一つの世界で起こる、万の人々が紡ぐ数多くの物語。書物に残された文字は、忘れられた歴史の記録を残す。
19 絶対的な強者とは、油断しても魔王ぐらい片手で倒せるものを言う。
宿で俺が眠っている時、頭の中に声が響いた。 この声はベールの奴だ、でも俺の意識はハッキリせず、その言葉をボンヤリと聞き流す。
(起きろアツシ、お前が言った通り、さっきフレーレって奴を送ってやったぞ。 本人はやる気十分だったから向うでも役に立つんじゃないか? まあこんだけ戦力があれば十分だろ、後は自分達でなんとかしろ。 あ、それと、送る場所はちょっとずれたみたいだが、まあ問題ないだろう? じゃあ気が向いたらまた連絡する。)
俺がベールの言葉を理解したのは、それから1時間が経った頃だった。
・・・・・フレーレ様が来た? 何処か違う場所? やる気十分? とんでもない予感がするぞ。 町とか壊滅してたら如何しよう。 まずフレーレ様の居場所を探さないと!!
俺はメイに事情を話し、ストリーとべノムと共にフレーレ様を探しに行く事にした。 異世界初心者の母ちゃんと恋は、メイが面倒をみてくれるだろう。
「探すは良いけどよぉ、一体何処探すんだ? こっちの世界もかなり広いんだろ?」
「確かに簡単には探せ無さそうだぞ? 私達が森に落ちたとすると、この町に居るとは限らないんだろ? 如何するんだアツシ。」
「大丈夫だ、昨日色々調べてたから、マップとか使えば大体分かると思うんだ。 目に入るうざったい数字とかも消せるぞ。」
「ああ、それならメイって奴に聞いて外したぞ。 あんな邪魔くせぇ物いらねぇからな。」
「私もだ、あんな物があっては戦闘の邪魔にしかならないからな。」
俺の苦労って一体・・・・・
まあ良い、まずマップを見ながら居場所を探して行く。 町のマップを取り出し、人物検索を掛ける。 フレーレの名前にヒットしたのは武器屋ばかりだ。 俺が探したいのは武器のフレーレじゃない。 何方かというと、もっと大魔王的な恐ろしいものだ。
次に地域マップを開き、検索を掛ける。 しかしそれも反応は無く、更に広範囲のスキャンを掛けた。
「お、居たぞ。 え~っと・・・・・魔王城?」
ゲームのラスボスが隠しボスに勝てない様に、きっとここの魔王はボコられてるに違いない。 助けに? 行った方がいいのだろうか?
「あ~ん、そりゃ何処だ? 此処から遠いのか?」
「此処から北西方面だな。 如何しようか、行ってみる? 俺としてはあんまり行きたくないんだけど。」
「フレーレさんをこんな世界に一人にしておく訳には行かないぞ。 この世界で魔王認定されてら如何するんだ!!」
心配するところはそれか? 確かに、俺達の世界の核兵器を持って来た様な物だ、まあ俺達が回収するしかないんだが。 出来れば絶対行きたくないぞ。
「んじゃ俺達二人は馬でも借りて行くから、べノムは先に様子を見て来てくれよ。 もしかしたらまだ間に合うかもしれないし。」
「チッ、分かったよ、んで北西ってのはどっちだ?」
北西を指さし、俺は方向を教えた。 べノムの速さなら三十分掛からないと思う。
「あっち、森を越えたらでっかい城があるから分かると思う。」
「そうか、じゃあ先に行くぞ。 出来れば早く来てくれ、テンションの上がったフレーレと二人っきりで会いたくない。 絶対来いよ、絶対だからな!!」
べノムが空へ飛び立ち、終えた地はメイに貰った金を使い、馬を借りると、魔王城へと走らせた。 そもそも敵の出現も少なく、馬の足に追いつくものが居なかったので、魔王城には四時間程で到着出来た。
フレーレ様がどうなってるのか知らないが、まあ現状を見る限り今何が起きてるのかまるわかりだった。 町の入り口から倒れた魔物の道が出来ている。 たぶん全員気絶してるだけだ、骨とか折られてるから復帰する事は無いと思う。 奥には立派だっただろう城から煙が立ち上り、城の塔が幾つか折れている。 大魔王様が降臨された後みたいだ。 とりあえず俺は、上空のべノムを見つけて声を掛けた。
「お~いべノム、何で行かないんだ? あの人を止められるのはべノムだけだと思うんだ。 さあ急いで行って来て!!」
「嫌だね、何で俺一人犠牲にならなきゃなんねぇんだよ!! 行くなら全員でだ、今更逃げようったってそうは行かないぜ!!」
「おい放せ!! いや、やっぱり放すな、落ちたら死ぬし!!」
