一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
5 精霊の森に生きる者。
グール騒動を解決した俺は、俺の上司、大隊長ボーグ・ブラッドゴールドに呼び出され、その部屋に招かれていた。
白髪交じりの明るい茶髪、眉間にもしわが寄っていて、目付きも鋭い
彼の歳は今年で四十、体も大きく百九十ぐらいはあるだろう。
立派な鎧のまま大きな椅子に座り、威厳というものを感じられる。
「さてマルクス、今回は良くやってくれた。貴様の作戦で町が護られたぞ」
「はい、ありがとうございます!」
「まあ今回は上手く行ったから良いが、もし別の場所に現れて居たらどうするつもりだったのだ? 勿論作戦があったのだよな?」
「はい、勿論考えておりました。グールの現れなかったエリアを封鎖してしまえば、その区画は安全だと言う事になります。次は現れた区画に集中させれば良いだけの話です」
「ふむ、考えていたならば良い。それで貴様に褒美をくれてやろうと思ってな。そこで次の任務の話についてだ』
「は? 褒美ではなかったんですか?」
「まあ聞け。次の任務というのはな、精霊の森に住み着いたおかしな連中の事を調べるという簡単なものだ。森の中の魔物も退治されていると聞く。相手も人間だ、まあそう危険なことは無いだろう。その村にでも着いたら、一週間ほどのんびりとしてくるといい」
なる程、軽い任務を与えて、ついでに休みも消化させようという魂胆なのだろう。
セコイと言えばそれまでだが、命懸けの戦いから離れられるなら、そう悪い話でもない。
「はい、了解しました。では神英部隊は精霊の森に向かい、調査を開始いたします!」
「うむ、早速向かうが良い」
その任務を受けて出発の準備をした俺達神英隊は、精霊の森に向けて移動を始めたのだった。
森までの道は先日の討伐任務のおかげか、魔物の出現率は極めて低い。
だが何もしなければ、また多くの魔物達が出没するようになるのだろう。
そして道中、魔物も出て来ず、あまりに暇になった他の三人が、任務内容を詳しく聞こうと話している。
「それでマルクスよ、そのおかしな奴等とはどんな奴等なんだ? 魔物ではないのだろう?」
「ああ、人間だと聞いている。ただし、少しおかしいというのはその身体特徴だろう。耳が長く、かなりの高身長で美しく、それでいて言葉が通じないという事だ。別大陸から渡って来て、魔物が出没するようになったから、帰れなくなったのかもしれないな。一応そいつらの事はエルフ族と呼ぶ事になったらしいぞ」
「へ~、エルフっていうのか。でもどうするんだマルクス、言葉が通じないのは致命的だぞ?」
そこだ、それだけが少し不安だった。
相手は人間だから、俺達を見ていきなり襲って来るとは思えないが、その辺は身振り手振りで伝えるしかないだろうな。
「その事は此方で何とかするしかないだろう。それとラグナードの国民として扱うかは今の所決まっていないからな。無駄に争う事はするなよ?」
俺がガルスを見ると、何だか慌てている。
「な、なんでそこで俺の事をみるんだよ! 俺は別にそんな事しないぞ!」
「お前惚れっぽいもんな。いくら綺麗だってエルフの娘に手を出すなって言ってるんだろ。そういう欲望は自分一人で解消しとけって話。勿論私が見て居ない時にな」
「す、する訳ないだろう! 何言ってるんだラクシャーサ!」
「まあ待てガルス、お前に女が居ないのは分かっとるんだ。もし認めるのなら、この儂がイイ女を紹介してやってもいいんだぞ?」
「なななな何言ってるんだ! お、俺にだってそんな女の一人ぐらい…………」
ガルスはちょっとばかり落ち込んでいるらしい。
そろそろ森も見えて来ている。
助け船を出してやってもいいかもな。
「全員そこまでにしておけ。もうそろそろ目的の森が見えて来るぞ」
前方には精霊の森が見えている。
中心には綺麗な泉があり、輝く虫達が煌く幻想的な風景が見れる森だった。
その美しさから、妖精や精霊が棲むといわれている。
皮肉な事に、今現在シルフと呼ばれる種族や、ピクシーと呼ばれる種族が、その森に確認されていた。 両種族共小さく、あまり強い個体でもなく、人を見かけても蹴りや噛みつくぐらいで、放っておいても問題はないとされている。
その森の入り口近くまで来たのだが、少し不味い状況になっていた。
