一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
32 朱殷(しゅあん)の髪と攫われた赤子 13
「お帰りシャイーン。 さあ、お父さんと、お帰りのキッスをしてくれ」
タコの様に口を伸ばした馬鹿な親父は、私を見つけると全力で走って来ている。 私は迫り来る親父を避け殴り、馬車の元へと戻って来ていた。 馬車の中では、今バールおじさんがレティのオムツを変えている。 かなり手慣れた手つきだが、もしかしたら色々な女性に子供を産ませてるのかもしれない。 私も気を付けないと、餌食にされそうだ。
「シャインちゃん、おかえりー」
「まったくぅ、そんなに照れなくても良いじゃないか。 この照れ屋さんめ」
煩い親父の戯言は放っておいて、私はこれからの事を話し合うことにした。
「あの男の情報を元に話し合って、私達はこの町の長が怪しいんじゃないかと思い至ったのだが、おじさんは如何思う?」
「俺は二人が行く所なら何処でも良いよ、馬鹿な俺が考えても、良いアイデアは浮かばないからね」
「なら決まりだな。 その長に会いに行こうじゃないか」
「待って、その前にラフィールを探しましょう。 たぶんギルド辺りに居ると思うのよ。 皆も仲間が増えた方が良いでしょ?」
「俺は嫌だ、男なんて絶対嫌だ! 可愛い女の子を希望する!」
「そうだ、シャインに、悪い虫がついたらどうするんだ! お父さん心配だぞ!」
「クスピエ、この二人に聞いたのが間違いだぞ。 行こうクスピエ、その人物が使えるのなら、この二人を捨てて行くことにしよう」
「そうね、駄目な大人よりは相当使えると思うわよ。 それじゃあ行きましょうか、ギルドの場所は知ってるわ、私この国には来た事があるの。 じゃあおじさん達は、ラフィールが来るまで、レティの事をよろしくね」
「「うええええええ!」」
私はクスピエと一緒に、ラフィールという男に、会いに行く事になった。 クスピエの案内でギルドまで来た私達。 ギルドの中は、酒場と一体になっており、大勢の人で賑わっている。 私ギルド内部を見回してみるが、その男の事を知らない。 探すのはクスピエ頼みだ。 そのクスピエは、今キョロキョロとその男を探していた。
「え~っと、え~っと・・・・・居たあああああああああああ!」
ギルドの賑わいよりも大きな声を出すクスピエに、ギルドに居た全員が、何があったのかと振り向いた。 私としてはあまり目立ちたくないのだけど、そんな事はお構いなしに、大声を出して走って行くクスピエ。 相手は精悍な顔つきをした男だ、良い男と言っても良い。
「ラフィールー、会いたかったわー!! 私ね、私ね、ずっと貴方の事を考えてたのよ」
私が聞いた事も無い猫なで声で、ラフィールという男に飛びつき、その頬を摺り寄せている。 きっとあの男の事が好みの相手とかそういうのなんだろう。 まさか戦力としてではなく、ただ会いたかったから来たとか言わないだろうな?
