一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
1 ラグナードの神軍。
王国から北にあるラグナード神国から、少し南にある平野。
その平野で訓練を兼ねた魔物の大規模討伐が行われている。
戦っているのは、武装した馬上に乗ったラグナードの兵士達で、その規模は万を超えていた。
その中に居る兵士の一人、十七歳の黒髪の少年マルクスがこの俺である。
俺の手には馬上で使いやすい長い柄の剣を持ち、全体と同じように黒い鎧身に纏って、魔物達との戦いに明け暮れていた。
だがこの規模の人数であっても、それでも魔物との戦いは油断出来ないレベルである。
魔物の能力は個体差があり、殆どが未知のものなのだ。
対応出来なければ死ぬことだって有り得る。
「第一から五大隊は南に下がれ! 敵を発見次第、即座に殲滅せよ!」
「「「「「 応!! 」」」」」
この俺マルクス・ライディーンは、第四大隊に所属し、その中の神英部隊というものを率いている。
略して神英隊などと呼ばれるのだが、たいそうな名前だが、四人という規模の小さな部隊だ。
何故若い俺がこの隊を率いているのかと言えば、先の隊長が抜けてしまった為に、クジにより俺が隊長になってしまうというヘマをやらかしてしまったからである。
まあ隊というには少し少ないのだが、昔はこれでもそれなりの人数が居たのだ。
戦死したり不祥事を起こしたりと、今の人数となってしまっている。
もう名前負けもいい所である。
「各隊ごとに散開し、敵を捜索せよ! 発見後は即座に合図し、全体に知らせるのだ!」
「神聖隊、俺に付いて来い!」
「神滅隊は此方に続け!」
「神英隊は此処から西方面に向かう。俺に続け!」
「「「「「 了解! 」」」」」
神英隊を率いるのはこの俺だ。俺の号令により、隊がそれに続いて行く。
「おうおうおうおう、前方に敵発見じゃあ! 我が槍でぶっ潰してくれるぞ!」
この人は神英隊の隊員の一人で、一番の最年長であり、年齢も六十五を超えるという元気な爺さんだ。
手に持つのはパルチザンと呼ばれるもので、先端が研ぎ澄まされ、斬撃をも使える槍を持っている。
完全に白く染まった髪と、ボサボサの白鬚が特徴的で、これ程の年齢で戦場に立って居るのは、この爺さん、ドボルホーテ・アルティマイオスだけだろう。
「こらぁ、ドル爺! まずは合図だろ! いきなり突っ込むなよ馬鹿ぁ!」
その突っ込んだドル爺に怒鳴りつけているのが、ラクシャーサ・グリーズだ。
彼女は腰まである桃色の髪を揺らしながら、俺の横を馬で走っている。
彼女の武器は弓と短刀、切り傷程度なら癒せる回復魔法を扱えた。
歳は十六、俺より一つ下の後輩だ。
「ああ仕方がない、もう俺が合図を送るから! 援軍が来るまで各自防御に回って…………って言ってるだろ! だ~、皆聞いとけ、聞けって!」
で、この人はガルス・フリュードといって、前衛の盾だ。
武器はスピアといわれる刺突専門の槍を持っている。
かなり大きく太いので、相手の攻撃を防ぐことも出来なくはない。
左手にはそれに相応しい盾が括り付けられ、両腕でもスピアを扱えるようにしてあった。
その俺達四人は、前方に見えている敵に狙いをつけ、攻撃を開始した。
