一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
14 人の戦い。
再び飛び立とうと、翅を動かし始めた蝶だが、大量の矢を受けて、翅が破れて、飛ぶ事が出来ないでいる。 それにより、羽ばたきによる暴風は、若干弱まっていた。 それをチャンスと見て、この隊の隊長が、指令を出している。
「敵が地上に落ちたぞ。 前衛は前に出ろ。 全隊突撃だ!!」
その指令を聞き、俺とレイリアも前に跳び出した。 空を飛ぶ虫が、地上に落ちればどうなるか。 そんなものは言うまでもない。 この蝶がただの虫ならば、ただ地上を上手く歩く事も出来ずに、他の虫に食われるだけだ。 だがこの魔物は違った、地上に降りてからが本番と、大地を踏みしめ走り出した。
翅を無くしたこの魔物は、もう蝶とすら呼べない。 暴れまわるこの魔物は、隊の人間を、踏み潰し、食い殺し、人間を殺害して行った。
「ぐぎゃああああああああああ。」
「ぎひぃぃぃ・・・。」
「や、止めろ・・・・あぎゃあああああ!!」
俺達三人は、敵の動きを見極める為に、前線から一旦下がったのだが。 相手の動きが思ったよりも素早く、隊の陣形が少しずつ崩れつつあった。 陣形を立て直す為、隊長が再び指示を出した。
「敵に食い殺されるぞ!! 正面の者は防御に専念しろ!! 他の者は敵の正面には立つな!! 囲んで死角から攻撃を仕掛けるんだ!!」
「「「「「応!!」」」」」
敵は強く、此方の怪我人は多くなっている。 こっちも考えて動かなければ。 俺はレイリアとミモザに、指示を出した。
「ミモザ、隊の皆の回復を頼むよ。 でも敵の攻撃範囲には、なるべく近づかない様にしてくれよ。」
「任せなさいアーモン。 この私に掛かれば、全員生き残らせるわ!!」
「レイリアは馬車を動かしてくれ、積み荷が無くなると不味い。 お前なら出来るだろ?」
「勿論!! その位余裕よ、お兄ちゃん。 馬を走らせるぐらい、貴族の嗜みだもの。 私に任せといて!!」
「俺は前線に戻るから。 もし隊が壊滅しそうなら、お前達は迷わず逃げてくれ。 俺の事は気にしなくて良いから。」
「え? 何言ってるの? ちょっと、お兄ちゃん?」
「アーモンを置いて行く分け無いでしょ!!」
俺は二人の言葉を聞かず、魔物へと走り出した。 この魔物も、十何人かに囲まれて、それなりに傷を負っている。 もしこれが王国の人達ならば、もっと簡単に倒すのだろうか?
居ない人達の事を考えても仕方がない。 俺は前線に混ざり、敵への攻撃を始めた。
「ッ!! 堅いなッ!!」
死角から敵の足へと剣を振ってみるが、随分と堅い。 この剣も王国制で、かなり良い物なのだが。 この剣で斬れ無いのなら此処は駄目だ。 もっと柔らかい部分を探さなければ。 今一番効果を上げているのは、相手の腹の部分だろう。 多くの矢や、武器による傷を受けている。
俺もその部分へと行くと、敵の腹へと攻撃を仕掛けた。 上下する腹にタイミングを合わせて見たが、高さがあって薄い傷しかつけられない。 俺は仕方なく、ジャンプをして剣を振り出した。 何度もジャンプする姿は、多少間抜けに見えるかもしれない。 それでも効果は抜群だった。
敵の腹を深く切り裂き、ドロリとした緑色の液体が流れる。 そしてもう一つ。 白く長い蠢いた何かが、その腹の中から落ちて来た。 蛇の様なそれは、味方の体に絡みつき、噛み付いた腕から、人の体内に潜り込もうとしている。 こんな物を飼っているとは、無暗に斬るのも不味いらしい。
俺は急いでそれを掴み、引きずり出そうとしたのだが。 その体が千切れても動き続けて、人間の体を食い尽くして行く。 自分の所為と悲観するより、寄生虫を殺すのが先だ。
「悪い!!」
それだけを言うと、俺はその男の腕を斬り飛ばし、腕の中で蠢くそれに、俺は剣を突き立てた。
「うぐああああああああああ、俺の腕がああああああああああ!!」
「腹を食われるよりましだろ。 後方に回復魔法が使える者が居る。 まだ付けられるから、腕を持って後方に下がってくれ!!」
「ぐああああ・・・。 テメェ、後でぶん殴ってやるからな。 覚えておけよ!!」
「生き残れたら、存分に殴ってくれて構わない。 早く行かないと付かなくなるぞ!!」