「えええっと? クスピエちゃん? 何で此処に?」
「私すっごく会いたくなったの、だから私来ちゃった」
違うと言いたい所だが、今は話を見守ろうか。 私達が信用出来る相手なのか分かるかもしれない。
「ええ? 本当にそれだけの為に来たの?! まさか一人で来たんじゃないよね?」
「ん~ん、誰も居ないわよ、私一人で此処に来たの。 ねぇ、褒めてくれる?」
おい、一人じゃないだろ。 私と一緒に来ただろうが。 駄目だ、クスピエは色ボケが始まっている。 このまま任せていても、永久に本題を切り出さなそうだ。 もう少ししたら話を切り出してみようか。
「本当に一人出来たの?! 危なく無かった? いやそれより、マルファーさん達が心配してるんじゃないの?! ど、どうしよう、まさか誘拐されたとか思われてたら・・・・・」
「私もう十九歳なのよ、一人で旅をしたっておかしくないでしょ。 ねぇラフィールぅ、今晩貴方の宿に泊めてよぉ。 私ぃ、ちょっと一人じゃ寂しくってぇ」
「そ、そうだね、十九なら旅をしてもおかしくないよね。 でもね、勝手に居なくなったら不味いと思うんだ、俺が送って行くから、明日帰ろうか?」
この男、クスピエの歳の事を信じてないな。 明らかに小さな女の子を相手している様に見える。 今までの話からすると、そう悪い人物じゃなさそうだ。 場所を変えて、仲間に誘ってみるか。 私はラフィールの近くに寄って、軽い挨拶をした。
「初めましてラフィールさん、私はこの女と一緒に旅をしているラーシャインと言います。 この女の言う事は、歳の事以外全て嘘です」
「シャインったら邪魔をしないでよ、今良い所なんだから!! 私とラフィールはラブラブなんだから」
「私は、お前の恋愛に付き合ってる時間は無い。 言っとくが、私達の仲間にすれば、ずっと一緒に居れるだろうが。 もし誘わないんであれば、一緒に馬車に帰るぞ」
「し、知り合いみたいだね・・・・・え~っと、仲間って何の話だい? 俺に用でもあったのかい?」
「はい、貴方にお話しがあるのですが、ちょっと場所を変えませんか? この場所だと少し目立つので」
ラフィールさんが周りを見回している。 ギルドの何人かは、まだ私達の事を見ている。 好奇心なのか、それとも敵の一味が居るのか、今私には判断出来ない。
「ん、分かったよ、一度外に出ようか。 マスター、お代は置いとくよ。 お釣りは要らないから貰っといてくれ」
「またどうぞー」
私達は、人気のない路地裏へと進み、そこで再び話を始めた。 彼には、私達の事情を話、強力を求めた。
「王国のイザコザね・・・・・あの国とはよくよく縁がある、これも運命なのかな。 分かったよ、君達に付き合おう。 えっと、それでクスピエちゃんの事なんだけど・・・・・ほ、本当に成人しているのかな? ちょっと信じられないんだけど」
「ええ、勿論。 私はもうちゃんと結婚も出来て、子供も産める歳なんですよ。 今日はぁ、約束通りぃ、私と一緒に寝ましょうね」
「え、え~っと・・・・・ご、ごめんね。 俺ちょっと勘違いしてたみたいだから、そういうのはもう少しお互いの事を知ってからで・・・・・」
「そんなの気にしないで良いのよ、私ぃ、貴方の事が、気に入ってるのぉ」
聞いててイライラする声を出すクスピエだが、流石に子供にしか見えないクスピエには手を出さないか。 まあ私としては、二人がくっ付こうが離れようが、関係のない話だ。 仲間になってくれさえすれば良い。
ラフィールさんを連れて、馬車に戻ろうとしたのだが、私達を追って、ギルドに居た男が一人追って来た。 大柄な男だな、髪は長いモヒカンという、昔親父に聞かされた、漫画というものの雑魚キャラに似ている。