相手人型の豚という奇妙な奴だ。
最近ではオークなどと呼ばれているとか。
手には大きな棍棒を持ち、草や葉で体を覆い、大きさとしては二メートルぐらいはありそうだ。
そんな魔物が三体かたまり、見境なしに棍棒を振り回している。
「ねぇガルス、これは貴方の出番だろ! さっさと押さえろって、早くぅ!」
「ま、任せろ! 敵の攻撃は俺が防いでってうあああああああああああ!」
一体を狙おうとしたガルスだが、他の二体により馬に棍棒を当てられ、大暴れしだす馬から振り落とされてしまっている。
人型だといえど、その力は人間とは比較にならない。
馬にも装備がつけられているが、その上からでも馬が暴れる程のダメージを受けていた。
叩き落されたガルスは、そのオーク達から棍棒で殴り殺されそうになっている。
「嫌あああああああああ、死ぬ死ぬ死ぬ! 皆助けてくれえええ!」
「一体しか見とらんからそうなるのじゃわい! 見ておれ、今直ぐ三体ごとぶった切ってくれるわ!」
「斬り漏らしたら俺がやってやる! だから安心しとけよガルス!」
「動くなよガルス。動いたら私の矢が当たるんだからな!」
「それも嫌あああああああああ!」
ドル爺は左から、俺が右から、そしてガルスが倒れて居る正面からラクシャーサが馬を止めて矢での連射を行なっている。
弓の矢により怯んだオーク達に、左右からの斬撃が襲い掛かった。
威勢良く斬り掛かった俺達だが、中心に居た一体には届かず、両端に居た二体に当てられるのみだった。
それでも真面に食らったたオーク二体は後方に吹き飛ぶのだが、オークの分厚い脂肪と筋肉により、致命傷を与えられなかったらしい。
正面に残ったオークはだけは、矢の攻撃に物ともせず、ガルスに全力で殴り掛かっている。
盾で防いではいるのだが、強く激しい攻撃の波には何時までも耐えられそうにない。
「ヤバイヤバイ! う、腕がもう無理…………」
「じゃあ何時までも寝てるなよ! 立ち上がって逃げろって!」
「さっきは動くなって言ったのに、酷い!」
立ち上がろうとはしているが、その度に棍棒で打ち付けられて、また地面に倒されている。
まだ援軍が来る気配もないし、少し不味いかもしれない。
ここから反転すれば間に合うか?
俺は相手にしていた一体から反転してガルスが襲われている奴の背後から、ガンっと頭を剣を打ちつけた。
殺すには至らなかったのだが、ガルスの体の上に倒れて居る。
「ぐおおおおお重いッ! 重すぎる!」
充分元気な姿を確認すると、俺はもう一度反転して、追いかけて来るもう一体に剣を振りかぶった。
後はラクシャーサにでも任せておけば、きっと何とかするだろう。
襲い来るオークの横を通り抜け、横薙ぎの斬撃が腹を斬り付ける。
手応えは有り過ぎる程だが、やはり倒すには足りないらしい。
このまま援軍を待った方が楽そうだが、隊の名を上げる為にも、この隊のみで倒したい所だ。
「斬撃じゃあ軽いか? だったら一気に決める為には、もう少し距離を取る!」
オークの周りを馬で走り、攻撃をしながら一気に距離を取った。
俺とオークが同時に走り出し、剣は真っ直ぐ切っ先を向ける。
「行くぞ!」
馬の速度に剣の鋭さを足し、オークの体に向かって、稲妻の如き剣刺を放った。
ドン!
