一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
32 小さく大きな物語22
「ローレンシア、ローレンシア・ブライアは居るか! 私はレッドマリン・フェイスフェイクである! この私に待ちぼうけをさせるとは、一体どういう積もりだ!」
その声を聞き、俺は窓からその人物を見ると、怒った女性がドアをガンガンと叩いている。
この宿に怒鳴り込んで来たのは、二十人ぐらいも居る、大勢の部下達を連れた女だった。
たぶんだが、ローレンシアさんに待ちぼうけさせられた、可哀想な貴族の人である。
歳は二十歳を越えたぐらいで、長い黒髪ではなんとなくローレンシアさんに似ているのだ。
案外親戚とかだったり?
そんな女の人に怒鳴られているのに、ローレンシアさんは出て行く気配がない。
いや、もしかしたら出て行く為に化粧でもしているのかもしれないな。
そのまま五分もすると、その女は更に怒って、入り口の扉を蹴り破り、宿の中に入って来ている。
バンと俺達の部屋の中にまで何人も入って来ると、俺達を睨み、ローレンシアさんの居場所を聞いてきた。
「おい貴様達、この宿の主人は何処に行った?! 隠すと為にならぬぞ!」
「わわわ、なになに?!」
「はぁ、煩いわねぇ。私達が何かしているように見えるの? 今日たまたまこの宿に泊まっただけの客よ。貴方達の望んでいることなんて知らないわ」
「俺達はただの客だから知らないよ。自室で休んでるんじゃないのか? あ、ストリア、その菓子取ってくれ、ちょっと食いたい」
「そうか! じゃあ私があ~んをしてやろう!」
「いや、それは要らない」
ストリアは残念がっている。
俺がシャインを愛して居なければ受け入れても良いのだが、これは仕方のないことだ。
そんな俺達のやり取りを見て、部屋に入って来た女達は別の場所へ探しに行くらしい。
「クッ、他の部屋を探せ! 何としても見つけるのだ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
俺達をまた一睨みして、扉を開けたまま別の部屋へ探しに行く。
開けられた扉はそのままにして。
出来れば扉ぐらい閉めて行って欲しい。
三十分程探し回っている女達だが、結局見つからず、その騒動も収まろうとしている頃、家の外からローレンシアさんがバッチリ化粧をして現れたのだ。
「あら皆さん、お待たせしちゃいましたかしら」
もう夕日が沈みかけている。
夜が来たら勝負どころではないだろう。
まあ勝負するのかも知らないけど。
「き、貴様ああああああああ、今まで何処に行っていた!」
「はぁ? ちょっとお夕飯の買い出しに行ってたんですが、お待たせしちゃったかしら。あらあら、ではご挨拶を。いらっしゃいませ。今日はお泊りですね。随分大勢ですので、お値段はお安くしておきますね」
ローレンシアさんは彼女のことを客だと勘違いしている。
何だか面白そうなので、俺はその様子を観察してよう。
「だぁれが泊まりに来たと言ったか! まさか私との勝負のことを忘れていた訳ではあるまいな! もしそうであったならば、ぜぇっっったいに許さんぞ!」
「ああ、そうでしたそうでした、お化粧をするのに夢中になっていて、すっかり忘れていたわ。もう暗くなって来ましたし、そのことはまた今度にして、今日は家に泊まって行ったらどうでしょう?」
「ぐおおおおおお、何時も何時も、そんな返しで逃げられると思うなよ! 今日はこの町にまでやって来たのだ。ずぇッッッたいに逃がさんぞ!」
もう不戦敗で勝ってるんじゃないかな~とか思うんだけど、彼女は納得していないらしい。
ちゃんと勝負してこの町を自分の物にしたいのだろう。
しかし何回もこんなやり取りをしているのか。
彼女も可哀想な人だなぁ。
「でもねぇ、もう暗いじゃない? 今からやってたら夕食の準備が出来ないもの。う~ん、私も予定があるから、今度は三か月後ぐらいにしましょうね」
「誰が三か月後にまた来るものか! 明日だ、明日の朝勝負しろ! それで決着をつけてやる!」
「でもねぇ、勝負するにもほら、こんな惨状じゃない? 私使用人とかも居ないし、困っちゃうわ」
「むああああああああああああ! だったらあいつ等だ! あいつ等に勝負を手伝わせろ!」
ビシッと俺達の居る方角、に指をさされている。
「えええっ、俺達か?!」
俺達は何故か、勝手に勝負の場に上げられてしまったのだった。
俺達も一度は勝負を受けると言ったのだ。
全く関係ない訳じゃないが、報酬の方はどうなるんだろう?