「待ちなよお兄ちゃん。 そんな小さい子に何する気なんだ? 酒場から見てればその小さい子にベタベタと、貴様はまさか、幼女趣味の変態なのか?!」
「ち、違いますよ。 どうも勘違いされてるみたいですけど、俺はそんな人物じゃありませんって。 ちょっと落ち着いてください」
「何あんた、私達の邪魔しないでよ! もう直ぐ良い事が出来そうだったのに!」
「いやいやクスピエちゃん、俺はしないからね?」
追っ手という訳ではない様だ。 この男はたぶん、正義感か何かで来たのだろう。 まあこの男には悪いが、丁度良いので、ラフィールの実力を見させてもらおうか。
「掛かって来やがれ変態め、俺の手で強制してやる!」
「だから違いますって!」
「問答無用、行くぞ変態!」
二人の戦いが始まった。 体の大きな男の攻撃をひらりと躱し、軽くその後ろを取るラフィールさん。 どうやらこの男では、ラフィールさんの相手にもならない様だ。
「覚えて居ろ、この変態め!」
捨て台詞を吐いて、逃げる男を見送り。 私達はラフィールさんを連れて、馬車へと戻った。
タコの様に口を伸ばした馬鹿な親父は、私を見つけると全力で走って来ている。 私は迫り来る親父を避け殴り、馬車の元へと戻って来ていた。 馬車の中では、今バールおじさんがレティのオムツを変えている。 かなり手慣れた手つきだが、もしかしたら色々な女性に子供を産ませてるのかもしれない。 私も気を付けないと、餌食にされそうだ。
「シャインちゃん、おかえりー」
「まったくぅ、そんなに照れなくても良いじゃないか。 この照れ屋さんめ」
煩い親父の戯言は放っておいて、私はこれからの事を話し合うことにした。
「あの男の情報を元に話し合って、私達はこの町の長が怪しいんじゃないかと思い至ったのだが、おじさんは如何思う?」
「俺は二人が行く所なら何処でも良いよ、馬鹿な俺が考えても、良いアイデアは浮かばないからね」
「なら決まりだな。 その長に会いに行こうじゃないか」
「待って、その前にラフィールを探しましょう。 たぶんギルド辺りに居ると思うのよ。 皆も仲間が増えた方が良いでしょ?」
「俺は嫌だ、男なんて絶対嫌だ! 可愛い女の子を希望する!」
「そうだ、シャインに、悪い虫がついたらどうするんだ! お父さん心配だぞ!」
「クスピエ、この二人に聞いたのが間違いだぞ。 行こうクスピエ、その人物が使えるのなら、この二人を捨てて行くことにしよう」
「そうね、駄目な大人よりは相当使えると思うわよ。 それじゃあ行きましょうか、ギルドの場所は知ってるわ、私この国には来た事があるの。 じゃあおじさん達は、ラフィールが来るまで、レティの事をよろしくね」
「「うええええええ!」」
私はクスピエと一緒に、ラフィールという男に、会いに行く事になった。 クスピエの案内でギルドまで来た私達。 ギルドの中は、酒場と一体になっており、大勢の人で賑わっている。 私ギルド内部を見回してみるが、その男の事を知らない。 探すのはクスピエ頼みだ。 そのクスピエは、今キョロキョロとその男を探していた。
「え~っと、え~っと・・・・・居たあああああああああああ!」
ギルドの賑わいよりも大きな声を出すクスピエに、ギルドに居た全員が、何があったのかと振り向いた。 私としてはあまり目立ちたくないのだけど、そんな事はお構いなしに、大声を出して走って行くクスピエ。 相手は精悍な顔つきをした男だ、良い男と言っても良い。
「ラフィールー、会いたかったわー!! 私ね、私ね、ずっと貴方の事を考えてたのよ」
私が聞いた事も無い猫なで声で、ラフィールという男に飛びつき、その頬を摺り寄せている。 きっとあの男の事が好みの相手とかそういうのなんだろう。 まさか戦力としてではなく、ただ会いたかったから来たとか言わないだろうな?