オークの棍棒が振り下ろされる前に、剣の刃が相手を貫く。
突き刺されたオークは、自分の状況を理解すると、全ての力を失って崩れ落ちた。
「他は?!」
ドル爺は相手を圧倒していて、彼方は大丈夫だろう
だったらと、ガルスとラクシャーサが戦う一体に狙いを定める。
「おいガルス! 盾を正面に構えていろよ! そうしないと死ぬからな!」
「は?! 一体何を! うひいいいいいいいいいいいい!」
ガルスが敵を押さえている場所に向かい、俺はもう一度突撃を仕掛けた。
オークの背後から一気に剣を突き刺すと、ガルスの構える盾と、俺の剣とがぶつかり弾ける。
ガルスまで大きく吹き飛ばされてしまうのだが、ラクシャーサにでも回復してもらえば良いだろう。
残りは一体だと振り向くのだが、ドル爺によってその一体は倒されていた。
「よし、このオークの討伐は完了だ。神英隊は各員は敵影を探し出し、見つけ次第合図せよ!」
多くの戦いが繰り広げられる戦場は終わり、ラグナードの兵は勝利を収めた。
その平野で訓練を兼ねた魔物の大規模討伐が行われている。
戦っているのは、武装した馬上に乗ったラグナードの兵士達で、その規模は万を超えていた。
その中に居る兵士の一人、十七歳の黒髪の少年マルクスがこの俺である。
俺の手には馬上で使いやすい長い柄の剣を持ち、全体と同じように黒い鎧身に纏って、魔物達との戦いに明け暮れていた。
だがこの規模の人数であっても、それでも魔物との戦いは油断出来ないレベルである。
魔物の能力は個体差があり、殆どが未知のものなのだ。
対応出来なければ死ぬことだって有り得る。
「第一から五大隊は南に下がれ! 敵を発見次第、即座に殲滅せよ!」
「「「「「 応!! 」」」」」
この俺マルクス・ライディーンは、第四大隊に所属し、その中の神英部隊というものを率いている。
略して神英隊などと呼ばれるのだが、たいそうな名前だが、四人という規模の小さな部隊だ。
何故若い俺がこの隊を率いているのかと言えば、先の隊長が抜けてしまった為に、クジにより俺が隊長になってしまうというヘマをやらかしてしまったからである。
まあ隊というには少し少ないのだが、昔はこれでもそれなりの人数が居たのだ。
戦死したり不祥事を起こしたりと、今の人数となってしまっている。
もう名前負けもいい所である。
「各隊ごとに散開し、敵を捜索せよ! 発見後は即座に合図し、全体に知らせるのだ!」
「神聖隊、俺に付いて来い!」
「神滅隊は此方に続け!」
「神英隊は此処から西方面に向かう。俺に続け!」
「「「「「 了解! 」」」」」
神英隊を率いるのはこの俺だ。俺の号令により、隊がそれに続いて行く。
「おうおうおうおう、前方に敵発見じゃあ! 我が槍でぶっ潰してくれるぞ!」
この人は神英隊の隊員の一人で、一番の最年長であり、年齢も六十五を超えるという元気な爺さんだ。
手に持つのはパルチザンと呼ばれるもので、先端が研ぎ澄まされ、斬撃をも使える槍を持っている。
完全に白く染まった髪と、ボサボサの白鬚が特徴的で、これ程の年齢で戦場に立って居るのは、この爺さん、ドボルホーテ・アルティマイオスだけだろう。
「こらぁ、ドル爺! まずは合図だろ! いきなり突っ込むなよ馬鹿ぁ!」
その突っ込んだドル爺に怒鳴りつけているのが、ラクシャーサ・グリーズだ。
彼女は腰まである桃色の髪を揺らしながら、俺の横を馬で走っている。
彼女の武器は弓と短刀、切り傷程度なら癒せる回復魔法を扱えた。
歳は十六、俺より一つ下の後輩だ。
「ああ仕方がない、もう俺が合図を送るから! 援軍が来るまで各自防御に回って…………って言ってるだろ! だ~、皆聞いとけ、聞けって!」
で、この人はガルス・フリュードといって、前衛の盾だ。
武器はスピアといわれる刺突専門の槍を持っている。
かなり大きく太いので、相手の攻撃を防ぐことも出来なくはない。
左手にはそれに相応しい盾が括り付けられ、両腕でもスピアを扱えるようにしてあった。
その俺達四人は、前方に見えている敵に狙いをつけ、攻撃を開始した。
相手人型の豚という奇妙な奴だ。
最近ではオークなどと呼ばれているとか。
手には大きな棍棒を持ち、草や葉で体を覆い、大きさとしては二メートルぐらいはありそうだ。
