は町の中心に屋敷があるんじゃないかと移動した。やはりそこに屋敷があり、俺はその中に入るのだが、そこでストリアと再び合流し、使用人に大歓迎され、執事に道を案内された。しかしその先、地下室に案内された俺達は、ギルドに案内されて、依頼を無理やり受けさせられるのだった…………
レティシャス(シャインの息子)ストリア (村娘)
リッド (村人) リーゼ (リッドの母ちゃん)
俺はセバスチャンを問い詰めようとするが、その細かった体が筋肉で盛り上がっていく。
倍ほどには膨れたその体で腕を組み、俺の方を見つめ、やんのかオイって状態である。
ストリアと二人がかりで戦えば勝てるかもしれないが、この町全体を相手にお尋ね者にされるのは勘弁だ。
叩きつけた依頼書を拾い、俺は受付へと渡すのだった。
「…………お願いします」
「ありがとうございま~す♪」
やたらと明るい受付の女の子だが、この明るさがむしろウザい。
別に普通の女の子だが、こんな罠があるからだろうか?
俺はその子から幾つかの依頼書を渡され、受けざるを得ない状況になっている。
渡された依頼書は五つ。
簡単に説明すると、
一つ目、町の外に出没する魔物の討伐。
二つ目、町中に潜む魔物の討伐。
三つ目、地下道に潜む魔物の討伐。
四つ目、空を飛び、人を攫う魔物の討伐。
五つ目、夜間に出没する魔物の討伐。
一応報酬もちゃんとあるらしいが、今はレッドマリンから報酬を受け取っていて、懐は温かいのだ。
わざわざこんな危険な依頼を受ける必要はない!
「って全部魔物の討伐依頼じゃん! 危なくてやってられるかこんなもん!」
「そうだな、私達は急いでいるんだ。他のにしてくれ。もっと簡単なやつがいい」
「そうですか~? ではこんなのもありますよ~?」
そう言って手渡されたのは、炎獄山に巣食った魔竜ヴァハムーティアの討伐。
どう考えてもやってられない内容である。
「むずかしくしてどうする! いやもっと簡単なやつだよ、猫探しとか簡単なやつでいいんだよ!」
「猫探しですか~? ああ、そういえば一つありました。ちょっと待ってくださいね」
そう言って女が依頼書を漁っている。
やがて一つの依頼書を見つけ、俺の手に手渡された。
「なんじゃこりゃ、猫じゃなくてトナカイとか、そんなの飼ってる人居るんだな」
その内容とは、最近ペットとして買いだしたトナカイが町の何処かに逃げたそうだ。
それを捕まえて連れ帰ってほしいという依頼だった。
トナカイは大人しい性格と言われているが、人には懐かないなんて言われている動物だ。
大きな角をもち、馬より早い脚を持っている。
捕まえるのは大変そうだが、危険度は低いだろうか?
「なるほど、トナカイか。飼うというより放牧でもしていたんじゃないだろうか?」
「う~ん、そうかもな。まあでも、このぐらいならいけるかな? じゃあこれにしよう」
他よりはましと、俺はその依頼を受ける事にした。
「じゃあこれでお願いします」
「ありがとうございま~す♪ あ、因みに途中で止めたりすると、膨大な違約金が要りますので注意してくださいね♪ 普通の人だったら一年働いても返せない額なので~♪」
「どんだけブラックなんだよ! いやまあトナカイぐらい捕まえられるけどさ、こんなことしてたら誰も人来なくなるんじゃないのか?」
「あ、はい、だからこうして色々罠を仕掛けているのですけど、中々上手くいかないんですよね~♪ お金を支払わず逃げ出す人が続出したり、大体が牢屋行きで、受ける人が少なくなって困っているんですよ。お二人が来られてラッキーで~す♪」
そりゃあ、こんなやり方してたら誰も来なくなるだろうよ。
もう言い合いするのも馬鹿らしい、とっとと依頼を完遂してしまおうか。
俺達はセバスチャンの居る扉から出ようとするのだが、
「あの、退いてくれない?」
「出口はあちらに…………」
セバスチャンは肉体を見せるように引き締め、受付のある奥の扉を指さした。
受付の、あの女も手招きしているからたぶんあそこが出口なんだろう。
また罠なんじゃないかと、少し身を竦ませながら、俺達はその扉を潜った。
俺は注意しながらその先を観察すると、そこもまたギルドの一部となっている。
いや、むしろこっちの方が本物なんじゃないのか?