怒ったべノムは俺の手を掴み、俺は城まで運ばれて行く。 ストリーは下から追い駆けてきている。 まあ敵も居ないから大丈夫だと思う。 城の前まで運ばれた俺は、ストリーと合流すると、諦めて城の内部へと入って行った。
「ストリーさんが一人でこれをやったのか、中々恐ろしいものがあるな。」
「言っとくが恐ろしいじゃ済まねぇからな、フレーレの奴なら、得物が居なくなったら俺達に襲い掛かって来るぞ。 あいつはそういう生き物だ。」
そんな生き物が居るとは信じたくないが、俺は知ってる、あの人ならあり得るかなーと。 出来れば疲れて眠ってて欲しい。 城の中にも敵は居ない。 いや、居るには居るんだけど、ガクガクと震えて襲って来る奴は誰も居なかった。
俺達は倒れて居る魔物の道を進み、その一番奥の部屋。 玉座に座っていただろう魔王らしきものが足蹴にされ、その玉座にフレーレ様が座っている。 横には攫われた王女様らしき人物がお茶を持って来ていた。
「あらー? 遅かったわね、もう全部倒しちゃったわよー。」
「そうかフレーレ、じゃあ大人しく帰ろうじゃないか。 もう十分だろ?」
べノムが説得を試みてみるが、フレーレ様はまだ遊び足りないようだ。
「え~、もうちょっと遊びたいわー。 そうだ、久しぶりにべノムが相手してよ。 アツシとストリーちゃんも手伝って良いから。」
「何でこんな所まで来てお前と戦わにゃならんのだ!! もう随分戦ったんだろ、もう良いじゃねぇか。」
「駄目よー、もうちょっと遊びたいもの。 来ないのならこっちから行くからねー?」
フレーレ様が走り出す、軽く放たれた拳の一撃を見て、俺は飛び出した。 出来る限り衝撃を受け流しながらフレーレ様の拳を受ける。 その攻撃を受け流す事なんて出来なかったし、めちゃめちゃ痛いんだが、ここで呻き声を出してはいけない。 これ以上攻撃を受けたくないので、この一発で終わった事にしておこう。
「おいいいいいい起きろアツシ、そんな程度で気絶なんてしねぇだろうが!! 死んだ振りなんてしてたら踏み潰すぞコラ!!」
「・・・・・」
返事をしてはいけない。 俺に意識を向けられて、万が一止めを刺されると困る。 でもちょっと気になったので、フレーレ様のHPを覗いて見ると、俺達が千とかなのに対して、フレーレ様のHPはMAX五十万だった。 ちなみに今は41万ぐらにはなっている、あんなに敵を倒しておいて半分も減って無いとか恐ろしいぞ。
「フレーレさん、私達が戦うのは何時ぶりでしょうか? あの時の負けを取り返させてもらいますよ。 あとアツシは後でお仕置きだ。」
お仕置きは止めてくれ!! ストリーも怖いけど、フレーレ様も怖い、どっちに付いても酷い目に合うなら、今酷い目に合わない方を選んでおこう。
「ふふん、掛かってらっしゃいストリーちゃん、返り討ちにしてあげるわー。」
俺は安全だろうと思われる柱の影に隠れ、三人の戦いを見守っている。 此処からは見えないが、三人の声が聞こえて来る。
「テメェ、最速の一撃を軽く躱すんじゃねぇよ!! 化け物かテメェは!!」
「軽くじゃないのよー、結構ギリギリなのよ。 あんなのに当たったら痛そうじゃないのー。」
「うるせぇ! テメェは軽くやってるように見えるんだよ!!」
「行きますよフレーレさんッ!!」
「何時でも来なさーい、準備は出来てるわよ。」
激しい戦闘が続く中、城のぶっとい柱が両断されたり、分厚い壁が爆砕されたり、柱の影でも全然安全じゃない。 なるべく攻撃が来ないであろう入り口方面に避難し、決着がつくのを待った。
どれ程の時間が経っただろうか、完全に音が鳴り止むと、俺は様子を窺った。 二人が蛙の様に床に倒れ、一人が立って居る。 立って居るのは勿論フレーレ様でした!! ストリーは昔互角に戦ったと言ってたけど、もう随分と差がついてしまった様だ。
「ふう、結構楽しかったわ!! アツシ居るんでしょ? 二人を連れてってねー。」
「ハッ!! 了解しました!!」
ストリーをおんぶして、べノムを引きずって帰ろうと思ったのだが、気を失い倒れて居た魔王さんが、自分を倒したフレーレ様に言い放った。
「この私を倒していい気になってる様だが、私が真の魔王だとでも思ったのか!! 私はただの右腕にしか過ぎない!! さあ魔王様、おいでくださいませ!!」
その下っ端の右腕さんが、本物の魔王を呼び出そうとしていた。 たぶんきっと無理だと思うよ?
