一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
17 人間の舌の力っていうものは、案外強いらしい。
何だろうか、何故か彼女の事は嫌いになれない。 この感情は決して恋愛感情等ではない。 何となく、同じ臭いがするというか、自分でもよく分からない感覚だ。
「あの、え~っと、貴女がパインさんですよね? タルト君に頼まれて、貴女に魔法を教えに来ました。 如何でしょうか、魔法を使ってみたくはないですか? あ、先に言っておきますが、貴女にその才能が無ければ、俺が教えても使う事は出来ませんけど。」
「え? 私が・・・魔法を? ・・・・・ごめんなさい。 やっぱり私は、自分の力だけで勝ちたいの。 この自分の拳だけで。」
確か、近々試合があると言っていたな。 無理に魔法を使う練習をして、リズムを崩したくないのだろう。 俺だって、明日弓で試合をしろと言われても無理だ。 それを使えるようにするには、かなりの日数を費やさなければならない。
魔法だってそうだ。 覚えれば、破壊力のある魔法を飛ばす事も出来る。 だが実戦で使うタイミングや、それを当てられる力があるのかといえば、別の話だ。 その訓練をする時間も惜しいのだろう。
「そうですか、でも試合で使うかどうかは別として、今覚えておくのは、そう悪い話じゃないでしょう。 使いたくないのなら、使わなければ良いだけの話ですからね。 覚えるだけ覚えてみても良いんじゃないですか?」
「そうだよ姉ちゃん。 せっかくオイラが見つけて来たんだぞ。 覚えるだけでもしてくれたって良いじゃんか。 この人だって、折角来てくれたんだぞ!! ねぇ姉ちゃん、良いだろ。 ちょっとだけだって。」
「う~んそうねぇ・・・・・。 だったらこの人が私の条件を飲むのなら、その魔法を覚えてみても良いわ。 如何かしら? 私の頼みを引き受けてくれるかしら?」
教える側の俺が条件を出されるのか? 何となく親近感があるし、無茶なものでなければ引き受けても良いけど。
「ねえどうなの? やるの? やってくれるのよね?!」
彼女は如何しても俺に、引き受けてもらいたいらしい。 そんなに覚えたいのなら、タダで教えてあげると言っているのに。
「やるわよね? やるって言って!!」
何故か迫力のある顔で、俺に近づいて来ている。 俺は彼女の圧力に負けて、条件を聞かずに、それを引き受けてしまった。
「ま、まあ・・・。 命やお金が掛かるものでないのなら・・・・・。」
「よッッッしゃあああああああああああああああああああ!! じゃあ此処で待っていてください。 直ぐに呼んで来るから!!」
「誰を?」 そう聞く前に、彼女は家を飛び出して行ってしまった。 本当に誰を呼んで来るのだろうか?
彼女が戻って来るまで、俺はこの家で待ち続けた。 子供達も人懐っこい性格の様で、俺にも直ぐに打ち解けて、勝手に背中をよじ登って、肩に乗っかったりしている。
一時間程、子供達の相手をしていると、彼女が男を連れて戻って来た。 その男は何故か、上半身をロープでグルグル巻きにされている。 目にも目隠しがしてある。 一体俺に、何をさせるつもりなんだろうか?
「あのパイン? 俺に一体何を?」
「アークはちょっと黙ってて。 凄く良い事をしてあげるから。 凄く良い事よ、ふふふ、凄くね・・・・・。」
「良い事? 良い事って何?」
「大丈夫よ、凄く良い事だから。 心配しないで。 ふふふ。 ただちょっと、貴方とキスを・・・・・たくて。」
「え? 俺と?! そういう事なら。 うん、構わないぞ俺は。 何時でも、歓迎しているから。」
「え? 本当に? 良かった、もし断られたら如何しようかと思っていたの。 本当に嬉しいわ。 じゃあちょっと待っててね、少し準備をしてくるから。 いい、絶対動いたら駄目よ? 分かったわね?」
「ああ、俺はずっと待っているよ。 一時間だろうと、二時間だろうと!! さあパイン、行って来てくれ!!」
「ええ、じゃあ少し待っていてね。」
「はい!!」
俺にあの男とのキスを見届けろと言うのか? もしかして、此処で婚約でもする積もりなのか? それなら別に構わないけど、何故あんなに縛っているんだろう?