大勢の冒険者達と、酒場のような内装、それと大きな依頼ボードも、どの町でも見たものと同じだ。
俺達がその扉から出て来るのを見ると、そこに居た全員が笑い出した。
「フフフ、フハハハハハハハハ! まさかあんな罠に引っかかるやつがいるとは、お前等馬鹿じゃねぇの?!」
「アハハハハハ、お腹痛い、お腹痛い!」
「あれだろ、あの矢印に沿って進むと、バカ高い金を支払わなきゃならないってやつだろ?! 普通なにかあると思うだろ普通よ! フハッ!」
どうもこの町ではそれが常識らしいが、遠くから来た俺達がそんな事を知ってる訳がない。
ムカつく刈り上げや、モヒカン共をぶん殴ってやりたいが、そんな騒動を起こせば、また何かしらあるんじゃないかと疑ってしまう。
俺はさっと去ろうとするのだが、ストリアは戦闘モードに入っていた。
「レティ、私はちょっと殺ってくるから、ちょっと待っていてくれ。大丈夫、直ぐ終わる」
ストリアなら此処の全員相手にしても勝てるかもしれないが、それで通報とかされたら困る。
お尋ね者になって逆に追われるなんてことにも。
この町なら有り得る。
止めるとくとしよう。
「待てストリア、こんな奴等を相手にするな。また変なことに巻き込まれて牢屋にでもぶち込まれたら不味い。もう依頼を終わらせて、早くこの町から出て行こう」
「レティがそれで良いというのなら、私はそれに従おう」
冒険者達から逃げるのかとか、笑われるが、歯ぎしりをしながら依頼者の元へ向かった。
依頼者の家は、牛や馬、羊や鶏、豚や七面鳥など、色々と飼っている畜産場らしい。
トナカイや他にも色々な動物も飼われているが、この辺りは趣味の領分なんだろう。
その畜産場の隣に有る小さな小屋が依頼者の家で、依頼を出したのはプリマという女性らしい。
俺は家の扉を叩き、そのプリマという女性と面会した。
出て来たのは四十を越えたぐらいだと思われる女で、髪を全部後にまわし、頭の上に団子を作っている。
長袖と長いスカートのワンピースを着ていた。
正直言って、この恰好で農場で働いてるとは思えないけど。
三角の眼鏡に、目付きは蔑んだ様に俺達を見下げていた。
あまり印象はよろしくないが、話さなければ話が進まない。
俺は勇気を出して彼女に話しかけた。
「こ、こんにちは、俺達ギルドから依頼を受けたんだけど」
「貴方達がぁ? ふぅ、まさか子供がやってくるとは。いえ、まあいいでしょう、言い合ってて時間を無駄にするのも面倒です。地図を書き記しておきましたので、その場所に向かいなさい。その場所にトナカイが居るはずですから」
手に持った地図を放り投げられ、なんとか地面に着く前に拾い上げるのだが、プリムという人はバンと扉を閉めてそのまま出て来なくなってしまう。
「どうするんだレティ、言われた場所に行くのか?」
「まあそれしかないだろうな、このまま待っていても出て来なさそうだし。じゃあ行ってみるか」
どうにも流されまくりなのだが、俺達は地図に描かれた場所に向かったのだ。
町の中にある三メートルぐらいの丘の上、その丘の先端に、目的のトナカイが佇んでいる。
真っ赤なブリーフを履き、筋肉ムキムキのトナカイのマスクを被った赤マントの男が。
あれがペット? ペットなのか?!