(起きろアツシ、お前が言った通り、さっきフレーレって奴を送ってやったぞ。 本人はやる気十分だったから向うでも役に立つんじゃないか? まあこんだけ戦力があれば十分だろ、後は自分達でなんとかしろ。 あ、それと、送る場所はちょっとずれたみたいだが、まあ問題ないだろう? じゃあ気が向いたらまた連絡する。)
俺がベールの言葉を理解したのは、それから1時間が経った頃だった。
・・・・・フレーレ様が来た? 何処か違う場所? やる気十分? とんでもない予感がするぞ。 町とか壊滅してたら如何しよう。 まずフレーレ様の居場所を探さないと!!
俺はメイに事情を話し、ストリーとべノムと共にフレーレ様を探しに行く事にした。 異世界初心者の母ちゃんと恋は、メイが面倒をみてくれるだろう。
「探すは良いけどよぉ、一体何処探すんだ? こっちの世界もかなり広いんだろ?」
「確かに簡単には探せ無さそうだぞ? 私達が森に落ちたとすると、この町に居るとは限らないんだろ? 如何するんだアツシ。」
「大丈夫だ、昨日色々調べてたから、マップとか使えば大体分かると思うんだ。 目に入るうざったい数字とかも消せるぞ。」
「ああ、それならメイって奴に聞いて外したぞ。 あんな邪魔くせぇ物いらねぇからな。」
「私もだ、あんな物があっては戦闘の邪魔にしかならないからな。」
俺の苦労って一体・・・・・
まあ良い、まずマップを見ながら居場所を探して行く。 町のマップを取り出し、人物検索を掛ける。 フレーレの名前にヒットしたのは武器屋ばかりだ。 俺が探したいのは武器のフレーレじゃない。 何方かというと、もっと大魔王的な恐ろしいものだ。
次に地域マップを開き、検索を掛ける。 しかしそれも反応は無く、更に広範囲のスキャンを掛けた。
「お、居たぞ。 え~っと・・・・・魔王城?」
ゲームのラスボスが隠しボスに勝てない様に、きっとここの魔王はボコられてるに違いない。 助けに? 行った方がいいのだろうか?
「あ~ん、そりゃ何処だ? 此処から遠いのか?」
「此処から北西方面だな。 如何しようか、行ってみる? 俺としてはあんまり行きたくないんだけど。」
「フレーレさんをこんな世界に一人にしておく訳には行かないぞ。 この世界で魔王認定されてら如何するんだ!!」
心配するところはそれか? 確かに、俺達の世界の核兵器を持って来た様な物だ、まあ俺達が回収するしかないんだが。 出来れば絶対行きたくないぞ。
「んじゃ俺達二人は馬でも借りて行くから、べノムは先に様子を見て来てくれよ。 もしかしたらまだ間に合うかもしれないし。」
「チッ、分かったよ、んで北西ってのはどっちだ?」
北西を指さし、俺は方向を教えた。 べノムの速さなら三十分掛からないと思う。
「あっち、森を越えたらでっかい城があるから分かると思う。」
「そうか、じゃあ先に行くぞ。 出来れば早く来てくれ、テンションの上がったフレーレと二人っきりで会いたくない。 絶対来いよ、絶対だからな!!」
べノムが空へ飛び立ち、終えた地はメイに貰った金を使い、馬を借りると、魔王城へと走らせた。 そもそも敵の出現も少なく、馬の足に追いつくものが居なかったので、魔王城には四時間程で到着出来た。
フレーレ様がどうなってるのか知らないが、まあ現状を見る限り今何が起きてるのかまるわかりだった。 町の入り口から倒れた魔物の道が出来ている。 たぶん全員気絶してるだけだ、骨とか折られてるから復帰する事は無いと思う。 奥には立派だっただろう城から煙が立ち上り、城の塔が幾つか折れている。 大魔王様が降臨された後みたいだ。 とりあえず俺は、上空のべノムを見つけて声を掛けた。
「お~いべノム、何で行かないんだ? あの人を止められるのはべノムだけだと思うんだ。 さあ急いで行って来て!!」
「嫌だね、何で俺一人犠牲にならなきゃなんねぇんだよ!! 行くなら全員でだ、今更逃げようったってそうは行かないぜ!!」
「おい放せ!! いや、やっぱり放すな、落ちたら死ぬし!!」
怒ったべノムは俺の手を掴み、俺は城まで運ばれて行く。 ストリーは下から追い駆けてきている。 まあ敵も居ないから大丈夫だと思う。 城の前まで運ばれた俺は、ストリーと合流すると、諦めて城の内部へと入って行った。