パインさんが、彼を外に待たせると、家の扉を閉めて、子供達を家に閉じ込めている。 きっと揶揄われるのが嫌なのだろう。
俺は、少し離れた場所へと移動させられた。 この場で喋っても、彼には届かないだろう。
「アーモンさん、じゃあ、お願いしますね。 さあブチュっと、濃厚なのをお願いします!!」
「はい?」
「舌を絡ませながら、ねっとりと糸を引く感じでお願いします!! さあ早く!!」
「えええ!! そ、それはちょっと・・・・・。」
「もし口直しがしたいと言うのであれば、後で私がしてあげますから!! お願いですからしてください!! 本当にお願いします!!」
彼女は良く分からない恰好で、頭を下げている。 いや、これは聞いた事がある。 アツシの国にあるという、土下座というものだ。 この国にもそれがあったのは驚きだが、そんな事をされても困ってしまう。
「いや、そう言われても・・・・・。」
「・・・・・如何しても駄目ですか? ドウシテモ?」
「ごめんなさい。」
「・・・・・そうですか、じゃあ仕方がないデス。 とりゃあああああああああ!!」
彼女は右手にロープを持ったまま高くジャンプして、一瞬で俺の体を縛り上げた。 抵抗できなくされた俺は、踏ん張っても、ズリズリと押されてしまう。 彼女に押されて、少しずつあの男の近くへ近づいて行く。 口を押えられて喋る事も出来ない。 このままでは不味い。 俺はあの男とキスをしてしまう!!
「アーク、もう少しよ、もう少しでしてあげられるわッ!! さあ、顔をもう少し前にッ!! はぁ、はぁ。」
「お、おう。 早くしろよ、俺だって恥ずかしいんだからな。」
そう言ってタコの様に口を突き出して来ている。 彼女の手が離されたのだが、もう男の顔は目の前だ。
「君やめっ・・・・・。」
彼の顔はドンドン近づいて来ている。 もはや無理と悟った俺は、せめて舌を入れさせない様にと、硬く口をつぐんだ。 ヌメっとした感覚が、唇に当たっている。 あろうことか、この男は舌まで使おうと、俺の唇の隙間から、舌をねじ入れて来ている。
や、やめろ!! 唇の隙間から舌を入れて来るんじゃない!! ぐおおおおおおおおおお!!
舌の力は凄まじく、俺の唇の隙間をグイグイと押し込んで来ている。 最後の砦として、俺は歯を食いしばり、彼の気が済むまで我慢をし続けた。
「す、凄いわ。 はぁ、はぁ。、もうちょっと、もうちょっとだけだから。 はぁ、はぁ。」
何分か経過した頃、彼女の力が緩み、俺はその場で吐いた。
「あの、え~っと、貴女がパインさんですよね? タルト君に頼まれて、貴女に魔法を教えに来ました。 如何でしょうか、魔法を使ってみたくはないですか? あ、先に言っておきますが、貴女にその才能が無ければ、俺が教えても使う事は出来ませんけど。」
「え? 私が・・・魔法を? ・・・・・ごめんなさい。 やっぱり私は、自分の力だけで勝ちたいの。 この自分の拳だけで。」
確か、近々試合があると言っていたな。 無理に魔法を使う練習をして、リズムを崩したくないのだろう。 俺だって、明日弓で試合をしろと言われても無理だ。 それを使えるようにするには、かなりの日数を費やさなければならない。
魔法だってそうだ。 覚えれば、破壊力のある魔法を飛ばす事も出来る。 だが実戦で使うタイミングや、それを当てられる力があるのかといえば、別の話だ。 その訓練をする時間も惜しいのだろう。
「そうですか、でも試合で使うかどうかは別として、今覚えておくのは、そう悪い話じゃないでしょう。 使いたくないのなら、使わなければ良いだけの話ですからね。 覚えるだけ覚えてみても良いんじゃないですか?」
「そうだよ姉ちゃん。 せっかくオイラが見つけて来たんだぞ。 覚えるだけでもしてくれたって良いじゃんか。 この人だって、折角来てくれたんだぞ!! ねぇ姉ちゃん、良いだろ。 ちょっとだけだって。」
「う~んそうねぇ・・・・・。 だったらこの人が私の条件を飲むのなら、その魔法を覚えてみても良いわ。 如何かしら? 私の頼みを引き受けてくれるかしら?」
教える側の俺が条件を出されるのか? 何となく親近感があるし、無茶なものでなければ引き受けても良いけど。
「ねえどうなの? やるの? やってくれるのよね?!」
彼女は如何しても俺に、引き受けてもらいたいらしい。 そんなに覚えたいのなら、タダで教えてあげると言っているのに。
「やるわよね? やるって言って!!」
何故か迫力のある顔で、俺に近づいて来ている。 俺は彼女の圧力に負けて、条件を聞かずに、それを引き受けてしまった。
「ま、まあ・・・。 命やお金が掛かるものでないのなら・・・・・。」
「よッッッしゃあああああああああああああああああああ!! じゃあ此処で待っていてください。 直ぐに呼んで来るから!!」
「誰を?」 そう聞く前に、彼女は家を飛び出して行ってしまった。 本当に誰を呼んで来るのだろうか?