「えええっと? クスピエちゃん? 何で此処に?」
「私すっごく会いたくなったの、だから私来ちゃった」
違うと言いたい所だが、今は話を見守ろうか。 私達が信用出来る相手なのか分かるかもしれない。
「ええ? 本当にそれだけの為に来たの?! まさか一人で来たんじゃないよね?」
「ん~ん、誰も居ないわよ、私一人で此処に来たの。 ねぇ、褒めてくれる?」
おい、一人じゃないだろ。 私と一緒に来ただろうが。 駄目だ、クスピエは色ボケが始まっている。 このまま任せていても、永久に本題を切り出さなそうだ。 もう少ししたら話を切り出してみようか。
「本当に一人出来たの?! 危なく無かった? いやそれより、マルファーさん達が心配してるんじゃないの?! ど、どうしよう、まさか誘拐されたとか思われてたら・・・・・」
「私もう十九歳なのよ、一人で旅をしたっておかしくないでしょ。 ねぇラフィールぅ、今晩貴方の宿に泊めてよぉ。 私ぃ、ちょっと一人じゃ寂しくってぇ」
「そ、そうだね、十九なら旅をしてもおかしくないよね。 でもね、勝手に居なくなったら不味いと思うんだ、俺が送って行くから、明日帰ろうか?」
この男、クスピエの歳の事を信じてないな。 明らかに小さな女の子を相手している様に見える。 今までの話からすると、そう悪い人物じゃなさそうだ。 場所を変えて、仲間に誘ってみるか。 私はラフィールの近くに寄って、軽い挨拶をした。
「初めましてラフィールさん、私はこの女と一緒に旅をしているラーシャインと言います。 この女の言う事は、歳の事以外全て嘘です」
「シャインったら邪魔をしないでよ、今良い所なんだから!! 私とラフィールはラブラブなんだから」
「私は、お前の恋愛に付き合ってる時間は無い。 言っとくが、私達の仲間にすれば、ずっと一緒に居れるだろうが。 もし誘わないんであれば、一緒に馬車に帰るぞ」
「し、知り合いみたいだね・・・・・え~っと、仲間って何の話だい? 俺に用でもあったのかい?」
「はい、貴方にお話しがあるのですが、ちょっと場所を変えませんか? この場所だと少し目立つので」
ラフィールさんが周りを見回している。 ギルドの何人かは、まだ私達の事を見ている。 好奇心なのか、それとも敵の一味が居るのか、今私には判断出来ない。
「ん、分かったよ、一度外に出ようか。 マスター、お代は置いとくよ。 お釣りは要らないから貰っといてくれ」
「またどうぞー」
私達は、人気のない路地裏へと進み、そこで再び話を始めた。 彼には、私達の事情を話、強力を求めた。
「王国のイザコザね・・・・・あの国とはよくよく縁がある、これも運命なのかな。 分かったよ、君達に付き合おう。 えっと、それでクスピエちゃんの事なんだけど・・・・・ほ、本当に成人しているのかな? ちょっと信じられないんだけど」
「ええ、勿論。 私はもうちゃんと結婚も出来て、子供も産める歳なんですよ。 今日はぁ、約束通りぃ、私と一緒に寝ましょうね」
「え、え~っと・・・・・ご、ごめんね。 俺ちょっと勘違いしてたみたいだから、そういうのはもう少しお互いの事を知ってからで・・・・・」
「そんなの気にしないで良いのよ、私ぃ、貴方の事が、気に入ってるのぉ」
聞いててイライラする声を出すクスピエだが、流石に子供にしか見えないクスピエには手を出さないか。 まあ私としては、二人がくっ付こうが離れようが、関係のない話だ。 仲間になってくれさえすれば良い。
ラフィールさんを連れて、馬車に戻ろうとしたのだが、私達を追って、ギルドに居た男が一人追って来た。 大柄な男だな、髪は長いモヒカンという、昔親父に聞かされた、漫画というものの雑魚キャラに似ている。
「待ちなよお兄ちゃん。 そんな小さい子に何する気なんだ? 酒場から見てればその小さい子にベタベタと、貴様はまさか、幼女趣味の変態なのか?!」
「ち、違いますよ。 どうも勘違いされてるみたいですけど、俺はそんな人物じゃありませんって。 ちょっと落ち着いてください」
「何あんた、私達の邪魔しないでよ! もう直ぐ良い事が出来そうだったのに!」
「いやいやクスピエちゃん、俺はしないからね?」
追っ手という訳ではない様だ。 この男はたぶん、正義感か何かで来たのだろう。 まあこの男には悪いが、丁度良いので、ラフィールの実力を見させてもらおうか。
「掛かって来やがれ変態め、俺の手で強制してやる!」
「だから違いますって!」
「問答無用、行くぞ変態!」
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