それをいち早く発見したドル爺が、声を上げた。
「おいマルクス、何か不味い状況になっておるぞ! 前方に魔物だぞ!」
「何?!」
入り口近くにはエルフと思われる人々が倒れていて、凶悪そうな魔物に襲われている。
四人が倒れて、残りは女性の一人だった。
魔物は三つ首の大犬で、体からは炎がたぎり、グルルと唸って、残っている女に狙いを定めている。
木製の弓をむけているが、矢の造りが先端まで木製で、炎で焦がされ尖っていたものは丸くなってしまい、当たってもダメージは少ない。
「ラクシャーサ、彼女の支援を頼む!」
「ああ、任せろ! あれだけ大きければ、狙わなくても充分当たるな!」
距離にして四百メートル。
殆ど矢で狙える距離でもないが、走らせている馬車の中から、ラクシャーサが愛用の弓を向け、引き絞った矢を放った。
シュパパンと連射される矢は、背後から三つ首の大犬に向かい、その全てが体に命中している。
背後からいきなりダメージを受けた大犬は、ギャンと声を上げてビックリして森の中へ逃げて行く。
案外小心者だったらしい。
一応周りを確認してみるも、他に魔物は見当たらず、俺達は彼女達へ駆け寄り、怪我をしている者の治療をしている。
エルフというのは聞いた通りに、確かに美しい姿をしている。
背も高く脚もスラリと長い、髪の色は銀に緑を少し垂らしたぐらいの色で、不思議な色をしていた。
ただその着衣はというと、大きな葉を繋げたもので、男の俺としては、多少目のやり場に困ってしまう。
そして大犬に弓を向けていた一人が、ブルブルと震えている。
「%&&#’”)$&&&%%%*」
発している言葉はサッパリ分からないが、助けた俺達に弓を向けて、敵意を持っていた。
簡単な任務だと聞いていたが、どうもそうは行かないらしい。
その敵意を持った彼女に、ラクシャーサが近づき、優しく微笑みかけている。
「大丈夫だよ。ちょっと怖かっただけだよな。私達は敵じゃないから、その弓を下ろしてくれないか?」
「##&%’’()”!!!”#$」
彼女の言葉は全く理解できないが、納得したのか弓を下ろし、一応俺達に敵意がないことはわかってくれたらしい。
そして、
「ふぐッ…………!」
その彼女はいきなりラクシャーサに抱き付き、その唇を情熱的に奪うのだった。
白髪交じりの明るい茶髪、眉間にもしわが寄っていて、目付きも鋭い
彼の歳は今年で四十、体も大きく百九十ぐらいはあるだろう。
立派な鎧のまま大きな椅子に座り、威厳というものを感じられる。
「さてマルクス、今回は良くやってくれた。貴様の作戦で町が護られたぞ」
「はい、ありがとうございます!」
「まあ今回は上手く行ったから良いが、もし別の場所に現れて居たらどうするつもりだったのだ? 勿論作戦があったのだよな?」
「はい、勿論考えておりました。グールの現れなかったエリアを封鎖してしまえば、その区画は安全だと言う事になります。次は現れた区画に集中させれば良いだけの話です」
「ふむ、考えていたならば良い。それで貴様に褒美をくれてやろうと思ってな。そこで次の任務の話についてだ』
「は? 褒美ではなかったんですか?」
「まあ聞け。次の任務というのはな、精霊の森に住み着いたおかしな連中の事を調べるという簡単なものだ。森の中の魔物も退治されていると聞く。相手も人間だ、まあそう危険なことは無いだろう。その村にでも着いたら、一週間ほどのんびりとしてくるといい」
なる程、軽い任務を与えて、ついでに休みも消化させようという魂胆なのだろう。
セコイと言えばそれまでだが、命懸けの戦いから離れられるなら、そう悪い話でもない。
「はい、了解しました。では神英部隊は精霊の森に向かい、調査を開始いたします!」
「うむ、早速向かうが良い」
その任務を受けて出発の準備をした俺達神英隊は、精霊の森に向けて移動を始めたのだった。
森までの道は先日の討伐任務のおかげか、魔物の出現率は極めて低い。
だが何もしなければ、また多くの魔物達が出没するようになるのだろう。
そして道中、魔物も出て来ず、あまりに暇になった他の三人が、任務内容を詳しく聞こうと話している。
「それでマルクスよ、そのおかしな奴等とはどんな奴等なんだ? 魔物ではないのだろう?」
