一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
25 さようなら、君の事は忘れないよ。
額に一本大きな角を持ち、三メートルもある人型で、巨大なオーガと呼ばれる者に近い。
全身土気色をして、頭から足元まで体毛も何もなく、生殖器すら見当たらない。
しかしそんなものが体から出て来たというのに、馬の体はそこまで傷がついていないのだ。
だとしたら、何か特殊能力でもあるのかもしれないな。
だが相手がどんな能力を持っていたとしても、倒さなければならないのは変わりがない。
俺は武器を抜き、その魔物の前に立ちはだかった。
体格からしてガルスが持ちこたえられる気はしないな。
「ガルス、力比べはするなよ。どう考えても勝てそうにないぞ! それと体内には入られるなよ。助け毛られる方法がないからな」
「うん、大丈夫。なるべく躱す事に専念するよ!」
「ラクシャーサとセリィは何時も通りだ。行くぞドル爺、戦闘開始だ!」
「任された! やるよ、セリィ!」
「ん!」
「では儂の先制攻撃じゃああああああああああ!」
ドル爺が棒立ちのオーガの体に槍の刃を突き立てる。
それに続き、俺左足から、足元を斬り抜けた。
深々と突き刺さるドル爺の槍、それに確かに俺の剣は足の肉を通り過ぎた感覚だった。
ただし、手応えはまるでなかったが。
相手の体には傷も残らず、出血すらしていない。
「ぬ、抜けん、槍が抜けんぞ! うおおおおおおおおお!」
俺がもう一度斬り込もうと後から迫るが、ドル爺の槍を突き刺したまま、上半身のみが回転し、背後へと振り向いたのだ。
ドル爺と俺に巨大な拳が迫り、俺とドル爺は一度後方へ退避する。
その間にもラクシャーサとセリィの矢が飛ぶのだが、矢はその背中を突き抜け、胸の辺りから勢いよく飛び出して来ていた。
先ほどもそうだが、まるで体の中には何もないとしか思えないのだが。
俺達が攻めあぐねいて居ると、馬車の中から、スコルピオが撤退を提案している。
「おい貴様等、そいつにはいくら攻撃しても効果はない! レイピアで幾ら突き刺しても効果はなかったのだ! 撤退だ! この私を連れて逃げるのだ!」
確かに、このまま剣で斬り続けていても勝てる保証はない。
「ちぃ、武器が効かないのか? だったら魔法でも使ってみるしかないな。正直全く使いたくないんだが! ラクシャーサ、魔法攻撃を!」
「分かった。私に任せろ! 皆離れてろよ、巻き込まれるからな!」
「ああ、退避するぞ二人共!」
「ぬぬぬ、儂の槍が!」
「直ぐに行くよ!」
俺達が三方に離れると、ラクシャーサが魔法を唱え始める。
「炎熱の力よ、我が属性に力を与えよ! さあ顕現せよ、燃え盛る、神の水!」
魔物の上空から、強烈な熱湯が降り注ぐ。
だがそんな攻撃さえも、魔物は苦しむ素振りを見せない。
逆に振り回される拳の速度が速くなっている。
「熱に強いってことか?! だったら…………現れろ、人人形!」
泥の人形が現れている。
今回は石の剣を持たず、オーガと力比べをしていた。
剛力と聞くオーガだが、このオーガモドキはそれ程の力は持って居ないらしい。
ゴーレムに押され、地面に押し倒されている。
そのゴーレムの隙をつき、ドル爺は槍を奪い返すと、違う角度から突きを放つ。
「儂の槍を返してもらうぞ! どりゃああああああああ!」
その攻撃は今までと違い、硬い表皮に阻まれて、刃が通らなくなっている。
剣ではどうにもならないと思ったガルスは、盾を使い、強烈な強打を放った。
「うおおおおおおおおおおお!」
それでも相手は平然としている。
「これなら!」
俺も倒されたオーガの頭に剣を突き立てるのだが、これといったダメージが与えらえれてはいない。
どうも体に対して横に剣を突き立てると、体の内部には届くが、そのスカスカの体内に突き刺しても意味はないらしい。
どうもこの表面の表皮だけが本体なのだろう。
だがそれが分かったとしても、このファルシオンではダメージを与えられそうにない。
この剣では単純に鋭さが足りないのだ。
いや、他の剣を使ったとしても殆どが同じこととなるだろう。
いやいや、これを斬り裂ける武器はあるにはある。
だがこんな硬いものに斬り掛かって、もし秘蔵の一本が刃こぼれでもしたらと思うと、どうにも使いたくない!