俺を睨んで、その男が後方に下がって行った。 見ると他の寄生虫も、隊の皆により倒されている。 俺はもうそれが出ない事を祈り、もう一度攻撃を再開した。 更に五匹が腹から出現したが、敵の出現はそれでお終いだった。 順調にその五匹を倒すと、俺達は集中して攻撃をし始めた。
少しずつだが、敵の力が落ちて来ている。 更なる猛攻撃を仕掛ける俺達は、相手が膝を突くまでには追い詰めた。 もう勝負はついたと誰もが思っただろう。 俺もそう思っていた。
魔物は体を反転させ、後方を振り向くと、大きく口を広げて、何人もの人を咥えながら、逃走を始めた。 俺ももう少しで食われる所だった。 そして今の魔物は、この旅の中で、二度と現れる事は無かった。
六名が死に、重軽傷者多数という大惨事となったが、俺達は何とか生き残る事が出来た。 あんな大物が出ては、この遠征はハズレと言っても良い。 それでもこんな遠征が無くならないのは、単純に儲かるからだろう。 一度行って帰って来られれば、一生と言わずとも、節約すれば、三年は暮らせる金が手に入るからだ。 それでも無事に国に帰れる者は、一割も居ないだろう。 こんな戦いが何回も続くのだから。
その戦いから七日後。 俺達三人は、無事にブリガンテへと到着していた。 もう生き残っているのは、両手の数で足りる程だ。 俺が腕を斬り落とした男は、腕を元に戻したが、あの二日後に魔物により殺されている。 俺達は報酬を受け取り、今はブリガンテでのんびりとしてた。
「やっと着いた・・・・・。 あー疲れた。 早く体を洗いたい。 お兄ちゃん手伝ってぇ。」
「アーモン、私も疲れたわー。 こんなに大変だと思わなかった。」
「目的の国は、まだ遠いからね。 お金もあるし、少し休んでリフレッシュしてから行っても良いかな。 もし二人が、もうこれ以上行きたくないと言うのなら、全部お金を渡すから、この国で暮らして行っても良いんだよ?」
「それがお兄ちゃんも一緒なら、私は構わないわよ。 でもお兄ちゃんは行くんでしょ? だったら私も行くわ。」
「アーモン。 私は貴方が居ないと生きて行けない体なのよ。 責任を取って、嫁にして頂戴。」
二人共諦めてはくれない様だ。 俺には好きな人が居るというのに。
「ごめんね、俺の嫁になる人は、もう居るんだ。 だからもう諦めてくれよ。 でも旅を続けるというなら、美味しい物でも食べに行こうか。」
「「行く!!」」
俺達はブリガンテで、つかの間の休息を楽しんだ。
「敵が地上に落ちたぞ。 前衛は前に出ろ。 全隊突撃だ!!」
その指令を聞き、俺とレイリアも前に跳び出した。 空を飛ぶ虫が、地上に落ちればどうなるか。 そんなものは言うまでもない。 この蝶がただの虫ならば、ただ地上を上手く歩く事も出来ずに、他の虫に食われるだけだ。 だがこの魔物は違った、地上に降りてからが本番と、大地を踏みしめ走り出した。
翅を無くしたこの魔物は、もう蝶とすら呼べない。 暴れまわるこの魔物は、隊の人間を、踏み潰し、食い殺し、人間を殺害して行った。
「ぐぎゃああああああああああ。」
「ぎひぃぃぃ・・・。」
「や、止めろ・・・・あぎゃあああああ!!」
俺達三人は、敵の動きを見極める為に、前線から一旦下がったのだが。 相手の動きが思ったよりも素早く、隊の陣形が少しずつ崩れつつあった。 陣形を立て直す為、隊長が再び指示を出した。
「敵に食い殺されるぞ!! 正面の者は防御に専念しろ!! 他の者は敵の正面には立つな!! 囲んで死角から攻撃を仕掛けるんだ!!」
「「「「「応!!」」」」」
敵は強く、此方の怪我人は多くなっている。 こっちも考えて動かなければ。 俺はレイリアとミモザに、指示を出した。
「ミモザ、隊の皆の回復を頼むよ。 でも敵の攻撃範囲には、なるべく近づかない様にしてくれよ。」
「任せなさいアーモン。 この私に掛かれば、全員生き残らせるわ!!」
「レイリアは馬車を動かしてくれ、積み荷が無くなると不味い。 お前なら出来るだろ?」
「勿論!! その位余裕よ、お兄ちゃん。 馬を走らせるぐらい、貴族の嗜みだもの。 私に任せといて!!」
「俺は前線に戻るから。 もし隊が壊滅しそうなら、お前達は迷わず逃げてくれ。 俺の事は気にしなくて良いから。」
「え? 何言ってるの? ちょっと、お兄ちゃん?」
「アーモンを置いて行く分け無いでしょ!!」
俺は二人の言葉を聞かず、魔物へと走り出した。 この魔物も、十何人かに囲まれて、それなりに傷を負っている。 もしこれが王国の人達ならば、もっと簡単に倒すのだろうか?