レティシャス(シャインの息子)ストリア (村娘)
リッド (村人) リーゼ (リッドの母ちゃん)
俺はセバスチャンを問い詰めようとするが、その細かった体が筋肉で盛り上がっていく。
倍ほどには膨れたその体で腕を組み、俺の方を見つめ、やんのかオイって状態である。
ストリアと二人がかりで戦えば勝てるかもしれないが、この町全体を相手にお尋ね者にされるのは勘弁だ。
叩きつけた依頼書を拾い、俺は受付へと渡すのだった。
「…………お願いします」
「ありがとうございま~す♪」
やたらと明るい受付の女の子だが、この明るさがむしろウザい。
別に普通の女の子だが、こんな罠があるからだろうか?
俺はその子から幾つかの依頼書を渡され、受けざるを得ない状況になっている。
渡された依頼書は五つ。
簡単に説明すると、
一つ目、町の外に出没する魔物の討伐。
二つ目、町中に潜む魔物の討伐。
三つ目、地下道に潜む魔物の討伐。
四つ目、空を飛び、人を攫う魔物の討伐。
五つ目、夜間に出没する魔物の討伐。
一応報酬もちゃんとあるらしいが、今はレッドマリンから報酬を受け取っていて、懐は温かいのだ。
わざわざこんな危険な依頼を受ける必要はない!
「って全部魔物の討伐依頼じゃん! 危なくてやってられるかこんなもん!」
「そうだな、私達は急いでいるんだ。他のにしてくれ。もっと簡単なやつがいい」
「そうですか~? ではこんなのもありますよ~?」
そう言って手渡されたのは、炎獄山に巣食った魔竜ヴァハムーティアの討伐。
どう考えてもやってられない内容である。
「むずかしくしてどうする! いやもっと簡単なやつだよ、猫探しとか簡単なやつでいいんだよ!」
「猫探しですか~? ああ、そういえば一つありました。ちょっと待ってくださいね」
そう言って女が依頼書を漁っている。
やがて一つの依頼書を見つけ、俺の手に手渡された。
「なんじゃこりゃ、猫じゃなくてトナカイとか、そんなの飼ってる人居るんだな」
その内容とは、最近ペットとして買いだしたトナカイが町の何処かに逃げたそうだ。
それを捕まえて連れ帰ってほしいという依頼だった。
トナカイは大人しい性格と言われているが、人には懐かないなんて言われている動物だ。
大きな角をもち、馬より早い脚を持っている。
捕まえるのは大変そうだが、危険度は低いだろうか?
「なるほど、トナカイか。飼うというより放牧でもしていたんじゃないだろうか?」
「う~ん、そうかもな。まあでも、このぐらいならいけるかな? じゃあこれにしよう」
他よりはましと、俺はその依頼を受ける事にした。
「じゃあこれでお願いします」
「ありがとうございま~す♪ あ、因みに途中で止めたりすると、膨大な違約金が要りますので注意してくださいね♪ 普通の人だったら一年働いても返せない額なので~♪」
「どんだけブラックなんだよ! いやまあトナカイぐらい捕まえられるけどさ、こんなことしてたら誰も人来なくなるんじゃないのか?」
「あ、はい、だからこうして色々罠を仕掛けているのですけど、中々上手くいかないんですよね~♪ お金を支払わず逃げ出す人が続出したり、大体が牢屋行きで、受ける人が少なくなって困っているんですよ。お二人が来られてラッキーで~す♪」
そりゃあ、こんなやり方してたら誰も来なくなるだろうよ。
もう言い合いするのも馬鹿らしい、とっとと依頼を完遂してしまおうか。
俺達はセバスチャンの居る扉から出ようとするのだが、
「あの、退いてくれない?」
「出口はあちらに…………」
セバスチャンは肉体を見せるように引き締め、受付のある奥の扉を指さした。
受付の、あの女も手招きしているからたぶんあそこが出口なんだろう。
また罠なんじゃないかと、少し身を竦ませながら、俺達はその扉を潜った。
俺は注意しながらその先を観察すると、そこもまたギルドの一部となっている。
いや、むしろこっちの方が本物なんじゃないのか?