もちろんこのファルシオンも大事な俺の武器だが、お気に入りの一本と比べれば、店で買えるし、レア度も低い物だ。
本当に嫌だが、俺は覚悟を決めて、この剣に魔法の力を与えたのである。
「神風よ、我が剣に具現せよ! 出でよ、風神の剣!」
銀の刃に、風の力が宿り、今までの比ではないぐらいに鋭さが増していく。
出来れば壊れない様にと祈りながら、オーガの頭に刃を振り下ろす。
ザシュッっと今までとほぼ変わらない手応えだが、その鋭さは、相手の表皮を縦に切裂いた。
ギョオオオオオオオオオオオという悲鳴が、口からではなく足元から聞こえている。
悲鳴と共に、オーガの体がバラバラに崩れ去り、俺は今まで何を相手にしていたのかが理解出来た。
それは紐のような形状の、圧倒的に長い体でとぐろを巻き、オーガの体を形作っていのだ。
何のことはない、この魔物は、とぐろを巻いた蛇、それがこの魔物の正体である。
形状を維持できなくなったその蛇は、長い体をくねらせ、泥で作られたゴーレムの中へと避難して行く。
今までラクシャーサの力で動いていたゴーレムだが、何かが壊れたかのように動かなくなっていた。
「俺に魔法を使わせたんだ。その程度で逃げられると思うなよッ! そのまま切り刻んでやろう!」
怒りのままに振り回した俺の剣は、硬いゴーレムの体ごと、蛇の魔物を細切れへと変えるが、ファルシオンはその力に耐えられず、バラバラに砕け散った。
「お、俺の剣が…………」
コレクションの一本がなくなってしまった俺は、ガッカリしながら二人を助け出したのだった。
全身土気色をして、頭から足元まで体毛も何もなく、生殖器すら見当たらない。
しかしそんなものが体から出て来たというのに、馬の体はそこまで傷がついていないのだ。
だとしたら、何か特殊能力でもあるのかもしれないな。
だが相手がどんな能力を持っていたとしても、倒さなければならないのは変わりがない。
俺は武器を抜き、その魔物の前に立ちはだかった。
体格からしてガルスが持ちこたえられる気はしないな。
「ガルス、力比べはするなよ。どう考えても勝てそうにないぞ! それと体内には入られるなよ。助け毛られる方法がないからな」
「うん、大丈夫。なるべく躱す事に専念するよ!」
「ラクシャーサとセリィは何時も通りだ。行くぞドル爺、戦闘開始だ!」
「任された! やるよ、セリィ!」
「ん!」
「では儂の先制攻撃じゃああああああああああ!」
ドル爺が棒立ちのオーガの体に槍の刃を突き立てる。
それに続き、俺左足から、足元を斬り抜けた。
深々と突き刺さるドル爺の槍、それに確かに俺の剣は足の肉を通り過ぎた感覚だった。
ただし、手応えはまるでなかったが。
相手の体には傷も残らず、出血すらしていない。
「ぬ、抜けん、槍が抜けんぞ! うおおおおおおおおお!」
俺がもう一度斬り込もうと後から迫るが、ドル爺の槍を突き刺したまま、上半身のみが回転し、背後へと振り向いたのだ。
ドル爺と俺に巨大な拳が迫り、俺とドル爺は一度後方へ退避する。
その間にもラクシャーサとセリィの矢が飛ぶのだが、矢はその背中を突き抜け、胸の辺りから勢いよく飛び出して来ていた。
先ほどもそうだが、まるで体の中には何もないとしか思えないのだが。
俺達が攻めあぐねいて居ると、馬車の中から、スコルピオが撤退を提案している。
「おい貴様等、そいつにはいくら攻撃しても効果はない! レイピアで幾ら突き刺しても効果はなかったのだ! 撤退だ! この私を連れて逃げるのだ!」
確かに、このまま剣で斬り続けていても勝てる保証はない。
「ちぃ、武器が効かないのか? だったら魔法でも使ってみるしかないな。正直全く使いたくないんだが! ラクシャーサ、魔法攻撃を!」