彼女が戻って来るまで、俺はこの家で待ち続けた。 子供達も人懐っこい性格の様で、俺にも直ぐに打ち解けて、勝手に背中をよじ登って、肩に乗っかったりしている。
一時間程、子供達の相手をしていると、彼女が男を連れて戻って来た。 その男は何故か、上半身をロープでグルグル巻きにされている。 目にも目隠しがしてある。 一体俺に、何をさせるつもりなんだろうか?
「あのパイン? 俺に一体何を?」
「アークはちょっと黙ってて。 凄く良い事をしてあげるから。 凄く良い事よ、ふふふ、凄くね・・・・・。」
「良い事? 良い事って何?」
「大丈夫よ、凄く良い事だから。 心配しないで。 ふふふ。 ただちょっと、貴方とキスを・・・・・たくて。」
「え? 俺と?! そういう事なら。 うん、構わないぞ俺は。 何時でも、歓迎しているから。」
「え? 本当に? 良かった、もし断られたら如何しようかと思っていたの。 本当に嬉しいわ。 じゃあちょっと待っててね、少し準備をしてくるから。 いい、絶対動いたら駄目よ? 分かったわね?」
「ああ、俺はずっと待っているよ。 一時間だろうと、二時間だろうと!! さあパイン、行って来てくれ!!」
「ええ、じゃあ少し待っていてね。」
「はい!!」
俺にあの男とのキスを見届けろと言うのか? もしかして、此処で婚約でもする積もりなのか? それなら別に構わないけど、何故あんなに縛っているんだろう?
パインさんが、彼を外に待たせると、家の扉を閉めて、子供達を家に閉じ込めている。 きっと揶揄われるのが嫌なのだろう。
俺は、少し離れた場所へと移動させられた。 この場で喋っても、彼には届かないだろう。
「アーモンさん、じゃあ、お願いしますね。 さあブチュっと、濃厚なのをお願いします!!」
「はい?」
「舌を絡ませながら、ねっとりと糸を引く感じでお願いします!! さあ早く!!」
「えええ!! そ、それはちょっと・・・・・。」
「もし口直しがしたいと言うのであれば、後で私がしてあげますから!! お願いですからしてください!! 本当にお願いします!!」
彼女は良く分からない恰好で、頭を下げている。 いや、これは聞いた事がある。 アツシの国にあるという、土下座というものだ。 この国にもそれがあったのは驚きだが、そんな事をされても困ってしまう。
「いや、そう言われても・・・・・。」
「・・・・・如何しても駄目ですか? ドウシテモ?」
「ごめんなさい。」
「・・・・・そうですか、じゃあ仕方がないデス。 とりゃあああああああああ!!」
彼女は右手にロープを持ったまま高くジャンプして、一瞬で俺の体を縛り上げた。 抵抗できなくされた俺は、踏ん張っても、ズリズリと押されてしまう。 彼女に押されて、少しずつあの男の近くへ近づいて行く。 口を押えられて喋る事も出来ない。 このままでは不味い。 俺はあの男とキスをしてしまう!!
「アーク、もう少しよ、もう少しでしてあげられるわッ!! さあ、顔をもう少し前にッ!! はぁ、はぁ。」
「お、おう。 早くしろよ、俺だって恥ずかしいんだからな。」
そう言ってタコの様に口を突き出して来ている。 彼女の手が離されたのだが、もう男の顔は目の前だ。
「君やめっ・・・・・。」
彼の顔はドンドン近づいて来ている。 もはや無理と悟った俺は、せめて舌を入れさせない様にと、硬く口をつぐんだ。 ヌメっとした感覚が、唇に当たっている。 あろうことか、この男は舌まで使おうと、俺の唇の隙間から、舌をねじ入れて来ている。
や、やめろ!! 唇の隙間から舌を入れて来るんじゃない!! ぐおおおおおおおおおお!!
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