大勢の冒険者達と、酒場のような内装、それと大きな依頼ボードも、どの町でも見たものと同じだ。
俺達がその扉から出て来るのを見ると、そこに居た全員が笑い出した。
「フフフ、フハハハハハハハハ! まさかあんな罠に引っかかるやつがいるとは、お前等馬鹿じゃねぇの?!」
「アハハハハハ、お腹痛い、お腹痛い!」
「あれだろ、あの矢印に沿って進むと、バカ高い金を支払わなきゃならないってやつだろ?! 普通なにかあると思うだろ普通よ! フハッ!」
どうもこの町ではそれが常識らしいが、遠くから来た俺達がそんな事を知ってる訳がない。
ムカつく刈り上げや、モヒカン共をぶん殴ってやりたいが、そんな騒動を起こせば、また何かしらあるんじゃないかと疑ってしまう。
俺はさっと去ろうとするのだが、ストリアは戦闘モードに入っていた。
「レティ、私はちょっと殺ってくるから、ちょっと待っていてくれ。大丈夫、直ぐ終わる」
ストリアなら此処の全員相手にしても勝てるかもしれないが、それで通報とかされたら困る。
お尋ね者になって逆に追われるなんてことにも。
この町なら有り得る。
止めるとくとしよう。
「待てストリア、こんな奴等を相手にするな。また変なことに巻き込まれて牢屋にでもぶち込まれたら不味い。もう依頼を終わらせて、早くこの町から出て行こう」
「レティがそれで良いというのなら、私はそれに従おう」
冒険者達から逃げるのかとか、笑われるが、歯ぎしりをしながら依頼者の元へ向かった。
依頼者の家は、牛や馬、羊や鶏、豚や七面鳥など、色々と飼っている畜産場らしい。
トナカイや他にも色々な動物も飼われているが、この辺りは趣味の領分なんだろう。
その畜産場の隣に有る小さな小屋が依頼者の家で、依頼を出したのはプリマという女性らしい。
俺は家の扉を叩き、そのプリマという女性と面会した。
出て来たのは四十を越えたぐらいだと思われる女で、髪を全部後にまわし、頭の上に団子を作っている。
長袖と長いスカートのワンピースを着ていた。
正直言って、この恰好で農場で働いてるとは思えないけど。
三角の眼鏡に、目付きは蔑んだ様に俺達を見下げていた。
あまり印象はよろしくないが、話さなければ話が進まない。
俺は勇気を出して彼女に話しかけた。
「こ、こんにちは、俺達ギルドから依頼を受けたんだけど」
「貴方達がぁ? ふぅ、まさか子供がやってくるとは。いえ、まあいいでしょう、言い合ってて時間を無駄にするのも面倒です。地図を書き記しておきましたので、その場所に向かいなさい。その場所にトナカイが居るはずですから」
手に持った地図を放り投げられ、なんとか地面に着く前に拾い上げるのだが、プリムという人はバンと扉を閉めてそのまま出て来なくなってしまう。
「どうするんだレティ、言われた場所に行くのか?」
「まあそれしかないだろうな、このまま待っていても出て来なさそうだし。じゃあ行ってみるか」
どうにも流されまくりなのだが、俺達は地図に描かれた場所に向かったのだ。
町の中にある三メートルぐらいの丘の上、その丘の先端に、目的のトナカイが佇んでいる。
真っ赤なブリーフを履き、筋肉ムキムキのトナカイのマスクを被った赤マントの男が。
あれがペット? ペットなのか?!
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