この場合、レッドマリンという女が言ったから、その彼女から報酬を貰うべきか?
「おいコラお前、勝手に決めんな! でもまあ受けても良いけど、タダじゃやんないぞ! 俺達は報酬を希望する!」
女からは俺を殺しそうな瞳で睨まれるが、条件付きでそれを受け入れてくれたのである。
魔物との戦いを経た俺をビビらせるとは相当なものだろう。
「下民如きが…………良いだろう、もし私との勝負に勝ったのなら、我が家の家宝であるこの聖銀の首飾りをやろう! 私との勝負に勝てればの話だがな!」
銀で竜をあしらった首飾りで、その体は色々な宝石で散りばめられて、中央部は開くようになっていて、何かが入れられるようになっている。
売ればかなりの値段になりそうだ。
「いいぜ、その勝負乗ってやるぜ! 今言った言葉を後悔するなよ!」
「あらまあ私の為にありがとうね。皆が納得した所で食事の準備をするから、一緒に食べましょうね」
「誰が敵と一緒に食事を取るものか! 私達は別の宿を探す、食事をしたいのなら勝手に食っていろ!」
それを断ってしまうレッドマリンだが、どの道ちゃんとした宿はこの宿しかないのだ。
別の宿を探すと町の中を見回って行く彼女達だが、愛の宿しかないと知ると、結局戻って来ることになる。
それでも一緒には食事はとらず、自分達の持って来た保存食を食い漁っているらしい。
俺達はグッスリ休み、次の朝。
ローレンシアさんが朝食を作っている時間。
朝早くだというのに、俺達はレッドマリンによって騒々しく起こされた。
「全員起きるがいい! 私との勝負の時間だ!」
俺達は強制的に庭に連れ出されて、勝負を受けさせられるのだった。
その声を聞き、俺は窓からその人物を見ると、怒った女性がドアをガンガンと叩いている。
この宿に怒鳴り込んで来たのは、二十人ぐらいも居る、大勢の部下達を連れた女だった。
たぶんだが、ローレンシアさんに待ちぼうけさせられた、可哀想な貴族の人である。
歳は二十歳を越えたぐらいで、長い黒髪ではなんとなくローレンシアさんに似ているのだ。
案外親戚とかだったり?
そんな女の人に怒鳴られているのに、ローレンシアさんは出て行く気配がない。
いや、もしかしたら出て行く為に化粧でもしているのかもしれないな。
そのまま五分もすると、その女は更に怒って、入り口の扉を蹴り破り、宿の中に入って来ている。
バンと俺達の部屋の中にまで何人も入って来ると、俺達を睨み、ローレンシアさんの居場所を聞いてきた。
「おい貴様達、この宿の主人は何処に行った?! 隠すと為にならぬぞ!」
「わわわ、なになに?!」
「はぁ、煩いわねぇ。私達が何かしているように見えるの? 今日たまたまこの宿に泊まっただけの客よ。貴方達の望んでいることなんて知らないわ」
「俺達はただの客だから知らないよ。自室で休んでるんじゃないのか? あ、ストリア、その菓子取ってくれ、ちょっと食いたい」
「そうか! じゃあ私があ~んをしてやろう!」
「いや、それは要らない」
ストリアは残念がっている。
俺がシャインを愛して居なければ受け入れても良いのだが、これは仕方のないことだ。
そんな俺達のやり取りを見て、部屋に入って来た女達は別の場所へ探しに行くらしい。
「クッ、他の部屋を探せ! 何としても見つけるのだ!」
「「「「「ハッ!」」」」」
俺達をまた一睨みして、扉を開けたまま別の部屋へ探しに行く。
開けられた扉はそのままにして。
出来れば扉ぐらい閉めて行って欲しい。
三十分程探し回っている女達だが、結局見つからず、その騒動も収まろうとしている頃、家の外からローレンシアさんがバッチリ化粧をして現れたのだ。
「あら皆さん、お待たせしちゃいましたかしら」
もう夕日が沈みかけている。
夜が来たら勝負どころではないだろう。
まあ勝負するのかも知らないけど。