そんな魔物が三体かたまり、見境なしに棍棒を振り回している。
「ねぇガルス、これは貴方の出番だろ! さっさと押さえろって、早くぅ!」
「ま、任せろ! 敵の攻撃は俺が防いでってうあああああああああああ!」
一体を狙おうとしたガルスだが、他の二体により馬に棍棒を当てられ、大暴れしだす馬から振り落とされてしまっている。
人型だといえど、その力は人間とは比較にならない。
馬にも装備がつけられているが、その上からでも馬が暴れる程のダメージを受けていた。
叩き落されたガルスは、そのオーク達から棍棒で殴り殺されそうになっている。
「嫌あああああああああ、死ぬ死ぬ死ぬ! 皆助けてくれえええ!」
「一体しか見とらんからそうなるのじゃわい! 見ておれ、今直ぐ三体ごとぶった切ってくれるわ!」
「斬り漏らしたら俺がやってやる! だから安心しとけよガルス!」
「動くなよガルス。動いたら私の矢が当たるんだからな!」
「それも嫌あああああああああ!」
ドル爺は左から、俺が右から、そしてガルスが倒れて居る正面からラクシャーサが馬を止めて矢での連射を行なっている。
弓の矢により怯んだオーク達に、左右からの斬撃が襲い掛かった。
威勢良く斬り掛かった俺達だが、中心に居た一体には届かず、両端に居た二体に当てられるのみだった。
それでも真面に食らったたオーク二体は後方に吹き飛ぶのだが、オークの分厚い脂肪と筋肉により、致命傷を与えられなかったらしい。
正面に残ったオークはだけは、矢の攻撃に物ともせず、ガルスに全力で殴り掛かっている。
盾で防いではいるのだが、強く激しい攻撃の波には何時までも耐えられそうにない。
「ヤバイヤバイ! う、腕がもう無理…………」
「じゃあ何時までも寝てるなよ! 立ち上がって逃げろって!」
「さっきは動くなって言ったのに、酷い!」
立ち上がろうとはしているが、その度に棍棒で打ち付けられて、また地面に倒されている。
まだ援軍が来る気配もないし、少し不味いかもしれない。
ここから反転すれば間に合うか?
俺は相手にしていた一体から反転してガルスが襲われている奴の背後から、ガンっと頭を剣を打ちつけた。
殺すには至らなかったのだが、ガルスの体の上に倒れて居る。
「ぐおおおおお重いッ! 重すぎる!」
充分元気な姿を確認すると、俺はもう一度反転して、追いかけて来るもう一体に剣を振りかぶった。
後はラクシャーサにでも任せておけば、きっと何とかするだろう。
襲い来るオークの横を通り抜け、横薙ぎの斬撃が腹を斬り付ける。
手応えは有り過ぎる程だが、やはり倒すには足りないらしい。
このまま援軍を待った方が楽そうだが、隊の名を上げる為にも、この隊のみで倒したい所だ。
「斬撃じゃあ軽いか? だったら一気に決める為には、もう少し距離を取る!」
オークの周りを馬で走り、攻撃をしながら一気に距離を取った。
俺とオークが同時に走り出し、剣は真っ直ぐ切っ先を向ける。
「行くぞ!」
馬の速度に剣の鋭さを足し、オークの体に向かって、稲妻の如き剣刺を放った。
ドン!
オークの棍棒が振り下ろされる前に、剣の刃が相手を貫く。
突き刺されたオークは、自分の状況を理解すると、全ての力を失って崩れ落ちた。
「他は?!」
ドル爺は相手を圧倒していて、彼方は大丈夫だろう
だったらと、ガルスとラクシャーサが戦う一体に狙いを定める。
「おいガルス! 盾を正面に構えていろよ! そうしないと死ぬからな!」
「は?! 一体何を! うひいいいいいいいいいいいい!」
ガルスが敵を押さえている場所に向かい、俺はもう一度突撃を仕掛けた。
オークの背後から一気に剣を突き刺すと、ガルスの構える盾と、俺の剣とがぶつかり弾ける。
ガルスまで大きく吹き飛ばされてしまうのだが、ラクシャーサにでも回復してもらえば良いだろう。
残りは一体だと振り向くのだが、ドル爺によってその一体は倒されていた。
「よし、このオークの討伐は完了だ。神英隊は各員は敵影を探し出し、見つけ次第合図せよ!」
多くの戦いが繰り広げられる戦場は終わり、ラグナードの兵は勝利を収めた。
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