「ストリーさんが一人でこれをやったのか、中々恐ろしいものがあるな。」
「言っとくが恐ろしいじゃ済まねぇからな、フレーレの奴なら、得物が居なくなったら俺達に襲い掛かって来るぞ。 あいつはそういう生き物だ。」
そんな生き物が居るとは信じたくないが、俺は知ってる、あの人ならあり得るかなーと。 出来れば疲れて眠ってて欲しい。 城の中にも敵は居ない。 いや、居るには居るんだけど、ガクガクと震えて襲って来る奴は誰も居なかった。
俺達は倒れて居る魔物の道を進み、その一番奥の部屋。 玉座に座っていただろう魔王らしきものが足蹴にされ、その玉座にフレーレ様が座っている。 横には攫われた王女様らしき人物がお茶を持って来ていた。
「あらー? 遅かったわね、もう全部倒しちゃったわよー。」
「そうかフレーレ、じゃあ大人しく帰ろうじゃないか。 もう十分だろ?」
べノムが説得を試みてみるが、フレーレ様はまだ遊び足りないようだ。
「え~、もうちょっと遊びたいわー。 そうだ、久しぶりにべノムが相手してよ。 アツシとストリーちゃんも手伝って良いから。」
「何でこんな所まで来てお前と戦わにゃならんのだ!! もう随分戦ったんだろ、もう良いじゃねぇか。」
「駄目よー、もうちょっと遊びたいもの。 来ないのならこっちから行くからねー?」
フレーレ様が走り出す、軽く放たれた拳の一撃を見て、俺は飛び出した。 出来る限り衝撃を受け流しながらフレーレ様の拳を受ける。 その攻撃を受け流す事なんて出来なかったし、めちゃめちゃ痛いんだが、ここで呻き声を出してはいけない。 これ以上攻撃を受けたくないので、この一発で終わった事にしておこう。
「おいいいいいい起きろアツシ、そんな程度で気絶なんてしねぇだろうが!! 死んだ振りなんてしてたら踏み潰すぞコラ!!」
「・・・・・」
返事をしてはいけない。 俺に意識を向けられて、万が一止めを刺されると困る。 でもちょっと気になったので、フレーレ様のHPを覗いて見ると、俺達が千とかなのに対して、フレーレ様のHPはMAX五十万だった。 ちなみに今は41万ぐらにはなっている、あんなに敵を倒しておいて半分も減って無いとか恐ろしいぞ。
「フレーレさん、私達が戦うのは何時ぶりでしょうか? あの時の負けを取り返させてもらいますよ。 あとアツシは後でお仕置きだ。」
お仕置きは止めてくれ!! ストリーも怖いけど、フレーレ様も怖い、どっちに付いても酷い目に合うなら、今酷い目に合わない方を選んでおこう。
「ふふん、掛かってらっしゃいストリーちゃん、返り討ちにしてあげるわー。」
俺は安全だろうと思われる柱の影に隠れ、三人の戦いを見守っている。 此処からは見えないが、三人の声が聞こえて来る。
「テメェ、最速の一撃を軽く躱すんじゃねぇよ!! 化け物かテメェは!!」
「軽くじゃないのよー、結構ギリギリなのよ。 あんなのに当たったら痛そうじゃないのー。」
「うるせぇ! テメェは軽くやってるように見えるんだよ!!」
「行きますよフレーレさんッ!!」
「何時でも来なさーい、準備は出来てるわよ。」
激しい戦闘が続く中、城のぶっとい柱が両断されたり、分厚い壁が爆砕されたり、柱の影でも全然安全じゃない。 なるべく攻撃が来ないであろう入り口方面に避難し、決着がつくのを待った。
どれ程の時間が経っただろうか、完全に音が鳴り止むと、俺は様子を窺った。 二人が蛙の様に床に倒れ、一人が立って居る。 立って居るのは勿論フレーレ様でした!! ストリーは昔互角に戦ったと言ってたけど、もう随分と差がついてしまった様だ。
「ふう、結構楽しかったわ!! アツシ居るんでしょ? 二人を連れてってねー。」
「ハッ!! 了解しました!!」
ストリーをおんぶして、べノムを引きずって帰ろうと思ったのだが、気を失い倒れて居た魔王さんが、自分を倒したフレーレ様に言い放った。
「この私を倒していい気になってる様だが、私が真の魔王だとでも思ったのか!! 私はただの右腕にしか過ぎない!! さあ魔王様、おいでくださいませ!!」
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