「き、貴様ああああああああ、今まで何処に行っていた!」
「はぁ? ちょっとお夕飯の買い出しに行ってたんですが、お待たせしちゃったかしら。あらあら、ではご挨拶を。いらっしゃいませ。今日はお泊りですね。随分大勢ですので、お値段はお安くしておきますね」
ローレンシアさんは彼女のことを客だと勘違いしている。
何だか面白そうなので、俺はその様子を観察してよう。
「だぁれが泊まりに来たと言ったか! まさか私との勝負のことを忘れていた訳ではあるまいな! もしそうであったならば、ぜぇっっったいに許さんぞ!」
「ああ、そうでしたそうでした、お化粧をするのに夢中になっていて、すっかり忘れていたわ。もう暗くなって来ましたし、そのことはまた今度にして、今日は家に泊まって行ったらどうでしょう?」
「ぐおおおおおお、何時も何時も、そんな返しで逃げられると思うなよ! 今日はこの町にまでやって来たのだ。ずぇッッッたいに逃がさんぞ!」
もう不戦敗で勝ってるんじゃないかな~とか思うんだけど、彼女は納得していないらしい。
ちゃんと勝負してこの町を自分の物にしたいのだろう。
しかし何回もこんなやり取りをしているのか。
彼女も可哀想な人だなぁ。
「でもねぇ、もう暗いじゃない? 今からやってたら夕食の準備が出来ないもの。う~ん、私も予定があるから、今度は三か月後ぐらいにしましょうね」
「誰が三か月後にまた来るものか! 明日だ、明日の朝勝負しろ! それで決着をつけてやる!」
「でもねぇ、勝負するにもほら、こんな惨状じゃない? 私使用人とかも居ないし、困っちゃうわ」
「むああああああああああああ! だったらあいつ等だ! あいつ等に勝負を手伝わせろ!」
ビシッと俺達の居る方角、に指をさされている。
「えええっ、俺達か?!」
俺達は何故か、勝手に勝負の場に上げられてしまったのだった。
俺達も一度は勝負を受けると言ったのだ。
全く関係ない訳じゃないが、報酬の方はどうなるんだろう?
この場合、レッドマリンという女が言ったから、その彼女から報酬を貰うべきか?
「おいコラお前、勝手に決めんな! でもまあ受けても良いけど、タダじゃやんないぞ! 俺達は報酬を希望する!」
女からは俺を殺しそうな瞳で睨まれるが、条件付きでそれを受け入れてくれたのである。
魔物との戦いを経た俺をビビらせるとは相当なものだろう。
「下民如きが…………良いだろう、もし私との勝負に勝ったのなら、我が家の家宝であるこの聖銀の首飾りをやろう! 私との勝負に勝てればの話だがな!」
銀で竜をあしらった首飾りで、その体は色々な宝石で散りばめられて、中央部は開くようになっていて、何かが入れられるようになっている。
売ればかなりの値段になりそうだ。
「いいぜ、その勝負乗ってやるぜ! 今言った言葉を後悔するなよ!」
「あらまあ私の為にありがとうね。皆が納得した所で食事の準備をするから、一緒に食べましょうね」
「誰が敵と一緒に食事を取るものか! 私達は別の宿を探す、食事をしたいのなら勝手に食っていろ!」
それを断ってしまうレッドマリンだが、どの道ちゃんとした宿はこの宿しかないのだ。
別の宿を探すと町の中を見回って行く彼女達だが、愛の宿しかないと知ると、結局戻って来ることになる。
それでも一緒には食事はとらず、自分達の持って来た保存食を食い漁っているらしい。
俺達はグッスリ休み、次の朝。
ローレンシアさんが朝食を作っている時間。
朝早くだというのに、俺達はレッドマリンによって騒々しく起こされた。
「全員起きるがいい! 私との勝負の時間だ!」
俺達は強制的に庭に連れ出されて、勝負を受けさせられるのだった。
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