「ああ、人間だと聞いている。ただし、少しおかしいというのはその身体特徴だろう。耳が長く、かなりの高身長で美しく、それでいて言葉が通じないという事だ。別大陸から渡って来て、魔物が出没するようになったから、帰れなくなったのかもしれないな。一応そいつらの事はエルフ族と呼ぶ事になったらしいぞ」
「へ~、エルフっていうのか。でもどうするんだマルクス、言葉が通じないのは致命的だぞ?」
そこだ、それだけが少し不安だった。
相手は人間だから、俺達を見ていきなり襲って来るとは思えないが、その辺は身振り手振りで伝えるしかないだろうな。
「その事は此方で何とかするしかないだろう。それとラグナードの国民として扱うかは今の所決まっていないからな。無駄に争う事はするなよ?」
俺がガルスを見ると、何だか慌てている。
「な、なんでそこで俺の事をみるんだよ! 俺は別にそんな事しないぞ!」
「お前惚れっぽいもんな。いくら綺麗だってエルフの娘に手を出すなって言ってるんだろ。そういう欲望は自分一人で解消しとけって話。勿論私が見て居ない時にな」
「す、する訳ないだろう! 何言ってるんだラクシャーサ!」
「まあ待てガルス、お前に女が居ないのは分かっとるんだ。もし認めるのなら、この儂がイイ女を紹介してやってもいいんだぞ?」
「なななな何言ってるんだ! お、俺にだってそんな女の一人ぐらい…………」
ガルスはちょっとばかり落ち込んでいるらしい。
そろそろ森も見えて来ている。
助け船を出してやってもいいかもな。
「全員そこまでにしておけ。もうそろそろ目的の森が見えて来るぞ」
前方には精霊の森が見えている。
中心には綺麗な泉があり、輝く虫達が煌く幻想的な風景が見れる森だった。
その美しさから、妖精や精霊が棲むといわれている。
皮肉な事に、今現在シルフと呼ばれる種族や、ピクシーと呼ばれる種族が、その森に確認されていた。 両種族共小さく、あまり強い個体でもなく、人を見かけても蹴りや噛みつくぐらいで、放っておいても問題はないとされている。
その森の入り口近くまで来たのだが、少し不味い状況になっていた。
それをいち早く発見したドル爺が、声を上げた。
「おいマルクス、何か不味い状況になっておるぞ! 前方に魔物だぞ!」
「何?!」
入り口近くにはエルフと思われる人々が倒れていて、凶悪そうな魔物に襲われている。
四人が倒れて、残りは女性の一人だった。
魔物は三つ首の大犬で、体からは炎がたぎり、グルルと唸って、残っている女に狙いを定めている。
木製の弓をむけているが、矢の造りが先端まで木製で、炎で焦がされ尖っていたものは丸くなってしまい、当たってもダメージは少ない。
「ラクシャーサ、彼女の支援を頼む!」
「ああ、任せろ! あれだけ大きければ、狙わなくても充分当たるな!」
距離にして四百メートル。
殆ど矢で狙える距離でもないが、走らせている馬車の中から、ラクシャーサが愛用の弓を向け、引き絞った矢を放った。
シュパパンと連射される矢は、背後から三つ首の大犬に向かい、その全てが体に命中している。
背後からいきなりダメージを受けた大犬は、ギャンと声を上げてビックリして森の中へ逃げて行く。
案外小心者だったらしい。
一応周りを確認してみるも、他に魔物は見当たらず、俺達は彼女達へ駆け寄り、怪我をしている者の治療をしている。
エルフというのは聞いた通りに、確かに美しい姿をしている。
背も高く脚もスラリと長い、髪の色は銀に緑を少し垂らしたぐらいの色で、不思議な色をしていた。
ただその着衣はというと、大きな葉を繋げたもので、男の俺としては、多少目のやり場に困ってしまう。
そして大犬に弓を向けていた一人が、ブルブルと震えている。
「%&&#’”)$&&&%%%*」
発している言葉はサッパリ分からないが、助けた俺達に弓を向けて、敵意を持っていた。
簡単な任務だと聞いていたが、どうもそうは行かないらしい。
その敵意を持った彼女に、ラクシャーサが近づき、優しく微笑みかけている。
「大丈夫だよ。ちょっと怖かっただけだよな。私達は敵じゃないから、その弓を下ろしてくれないか?」
「##&%’’()”!!!”#$」
彼女の言葉は全く理解できないが、納得したのか弓を下ろし、一応俺達に敵意がないことはわかってくれたらしい。
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