一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。

秀典

14 体に刻んだ事って中々忘れないのよね。

「せ、聖華さん、あれだけ罵倒した俺お琴を・・・・・く、口づけを・・・・・」


「違うから。 あれはただの人工呼吸よ!! あんたの事は大っ嫌いなのよ、とっとと消えてくれないかしら!!」


「聖華さん、照れなくても良いじゃないですか。 聖華さん・・・・・いや、聖華!! これからは二人一緒に生きて行こうじゃありませんか!!」


 何だこの男、あそこまで罵倒して、たかが人工呼吸でコロっと変わるのか? もう関わりたく無いわね。 私の戦いを覗いていた学生が騒いでいる。 あのゴリラもやるとか、プロポーズしたとか、聞き捨てならない言葉が飛んで来る。 このまま私とこの男の噂が流れるのは我慢出来ない。 私はハンブラーの金的を蹴り上げた。


「私はあんたみたいな女を馬鹿にするような奴には興味無いわよ!! 千年勉強しなおしてから出直していらっしゃい!!」


「ぬおおおおおおおおおおおおお!!」


 地面に蹲るハンブラーに、私はもう一発踏みつけ、学校の校舎の中に入って行った。 私は先日お邪魔した、アルタイル先生の部屋の扉を叩いた。


 コンコンコンコン。


「聖華さんですね? どうぞお入りになってください。」


 私が来た事を知ってるとなると、先ほどの騒ぎを見られてたわね。 頼み事をしに来たのに、少し言いずらくなったわ。 私は覚悟してアルタイル先生の部屋へと入った。


「失礼しま~す・・・・・」


 アルタイル先生は外を見つめ、私に背中を向けている。 外には蹲ったハンブラーが居る、これは怒られるかしら?


「気にしなくても良いのですよ、ハンブラー先生は少し女性を下に見る傾向がありますからね、このぐらいは良い薬になるでしょう。」


「あははははは、そーですね。」


 薬所か、もう殆ど殺しちゃいそうになってたけど、助けられたから良いわよね? 運が悪かったら危うかったわ・・・・・


「前に誘った教師として生きて行く覚悟が出来ましたか? もし働き辛ければ、あの男を辞めさせても良いのですよ?」


「いやあの、絶対逆恨みされますから止めてください。 誘ってくれて嬉しかったのですけど、やっぱり私には向いていないと思います。 本当にごめんなさい。」


「それは残念ですね、折角の六属性が勿体ない。 そうだわ、ハンブラー先生が居ない日に臨時講師として働くのはどうでしょう? 月に一回で良いのですけど。」


「あの男が居ない日で良いのなら・・・・・」


 月に一回ならと、私はその提案を受けた。 これ以上断わり続けたら私の頼みが聞いて貰えなくなりそうだったから。


「あの~、それでですね、今日はグラウンドを使いたいんです。 試し打ち出来る場所が中々見つからないので・・・・・」


「ええ勿論良いのですよ、聖華さんの力を見られるチャンスですからね。 あ、ただあの岩の魔法は1回にしてくださいね、片付けるのがかなり大変でしたので。 グラウンドだと目立ちますから、練習場の方に向かいましょう。 此方です、ついて来てください。」


「あ、は~い。」


 アルタイル先生の案内により、私は魔法の練習場に到着した。 生徒は誰も居ない、今は此処を使う時間じゃないのだろう。


「私は此処で見守っていますので、存分にお使いください。」


「有難うございます、アルタイル先生。」


 後から見られるのは若干緊張するわね。 でもこの場所でしか使えないし、やるしか無いわ。


「じゃあ行きます。 ホーリー・フレイム!!」


 巨大な炎が生まれ、私は続けて魔法を放ち続ける。


「シャイニング・アクア!! ・・・・・ウィニング・ウィンド!! ・・・・・エターナル・ストーン!! ・・・・・ライジング・サンシャイン!! ・・・・・アルティメット・ダーク!!」


 よし六回クリアね。 続けてもう一回。」


「ウィニング・ウィンド!」


 全七回を撃ち終わり、これで十分だと先生にお礼の言葉を言った。


「有難うございます、ちゃんと力の確認が出来ました。」


「駄目ですよ聖華さん、倒れるまで撃たないと訓練になりません。 倒れる事でしか覚えられない事もあるのです、さあもう一回です!!」


「えぇ? で、でも使える回数は知ってますし・・・・・」


「ただ知ってるのと体で体験した事は違うのです。 倒れる様な疲れや痛みは、心と体に刻まれます。 何度もそれを経験する事で、戦闘中ちゃんと数を数えられるようになるのですよ。 さあもう一度使いなさい、介抱は私がいたいしますから。」


 アルタイル先生はもう私の雇い主だ、ある程度の頼みは聞かないといけない。 私はそれに同意して最後の魔法を放った。


「シャイニング・アクア・・・・・はぅあ・・・・・」


 やる気のないワードを唱えるとともに、私の体力が完全に0になった。 かなりの脱力感に疲れが襲い、私は完全に意識を失った。 




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




 アルタイル先生の介抱により、三時間程で目を覚ました私。 これがハンブラーとの戦いだったなら、私の体はどうなっていた事だろうか。 あの男の事だ、介抱すると言って色々な事をしたに違いない。 今一度回数の重要性を確認した所で、私はアルタイル先生と別れ、自分の家に帰って行った。


 部屋の中、まだ体力が戻らない私は、眠りたいのを堪えている。


だるい、体の節々が痛い。 ・・・・・もう二度とやりたくないわ。」


 私は習得出来るスキルを見回し、この状態を打開できる物を探している。


「え~っと・・・・・体力増加・・・駄目ね、私の少ない体力を増やした所で、あんまり増えたりしないわね。 う~ん、ヒットポイント常時回復は助かるけど、もうちょっとドーンと回復する物ってないのかしら。 ダメージカットは駄目ね、これはただの疲労だから・・・・・えっと他は・・・・・瀕死時体力回復30%。を一日1回・・・・・これなら、いけるかしら?」


 そもそもあの状態が瀕死なのか分からないけど、私はそれを取る事にした。 でもそれを取っても私の体力は回復しなかった。 もう歩けるぐらいに回復してるから? それとも元々瀕死状態じゃないのかよく分からなかったけど、仕方なく私は、7つ目のスキル、ヒットポイント常時回復を取った。






 最後のスキルは慎重に選びたい所だけど、たぶん私はその場のノリで決めちゃうと思うわ。



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