「分かった。私に任せろ! 皆離れてろよ、巻き込まれるからな!」
「ああ、退避するぞ二人共!」
「ぬぬぬ、儂の槍が!」
「直ぐに行くよ!」
俺達が三方に離れると、ラクシャーサが魔法を唱え始める。
「炎熱の力よ、我が属性に力を与えよ! さあ顕現せよ、燃え盛る、神の水!」
魔物の上空から、強烈な熱湯が降り注ぐ。
だがそんな攻撃さえも、魔物は苦しむ素振りを見せない。
逆に振り回される拳の速度が速くなっている。
「熱に強いってことか?! だったら…………現れろ、人人形!」
泥の人形が現れている。
今回は石の剣を持たず、オーガと力比べをしていた。
剛力と聞くオーガだが、このオーガモドキはそれ程の力は持って居ないらしい。
ゴーレムに押され、地面に押し倒されている。
そのゴーレムの隙をつき、ドル爺は槍を奪い返すと、違う角度から突きを放つ。
「儂の槍を返してもらうぞ! どりゃああああああああ!」
その攻撃は今までと違い、硬い表皮に阻まれて、刃が通らなくなっている。
剣ではどうにもならないと思ったガルスは、盾を使い、強烈な強打を放った。
「うおおおおおおおおおおお!」
それでも相手は平然としている。
「これなら!」
俺も倒されたオーガの頭に剣を突き立てるのだが、これといったダメージが与えらえれてはいない。
どうも体に対して横に剣を突き立てると、体の内部には届くが、そのスカスカの体内に突き刺しても意味はないらしい。
どうもこの表面の表皮だけが本体なのだろう。
だがそれが分かったとしても、このファルシオンではダメージを与えられそうにない。
この剣では単純に鋭さが足りないのだ。
いや、他の剣を使ったとしても殆どが同じこととなるだろう。
いやいや、これを斬り裂ける武器はあるにはある。
だがこんな硬いものに斬り掛かって、もし秘蔵の一本が刃こぼれでもしたらと思うと、どうにも使いたくない!
もちろんこのファルシオンも大事な俺の武器だが、お気に入りの一本と比べれば、店で買えるし、レア度も低い物だ。
本当に嫌だが、俺は覚悟を決めて、この剣に魔法の力を与えたのである。
「神風よ、我が剣に具現せよ! 出でよ、風神の剣!」
銀の刃に、風の力が宿り、今までの比ではないぐらいに鋭さが増していく。
出来れば壊れない様にと祈りながら、オーガの頭に刃を振り下ろす。
ザシュッっと今までとほぼ変わらない手応えだが、その鋭さは、相手の表皮を縦に切裂いた。
ギョオオオオオオオオオオオという悲鳴が、口からではなく足元から聞こえている。
悲鳴と共に、オーガの体がバラバラに崩れ去り、俺は今まで何を相手にしていたのかが理解出来た。
それは紐のような形状の、圧倒的に長い体でとぐろを巻き、オーガの体を形作っていのだ。
何のことはない、この魔物は、とぐろを巻いた蛇、それがこの魔物の正体である。
形状を維持できなくなったその蛇は、長い体をくねらせ、泥で作られたゴーレムの中へと避難して行く。
今までラクシャーサの力で動いていたゴーレムだが、何かが壊れたかのように動かなくなっていた。
「俺に魔法を使わせたんだ。その程度で逃げられると思うなよッ! そのまま切り刻んでやろう!」
怒りのままに振り回した俺の剣は、硬いゴーレムの体ごと、蛇の魔物を細切れへと変えるが、ファルシオンはその力に耐えられず、バラバラに砕け散った。
「お、俺の剣が…………」
コレクションの一本がなくなってしまった俺は、ガッカリしながら二人を助け出したのだった。
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