居ない人達の事を考えても仕方がない。 俺は前線に混ざり、敵への攻撃を始めた。
「ッ!! 堅いなッ!!」
死角から敵の足へと剣を振ってみるが、随分と堅い。 この剣も王国制で、かなり良い物なのだが。 この剣で斬れ無いのなら此処は駄目だ。 もっと柔らかい部分を探さなければ。 今一番効果を上げているのは、相手の腹の部分だろう。 多くの矢や、武器による傷を受けている。
俺もその部分へと行くと、敵の腹へと攻撃を仕掛けた。 上下する腹にタイミングを合わせて見たが、高さがあって薄い傷しかつけられない。 俺は仕方なく、ジャンプをして剣を振り出した。 何度もジャンプする姿は、多少間抜けに見えるかもしれない。 それでも効果は抜群だった。
敵の腹を深く切り裂き、ドロリとした緑色の液体が流れる。 そしてもう一つ。 白く長い蠢いた何かが、その腹の中から落ちて来た。 蛇の様なそれは、味方の体に絡みつき、噛み付いた腕から、人の体内に潜り込もうとしている。 こんな物を飼っているとは、無暗に斬るのも不味いらしい。
俺は急いでそれを掴み、引きずり出そうとしたのだが。 その体が千切れても動き続けて、人間の体を食い尽くして行く。 自分の所為と悲観するより、寄生虫を殺すのが先だ。
「悪い!!」
それだけを言うと、俺はその男の腕を斬り飛ばし、腕の中で蠢くそれに、俺は剣を突き立てた。
「うぐああああああああああ、俺の腕がああああああああああ!!」
「腹を食われるよりましだろ。 後方に回復魔法が使える者が居る。 まだ付けられるから、腕を持って後方に下がってくれ!!」
「ぐああああ・・・。 テメェ、後でぶん殴ってやるからな。 覚えておけよ!!」
「生き残れたら、存分に殴ってくれて構わない。 早く行かないと付かなくなるぞ!!」
俺を睨んで、その男が後方に下がって行った。 見ると他の寄生虫も、隊の皆により倒されている。 俺はもうそれが出ない事を祈り、もう一度攻撃を再開した。 更に五匹が腹から出現したが、敵の出現はそれでお終いだった。 順調にその五匹を倒すと、俺達は集中して攻撃をし始めた。
少しずつだが、敵の力が落ちて来ている。 更なる猛攻撃を仕掛ける俺達は、相手が膝を突くまでには追い詰めた。 もう勝負はついたと誰もが思っただろう。 俺もそう思っていた。
魔物は体を反転させ、後方を振り向くと、大きく口を広げて、何人もの人を咥えながら、逃走を始めた。 俺ももう少しで食われる所だった。 そして今の魔物は、この旅の中で、二度と現れる事は無かった。
六名が死に、重軽傷者多数という大惨事となったが、俺達は何とか生き残る事が出来た。 あんな大物が出ては、この遠征はハズレと言っても良い。 それでもこんな遠征が無くならないのは、単純に儲かるからだろう。 一度行って帰って来られれば、一生と言わずとも、節約すれば、三年は暮らせる金が手に入るからだ。 それでも無事に国に帰れる者は、一割も居ないだろう。 こんな戦いが何回も続くのだから。
その戦いから七日後。 俺達三人は、無事にブリガンテへと到着していた。 もう生き残っているのは、両手の数で足りる程だ。 俺が腕を斬り落とした男は、腕を元に戻したが、あの二日後に魔物により殺されている。 俺達は報酬を受け取り、今はブリガンテでのんびりとしてた。
「やっと着いた・・・・・。 あー疲れた。 早く体を洗いたい。 お兄ちゃん手伝ってぇ。」
「アーモン、私も疲れたわー。 こんなに大変だと思わなかった。」
「目的の国は、まだ遠いからね。 お金もあるし、少し休んでリフレッシュしてから行っても良いかな。 もし二人が、もうこれ以上行きたくないと言うのなら、全部お金を渡すから、この国で暮らして行っても良いんだよ?」
「それがお兄ちゃんも一緒なら、私は構わないわよ。 でもお兄ちゃんは行くんでしょ? だったら私も行くわ。」
「アーモン。 私は貴方が居ないと生きて行けない体なのよ。 責任を取って、嫁にして頂戴。」
二人共諦めてはくれない様だ。 俺には好きな人が居るというのに。
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